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Dil Hi Dil Mein(2000)#250

2011.05.03
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Dil Hi Dil Mein

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Dil Hi Dil Mein (心は心に) ★★★☆ 01.02.25 UP/01.11.11 Re
ディル・ヒー・ディル・メイン

製作:A・M・ラトナム/原案・脚本・監督:カティール/撮影:P・C・スリーラーム/作詞:メヘブーブ/音楽:A・R・ラフマーン/振付:サロージ・カーン、スンダラーム、ラージュー・スンダラーム、ヴァイバヴィー・メルチャント、クール・ジャヤント/美術:トーッター・ターラーニー/編集:B・レーニン、V・T・ヴィジャヤン

出演:ソーナーリー・ベンドレー、クナール、ナースィル、アヌパム・ケール、ジョニー・リーヴァル、マスタル・ラージュー(ラージュー・スリワスターワ)、カルパナアイヤール
特別出演:ランバー

公開日:2000年4月21日(日本未公開)

STORY
苦学生ラージャー(クナール)は、インターネットで知り合った美女ロージャー(ソーナーリー)に一目惚れ。彼女も彼に想いを寄せるが、実生活ではふたりはすれ違いのまま。しかも、ラージャーを後援していた学長ラームチャンドラ(ナースィル)がロージャーの父親で、学会絡みから彼女の縁談を決めてしまう。果たしてラージャーはヴァーチャルでない現実の世界でロージャーを娶ることが出来るのか?

Revie-U
経済発展中、IT革命の旗手インドで爆発的に広まっているインターネットを題材にした電脳ラヴロマンス。元ミス・ボンベイソーナーリー・ベンドレーが宝石のように美しいヒロインを演じており、彼女に見蕩れるだけでもラージャーのように十分幸福になれる…。

製作のA・M・ラトナムコリウッド(タミル映画界)をベースに活動するプロデューサーで、この10年間に35本の作品をプロデュース。アニル・カプール主演Nayak(英雄)(2001)なども手がける。

脚本・監督のカティールもコリウッド出身で、ヴァーチャルな恋愛を展開させる一方、非ボリウッドな視点でリアルなインドの姿も忘れずに描き、それらの対比がやがて哀しいラストへと向かう。

プログラマーが憧れナンバル1の職業であるインドながら、もちろんすべての人々がインターネットに触れられるわけではない。そのため、ジョニー・リーヴァル扮するネット無知の教授がチャドルを被りムスリム女学生を装ったネカマの学生にカモられるエピソードや、チャットの会話が進んでロージャーが自分の写真を送るメールで送る際、スキャンした画像がひらひらとネットカフェの中を漂い、ラージャーが使うパソコンに吸い込まれるなど、視覚的な演出が為されている。

また、世界中に張り巡らされたインターネットというヴァーチャルなホットラインに対し、各地をつなぐレールウェイライン、すなわち人間満載で走る旧態依然とした鉄道を現実世界のメタファーとする着想にも感心させられる…のだが、現実社会でくどいほどすれ違うラージャーとロージャーにあって、バンドラ駅のラッシュアワーがこれまたくどいほど登場するのが難点だ。ボリウッド・レビューでも指摘されていたが、メルセデスで送り向かいされるべき令嬢ロージャーがわざわざ電車通学するなど、テーマの消化不良がいくつか感じられる。

見どころは、今をときめくA・R・ラフマーンを起用したポップ&リリカルなミュージカル・ナンバルの数々だろう。オーシャン・ロードの断崖絶壁ギリギリにソーナーリーを立たせた空撮で始まるオーストラリア・ロケのae nazneen suno、タージマハル・ロケとCGIで彩ったroja:roja、豪華なスティック・ダンスの群舞が見られるchand aaya hai(月が昇りて)」など、なかなか楽しませてくれる。

サポーティングには、ラーマチャンドラ教授に「ボンベイ」Bombay(1995=タミル)、「ジーンズ」Jeans(1998=タミル)の名優ナースィル。ネットカフェのことをネSカフェと間違えてるドジな大学教授にジョニー・リーヴァル。主人公ラージャーの失恋話を聞き入る、ストーリーテラーならぬストーリーヒアラーの軍人役にアヌパム・ケールがキャスティングされている。また、インターネットを美化しまくったミュージカル・ナンバルo mariaには、「アルナーチャラム」Arunachalam(1997=タミル)のサブ・ヒロイン、ランバーが特大マリアとして登場。

本作は、アンハッピーエンドという結末はもとより、受験に失敗して自殺者も多数出しているインドの受験競争や、女乞食が抱えるレンタル赤ちゃんの実態など、通常のボリウッド映画からするとショッキングなシーンが多かったためか、A・R・ラフマーンの音楽はヒットしたものの、北インドでは興行的にはさほどでもなかった。やはり、主人公がヒンディー圏では無名のクナールであることが大きかったと思われる。

*追記 2011,05,03
同じくソーナーリーを起用した同監督・同男優によるタミル映画「Kadhalar Dinam」(1999)のヒンディー・リメードで、A・R・ラフマーンの音楽と豪州ロケのソング・シークエンスは使い回し。プロデューサーのA・M・ラトナムマニーシャー・コイララウルミラー・マートンドカルを配置したカマル・ハッサン主演「インドの仕置人」Indian / Hindustani(1996)でもヒンディー版を製作、ボリウッド進出に臨むが結局コリウッドに戻っている。

単なるヒンディー・ダビング版でなく、アヌパム・ケールジョニー・リーヴァルなどボリウッド俳優を起用し再撮影。そのジョニーをカモる学生がHum Aapke Dil Mein Rehte Hain(私はあなたの心の中に)」(1999)でカジョールの弟役ラージュー・スリワスターワ。クレジットはKitaab(本)」(1977)での子役名マスタル・ラージューとなっている。

A・R・ラフマーンは2000年以降、欧米風に洗練されてゆくが、本作では実にフィルミーらしいメロディアスな楽曲作りで心地よい。インターネット時代の走りとあって、o mariaのイントロがアナログ回線の接続音なのが今となっては懐かしい。

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