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Raja Babu(1994)#217

2011.03.03
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Raja Babu

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Raja Babu(ラージャー坊ちゃん) 01.12.30 ★★★☆
ラージャー・バーブー

製作:ナンドゥー・G・トラーニー/監督:デヴィッド・ダワン/脚本:K・バギャーラージ/台詞:アニース・バーズミー/詞:サミール/音楽:アナン(=アーナンド)-ミリン(=ミリンド)/撮影:ラージャン・キナギ/美術:R・ヴェルマン/振付:B・H・タルン・クマール/背景音楽:アマル・ハルディプル/編集:A・ムトゥ

出演:ゴーヴィンダ、カリシュマー・カプール、シャクティ・カプール、アルナー・イラーニー、グルシャン・グローヴァル、プレーム・チョープラー、カーダル・カーン、ディナー・パータク

公開日:1994年1月21日(年間トップ4ヒット!/日本未公開)

Filmfare Awards ベスト・コメディアン賞:シャクティ・カプール

STORY
大旦那キショール(カーダル)の息子ラージャー(ゴーヴィンダ)は、大の写真好き。村の写真屋で美少女マドゥー(カリシュマー)のパネルを見てひと目惚れ。紆余曲折の末、縁談がまとまるが、大学出と思っていたラジャーが文盲と知ったマドゥーは腹を立て、大旦那と奥方ジャンティー(アルナー)と大喧嘩してしまい…。

Revie-U *結末に触れています。
ゴーヴィンダ扮するラージャーは、大地主のボンクラ息子。シャクティ・カプール演じる使用人ナンドゥーをお供に、花を飾り立てたバイク(紅いエンフィールド)でトロトロ出かけてはギャンブルに興じたり、アミターブ・バッチャン主演の映画を観て盛り上がる。

その上、写真好きで屋敷には弁護士姿のラージャー、医者姿のラージャー、警官姿のラージャー、政治家姿のラージャーが額入りで飾られ、マドロスさんの格好をして写真館でコスプレ写真を撮らせたりする。

この写真館でマドゥーの写真を一目見て惚れてしまったラージャーは、ナンドゥーの入れ智慧で新聞に彼女の写真入り投書を載せてしまう。すると怒ったマドゥーが乗り込んで来るのが、なんと馬車仕立て!
ここで悪漢どもと馬車絡みのアクション、父の怒りを買ったラージャーが牛舎係に身を落として…おや、どこかで観たような…そう、これではラジニーカーント主演「ムトゥ」Muthu(1995=タミル)ではないか。

明るい農村的田園風景に繰り広げられる、芝居好きの地主の若旦那と使用人の相棒、馬車のチェイス、主人公が追放され、悪巧みする親戚の敵役が財産を乗っ取ろうとしてラストで許されるなどなど「ムトゥ」でも似通ったシーンがあった。

本作の監督は臆面もなくヒット作をゴーヴィンダ主演でパクってしまうデヴィッド・ダワンであるからして、本作が「ムトゥ」のイタダキと早合点してしまいそうだが、製作年度からすると本家はこちらと言うことになる(もっともマサーラーの定番プロットなのであろうが)。

ただし、主人公の設定からヒンディー圏とタミル圏の違いが見て取れて興味深い。

ボリウッド映画では、「実は親子(兄弟)だった」、「実は双子だった」、「実は生まれ変わりだった」という話はゴロゴロあるが、「ムトゥ」のように「使用人だったけど、実は地主だった」という設定は、記憶にない。

ところが、ラジニーカーントの映画では「アルナーチャラム」Arunachalam(1997=タミル)でもそうだったように、観客が感情移入するにあたって、等身大の主人公が「実は富豪だった」ということで富豪願望が満たされるような氣質がタミル人にはあるように思える(「アルナーチャラム」では、富豪の長男だと思っていたら実は違っていたけれど、本当はもっと大富豪の息子だった、という2段構えになっている)。

当然、富豪願望はヒンディー圏の人々にも見られるが、ボリウッド映画ではもっとストレートで、主人公は初めから富豪として登場してしまうし、「主人公は富豪であって当たり前」というくらい豪勢な生活をしている主人公がほとんどだ。このへんの文化人類学的相違は、まだまだ見識が少ないので課題であるが…。

さて、主演のゴーヴィンダである。現在よりもややスリムで二枚目スターとしての面影(?)を残している。ダンスの上手さも向上中というところか。振付にもブレイク・ダンスが取り入れられるようになって間もない頃だろうだけに、ダンサーたちの動きも対応し切れていない。

ヒロインは、デビュー5年目のカリシュマー・カプール。まだ眉毛も濃く、演技も硬い。しかしながら、マドゥーというキャラクターは、はっきりした自己を持っており、経済開放以後の新しいヒロイン(女性)像とも言えるだろう。

サポーティングは、ラージャーの父親キショールに、キング・オブ・コメディの異名を持つカーダル・カーン。例の野太い声で、地主の大旦那ながら息子中心にきりもりされることを嘆いてみせるのが可笑しい。

日本人の目からするとマザコン母に見えるラージャーの母親ジャーンティー役にアルーナー・イラーニー。そして、ナンドゥー役のシャクティ・カプールは、おかっぱヅラにチョビ髭メイクでFilmfare Awards ベスト・コメディアン賞を受賞。

敵役には、ラージューの父方伯父ラカン役にプレーム・チョープラー、その腹黒い兄弟にグルシャン・グローヴァルが扮している。

デヴィッド・ダワンの演出は、最近のJodi No.1(相棒No.1)(2001)などに比べるとオフビートなテイスト。クライマックスには、掟破りのアクションも用意してある。

なおラストで、敵役の伯父たちが潰されそうになるのを主人公が止めるのは、Asoka(アショーカ王)(2001)でも触れた理由による。

*追記 2011,03,03
>おや、どこかで観たような…
原版は、本作の脚本としてクレジットされているK・バギャーラージャー主演・監督「Rasukutty」(1992=タミル)。
「ムトゥ」が下敷きにしたとされるモーハンラール主演「Thenmavin Kombath」(1994=マラヤーラム)の監督プリヤダルシャンは、リメイドの達人であるから、この「Rasukutty」から思いつき、再びタミル映画に先祖帰りしたことになる。

さて、このK・バギャーラージャーの脚本をヒンディー化し、台詞を手がけたのが、監督作Welcome(2007)などスーパー・コメディでメガヒットを放ったアニース・バーズミー

ボンクラ息子ラージャーを徹底的に甘やかす母親が、同じくマザコン映画Beta(息子)」(1992)のアルナー・イラーニー

ラージャーが割増し料金を払ってアミターブ・バッチャン主演作を上映させるのが、ヤシュ・チョープラー監督作「Trishul(三叉戟)」(1978)。ちなみに、大抵「ブ」と「バ」がつながって「アミター・バッチャン」と呼ばれる。
出世のために身籠もっていた母を捨てた建築業者に復讐する。<怒れる若者>のアミターブが喧嘩のために救急車で乗り付けるアクション・シーンと母の死別シーンが前後入れ替わっているのは、ご愛敬。母役はDelhi-6」デリー6(2009)のワヒーダー・レヘマーン

ラージャーの母親らに結婚を反対されたマドゥーが村の給水塔から自殺すると見せかけ強要するのは、もちろんSholay」炎(1975)におけるヴィール(ダルメンドラ)の裏返し。
また、ラージューがローマ風の衣装に身を包み、馬車でマドゥーを取り囲んだ男たちと戦うのもダルメンドラ主演のメガヒット「Dharam Veer(ダラームとヴィール)」(1977)からの引用。

ゴーヴィンダーは二枚目スターの面影が見て取れ、やたらとジッパーが付いた衣装で見せるブレイクダンスはなかなか。
若きカリシュマーもまずまず。女性プレイバック・シンガー、プールニマーの歌声も愛らしい。

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