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7 Khoon Maaf(2011)#243

2011.04.14
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

7 Khoon Maaf

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「7 Khoon Maaf(7人殺しを許して)★★★☆
サート・クーン・マーフ

製作:ロニー・スクリューワーラー/製作・脚本・監督・音楽・背景音楽:ヴィシャール・バルドワージ/原作:ラスキン・ボンド「Susanna’s Seven Husbands」/脚本:マッテーウ・ロビンズ/撮影監督:ランジャン・パリット/作詞:グルザール/振付:ラージュー・スンダラーム(doosri darling)、サンディープ・ソーパルカル(tango)、ディレイラー(yeshu)/プロダクション・デザイン:サミール・チャンダ/美術監督:スブラター・チャクラボルティー、プニーター・グローヴァル/衣装デザイン:パーヤル・サルージャー/VFX:ゴーヴァルダン・ヴィグラハム/アクション監督:シャーム・コゥーシャル/特殊メイク:イリュージョン・インダストリー・インク/メイク・アップ・デザイン:ヴィクラム・ガイクワード/編集:スレーカル・プラサード

出演:プリヤンカー・チョープラー、ジョン・エイブラハム、イルファーン・カーン、ナスィールディン・シャー、ニール・ニティン・ムケーシュ、アレクサンドル・ドヤチェンコ、ヴィヴァーン・シャー、アンヌー・カプール、シャシ・マルヴィヤー、ウシャー・ウトゥプ、ハリーシュ・カンナー
特別出演:コンコナー・セーン・シャルマー、ラスキン・ボンド

公開日:2011年2月18日(日本未公開)148分

STORY
6人の夫を次々と殺害したスザンナー(プリヤンカー)が自殺。彼女の養育により検察医となったアルン(ヴィヴァーン・シャー)が回想しつつ、7人目の夫殺害を阻止しようとするが…。

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

Revie-U
*真相にやや触れています。
What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)で12変化+αを演じたプリヤンカー・チョープラー最新作は、7人の夫を殺めてゆく魔性の物語。
監督は、シェークスピアの「オセロ」を乾いた北インドに置き換えたアジャイ・デーヴガン主演「Omkara」(2006)、シャーヒド・カプール主演のトリッキーなアンダーワールド物「Kaminey(イカれた野郎)」(2009)など先進的な話題作を連続して放ち注目を集めるヴィシャール・バルドワージ。本作では、また一歩、脱<インド映画>的重厚な演出を試みている。

原作はThe Blue Umbrella(2007)のラスキン・ボンドだが、邦訳短編集「ヒマラヤの風にのって」とは大違いの、クールなサスペンス「Susanna’s Seven Husbands」の映画化。英語作家だけある結末が味わい深い(これまた意味深な役柄で自らもカメオ出演しツイストを与えている)。

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

さて、最初の夫エドウィン少佐として登場するのが、Lafangey Parindey(無頼の鳥)」(2010)のニール・ニティン・ムケーシュ。白人顔だけに、アングロインディアン(英国系インド人)という役柄からのキャスティングだが、相変わらず雰囲来のない男。
嫉妬深く、横暴で人望もなし、とあって、従者たちからも反感を買い、パンター(パンサー)狩りの最中、<木の上から落ち>豹に喰われてしまう…。

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

次なる夫は、ロック・シンガーのジミー。演ずるは、プリヤンカーとはDostana(友情)」(2008)で共演済みのジョン・エイブラハム。ドラッグ漬けとなり、グルーピーの女たちとアフロヘア+シミーズ(スリップ)で戯れる始末(役名ジミーは、ミトゥン・チャクラワルティーのカルト作「Disco Dancer」に由来?)。
ヴィシャールは音楽監督でもあるが、このジミーが曲をパクっていて、原曲の作曲家が<売り込み>にやって来て、曲を買い取りまくるスケッチが用意されている(苦笑)。

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

三番目の夫がウルドゥー詩人のワスィーッラー・ハーン。言葉巧みな麗しき詩を詠むものも、ちょっとしたアブノーマルな性癖の持ち主だったため、次第に夫婦生活が重荷となって来る。
イルファーン・カーンは、これまたKnock Out(2010)に通ずる長めの髪型で役作りをするも、彼としてはアベレージな印象。

4番目の夫は、ロシア人俳優アレクサンドル・ドヤチェンコ扮するニコライ。ヒンディーもなかなかのもので、アミターブ・バッチャン主演「Deewaar(壁)」(1975)の定番台詞で口説くのがいい。
語り部となる孤児アルンは、この縁故によりモスクワの医大へ留学することとなる。

5番目の夫は、2番目の夫ジミー、4番目の夫ニコライの<死>を捜査したキーマット。月日は流れ、郡部警察のインスペクターから情報局のオフィサーに昇格しているが、彼女への仄かな(あるいは邪な)恋心は薄れず(密かにバイアグラを持参)。
これを演ずるRaincoat(2004)のアンヌー・カプール。これまでの「夫」たちがオムニバスの一挿話に過ぎず、足早に去っていったのに対し、ストーリーに馴染んだキャラクターとあって肉付けがよく為され、印象もひと際。

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

6番目の夫、Dr.モードゥシュダンは、危篤となったスザンナーの一命を取り留めるアーユルヴェーダの名医。遺産目当てで彼女に毒きのこ料理を用意…。
これをIshqiya(色欲)」(2010)のナスィールディン・シャーが演ずる訳だが、やはりゲスト的な配役に留まっているのが残念。

これら夫6人のスケッチが物足りなく感じるのは、12名の見合い相手をたっぷり描き込んだ「What’s Your Raashee?」と異なり、2時間28分というほどほどの尺数にまとめたため。
ヴィシャールの監督作「Omkara」におけるビパーシャー・バスが悩ましく舞ったムジュラー(酒場の踊り子)・ナンバルbeediや、グルザールの深い作詞とナスィールディンの心躍る様が観客を酔わせたプロデュース作「Ishqiya」のdil toh bachcha hai ji(心は子供のままに)」などと異なり、見せ場となる舞踊シーンはロシア民謡調darlingのみで、インド映画の独壇場である音楽シーンによるメリハリが感じられない。これは音楽監督からキャリアをスタートしたヴィシャールとしては<挑戦>ではあったろう。

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

サポーティングは、ストーリーテラーとなるシュガーことアルンに起用されたのが、新人ヴィヴァーン・シャー
その名から察せられるようにナスィールディンの息子であるが、Yun Hota To Kya Hota(もし起きたら何が起きるか)」(2006)でデビューした長兄イマード・シャーと違い、母ラトナー・パータク・シャー似。童顔だけに青少年時代の幼氣(いたいけ)な風情がお似合い。
皮ムチを打ち鳴らして孤児たちを酷使する下男<グンガー>・チャーチャー(伯父)役シャシ・マルヴィヤーは、Peeplie Live(2009)のオームカル・ダース・マニクプリーと張る小男で、どこか丹古母鬼馬二を思い出させる。
謎めいたメイド、マギー役がプレイバック・シンガーのウシャー・ウトゥプ
従者ガリーブ役が、ヴィシャールの前作「Kaminey」のハリーシュ・カンナー
また、コンコナー・セーン・シャルマーがアルンの妻役で特別出演している。

「Khoon」はヒンディーで「血」を意味するが、転じて「殺し」をも示す。
さて、プリヤンカーはと言うと、「What’s Your Raashee?」とは異なり、1役ながら20代から特殊メイクを施した老齢まで魅惑的に演じ分ける。ワスィーッラーと共に歩く時のドゥパッターを巻いた姿がよい。
彼女演じるスザンナーは決して男漁りの末に男を殺しまくるシリアル・キラーでなく、夫運に恵まれない業深き女。それなりの理由があって、彼女の夫たちは<短命>に終わる。そんな彼女を支え通す使用人たちの存在がいかにもインドらしく、さらに幼い頃から目をかけ続けたアルンとの情愛を超えたつながりが、彼女の人生を物悲しく語る。
すでに死んでおり、教会での結婚式でその血を飲むとスザンナーが宣言する7番目の夫とは果たして?

7 Khoon Maaf

(c)UTV Motion Pictures, 2011.

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