Bichhoo(2000)#206
製作・監督:グッドウー・ダノア/原案:サントーシュ・ダノア/脚本・台詞:ディリープ・シュクラー/撮影:シュリパド・ナトゥ/作詞:サミール/音楽:アナン(=アーナンド)・ラージ・アナン/振付:チンニー・プラカーシュ、ガネーシュ・アチャルヤー/背景音楽:スリンデール・ソーディー/美術監督:スニール・スィン/アクション:ティヌー・ヴェルマー/編集:V・N・マイエーカル
出演:ボビー・デーオール、ラーニー・ムカルジー、アーシーシュ・ヴィダヤールティー、サチン・ケデーカル、スレーシュ・チャトワル、イシュラト・アリー、プラモード・モゥトー、マバヴィール・シャー、アヴタール・ギル、ドリー・ビンドラ、シュウェーター・シェッティー
特別出演:ファリーダー・ジャラール、モーハン・ジョーシー
ゲスト出演:マライカー・アローラー
公開日:2000年7月7日(日本未公開)
STORY
依頼された殺しを終えたジーヴ(ボビー)は四角く重い鞄を持ち帰り、近所で牛乳を買って帰宅する。すると、階段の上で煙草を吸っていた少女キラン(ラニー)の一家が麻薬課の刑事デーヴラージ(アーシーシュ)らに惨殺される。行きがかり上、ジーヴはキランを連れて逃亡。殺し屋であることを知られたジーヴは彼女に殺しのテクニックを教え…。
Revie-U
アレレレッ?? 殺し屋? 牛乳? 近所の少女? 刑事が一家惨殺?? そう、これは「レオン」(1994=仏米)を下敷きに、というかそのまま。錠剤を呑んだ刑事の変貌ぶりなどカット割り、アングルもフルコピー。しかも、ゲイリー・オールドマンに相当する悪徳刑事役の凶暴ぶりはパワーアップ。これ、万年脇悪役だったアーシーシュ・ヴィダヤールティーが好演。この人、今まで妙なメイクをした役柄が多かったが、今回はわりと素顔で登場し意外に凛々しい男と判明。
さて、気になるジャン・レノの設定はと言うと、「Soldier」(1998)でも請負兵士を演じたボビー・デーオールだけにチープなB級アクションっぽくてなかなかよろしい。オリジナルでは、移民の子で他人とコミュニケート出来ない愚鈍(?)なキャラクターであったが、3時間あるインド映画だけに主人公が殺し屋に至るエピソードをたっぷり用意(恋人マライカー・アローラーの父親モーハン・ジョーシーの圧力を受け、母親ファリーダー・ジャラールと妹が焼身自殺! そして、彼女も自殺!! 怒り爆発!!! 故になかなかストーリーが進まない)。単なるパクリでない工夫(?)として、「観葉植物好きの殺し屋」では話にならないから愛玩物はサソリに変更、また笑ったり踊ったりする普通の人間として描かれているのも好感が持てる。
ナタリー・ポートマンに顎で使われたジャン・レノがジョン・ウェインの物真似などする醜態を見なくて済む(この関係は、フランケンシュタインの怪物と少女、「カリオストロの城」のルパンと姫に相当)。ラーニー・ムカルジーがやたらと喚いたり泣きじゃくるのは、やはり「少女」という設定のため。
ところで、監督のグッドウー・ダノアが、レノ&ポートマンよりオールドマンの怪演を痛く気に入ってのリメイクということは一目瞭然。何しろアーシーシュがカッコイイ! ボビーを完全に喰っている。今ひとつだったのは、殺しの仲介屋が単にTVゲーム・レストランの主人だということ。トタン屋根のパコーラ屋の方がぐっと来たのに・・・。
*追記 2011,02,01
>ラーニー・ムカルジー
やたらと騒いだり、食事を作れば吸いかけの煙草がカレーの中に、おまけに拳銃が汚れていたからと石鹸でじゃぶじゃぶ洗ったり…という「少女」ぶりが可笑しい。
ダンス・ナンバル「pyar tu dil tu」で見せるミニスカ・ステップがなかなか。
>ボビー・デーオール
暗い過去を持つ殺し屋らしい沈鬱な表情から一転「脳天氣」な振付でダンスをこなすところがさすがボビー。
オープニングの<No Drags No War>コンサート「dil tote tote ho gaya」でパフォーマンスを見せているのが、女性ポップ・シンガーのシュウェーター・シェッティーと男性ポップ・シンガーのハンス・ラージ・ハンス。
シュウェーターは、ポップ・シンガーだけあってルックス、スタイルも申し分なし。
スーフィー風ナンバル「jeevan mein jaane jaane」で、タージ・マハルをバックにむさ苦しい男達を従えて踊るのが、「Raavan」ラーヴァン(2010)でも姿を見せていた超弩級の振付師ガネーシュ・アチャルヤー。その巨漢から想像出来ない空中回転を見せる。
本編中、ムンバイー、ケープタウン(南アフリカ)の実景が平然と交差しているのは、ご愛敬。
>グッドゥー・ダノア
アクシャイ・クマール主演「Elaan(宣戦布告)」(1994)で監督デビュー。「Ziddi(頑固者)」(1997)以降はデーオール兄弟に傾倒、Bグレード感漂う本作から一転、伝説の独立闘士バガット・スィンとチャンドラシェーカル・アザードを描いた次作「23rd March 1931:Shaheed(殉教者)」(2002)では「ラガーン」Lagaan(2001)に迫るムードある英国映画調。
もっとも、続く「Hawa(風)」(2003)ではタッブーが怨霊にレープされる「悪魔の棲む家」的ホラーでCグレードの本質を露呈。
また、回想シーン+サンシティ・ナンバル「ekwari tak le」で恋人役に、「ディル・セ 心から」Dil Se…(1998)の列車上ナンバル「chaiyaa chaiyaa」、「Dabangg(大胆不敵)」(2010)のムジュラー・ナンバル「munni badnaam hui darling」などアイテム・ガールで知られるサルマーン・カーンの義妹マライカー・アローラー・カーン(次弟アルバーズの妻)がゲスト出演。なお、本作の台詞はダビング(アテレコ)。