Ek Rishtaa(2001)#008
Ek Rishtaa (或る関係:愛の債券)/2001 01.08.07 ★★★★
エク・リシター
製作・脚本・監督:スニール・ダルシャン/撮影:サミール・レーッディー/音楽:ナディーム-シュラーワン/詞:サミール
出演:アミターブ・バッチャン、ラーキー、アクシャイ・クマール、カリシュマー・カプール、ジュヒー・チャーウラー、モーニシュ・ベール、アーシーシュ・ヴィダヤールティー、アローク・ナート、シャラート・サクセーナ、シャクティ・カプール、アナン・デーサーイー、シモン・スィン
特別出演:ナグマー、スニール・シェッティー
公開日:2001年5月18日
STORY
ヴィジャイ・カプール(アミターブ)は一代でV・K・インダストリーを築いた大富豪。ビジネススクールで行われた講演に感激したラージェシュ(モーニシュ)はヴィジャイの会社へ入社し、長女プリティー(ジュヒー)を射止める出世ぶり。一方、長男アジェイ(アクシャイ)は組合リーダー、ハリ・シン(アーシーシュ)とトラブルを起こし、経営方針でも父ヴィジャイと対立。独力でIT産業を起こそうとするアジェイは家を出、恋人ニーシャ(カリシュマー)と駆け落ちするが、彼女の父(アローク)にも敵対されてしまう。そんなある日、いわれのない債券者が詰めかけ、V・K・インダストリーは崩壊となる・・・。
Revie-U *結末に触れています。
冒頭の老いたアミターブ・バッチャンが痛々しい。それもそのはず、白亜の豪邸(というより、迎賓館!)が国税局の職員により赤紙を貼られてしまうのだ。一大帝国を誇った主人公の没落は、実際でもボリウッドに君臨し、自社ABCLを倒産せざる得なかった彼自身とオーヴァーラップする。
映画はすぐに回想へと向かうのだが、白亜の豪邸一面を埋め尽くすダンサーたちの群舞(500名は下らない!)でかつての栄華がどれほどだったか示される。
社長令嬢をゲットするモーニシュ・ベールは、長年二番手役に甘んじて来たが、今回はジュヒー・チャーウラーの相手役! もちろん、これは「Hum Saath-Saath Hain(みんな一緒に)」(1999)の長男役が認められた結果である(本作も「HSSH」同様、富豪のジョイント・ファミリーを描いている)。もっとも、前半で誠実な青年像を見せたモーニシュは、後半V・K・インダストリーを「売る」敵役となるのだが、そのへんも含めてモーニシュのキャスティングは成功と言える。
長男アジェイ役のアクシャイ・クマールは今めきめき伸びている旬のスター。抑えの効いた芝居がいいし、富豪の息子ながら自社の工場で社員と同じ制服を着て働く役柄も好感が持てる。
ストーリーがアミターブとアクシャイの父・長男を軸に発展するのでヒロインの見せ場は少なく、特にジュヒーは実生活での妊娠のためあまり姿を見せない(心なしかお腹が大きく見える。出演契約の際には、もっと出演シーンがあったのだろう)。カリシュマー・カプールも、前半は結婚式で知りあったアクシャイに惹かれつつ、ボリウッド・スターと天秤にかけてオチャメなところを見せるものの、後半は再建のため実家に帰ったアクシャイを待つ身で出番は少ない。ちなみにボリウッド・スター役でカメオ出演するのが、スニール・シェッティー。ランクとしてもアクシャイと対等のスニールに、観客は思わずニヤリとするだろう。
普段はアクのある敵役が多いシャクティ・カプールも今回は身内に貢献する伯父役を、「カランとアルジュン」Karan Arjun(1994)のラーキーが珍しく控えめな母親を演じている。組合リーダー役でクセのあるところと「泣き」の芝居を見せるアーシーシュ・ヴィダヤールティーがまたまた男を上げているのもうれしい。なお、ラジニーカーントの「バーシャ」Badsha(1995=タミル)にも出てるナグマーが、お色気ダンサー役でゲスト出演している。
一族を売った夫に対して、なぜジュヒーが妻であり続けるか? 父アローク・ナートに離婚させられたカリシュマーが生んだ子供(男の子)をなぜアクシャイが病院へ乗り込んでまで取り上げてしまうのか? 一族を売った婿モーニシュをなぜアミターブは許してしまうのか? このへんはヒンドゥー的展開なので、日本では理解しづらい向きもあろう。
結局、アミターブが組合の労働者たちが住む下町へ出向き再建協力を懇願。女性たちが身に付けたアクセサリーを提供し、競売にかけられた一族の財産を買い戻されハッピーエンドとなる。極端な貧富の差が存在するインドだが、本作でも労働者は貧しく経営者は巨万の富を手にしている。それでも庶民が富豪を慕うのは、マハーラージャーと領民のシンパシーなのだろう。もっとも現実には映画で描かれるような良き経営者は多くないだろうが。