Patiala House(2011)#245
「Patiala House」★★★☆
パティヤーラー・ハウス
製作:トゥインクル・カンナー、ムケーシュ・タルレージャー、ゾーエブ・スプリングワーラー、ブーシャン・クマール、クリシャン・クマール/原案・脚本・監督:ニキル・アドヴァニー/原案・脚本・台詞・作詞:アンヴィター・ダット/撮影監督:サントーシュ・トゥンディイェル/音楽・背景音楽:シャンカル-イフサーン-ローイ/背景音楽:トゥビー/振付監督:レモ・デスーザ/プロダクション・デザイナー:プリヤー・スハース/VFX:プライム・フォーカス/スポーツ監督:ロブ・ミラー(reel sports)/ボウリング・コーチ:バルヴィンデール・スィン・サンドゥー/衣装デザイン:ジャイマル・オデードラー、マラヴィカー・カシカル/編集:マナン・サガル
出演:リシ・カプール、ディンプル・カパーディヤー、アクシャイ・クマール、アヌシュカー・シャルマー、ティヌー・アナン(=アーナンド)、ソーニー・ラズダン、マスード・アクタル、T・S・シドゥー、ナリンデールジート・スィン、ジェネーヴァ・タルワール、スパルナー・マルワーフ、ファラーズ・カーン(新人)、ラビット・サック・C(rsc)、アルマーン・クルマーニー(新人)、ハード・コゥール、マーヤー・サラオー、シミー・メルワーニー、タンヴィール・スィン、デーヴァンシュ・ダスワーニー、ウスマーン・クレーシー、セリナー・ホトワーニー、ジュヴェーリア・カーン、アンクシュ・カンナー
特別出演:プレーム・チョープラー、クムド・ミシュラー、マシャー・ポール
公開日:2011年2月11日(日本未公開)147分
STORY
ロンドンのインド人街サウスホールに住むガットゥー(アクシャイ)は、クリケット・チームから期待のエースとしてスカウトがかかる。が、父グルテージ(リシ)が大の英国嫌いとあって試合に出たら自害と宣言されており、夢を諦めるしかない。そこでおせっかいなシムラン(アヌシュカー)が策を練って…。
Revie-U
「チャンドゥニー・チョーク・トゥ・チャイナ」CC2C(2009)のアクシャイ・クマールとニキル・アドヴァニー監督が再びタッグを組んだ本作。米ワーナー作品とあって全米マーケットを意識しはしゃぎ過ぎた感のあったクンフー物「CC2C」で反省したのか、今回は印英向きのクリケットを題材にしっとりとした?作品に仕上げている。
製作は「Tees Maar Khan(勇ましき大法螺野郎)」(2010)に続き、アッキーの自社ハリ・オーム・エンターテイメントがタッチ、プロデューサーに愛妻トゥインクル・カンナーの名を加えている。

(c)Hari Om Entertainment,Peepli Tree Films,T-Series, 2011.
さて、そのアッキー、「CC2C」のシドゥー、「Housefull」(2010)、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン共演で「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を下敷きにした「Action Replay」(2010)とダサ男続きだったが、本作では父親を案じて煮え切らないものの、スポーティーな七三分けが凛々しい久々の二枚目路線で、「さよならゲーム」のケビン・コスナーを彷彿とさせる。

(c)Hari Om Entertainment,Peepli Tree Films,T-Series, 2011.
ヒロインは、「Band Baaja Baaraat(花婿行列狂騒楽団)」(2010)のアヌシュカー・シャルマー。「CC2C」のディピカー・パドゥコーンと比べると格落ちは否めないが、登場場面から高飛車な嫌な女タイプも板につき、まずまずの成長ぶり。ただ、34歳という設定のアッキーからすると近所の小娘的な印象で低レベルのスクリーン・ケミストリーに留まる。

(c)Hari Om Entertainment,Peepli Tree Films,T-Series, 2011.
そして、作品を引き締めるのが、父親グルテージ役のリシ・カプール。
英国内に在住するNRI(在外インド人)が英国人の若者から脅威を受けるのは、ソハイル・カーン主演「I Proud to be an Indian」(2004)などがあったが、本作でリシが扮するグルテージも果敢に英国人愚連隊に殴り込みをかけては警察騒ぎとなる嫌英インド人。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、とばかり、英国のクリケット・チームへ入りたがった長男ガットゥーに「もしクリケットをするなら、俺が死ぬ時だ」と宣言する。クリケットの選手を夢見る息子を潰そうとする父親としては「Iqbal」(2005)が思い出される。
それでも作品に嫌みがわかないのは、最後は親子の愛になるであろうという読みとリシのチャームによるところが大きい。ロンドン在住のスィク役としては「Love Aaj Kal(ラヴ今昔)」(2009)に続くが、本作では防寒の顎ターバンや洗髪時のロングヘアー(スィクは髪を切ってはならず、ターバンの下は長髪が隠されている)姿も見られ、スィク好きには興味深いはず。
サポーティングは、グルテージの妻に「Dabangg(大胆不敵)」(2009)のディンプル・カパーディヤー(トゥインクルの母、つまりはアッキーの義母)。リシとはラヴ・ロマンスの伝説作「Bobby」ボビー(1973)の名コンビとなるが、今回は出番は控えめ。
そして注目なのが、姉妹役のハード・コゥール。これまで「Kismat Konnection(運命のコネクション)」(2008)などでフィーチャーリングされて来た女性ラッパーである彼女が、父親に隠れてラッパー志望というのが可笑しい。もちろんフィルミー中にラップも披露。
また、特別出演の祖父役がプレーム・チョープラー。「Bunty Aur Babli(バンティーとバブリー)」(2005)でも見せた堂々たるスィク老爺姿がよい。
シャンカル-イフサーン-ローイの音楽は「CC2C」に続き、「baby when you talk to me」はじめ、よりポップにアレンジされているが、シャンカル・マハーデヴァン自身のプレイバックは少なく、バックスコアもハリウッド風な仕上がりとなっている。
タイトルにあるパティヤーラーは、パンジャーブ州に位置し、かつての藩王国。パンジャービーの中でも氣骨ある出身地としての誇りからグルテージらが住む家に名付けられている。
脚本の感動ポイントは、インド文化に則った父を思う息子の愛にある。ガットゥーはクリケット選手の夢を諦め、町の日用品屋を任される身。父から疎まれ、公の場でも長男としての役割を剥奪され、兄弟からも爪弾きとなっている。
他国の映画ならさっそくグレて、家を飛び出しているところだが、これをひたすら堪え忍ぶ。クリケット・チームからスカウトがあっても父の存命を案じて(インタルミッションまで)応じようとしない。そんな彼が自分の夢に踏み出すのは、それぞれ夢を諦めてきた兄弟姉妹(パンジャービーだけに子沢山)に後押しされて。後半はクリケットの試合で活躍するガットゥーをひた隠し、いかにテレビ、モバイル(携帯電話)、新聞等から父グルテージを遠ざけるか、というスケッチが続く。
はしゃぎ過ぎの一方で3分に1回は泣かせた「CC2C」とは異なり、ニキルの演出はわりと淡泊。毎回、脚本作りが変化しているところからしても、カラン・ジョハールのアシスタントから抜け出て自分なりの演出スタイルを確立したとは言い難く、スポーツ映画としてはチームメイトとの絡みが描かれていないので物足りなくもある。ただ、それでも約2時間半を見せてしまうのは、アッキーとリシによるスターヴァリューだろう。

正規盤DVDは化粧箱入り三面見開きジャケット。