Grahan(2001)#247
Grahan(日蝕)/2001 01.04.05 ★★★
製作:アヴィナーシュ・アディワ、プラカーシュ・ジャージュー/監督:K・カシラール・ナーヤル/原案・脚本:スジート・セーン/台詞:ランジート・カプール/撮影:S・クマール/作詞:メヘブーブ、イラー・アルン/音楽:カールティク・ラージャー/振付:ガネーシュ・ヘーグデー/アクション:バッチャン・スィン/美術:R・ヴェルマン/編集:ワマン・ボースレー
出演:ジャッキー・シュロフ、マニーシャー・コイララ、アヌパマー・ヴェルマー、ラージ・ズトシー、アチュート・ポトダル、チャンドラカーント・ゴーカレー、ブナン、アミーター、ランジート・カプール、ミルチャンダーニー、シャシ・シャルマー、ラーハン・ナウシャド、サンジャイ・ガーンディー、ウダイ・ドゥルヴ、プールニマー、アナント・ジョーグ、ラヴィ・パトワルダン
公開日:2001年2月16日(日本未公開)
STORY
南インド古典舞踊の踊り手パールヴァティー(マニーシャー)は、大物政治家の息子サンジャイ(プラサード・プランダル)にレヱプされる。彼の姉スニター(アヌパーマー)の恋人で顧問弁護士のジャグー(ジャッキー)は、攻撃的な弁護で彼を無罪に持ち込む。ところが、祝賀パーティーの席でコカインを吸引したサンジャイがレヱプを自認! 罪の意識を感じたジャグーは失踪したパールヴァティーを探し出すが、彼女は路上でゴミを漁る狂人となっていた・・・!
Revie-U
オープニングから瑞々しいマニーシャー・コイララと南インドの風景(かの「ボンベイ」Bombayを思わせる)に引き込まれる。一転、ダンス公演で彼女を見初めた男にレヱプされるという重圧な展開! しかし近年、トップ女優が汚れ役をやるケースの多いことか(「Aashiq(愛人)」、「Hamara Dil Aapke Paas Hai(私の心はあなたのもの)」参照)。
それにしてもマニーシャーの女優根性は凄い。冒頭の初々しい少女からレヱプシーン、裁判で攻撃されて発狂、幼児返り(火遊びで家に火をつける)、治療後は男を暗殺。最も強烈なのはジャッキー・シュロフが彼女を探し出した時だ。雨の中、ゴミを漁り、自らサリーの裾をまくって物乞いする…。
しばしば「マニーシャーは役を選ばない」とも言われるが、案外、マイケル・ケイン流に「オファーがあった役は断らない。どんな役でも熱演するのが役者」と考えているのかも。また「マニーシャーの踊りは上半身だけの盆踊りダンス」と、1994年に製作された「ボンベイ」しか観てない日本の映画ライターたちから批判されているが、それは振付によるもの(まあ、抜群に巧いというわけではないが…)。今回、彼女は南インドの古典舞踊団をバックに見事な技芸を披露している。
一方、ジャッキーの恋人役アヌパーマー・ヴェルマーは、本作が正式なデビュー作となる。きりりとしたなかなかの美人で、急死した政治家の跡目役にふさわしい器量を持っている。後半、ジャッキーと法廷で対決する同僚弁護士は、「Anjali」アンジャリ(1990=タミル)の主役で「アルナーチャラム」Arunachalam(1997=タミル)でも悪役を演じていたタミル映画界の俳優ラグヴァラン。しかし、ヒンディー版では吹き替えなのが残念。
製作は、ジャッキー自身のプロダクション、ジャッキー・シュロフ・エンターテイメント。1997年12月公開予定だった本作、諸々の理由から製作が遅れ、「Taal(リズム)」(2000)のスバーシュ・ガイー監督などの協力により2001年2月にようやくリリース。撮影はハレガオン、スリランプル、ミュージカルシーンはニュージーランド・ロケ。音楽のカールティク・ラージャーは、作風からしてA・R・ラフマーンのフォロアーらしい。コリウッド・スタッフの技術力の高さが感じさせられるものの、後半が今ひとつということで三つ星に留めた。
*追記 2011,04,20
K・カシラール・ナーヤルはジャッキーとも馴染みのある監督で、シャー・ルク・カーンを起用した「One 2 Ka 4(1足す2は4)」(2001)も手がける。マニーシャーを起用したアート映画系かつ非インド映画的な禁断の青少年物「Ek Chhotisi Love Story(ちょっとしたラヴ・ストーリー)」(2002)で、マニーシャーに断りなくダブル(吹き替え女優)による濡れ場のインサート・カットを用いたため起訴騒ぎに。