Bulandi(2000)#239
Bulandi(高位継承) 01.04.19 ★★★☆
ブランディー
製作:ヨーゲーシュ・アナン(=アーナンド)/監督:T・ラーマ・ラーオ/原案・脚本:エローデー・ソウンデール/台詞:アーデーシュ・K・アルジュン/撮影監督:M・S・プラブー/作詞:アナン(=アーナンド)・バクシー/音楽:ヴィジュー・シャー/振付:チンニー・プラカーシュ、B・H・タルン・クマール/スリル(アクション):S・ヴィジャヤン/美術監督:マニラージ/編集:P・ゴータム・ラージュー
出演:アニル・カプール(二役半)、レーカー、ラヴィーナー・タンダン、シャクティ・カプール、パレーシュ・ラーワル(二役)、サダーシヴ・アムラープルカル
特別出演:ラジニーカーント
公開日:2000年1月7日(年間35位/日本未公開)
STORY
代々、ザミンダール(大地主)であるダルマラージ(アニル)の息子アルジュン(アニル)は、都会育ちの娘ミーナー(ラヴィーナー)を娶る。しかし、かつて村娘をレープしたことから村八分にされたジャガート(シャクティ)の謀みで手込めにされた女教師の自殺の濡れ衣を着せられてしまう。村の掟を守るためにもダルマラージは、アルジュンとミーナーを村八分にするが…!!
Revie-U
ソフィスティケートが売りのボリウッド映画において、現代だか中世だか判らぬ農村に君臨するタークルの物語とは実に珍しい。
しかし、アニル・カプールが実の父(妻は大女優レーカー)と息子、そして父の青年時代と一人二役半を演じ、村の催しであるラーティー・フェスティバル(棒術大会)でアニルの戦いぶ、どこかで聞いたような擬音、絢爛豪華に飾られた象まで登場、極めて「ムトゥ」的世界が展開…。
と思いきや、息子の醜聞に思い悩んだダルマラージが見上げる先代大旦那の肖像画はなんと、大袈裟に脚を組んで玉座に座り、彼方を強く指差し、苦々しく葉巻をくわえる白髭ボサボサ頭のその姿! またもアニルの一人芝居どころか、なんと登場するはラジニーカーントその人であった。
ボリウッドの映画雑誌等では、ほとんど黙殺されているラジニーカーントだが、やはり彼の影響は多大であった。24分ほどの特別出演ながら、ボリウッドの面々が出演するヒンディー映画をコリウッド化させてしまうとは。もちろん、葉巻を投げくわえる、ショールを肩にかけ直すなどケレン味たっぷりの擬音も健在。意外にも、不服のある村人に背後から銃殺されてしまう。無論、死ぬ間際も肩にショールを掛け直すのを忘れない。自身のタミル映画主演作をセーブしていながらヒンディー語映画に出演していたとは。
さて、荒唐無稽な擬音だけでなく、非ボリウッド的農村の慣習も色濃く見て取れる。本作に登場するタークルは、「女盗賊プーラン」Bandit Queen(1994)でも横暴を極め下層カーストから恐れられていた支配カースト。イコール女好きと相場が決まってるらしく、シャクティ・カプール扮するタークルが村娘を手込めにしてしまう。この処断をラジニーカーント扮する先代大旦那が村のパンチャヤット集会で両者を結婚させる定めを下す。これは異カースト婚(しかも男が下層の嫁を娶る逆毛のプラティローマ)で深い憎悪を買い、20年後でさえ彼の家からは乞食も托鉢を断っているほどだ。
一方、ラヴィーナー・タンダン演じる都会育ちの嫁は村の伝統を迷信とばかり無視する不作法者として描かれ、ひとつひとつ伝統に悔い改めてゆく。古い女に見えた姑レーカーが「エクシュキューズ・ミー! 私も大学を出ているけれど、自分たちの国の文化には敬意を表して従っているわ!!」とバリバリの英語で嗜めるシーンは圧巻。
ラストは村八分にされたアルジュン(アニル)の濡れ衣も晴れ、ショックの余り発作で倒れたダルマラージ(アニル)に代わって、アルジュン(アニル)が家督を継いで大旦那になるという、まさにパワフル・サーガ。
無類の女好きの父親(サダーシヴ・アムラープルカル)を持ったために嫁探しで苦労する(何しろ縁談の相手を父親が掻っ攫ってしまう)村のタークルを演ずるパレーシュ・ラーワルも二役で瞼の母に再会と、大いに笑わせてくれる。
*追記 2011,04,03
サブタイトルは「A Powerful Saga of Emotions」。
例によってタミル映画「Nattamai」(1994)のリメードとのこと。
似たような農村地主物で主演の父子Wロールでは、ボリウッドの帝王アミターブ・バッチャンの「Sooryavansham」(1999)があり、こちらはタミル映画「Suryavamsam」(1997)が原版で、テルグやカンナダ映画にもリメードされている。