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Mumbai Meri Jaan(2008)#228-3

2011.03.18
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Mumbai Meri JaanMumbai Meri Jaan
(ムンバイー、我が命)
★★★★☆
ムンバイー・メーリー・ジャーン

製作:ロニー・スクリューワーラー/監督:ニシカント・カマト/原案・脚本・台詞・作詞:ヨーゲーシュ・ヴィナヤク・ジョーシー/脚本:ウペンドラ・シダーイー/撮影監督:サンジャイ・S・ジャダーヴ/音楽・背景音楽:サミール・パテルペーカル/プロダクション・デザイン:マヘーシュ・サルガオンカル、ダナンジャイ・モーンダル、パリマール・ダース・ポーッダル/衣装:サチン・ローヴァレーカル/VFX:Tata Elxsi/音響設計:サンジャイ・マゥーリヤー、アルウィン・レーゴー/アクション:ジャーヴェード-アエージャズ/編集:アミット・パワル

出演:パレーシュ・ラーワル、K・K・メノン、イルファーン、R・マダヴァン、ソーハー・アリー・カーン、ヴィジャイ・マゥールヤー、サクシャーム・ダイマー、スミター・ジャイカル、ディヴヤー・ジャグダレー、シュリーヴァラブ・ヴヤス

公開日:2008年8月22日(日本未公開)/135分
Filmfare Awards:脚本賞、編集賞、批評家選作品賞
Screen Awards:音響設計賞
リヨン新世代映画祭:作品賞

*不安を煽る文面はありませんが、氣分が優れない場合はページを閉じて様子を見てください。

STORY
2006年7月11日18時24分~35分、帰宅時間で混み合ったムンバイー郊外線。行き交う7つの列車で連続爆破テロが次々と発生。乗り合わせた、あるいは爆破現場に遭遇した登場人物たちは事件のショックから心が激しく揺さぶられ、壊れつつも、やがて街に暮らす人々との関わりから再生してゆく…。

Revie-U
東日本を襲った巨大地震と記録的な大津波という震災を連続で受けながらも日本では略奪や暴動が起きなかったと国際的な賞賛を受けているが、これはやはり日本国内に宗教・民族・人種間の闘争問題を元々抱えていなかったことも大きいだろう。

コンピューター・セールスマンのスレーシュは、連続爆破テロを仕掛けられた列車には乗車していなかったものの、被災現場を目の当たりにした衝撃から心を壊し、ムサルマーン(イスラーム教徒)を敵視しては日増しに自警化してゆく。

演ずるK・K・メノンは、とりあえず筋肉が不可欠の若手ボリウッド俳優とは異なり、痩せぎすで神経質な顔立ち。それでいて実に個性的なチャームを発揮する。根津甚八から多少ギラつきを削いだ存在感とでも言おうか。
1984年12月3日、マディヤ・プラデーシュ州ボーパールの米ユニオンカーバイド系列化学工場で殺虫剤用の有毒ガス事故が発生し多くの犠牲をもたらした実話映画「Bhopal Express」(1999)で頭角を現し、「Hazaaron Khwaishein Aisi(こんな幾千の希望)」(2003)や「Black Friday」(2004)などでニューストリーム系を主舞台とし、メジャー作品では米「大脱走」の翻案「Deewaar(壁)」(2004)やラーム・ゴーパル・ヴァルマー版「ゴッドファーザー」でジェームズ・カーンを意識したかのような配役「Sarkar(親分)」(2005)で浮上。現代インドにおける都会の不倫事情を描いた「Life in a…Metro(大都会)」(2007)で注目を集めた。

Mumbai Meri Jaan

(c)UTV Motion Pictures, 2008.

犯人探しのターゲットとなったのは、ヒンドゥーのボンクラ仲間とたむろしていた茶屋で見かけたムサルマーンのユーシフ。ちょうどテロ事件の直前、茶屋に入って来たユーシフが後から血相を変えてやって来た男と飛び出して行ったの見て不審に思っていたのだ。

疑心を深めるスレーシュは、仲間を引き連れてムサルマーンの多く住む地区へ潜入し、ユーシフの実家を訪ねるまでに至る。老いた母親は息子の消息を知らず、この数日出て行ったきりだと解り、さらに疑惑を強める。

ある日、スレーシュはユーシフの友人を街で見かけ、仲間とバイクで尾行する。
その男はアラビア海に浮かぶハッジ・アリー・ダルガー(聖者ハッジ・アリー廟)へと向かい、恋人と落ち合う。単なるデートであったが、スレーシュは女テロリストとの秘密連絡と捉え、監視を続ける。
そこでスレーシュに声をかける男がいた。新しいビジネスを立ち上げた知人が50~60台のコンピューターを欲しがっているから調達して欲しいとの話を受ける。
すぐ名刺を握りつぶすスレーシュであったが、実は職を失って久しく、借金取りから執拗に圧力がかけられていたのだった。

ナチスのTシャツを着ては、ペットボトルに詰めて売られた安酒を煽って夜道をふらつくスレーシュを諭したのは、護送車で巡回中の平警官トゥカラームであった。
テロが起きた晩も、通りで仲間と安酒をかっくらっては荷を積んで自転車を押すムサルマーンの老人を問い詰めていたスレーシュを咎(とが)めたのもトゥカラームであり、護送車の中でヒンドゥー/ムサルマーンの共生について説いて聞かせる。

Mumbai Meri Jaan

(c)UTV Motion Pictures, 2008.

こうして、スレーシュは、自分が原理主義の父親から偏った考えを植え込まれていたことに氣づく。
さらに彼が義憤を強め右傾化して行った背景には、自身が職を失い借金苦を抱えるストレスからであった。
そう悟った時、雨が降り出す。ボリウッド映画では多くの場合、恋の始まりに雨が降るが、ここでも天からの祝福を意味する。

この後、スレーシュの人生は好転する。ダルガーで会ったムサルマーンの仕事場を訪ねると、発注がまとまり、支度金まで得ることが出来た。
馴染みの茶屋へ行き、ツケを返して、ウエイターの少年にまでチップを与えていると、そこへユーシフがやってくる。そしてスレーシュにマッチを貸してくれ、と声をかけ、この数日、シルディーのサイババを詣でていたと、そのプラサード(供物)をスレーシュに差し出すのだ。

北インドで広く信仰され、ボリウッド映画でもしばしば見られるシルディーのサイババは、ムサルマーンともヒンドゥーとも判然としない聖者。両者の違いを超え、人々に様々な奇跡を示した。
スレーシュが立ち直るきっかけとなった大口の発注話がもたらされたダルガーもまた、スーフィー聖者を祀るイスラーム廟であり、その功徳を求めてヒンドゥーも詣でる聖地であり、あれほど敵視していたムサルマーンに導かれて再生したと言えよう。

Mumbai Meri Jaan

(c)UTV Motion Pictures, 2008.

やがて、スレーシュの仲間がやって来て、当たり前のようにユーシフと同席しチャイを飲んでいるスレーシュをみつける。
間もなくテロ被害への黙祷が始まり、茶屋の中でも全員起立して黙祷を捧げる。スレーシュは疑いをかけていたムサルマーンの青年たちが悲壮な表情で祈っているのを見、そんなスレーシュをムサルマーンの店主が優しく見守るのだった。

 

災害被害に遭われ亡くなられた方々に謹んでお悔やみを、現在も災害被害に困窮している方々へ心から声援を、また、いち早く平穏が戻りますようお祈り申し上げます。

1:イントロダクション
2:列車に乗るも間一髪助かったニキル(R・マダヴァン)
3:自警化する失業中のスレーシュ(K・K・メノン)
4:経済成長から取り残された下流層のトーマス(イルファン・カーン)
5:テロで婚約者を失ったTVリポーターのルパリ(ソーハー・アリー・カーン)
6:退職間近の平警官トゥカラーム(パレーシュ・ラーワル)
7:バックグラウンド

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