Home » DVDレビュー

Mumbai Meri Jaan(2008)#228-2

2011.03.17
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Mumbai Meri JaanMumbai Meri Jaan
(ムンバイー、我が命)
★★★★☆
ムンバイー・メーリー・ジャーン

製作:ロニー・スクリューワーラー/監督:ニシカント・カマト/原案・脚本・台詞・作詞:ヨーゲーシュ・ヴィナヤク・ジョーシー/脚本:ウペンドラ・シダーイー/撮影監督:サンジャイ・S・ジャダーヴ/音楽・背景音楽:サミール・パテルペーカル/プロダクション・デザイン:マヘーシュ・サルガオンカル、ダナンジャイ・モーンダル、パリマール・ダース・ポーッダル/衣装:サチン・ローヴァレーカル/VFX:Tata Elxsi/音響設計:サンジャイ・マゥーリヤー、アルウィン・レーゴー/アクション:ジャーヴェード-アエージャズ/編集:アミット・パワル

出演:パレーシュ・ラーワル、K・K・メノン、イルファーン、R・マダヴァン、ソーハー・アリー・カーン、ヴィジャイ・マゥールヤー、サクシャーム・ダイマー、スミター・ジャイカル、ディヴヤー・ジャグダレー、シュリーヴァラブ・ヴヤス

公開日:2008年8月22日(日本未公開)/135分
Filmfare Awards:脚本賞、編集賞、批評家選作品賞
Screen Awards:音響設計賞
リヨン新世代映画祭:作品賞

*不安を煽る文面はありませんが、氣分が優れない場合はページを閉じて様子を見てください。

STORY
2006年7月11日18時24分~35分、帰宅時間で混み合ったムンバイー郊外線。行き交う7つの列車で連続爆破テロが次々と発生。乗り合わせた、あるいは爆破現場に遭遇した登場人物たちは事件のショックから心が激しく揺さぶられ、壊れつつも、やがて街に暮らす人々との関わりから再生してゆく…。

Revie-U
ニキルは、ムンバイー郊外の高層住宅に家族と暮らし、郊外線のファースト・クラスで通勤するアッパー・ミドル・クラス。駅付近のケーラーワーラー(路上のバナナ売り)にプラスティック・バッグ(ビニール袋)の影響を問うなど環境意識も高く、日本人が感情移入しやすいキャラクターだ。

演ずるR・マダヴァンは、北インド・ジャルカンド州、ちょうどUdaan(飛翔)」(2010)の舞台となり、プリヤンカー・チョープラーと同じジャムシェードプル出身ながらタミル系とあって、初期は南インド映画界で活躍。本格的なボリウッド進出のヒンディー映画「Rehna Hai Tere Dil Mein(君の心の中に)」(2001)ではこれがデビュー作となるディヤー・ミルザー、セカンド・ヒーローとなるサイーフ・アリー・カーンと共演。
しかし、南インド映画そのままのヒーロー像が北インド市場では受け入れられず、早くも翌年の「Dil Vil Pyar Vyar」(2002)では群像劇の小さな役から再スタート。ヒンディー第3作「Ramji Londonwale(ロンドン暮らしのラームさん)」(2005)では脚本を兼ねるなど、ボリウッド進出には細心の注意を払ったように思える。
そんな彼が3 Idiots」3バカに乾杯!(2009)で年間トップ1ヒット作のメインリード出演を果たしたのも、本作でムンバイーワーラー(ムンバイー市民)を演じた効果が大きいように思える。

ムンバイーセントラル駅から2つ目にあたるローアル・パレール(ローワー・パレル)駅で友人アーシーシュと待ち合わせしていたニキルは、知人バクルに呼び止められる。ビジネス・チャンスのアイディアがあるから10分だけでもぜひ話を聞いて欲しいと、彼が利用するセカンド・クラスへニキルだけ連れて行かれる。
これが運命の分かれ道となった。

ムンバイー郊外線は、日本の在来線が標準としている三六軌間(1067mm)よりぐっと幅広い広軌(1676mm)を採用しているだけあって、横幅の広い車両で大量の乗客を運び、ドアのない乗車口から乗客が溢れながら走る。

ラッシュ時、ニキルが熱心なセールス・トークを聞いているところに妻から電話が入り、「彼にハローと言って」と、ここで妻が身重の妊婦であることが示される。
自家用車を手に入れようと思えば出来なくもないニキルが電車を利用するのは、強い環境意識から。全員がクルマを所有したらムンバイーは機能不全に陥ると、鉄道の利便性を熱く語り返していたその時、列車が爆発。

Mumbai Meri Jaan

(c)UTV Motion Pictures, 2008.

午後6時24分。始発のチャーチゲートから発車した列車はボリウッド・スターも多く住むアップタウンのバンドラを過ぎ、ひとつ先のカール・ロードサンタクルーズの中間地点に差し掛かった時のこと。
この後、わずか11分の間にバンドラとカール・ロード間、ジョーゲーシュワリーマヒム・ジャンクションミラ・ロードバヤンダル間、マトゥンガ・ロードとマヒム・ジャンクション間、ボーリワーリーの6カ所を通過中の列車で連続爆破が起きる。
いずれもファースト・クラスの車両を狙ったテロであった。

人々が行き交う惨状の中、ニキルは線路に座り込み放心する他なかった。
もし、あの時、バクルに呼び止められず、そのままファースト・クラスに乗っていたら…。

自宅へ戻っても恐怖は収まらない。ひとり、シャワーを浴びながら震え込む。
ニキルは身重な妻を案じて事故には遭わなかったとしらを切るが、かえって自分で恐怖を抱え込むことになるのだった。
(今回の東日本大震災の報道映像を繰り返し観たことにより、シャワーを浴びたり、シンクで洗い物をしながら、あるいはポットにお湯を注ぐ込むだけで津波の衝撃がフラッシュバックする人も多いことだろう)

翌日、ファースト・クラスに乗っていた友人アーシーシュを見舞うと、ベッドに横たわった彼は右手を失っていた。
爆破テロへの恐怖は募り、通りで不調なスクーターを乗り捨てオート(リキシャー)に乗り換える男を見れば、それがテロリストに思えてしまう。
夜、自宅で寝ていてもガス爆発に遭う夢を見、日々、恐怖が募ってゆく。
そして、電車には乗ることが出来ないPTSDに陥るのだった。

それまでニキルは自家用車の購入や海外移住をも拒んでいたが、心は揺れ動き、グーグル・アースを眺めては新天地としてアメリカ移住を夢想し始める。
しかし、NRI(在外インド人)の友人夫婦が訪ねて来た折り、9.11以降、アメリカでもテロの心配が起き、世界中どこに住んでいても確実な安全の保証などない、と言い聞かされる。

変化は、爆破テロからしばらく経ったある夕方に訪れた。
妻が産氣づいた知らせが入り、ニキルはタクシーで病院に駆けつけようとする。しかし、夕方のラッシュ・アワーとあって、運転手も早く行きたいのであればと電車を勧める。
意を決して乗るも、間もなく電車は止まる。
不安に揺れるニキルへ隣の客が伝えたのは、テロの被災者へムンバイー全市民が黙祷を捧げるとのことだった。

Mumbai Meri Jaan

(c)UTV Motion Pictures, 2008.

ビニール袋の無駄使いはひとりひとりがやめれば社会が変わると説いていたニキルだが、自家用車の購入や海外移住も消費主義の暴走と捉えた理想主義からどこか頑なでひとり閉じていて、自分の弱さを妻にでさえ明かせないでいた。
そんな彼の心を癒したのは、多くの人々がテロによる痛ましさを共有して受け止めようとする、このムンバイーを愛する心であった。

 

災害被害に遭われ亡くなられた方々に謹んでお悔やみを、現在も災害被害に困窮している方々へ心から声援を、また、いち早く平穏が戻りますようお祈り申し上げます。

1:イントロダクション
2:列車に乗るも間一髪助かったニキル(R・マダヴァン)
3:自警化する失業中のスレーシュ(K・K・メノン)
4:経済成長から取り残された下流層のトーマス(イルファン・カーン)
5:テロで婚約者を失ったTVリポーターのルパリ(ソーハー・アリー・カーン)
6:退職間近の平警官トゥカラーム(パレーシュ・ラーワル)
7:バックグラウンド

関連する記事

タグ: , , , , , , , ,