Champion(2000)#248
Champion 01.05.15UP/01.10.05 Re ★★★
脚本・監督:パダム・クマール/脚本:N・K・マハラジャン、ヴィジャイ・シェッティー、ヴェンカテーシュ/台詞:サンジャイ・マソーム/撮影:S・ティールー/音楽:アヌー・マリック、ヴィシャール-シェーカル、アナン(=アーナンド)・ラージ・アナン/作詞:ジャーヴェード・アクタル、ニティン・ライクワール、アナン・ラージ・アナン/背景音楽:アーデーシュ・シュリワスターワ/振付:ガネーシュ・アチャルヤー、アフムド・カーン、ラージュー・サンダラーム/アクション:ティヌー・ヴェルマー
出演:サニー・デーオール、マニーシャー・コイララ、ラーフル・デーヴ、カシュミラー・シャー、マスタル・アビシェーク・シャルマー、ヴィクラム・ゴーカレー
公開日:2000年12月22日(日本未公開)
STORY
家族を集団自決に追いやられサイコキラーと化したナザール(ラーフル)は、悪徳事業家カーンを暗殺。跡取りの少年アッバース(マスタル・アビシェーク)をも抹殺しようとつけ狙う。ムンバイーへ派遣された警官ラージワール(サニー)はアッバースの護衛を命じられるが、これがまたどうしようもない悪ガキ連中。しかも、うるさ型の姐御サプナー(マニーシャー)も手を焼かす。そうこうしているうちに、精神病院を隠れ蓑にしたナズィールの復讐が始まる…。
Revie-U
2000年の年末から21世紀の初頭にかけてネパール/インド間を震撼させたリティク・ローシャン騒動の際、ヒロインのマニーシャー・コイララがネパール出身ということでとばっちりを受け、インド右翼学生から上映ボイコットされた曰く付きの作品(ただし、ほんの数日で再開)。
主演のサニー・デーオールは相変わらずで、制服警官でニンジンを生で噛らないことを除けば、「Farz(義務)」(2001)と大差ない無敵の鉄人ヒーロー。冒頭、駅を占拠したテロリストをヘリから単身飛び降りて皆殺ししてしまうのは例によって、つかみの夢。
その後、ボンベイ(現ムンバイー)への栄転が決まって仲間と踊りだす。この、男衆にひとり踊り子が混じったミュージカル・ナンバルは、「Shool(槍)」(1999)でのシルパー・シェッティーがゲスト・ダンサーで踊る結婚式のシーンのイタダキ。本作では、カシュミラー・シャーをフィーチャル。
跡取りの少年アッバースに扮するアビシェーク・シャルマーは、「Kaho Naa..Pyaar Hai(言って…愛してるって)」(2000)でリティクの弟アミットを演じていた子役。仲間の悪ガキ連中には、「Jung(闘い)」(2000)でジャッキー・シュロフの息子役だったジョシュも顔を見せている。
前半は、栄転したと思っていたラージワールが実は悪ガキのお守りで奮闘する、というもの。みんなまるまる太っていて、日本の小学生のように成人病が心配されるほど。
さらにラージワールを悩ますのが、マニーシャー扮する姉サプナー。モデル兼ダンサーという設定からアッバースに輪をかけたワガママで、悪ガキ連中の女ボスとなる。なぜか赤外線透視サングラスを持っていて、お付の男どもの裸を透視して嫌がらせするという不遜なキャラクター。このプロップ・ギャグは「Baadshah(帝王)」(1999)からのイタダキで、オチの処理も特にセンスなし。サプナーとラージワールは恋愛に発展もせず、マニーシャーは顔見せヒロインに終わっている。
この「キンダガートン・コップ」(1990=米)的ノリに、精神病院を根城に復讐を誓うナザールのトラウマ的回想シーンがハードなトーンでインサートされる!
サイコキラー、ナザールに扮するのが、注目のラーフル・デーウだ。ボリウッド・ファッション・アワード・モデル・オブ・ザ・イヤー2000を受賞したトップ・モデル。本作が映画デビュー作で、鍛え抜かれた身体とリー・ヴァン・クリーフに通じる鋭い顔付き、極悪キャラも辞さない根性が好感持てる。第2作「Aashiq(愛人)」(2001)でもおぞましい人身売買マフィアのボスを怪演。「Mujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って)」(2001)に出ていたムクール・デーウの兄弟でもある。
パダム・クマールの演出は、可もなく不可もなく、と言ったところ。ただし、パダムを含め4人のライターがなんてことはない脚本に関わっているのは少々呆れるが、これは直し仕事で食い繋ぐ有象無象が跋扈するハリウッドも同じ。
音楽はメイン・コンポーザーにアヌー・マリックを、ゲスト・コンポーザーにヴィシャール-シェーカル、アナン(=アーナンド)・ラージ・アナンを据え、ポップでファンキーなナンバルが多いものの、ハチマキをしたオヤヂ顔のサニーとはそぐわない。
しかし、人間機関車サニーを楽しむ分には、お手ごろな一本。なお、「Taal(リズム)」(1999)、「Yeh Raasta Hai Pyaar Ki(愛の道標)」(2001)のヴィクラム・ゴーカレーが警察署長役で出演。
*追記 2011,04,21
リティクが「ネパールなんて嫌いだ」と言った、というデマが流れ、たちまちのうちにカトマンドゥーで暴動が発生。リティクを模した人形に火を付けられた他、インド系商品も焼き討ちに遭う騒ぎに。暴動は某国情報部が煽動した、とも言われる。この騒ぎの煽りを喰って、インド側では「ネパール出身の女優」ということでマニーシャー出演の本作上映館に右翼系学生が制圧をかけた。マニーシャーはリティク擁護のスピーチを発表したばかりか、印パ首脳会談まで行われた。これもすべて、リティク・デビューの凄まじさ故。