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Tum Bin…(2001)#208

2011.02.22
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Tum Bin...

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Tum Bin…(君なしでは…)01.10.04UP ★★☆
トゥム・ビン…

製作:ブシャーン・クマール、クリシャン・クマール/原案・台詞・監督:アヌバーヴ・スィナー/脚本:シャーシャンク・ダーブラール/撮影:ヴィジャイ・アローラー/音楽:ニキル-ヴィネイ//背景音楽:バブルー・チャクラワルティー/振付:レモ

出演/プリヤンシュー、ヒマンシュー、サンダーリー、ラーケーシュ、ヴィクラム・ゴーカーレー、ラージェーシュ・ヒルジー、ラジェンドラ・グプタ、ナヴニート・ニシャン

公開日:2001年7月13日(日本未公開)

STORY
ムンバイーのパーティーで知りあったシェーカル(プリヤンシュー)アマル(ラーケーシュ)。だが、帰り道、シェーカルは道路に飛び出して来た少女を避け、タクシー待ちしていたアマルを撥ねてしまう! その場を離れたシェーカルだが、自責の念に駆られてトロントにあるアマルの実家を訪ねる。罪滅ぼしのために、彼の事業シャー・インダストリーで働こうとするが、閉鎖寸前の会社には後処理を任されたフィアンセのプリヤー(サンダーリー)ひとり。再建への道のりを歩み始めた矢先、出資先の御曹司アビー(ヒマンシュー)がプリヤーを見初めてしまう。罪悪感を持ち続けるシェーカルが身を引こうとするが、すでにプリヤーも彼を意識していた…。

Revie-U *結末に触れています。
2001年夏の傾向は、新人映画が続々とリリースされたことにある。2000年公開のMohabbatein(幾つもの愛)を含め、これらの新人映画からリティク・ローシャンカリーナー・カプールアミーシャー・パテール級のスターは生まれていないが、ボリウッドはスターダムの変革期に来ていることは間違いないだろう。

さて、本作の監督はミュージック・ヴィデオ出身のアヌバーヴ・スィナー(=シンハー)。オーディションで新人4人を選び、カナダ・ロケ前2ヶ月リハーサルを重ねたと言う。

主役のプリヤンシューは、ジェフ・ゴールドブラム似。ボリウッド・メジャー作品には珍しい、暗い、沈欝な役どころであるが、アクが強くなく、誠実さを感じさせる芝居だ。ダンスもそこそこいける。平坦なストーリーながら観ていられるのは、プリヤンシューのゴールドブラム似によるところが大きい。

ライヴァル役のヒマンシューは、オープニング・タイトルバックのイントロデュースで最初に顔見せするが、登場は後半から。もったいぶった二枚目タイプで、役柄もステレオタイプのため、個性が感じられない。

すぐに死んでしまうアマル役のラーケーシュは、映画で見る限り一番年下に見え、ロマンティックなタイプではない。

ヒロインのサンダーリーもオーディションで選ばれた新人であるが、モデル顔で、見方によっては表情がきつく、声も子役のようなソプラノとあって、大会社の再建を任されるには少々荷が重い。ダンスもバックダンサーと編集に負っている。

かつては、インド映画の女優と言うと愛くるしい輝きに溢れていたが、最近の新人女優は押し並べて表情に乏しいのが氣になる。経済改革により消費社会を突っ走るインドも、日本のように愛情を注がれずに物だけ与えられて育つようになったか?と勘ぐってしまう。

贖罪から恋愛に発展するストーリーは、ラージェーシュ・カンナームンターズミーナークマーリー主演「Dushman(敵)(1971)が下敷きと言われる。我が日本映画でも若かりし加山雄三が外国人ブローカーにゲイシャガールを接待するため箱根に向かう途中で人身事故を起こし、その許しを乞ううちに未亡人司葉子と静かに激しい恋に落ちてしまう「乱れ雲」(1967=東宝)という成瀬巳喜男監督の名作もある(余談だが、日本の経済成長の陰には半ば公然とした買春接待があったのだ)。

さて、本作であるが、冒頭、前途洋々に見えたシェーカルの人生が路地に飛び出した少女を避けるためとは言え、結局、人を撥ね、死に到らしめてしまうのはショッキングだ(しかもフレッシュなはずの新人映画で!)。呆然となるシェーカルに、乗り合わせた友人が「警察に捕まるとやっかいだ。早く逃げよう!」と唆す。いくら消火栓を倒して水飛沫で前方が見えなかったとは言え、事故っておいて主役が逃げてしまうのは大いに問題アリだが、拷問で名高いインド警察の実情からすると、大抵逃げてしまうのだろう(また逆に、人を撥ねると群衆に殴り殺される、とも言われる…)。

この時、息絶えたアマルの携帯電話が鳴る。シェーカルがそれを取ると、フィアンセであるプリヤーからの電話で、彼女は開口早々に詩を朗読し、虚脱したシェーカルの耳に刻まれるのだ。彼が逃げ帰りながらも贖罪の意識に目覚めるのは、やはり「女の声」を聞いたからにほかならない。

警察へ自首することはなかったシェーカルだが、さすがに金持ちの息子だけあって、トロントのアマルの実家を訪ねる。彼の父親(ヴィクラム・ゴーカーレー)に、自分がアマルを轢き逃げしたことを告白するのだが、父親は息子の死で放心状態となり、誰の言葉にも反応しなくなっていた。

ヴィクラムは、公開順では後になるYeh Raaste Hain Pyaar Ke(愛の道標)(2001)でも息子が轢き逃げに合う父親役であり、事故のショックで記憶を書き違えるのは新妻のマードゥリー・ディクシトであった。

シェーカルはパーティーの席でアマルと知りあい、「カナダに来たら、うちの会社で働いてくれ」と口約束を交わしていた。その約束を誰も知る由もないが、シェーカルは献身的に働こうと決意してシャー・インダストリーを訪ねる。

ところが、(アマルの死もあって)会社は倒産寸前。すべての社員をリストラしたばかりで、フィアンセの死に打ちひしがれながらも残務処理をするプリィヤが独りいるだけ。最初は相手にされないが、シェーカルは連日詰めかけ、なんとか居座ってしまう。こう言うと、シャー・ルク・カーン的ノリに思われそうだが、映画のトーンは淡々としており、シェーカルの誠実さが遺族にも受け入れられたわけだ(もっとも、彼がアマルを轢き逃げした件は誰も知らない)。

こうしてインタルミッション(休憩)までにシェーカルとプリヤーの心が秘かに信頼でつながってゆくのだが、後半、アビーが現れ、出資がらみの横恋慕を入れる。アビーのキャラクターは西洋社会の悪癖を身に付けた遊び人と言うもので、Pardes(他国)(1997)でのマヒマー・チョウドリーのフィアンセとなったアプルワ・アグニホートリーそのままというステレオタイプ。後半、退屈に思えて来るのは、未熟な演出とヒマンシューの華のなさによる。

シェーカルは罪の意識に耐えきれず、シャー・インダストリーの合弁に賛成し、プリヤーの下から去ろうとする。失意のプリヤーはよく考えもせず、アビーから婚約の申し出を受けてしまうが、空港までシェーカルを追う。彼はそれでも旅立とうするが、思い直して飛行機から降りるとパトカーがやって来て、轢き逃げ事件を捜査しているインドの警部が彼を拘束する。

実はこの警部、前半で轢き逃げ事故を担当するが、署長から「轢き逃げ事件など放っておけ」のひと言を喰らっていたのだ。彼は意地でも犯人を見つけ出してやろうという魂胆なのだが、そのためにトロントまでやって来るのは少々無理がある。その上、警部はシェーカルを追及するわけでもなく、一緒にバーで酒を飲む。

ひどく酔っぱらったシェーカルは、婚約パーティー中のプリヤーに電話を掛け、すべてを告白する。しまいには例の詩を暗唱し、遂にプリヤーは泣き崩れる。この時、酔って道端から電話していたシェーカルは道路にはみだし轢かれてしまうのだ! 因果応報というやつだが、プリィヤーも電話中に2度も相手が事故に遭うとは不運を招く女である。

ここで、警部が「実は、シェーカルが少女を避けて消火栓を倒した時、水飛沫で見えなかったが、すでにアマルは何者かに殺された後であった。犯人はシェーカルではない!」と言うのではないか、と予想していたものの、さにあらず。警部は危篤中のシェーカルを思うみんなの氣持ちに絆され、容疑者リストから彼の名前を削除してしまうのだ(う〜む、それでは何の解決にもならないし、他に冤罪が発生するかもしれない…)。

エンディングも中途半端で、監督アヌバーヴ・スィナーの意図するところは見えにくい。撮影中も統制に変化があってようで、冒頭、シェーカルのフラットなどソープオペラまがいのチープなセットとライティングであったが、その後は改善されて落ち着いたトーンで撮影されている。

話の展開も冒頭のみムンバイーで、他は全編トロント・ロケ。NRI映画と言っても過言ではなく、果たしてインド国内の観客を引き付けるかどうか。興行的にはバラつきが多く、リアルな映画を好むハイデラバードで第1週が100%、ムンバイーで71%ながら、ローカルでは弱く、17%という地域も見られた。公開直後の入りが良いのは、製作元のTシリーズ・カセットが楽曲をバンバン売っていたためだ。

いずれも息は続かぬ興業に終わった。

*追記 2005,10,12
プリヤンシュー・チャッテルジーサンダーリーはデビュー前、ファルグニー・パータクのPVpal pal teri yaad sataayeに出演。卒業を控えた学生役で、ふたりの面影も初々しい。

*追記 2011,02,22
>プリヤンシュー・チャッテルジー
その後、アイシュワリヤー・ラーイ共演「Dil Ka Rishta(心の関係)」(2003)でアイシュの恋人役に。ただし、本作のカルマか、交通事故で死亡。真の相手役は、アルジュン・ラームパールであった。
シャー・ルク・カーン特別出演の「Bhoothnath(幽霊おじさん)」(2008)では、アミターブ・バッチャンの息子役に抜擢されるも親不孝で父の死なせ幽霊となる原因を作るなど因果な役が多く、マイナーからメジャーに浮上しきれず現在に至る。

>ヒマンシュー・マリック
「Khwahish」(2003)でマリッカー・シェラワトの相手役と待望の一枚看板主演作を獲得するも、ぱっとせず。

>サンダーリー・スィナー
タイプとしては「Rock On!!」(2008)、「Once Time a Upon in Mumbaai」(2010)のプラチー・デーサーイー
メジャー作品では「Ab Tumhare Hawale Watan Saathiyo」(2004)でボビー・デーオールに想いを抱くサード・ヒロインという立ち位置止まりで消えた模様。

と、新人が揃ってブレイクしていないことから監督アヌバーヴ・スィナーもさぞかし低迷、キャリアも途絶えたかに見えて、本作と打って変わって北米を舞台にしたハード・アクション「Dus」(2005)、「Cash」(2007)などをモノにし、なんとシャー・ルク製作・主演の新作「RA.One(ラーワン)」(2011)の監督に起用という出世ぶり!

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