Har Dil Jo Pyar Karega…(2000)#251
「Har Dil Jo Pyar Karega…
(それぞれ心が恋をする…)」★★★★
ハル・ディル・ジョー・ピャール・カレーガー
製作:サジード・ナディアドワーラー/監督:ラージ・カーンワル/脚本・台詞:ルミー・ジャフリー/撮影:W・B・ラーオ/作詞:サミール/音楽:アヌー・マリック/振付監督:ファラー・カーン/背景音楽:スリンデール・ソーディー/アクション:アッバース・モーグル/美術:シャルミスター・ローイ/衣装デザイン:ニーター・ルッラー、ルチカー・パーンディー、サビナー・カーン、ヴィクラム・パードニス/編集:サンジャイ・ヴェルマー
出演:サルマーン・カーン、ラーニー・ムカルジー、プリティー・ズィンター、カーミニー・コォーシャル、パレーシュ・ラーワル、シャクティ・カプール、サティーシュ・シャー、ラジーヴ・ヴェルマー、アジート・ヴァチャーニー、ニーラージ・ヴォーラ、ラザック・カーン、ヴィネイ・パータク、K・O・チャンドラン、シャシ・キラン、マスタル・スミス・セート、ベビー・サーナー、レーカー・ラーオ、バイラヴ・アルン
特別出演:シャー・ルク・カーン、アスラーニー
公開日:2000年8月4日(日本未公開)
STORY
孤児として育ったラージュー(サルマーン)は夢見ていた歌手デビュー目前、交通事故で意識不明となった花嫁プージャー(ラーニー)を救出。病院に連れてゆくと彼女の夫と間違われてしまう。真相を知った伯父ゴーヴェルダン(パレーシュ)から乞われて夫の振りを承知するラージューだが、ゴーヴェルダンの娘ジャーンヴィー(プリティー)に惹かれて…。
Revie-U
サルマーン・カーンの役どころは、歌手志望のラージュー。ボンベイのレコーディング・スタジオを訪ねて1曲披露すれば、プロデューサー(アスラーニー)に氣に入られ、ウディット・ナラヤンやクマール・サーヌーと並ぶスターになると太鼓判を押される。
ただし、レコーディング費用の2ラークが必要。そこでニーラージの伯父シャクティ・カプールから大金を借り込み、スター氣取りとなってステージ・ナンバルを夢想。いざスタジオへ向かえば、なんと売り出しを約束していたアスラーニーの葬式が。
深夜、落胆するラージューの目の前を暴走車が通過。そのまま某炭酸飲料の大看板に突っ込んで、ジャンピング・ロールオーヴァー!! ラージューが駆けつけると、線路の上に横転したクルマの中で花嫁衣装を纏ったプージャーが氣を失っている。病院に担ぎ込めば彼女の<夫>ローミーと間違われ、それを訂正しようにも祖母が神に嘆き、父親が心臓マヒと続けば、と言い出せず……静と動が交互に繰り返すことによってエモーションを揺り動かす、というツボを得た演出法が小氣味よい(ただし、ストーリーは米「あなたが寝ている間に」の焼き直し)。
花嫁プージャーを演ずるラーニー・ムカルジーは、ほとんど3分の2は意識不明の「眠る女」役。まわりのくだらないジョークにも瞬きひとつしない演技力が評価され?、助演女優賞にノミネート。が、意識を取り戻してからは、事故がらみのエモーションが高まっている分、タイトルナンバル1曲のミュージカルで巻き返すのはさすが!
セカンド・ヒロインが、同じジョイント・ファミリー(一族で暮らす大家族)の一員で、姉妹同然のジャーンヴィー役プリティー・ズィンター。サルマーンに惹かれながらも彼がラーニーの夫であるだけに想いを明かせず、サルマーンが本当の夫ではないと解って恋が成就するものの、意識を取り戻したラーニーがサルマーンの献身的な看護?を記憶していて彼に心を移してしまう、という展開。プリティーか、ラーニーか、この時期、どちらも女優としてブレイク前にあって拮抗し、最後の最後までヤキモキさせられる訳だ。
もっとも、インド女性が家族に知らせず結婚し、それを家族が受け入れるとは到底思えないが、そこはヒンディー映画。神様絡みの感動で押し切ってしまう。
振付監督は「Tees Maar Khan(勇ましき大法螺野郎)」(2010)のファラー・カーン。サルマーンのコミカルな一面を存分に引き出しての仕事ぶり。
美術監督は「Mujhse Shaadi Karoge(結婚しようよ)」(2004)でアート・ペイントを多用した瀟洒なセットでScreen Awards 美術監督賞を受賞したシャルミスター・ローイ。アブドゥールの部屋などやたらに趣味が悪く安っぽい出来だが、「Dil To Pagal Hai(心狂おしく)」(1997)の頃は同様に垢抜けなかったものだ。
このへんの過剰なところは、監督ラージ・カーンワールのセンスもあるだろう。なにしろ、カーンワールはラージクマール・サントーシーの「Ghayal(傷ついた者)」(1991)に助監督として参加していた人。正統的な(?)大仰マサーラー・アクションを受け継ぎ、プリティーにひと目惚れされたサニー・デーオールが爆弾テロを追う刑事アクション「Farz(義務)」(2001)や、ボビー・デーオールの復讐ロマンス活劇「Badal(雲)」(2000)を放ったマサーラーワーラーなのである。
サポーティングは、ラージューの親友アブドゥールにニーラージ・ヴォーラ。
レコード会社の社長役に「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)でサイーフ・アリー・カーンの父親役サティーシュ・シャー。
売り込みをかける楽師にラザック・カーン。
プージャーの祖母役が「Chori Chori(こっそりと)」(2003)でもラーニーに温情をかける祖母役のカーミニー・コォーシャル。
すべてを知った上でラージューに夫の振りを頼み込む伯父が「Mumbai Meri Jaan(ムンバイー、我が命)」(2008)の名優パレーシュ・ラーワル。遠戚が「Bheja Fry(脳味噌揚げ)」(2007)のヴィネイ・パータク。
また、レコーディング場面で音楽監督アヌー・マリックと作詞家サミールが彼ら自身として出演。
冒頭、映る可憐な女優は「Deewana(恋狂い)」(1992)、「Dil Aashna Hai(心は愛してる)」(1992)などでブレイクするも夭折したディヴヤー・バーラティー。その夫が本作のプロデューサーであるサジード・ナディアドワーラー。毎作、亡き妻の映像をメモリアルとして(再婚するまで)掲げる。
アヌー・マリックの音楽はオープニングの「ek garam chai pyali ho」を除き、粒ぞろいでこれまた佳し。CD未収録のナンバルは、KKが担当。
インターヴァル前に、ある大物スターの特別出演(サルマーンへのお返し出演)もあって、まさに至福。