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Hello Hum Lallann Bol Rahe Hain(2010)#231

2011.03.25
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Hello Hum Lallann Bol Rahe Hain「Hello Hum Lallann Bol Rahe Hain(ハロー、おいらラーッランだけど)」★★★★
ハロー・ハム・ラーッラン・ボール・ラヘー・ヘィン

製作:ナズィム・リズヴィ/脚本・監督:ディリープ・シュクラー/撮影:タパン・K・バス/作詞:M・アズィム、Dr.ブルニーシュ/音楽:ウィスパリング・メロディース、7&G、ヴィジャイ・ヴェルマー、ラヒーム・シャー/背景音楽:スレンドラ・ソーディー/美術監督:アーシーシュ・A・レーヌデー/スリル:コゥーシャル-モーゼス/編集:アシュファークィー・マクラーニー

出演:ラージパル・ヤーダウ、プリーティー・メーヘラー、マクランド・アナースプレー、ケートキー・ダーヴェー、マノージ・ジョーシー、ラヴィ・ジャンカル、ガンシャーム・ナイク、スニール・レーガ、ボーミー・ドーティーワーラー、T・K・チョウダリー、シャバーナー、ヴィッキー・セーティー、D・V・ジャングラー、アブヘイ・バールグワー
ゲスト出演:アヌラーグ・パーンディー、アズィーム・リズヴィ

公開日:2010年1月15日(日本未公開)

STORY
ムンバイーの高級住宅街ローカンドワーラーで警備員の職を得たラーッラン(ラージパル)は日夜、職務に誇りを持って務め、田舎に残した恋人サロージャー(プリーティー・メーヘラー)との結婚を夢見る。しかし、彼女に縁談が持ち上がり、公衆電話から長距離電話をかけるしか手がないラーッランは四苦八苦し…。

Revie-U
Jungle(2000)の鬼氣迫るゲリラ役でScreen Awards 敵役賞を受賞しながらも、冴えない小男というルックスからコメディアンへの移行を余儀なくされるかに思えたラージパル・ヤーダウ「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho (2003)のビデオ店員役も同様で、しばしばシャー・ルク・カーンのパロディーも演じている。

しかし、小さな身体に秘められた役者としてのパワーは隠しきれない。場末のバー・ダンサーを支えたChandni Bar(2001)、スターになる夢を抱いた幼馴染みを後押しする「Main Madhuri Dixit Bana Chahti Hoon(私はマードゥリー・ディクシトになりたい)」(2003)などの助演で存在感を発揮し、アート系「Forgotten Showers」(2005)でメインリードに昇格、原案を兼ねた「Main, Meri Patni…Aur Woh!(私と私の妻と、それに奴!)」(2005)で主演を獲得。以後、「Ladies Tailor」(2006)等、マイナー映画ながら主演作がぽつぽつと作られてゆくようになる。

本作は、「Undertrial(拘置所)」(2007)でスラムドッグ$ミリオネア(2008)とはひと味違うインド社会の暗部を切り取った製作者ナズィム・リズヴィが引き続きラージパル主演で制作した心温まる一篇。

役どころは、都会に出ては翻弄され、路上生活者になりかけるも警備員の職を得る「Y.M.I Yeh Mera India(これが我がインド)」(2009)のスピンオフ的キャラクター。
ラーッランは小さいながらも正義感あふれ、上司からも信任の厚い。田舎に恋人サロージャーを残し、ビルの屋上で寝起きしながら警備員の仕事に誇りを持って臨む。街の人々と接する最前線である警備員だけに物売りなど多彩な人々に出会う市井の暮らしぶりやモバイル(携帯電話)を持てない庶民の生き様を丁寧に描き、バブリーな海外志向が強かった最先端ボリウッドとはひと味もふた味も違う大衆食堂の味わいが心に染みる。

中でも印象的なのは、寝泊まりするビルの住人で無愛想な男が妻を失った哀しみから子供たちを顧みずに泣かせていると知るや、毎朝、屋上で新聞を読む男の前で見えない扉に鍵を掛けて出かける。
ある日、そのことを問うた男に「おまえは見えるはずの家族を見ていないだろ!」と一喝。心を入れ替えた男は町角の屋台で子供たちにアイスクリームを食べさせ、通りがかったラーッランにも快く奢るようになる。

サポーティングは、ラーッランの上司ティワリにアート系映画でキャリアを積み、アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映されたシャーム・ベネガル監督作「Welcome to Sajjanpur」ようこそサジャンプルへ(2008)で選挙に立候補するヒジュラーを演じ涙を誘ったラヴィ・ジャンカルを配役。
村に残した妻と子供に仕送りを怠り、酒場に入り浸っている部下を一喝しては諭す温情溢れる様がよい。

ラーッランと喧嘩した縁で親友となり、友が困窮するや自分のオートリクシャーを売り払うことも厭わないガネーシュ役が、製作も兼ねた「Gallit Gondhal Dillit Mujara」(2009=マラーティー)で主演するなど地元映画で活躍する道化役者マクランド・アナースプレー
(ラーッランが田舎に長距離電話して取り次ぐ少年パップーは彼の実子?)

働き者のラーッランを氣に入り、行かず後家の妹の縁談を持ち出す電話屋兼総菜屋の女主人ハンサーが「たとえ明日が来なくても」でサイーフ・アリー・カーンの母親を演じていたケートキー・ダーヴェー
グジャラーティー・キャラクターで売り、本作でも「グジャラートでは、どんな人も縁があったからには離れることはない」との諺(ことわざ)台詞が用意されている。

ラーッランの恋仇となる男の父親役にマノージ・ジョーシー。マイナー役者からプリヤダルシャン組となりKyon Ki…(なぜならば…)」(2005)の警備員役、Bhool Bhulaiyaa(迷宮)」(2007)の家長役などで常連出演。

ラーッランが田舎に残した恋人に長距離電話をすると電話口に出てはボケて長話をした挙げ句、通話を切ってしまう老人役にMunna Bhai Bhai MBBS(ムンナー兄貴MBBS)」(2003)でキャランボード老人を演じたボーミー・ドーティーワーラーが登場。

また、歓声の芝居をするエキストラに投げキスを送る若手映画スター役でご丁寧に「ゲスト出演」とクレジットされているアズィム・リズヴィは製作者ナズィム・リズヴィの息子と思われる。

ヒロイン、サロージャー役のプリティー・メーヘラーは、サヤージ・シンディーらとの濃厚なメイク・ラヴを演じたホラー映画「Rathri」(2009=テルグ)を経て、本作がヒンディー映画デビュー。
ボリウッド女優としては垢抜けないが、それなりに愛らしく好感が持てると言えよう。

C級マイナー映画ながら、ウィスパリング・メロディースらのフィルミー・ソングは軽快で耳に馴染む。
背景音楽担当のスレンドラ・ソーディーは、Deewana(恋狂い)」(1992)、Raja Hindustani(1996)などメジャー映画を手がけるが、ボビー・デーオール主演「23rd March 1931:Shaheed(殉教者)」(2002)をピークに年々マイナー落ちしているのが氣がかり。

そして、脚本・監督のディリープ・シュクラーは、年間1位Ghayal(傷ついた者)」(1990)やアーミル・カーンサルマーン・カーンのドタバタ・コメディ「Andaz Apna Apna(俺の流儀)」(1994)の台詞などを手がけ、アクシャイ・クマール主演のアクション物「Police Force」(2004)で監督デビュー。かのDabangg(大胆不敵)」(2010)にも脚本家として参加。
「Undertrial」同様、これまた低予算C級映画程度の制作規模でキャメラのポジション・ミスなどはあるが、志は一流。相談に訪れたラーッランに男やもめの上司が真鍮の水差しに入れた熱いミルクを首にかけたスカーフで掴みながら注ぐ演出に情愛深い目線が感じられる。

経済急成長に湧いたひと山を越え、人々が古き良きインドを振り返る時、そこに逞しく生きるラージパルの姿がある。
振り返って日本も今回の東日本大震災により人と人とのつながりが尊ばれている。氣骨ある市井の主人公と住民が織りなす人情劇が見直されることだろう。

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