Hum Ho Gaye Aap Ke(2001)#209
Hum Ho Gaye Aap Ke(私はあなたのものに) 01.10.17 UP ★★
ハム・ホー・ガイー・アープ・ケー
原案・脚本・監督:アハティアン/台詞:スニール・クマール・アーガルワル/撮影:ラヴィ・ヤーダウ/音楽:ナディーム-シュラワーン/詞:サミール/背景音楽:カールティク・ラージャー/振付:サロージ・カーン他
出演:ファルディーン・カーン、リーマー・セーン、アプルワ・アグニホートリー、スレーシュ・オベローイ、スマン・ランガーナタン、サダーシヴ・アムラープールカル、アリー・アスガル、ニーナー・クルカルニー
ゲスト出演:マヘーシュ・タークル
公開日:2001年8月3日(日本未公開)
STORY
富豪の息子リシ(ファルディーン)は、片時もアルコールと煙草を離さない快楽主義者。雇い入れた学友モーハン(アプルヴァ)を連れ立って出かけたビューティー・クィーン・コンテストで受賞したチャンドゥニー(リーマー)を見初める。一方、純朴なモーハンも彼女に惹かれ、しばしばデートを重ねるが、思わぬことから彼女が年上のマンディープ(マヘーシュ)と結婚しなければならなくなる。モーハンに泣きつかれたリシは駆け落ちを嗾け、結婚式の最中からチャンドゥニーを連れ出す。しかし、モーハンの家族は大反対。クールな現代娘のチャンドゥニーは、必然的にリシの豪邸に厄介となる・・・。
Revie-U *結末に触れています。
オープニング・タイトルバックは、巨大な人間チェス。カクテルを口に流し込み、美女の駒を動かすファルディーン・カーンをホットヘッド・クレーン(リモート・コントロール・クレーン)による回転画面がとらえる。これはファルディーン扮するリシのキャラクターを表しているのだが、コカインで捕まったファルディーン本人に重なって思えてならない。
ヒロイン、リーマー・セーンは、1980年代に活躍した美人女優ムーン・ムーン・セーンの娘。デビュー作の登場シーンが、いきなりビューティー・クィーン・コンテスト授賞とは思い切った設定だが、「G.air(除け者)」(1999)でもラヴィーナー・タンダンが<オール・インディア・ダンス・コンテスト>という突拍子もない賞で優勝していたのに等しい(苦笑)。
2000〜2001年に掛けて新人デビューのラッシュ・イヤーであったが、「Mohabbatein(幾つもの愛)」(2000)のシャミター・シェッティー、キム・シャルマー、プリティー・ジャンギアーニー、「Tum Bin…(君なしでは…)」のサンダーリー、「Pyar Ishq Aur Mohabbat(恋、ロマンス、そして愛)」の準新人キルティ・レッディー…皆一様に美形でスタイルも整っているものの個性に欠け、プリティー・ズィンターやアミーシャー・パテールのデビュー当時と比べると小粒。リーマーも例によって踊れないものの、他の新人よりはまだマシと言える。図太いものを持っていそうなので、案外化けるかもしれない。
前半、快楽主義のリシに対し、誠実な印象でヒロインの氣を引くモーハン役は、「Pardes(他国)」(1997)でデビューしたアプルヴァ・アグニホートリー。我儘で利己的なNRI青年という本作でのリシに通じるキャラクターを演じていた。その後、4年間で3作品に出演し、硬かった演技も柔らかくなり、表情も豊かになっている。
モーハンはリシの計らいで駆け落ちすることになるが、そんなことをされては妹が嫁に行けなくなると家族に反対され、結婚式から抜け出して来たチャンドゥニーからも拒絶され、家族全員で泣きじゃくるという情けなさ過ぎるエピソードとなる。このローワー・ミドル・クラスという役柄がはまり過ぎていて、演技というよりは骨の髄まで染みているようにも感じられる。演技も地味過ぎるため、氣のよい泣き落とし専門役者になるのではないか、と思ってしまう。
リシの父親オベローイ役は、「マニカの不思議な旅」(1989=仏)、ボビー・デーオール主演「Soldier」(1999)の名優スレーシュ・オベローイ(ヴィヴェーク・オベローイの父)。
この父親は片親のためにリシを放任、溺愛し、彼を無節操のアル中に育ててしまい、今なお彼を叱れないで「よき父親」像を見せる。普通、厳格なインドの家庭では年配者の前で喫煙、飲酒は禁じられているのだが、リシは朝のジョギング後からウイスキーを運ばせてしまうのだ。この父がリシの頼みから、未婚の女性をゲストとして自宅に逗留することを許し、息子に乞われて彼女に縁談を持ちかけさえする。
もっとも演技力豊かなスレーシュだけあって、この父親がチャンドゥニーが結婚を断って家を出てゆくことを見透かせしていて、聡明な彼女に自分の息子は相応しくない、と考えていることを無理なく肉付けしている。
ちなみに冒頭でスレーシュとファルディーンがモバイル(携帯電話)で話ながら自宅の豪邸で出会すのは、スレーシュ出演「Safari」(1999)でジュヒー・チャーウラーとタヌージャーがすでに芝居済み。
南インド産ヒット作のリメイクが流行で、すでに10本近い作品が製作中であり、本作もタミル映画「Gokulathil Seethai」の焼き直し。カンナダ映画でもリメイクされたそうなので、オリジナルはかなりの秀作だったのだろう。
ところが本作は、花婿が妹と結婚できれば本来の花嫁であるチャンドゥニーを見逃す、結婚式から抜け出した娘を母親が探さない、などボリウッド・レビューでもこじつけだと評されていた。
監督のアハティアンは新人ではないが、脚本演出共に冴えない。後半、オベローイに恩義を感じ、アルコールに溺れたリシにも心情を移し始めたチャンドゥニーが一族の会社に就職面接に出かける。少しでも役に立てば、ということだろうが、そこには愛想を尽かしたモーハンも働いているということは十分承知のはず。恋愛感情の行き違いから観客をヤキモキさせたいのだろうが、前半はリシが快楽主義過ぎてネガティヴ、後半は感情移入していたモーハンが貧し過ぎる現実を見せつけられており、展開を受け入れにくいのが難。
エンディングは、クマール・サーヌーの歌う「der se hua」をバックにチャンドゥニーが修道院に身を寄せ、失意のリシが彼女を探し続けるというもの。数ヶ月後、ふたりは電車に乗りあわせ、先に氣付いたチャンドゥニーが窓際の席に移る。そのためにホームに降りたリシが彼女に氣付き、再び電車に乗り込んで長々と告白。遂に彼女も泣きながら彼への想いをぶちまける。
ここだけトーンが異なり、よく出来ているので、おそらくこのシーンはオリジナル版そのままの演出だろう。ヒンディー版ではキャラクターや脚本の不始末で改悪されてしまったようだが、オリジナルやカンナダ版がどうのような作りだったのか、多少氣になるところだ。
その他、サダーシヴ・アムラープールカルがよき伯父役、チャンドゥニーの花婿役に「Hum Saath Saath Hain(みんな一緒に)」(1999)のマヘーシュ・タークルが、ちょっとハズシたコメディ・リリーフに「Joru Ka Ghulam(情熱の奴隷)」(2000)でゴーヴィンダに手玉に取られたアリー・アスガルが出演。
音楽は、ナディーム-シュラワーン。「Mujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って!)」(2001)のスマン・ランガーナタンがリシのガールフレンド役でセクシー・ナンバル「re mama」を披露。「Dhadkan(鼓動)」(2000)でのマヒマー・チョウドリーを彷彿とさせる。なぜかファームハウスの新婚管理人が濃厚なダンス・シーンを見せる「hum ho gaya aap ke」は、野性味あふれるリシ&トーラーによるもの。本編とはフィットしているとは言い難いが、クマール・サーヌーとアルカー・ヤーグニクの2ヴァージョンある「der se hua」も、さわやかでよい。
興行的には公開日が重なったアルジュン・ラームパールのデビュー作「Pyaar Ishq Aur Mohabbat」同様、低迷。無残な4週間を続けた。
*追記 2011,02,23
>1980年代に活躍した美人女優ムーン・ムーン・セーンの娘
…ではなくて、ムーン・ムーン・セーンの娘は「The Japanese Wife」(2010)のライマー・セーンが姉。妹が「Jhankaar Beats」(2003)のリヤー・セーン。祖母がディリープ・クマール主演のモノクロ版「Devdas(デーヴダース)」(1955)でアイシュワリヤー・ラーイと同じくパローを演じたベンガリー(ベンガル語)映画界のスチトラー・セーン。
「セーン」は、スシュミター・セーンなどベンガル系の名前。
この時期、本作のリーマー・セーン、ライマー・セーン&リヤー・セーン姉妹、「Dhoom(騒乱)」(2004)で一時浮上したリミー・セーンなど続々登場。ただし、生き残ったと言えるのはライマー・セーンくらいか。
>リーマー・セーン
ボリウッド(ヒンディー映画)は本作がデビュー作となるが、実質デビューは「Chirram」(2000=テルグ)で、2001年はテルグ/タミル合わせて3本出演。
結局、ボリウッドでは芽が出ず、南インド映画界を活動の場とするが、忘れた頃にプリヤダルシャン監督作「Malamaal Weekly」(2006)で訳ありの悩ましさを讃えるヒロインとして復帰。その後もマイナー作品ではヒンディーにも出演している。
ストーリーからして「Devdas」からインスパイアしたと思われる。
また、役名リシは劇中「リシー」、チャンドゥニーは「チャンニー」と発音されている。