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Tees Maar Khan(2010)#204

2011.02.18
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Tees Maar Khan

UTV 正規盤

「Tees Maar Khan(勇ましき大法螺野郎)」★★★☆
ティース・マール・カーン

製作:トゥインクル・カンナー、ロニー・スクリューワーラー/製作・原案・脚本・台詞・作詞・背景音楽・音楽監督・編集:シリーシュ・クンデール/監督:ファラー・カーン/脚本・台詞:アシュミト・クンデール/撮影:P・S・ヴィノード/作詞:アンヴィター・ダット、ヴィシャール・バラドワージ/音楽監督:ヴィシャール&シェーカル/美術:サブー・シリル/衣装デザイン:アキ・ナルーラー、サンジーヴ・ムールチャンダニー/振付:ギーター・カプール

出演:アクシャイ・クマール、カトリーナー・ケイフ、アクシャヱ・カンナー、サチン・ケデーカル、ヴィジャイ・パトカル、アパラー・メーヘター、アンジャン・スリワースタ、アヴタール・ギル、シャシ・キラン、アールヤー・バッバル、ラジーヴ・ラクシュマン、ラグー・ラーム、ヴィジャイ・モゥールヤー、ダラムパル、アリー・アスガル、アマン・ヴェルマー、ムルリー・シャルマー、スディール・パーンディー
特別出演:サルマーン・カーン、アニル・カプール、チャンキー・パーンディー、サンジャイ・ダット(ナレーター)

公開日:2010年12月24日(日本未公開)/131分
Filmfare Awards:振付賞(「sheila ki jawani」)/女性プレイバックシンガー賞(スニディー・チョハーン「sheila ki jawani」)

Tees Maar Khan

(c)Hari Om Productions, Tree’s Company, UTV Motion Picture, 2010.

STORY
パリで逮捕された国際的窃盗犯ティース・マール・カーン(アクシャイ)は、インドへの護送中、見事逃亡。警察が仕掛けた「インド秘宝作戦」による列車での財宝輸送を狙うが、その計画とは女優志望の恋人アンニャー(カトリーナー)とオスカー悲願のスーパースター、アーティーシュ・カプール(アクシャヱ)を起用し、無垢なる村人が暮らす片田舎で映画撮影を偽装するというものだった…。

Revie-U
Main Hoon Na(私がいるから)」(2004)で監督デビューし、Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)で熱狂を巻き起こしたトップ・コリオグラファー(振付師)のファラー・カーンによる監督第3作。
ただし、これまで組んで来た盟友シャー・ルク・カーンと決裂。「私がいないから」の状況で選んだ主演が、SRKを追撃するトップ・マネー・メイキング・スター、アクシャイ・クマール

本作では本名を冠したハリ・オーム・プロダクションを設立、プロデューサーに妻トゥインクル・カンナーを据え、ファラーが夫と設立したスリーズ・カンパニー、そしてUTV Motion Picturesと三者共同製作。

とは言え、クレジットを見ても解る通り、実質、ファラーの夫でJaan-E-Mann(愛しき人よ)」(2006)を監督したシリーシュ・クンデールがリードした企画(製作・原案・脚本・台詞・作詞・背景音楽・音楽監督・編集と一人8役。しかもオープニング・タイトルバック中、自分のクレジットが一番目立つ)。そのへんがシャー・ルクとファラー対立の原因であったよう。

例によって下敷きとなっているのが、フィルミー・サーラー(映画狂)のシリーシュらしく、ヴィットリオ・デ・シーカ監督、ピーター・セラーズ主演「紳士泥棒/大ゴールデン作戦」(1966=英伊)。配下の男たちが3人というのもそのまま。

さて、初の製作参加となるアッキー
昨年はHousefull(満員御礼)」「Action Replayy」など腑抜け役が目立ったが、本作では久々に<キケンな男>を演じている(スタローンinハリウッド・トラブルにも通ずる?)。
クールにキメる場面ももっと欲しかったところが。

Tees Maar Khan

(c)Hari Om Productions, Tree’s Company, UTV Motion Picture, 2010.

ヒロインは、アッキーとスクリーン・ケミストリーが良好のカトリーナー・ケイフ。共演はこれで6作目。
昨年は、マハーバーラタを現代インドの政治に置き換えた大作「Raajneeti(政祭)」インディラー・ガーンディー(ハーフであるからイタリア出身のソニア・ガーンディーとも言える)に重ね合わせた引き立てを受ける一方、本作でオツムの軽い女優志望のアンニャーを好演。この守備範囲の広さは、シェイクスピア原作「Omkara」とボンクラ・コメディ「Golmaal(ごまかし)」を同じ2006年に出演したアジャイ・デーヴガンに匹敵。この幅をこなしてこそ、真のボリウッドスターと呼べよう。
ヒット・ナンバルseela ki jawani(撮影場所はメフーブ・スタジオ)での踊りっぷりは、つたなさが健氣に思えた「Namastey London」(2007)の頃とは違って格段に進歩。さすがボリウッド女優と言えるキレを見せる。

オスカー受賞を渇望するスーパー・スター、アーティーシュ・カプール役が、もうひとりのアクシャイ、アクシャヱ・カンナー。アクシャイ(Akshay)・クマールと区別つけるためか、「Akshaye」とスペリング。
70〜80年代のトップスターだった父ヴィノード・カンナーWanted)の威光を借りてデビュー。当初、Taal(リズム)」(1999)などアイシュワリヤー・ラーイと共演を重ね、スーパースター街道を突っ走る…思惑が外れ、Dil Chahta Hai(心が望んでる)」(2001)など何度か浮沈を繰り返しながら地盤沈下。Gandhi My Father」ガンジー、わが父(2007)で愚息役に開眼するもマードゥリー・ディクシト復帰作「Aaja Nachle(踊りに来て)」(2007)でまたスター然とした配役に復活。
その後もあまりパッとしなかった彼が、恥も外聞もなくオスカーを欲しがるスーパースター役を引き受け、ふっきれたところを見せる。「Luck by Chance」チャンスをつかめ!(2009)に続く確信犯的キャスティングで、本人もヘリコプターで舞い降りるスーパースター役が感慨深いことだったはず。
シューティング・ナンバルbadey dilwalaでは、いつになくオン・タイムのステップを踏むのが意外(ライバル視のアッキーへの対抗意識の賜物か?)。

特別出演は、ナレーターにサンジャイ・ダット
TMKらが撮影現場から撮影機材を盗む劇中映画「Choli Mein Holi(ホーリーの泥棒)」の主演?がHousefull(満員御礼)」(2010)のチャンキー・パーンディー
オスカー受賞者として登場するのが、スラムドッグ$ミリオネア(2008=英)のアニル・カプール(笑)。
また、アイテム・ナンバルseela ki jawaniの撮影場面で投げキッスを送っているのが、音楽を担当しているヴィシャール・ダドラーニー彼自身(エンディング・ロールでも登場)。

Tees Maar Khan

(c)Hari Om Productions, Tree’s Company, UTV Motion Picture, 2010.

そして、ウルドゥー・ナンバルwallah re wallahに登場するのが、昨年、メガヒットDabangg(大胆不敵)」で当たり年となったサルマーン・カーン。しっかり「サルマーンを呼んで」と前振りがあるのもいい。
サルマーンとカトリーナーはブレイク・アップしたはずだが、サルーがやって来るところで彼女が喜ぶあたり、Maine Pyaar Kyun Kiya(私は愛をなぜか知った)」(2005)など、付き合っていた頃の共演作より心なしか雰囲氣よさそう(ハグもあり)。

サポーティングは、警察長官がサチン・ケデーカルマヘーシュ・マンジュレーカル製作のスーパーヒット・マラーティー映画「Mii Shivajiraje Bhosle Boltoy!(儂はシヴァジラージェー・ボースレーと申しやす!)」(2009)も必見。
その部下の警官が、ヴィジャイ・パトカル。米「ストリート・オブ・ファイヤー」を下敷きにしたアニル・カプール主演Tezaab(酸)」(1988)のボンクラ仲間役など長い下積みを経て、Munna Bhai MBBS(医学博士ムンナー兄貴)」(2003)、「Kyaa Kool Hai Hum(俺たちなんたってクールだぜ!)」(2005)などからマンガチックな顔が徐々に認知。

護送中のTMKに逃げられ、彼を追うボンクラ刑事が「Main Hoon Na」のカーン役、ムルリー・シャルマー「Golmaal 3(ごまかし3)」(2010)ではヴィジャイ・パトカルを部下にインスペクター役で出演。
その相棒が「Jaan-E-Mann」でプリティー・ズィンターの友人役アマン・ヴェルマー

TMKのボンクラ仲間にKhal Nayak(悪役)」(1993)でサンジャイ・ダットに殺されるアリー・アスガル「Bombay to Bangkok」(2008)でラッパー志望のチンピラ・ギャング役ヴィジャイ・モゥールヤー「Mumbai Meri Jaan(ムンバイー、我が命)」(2008)における連続テロを目の当たりにして苦悩する若い警官役も忘れがたい。

村の村長にWhat’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)+Pukar(叫び)」(2000)のアンジャン・スリワースタ、退役軍人にRangeela(ギンギラ)」(1995)のアヴタール・ギル
村の駐在インスペクター役にラージ・バッバルの息子アルヤー・バッバルアムリター・ラーオと転生物「Ab Ke Baras(現世)」(2002)でWデビューするがヒーローは断念した模様で、本作では吹っ切れた芝居を見せる。

そして、シャム双生児のジョーリー・ブラザースには、MTVプロデューサーのラグー・ラームと、その実の双子ラジーヴ・ラクシュマンが扮しているが、とても素人は思えないところがさすがノリのよいインド人。また、これほど陽氣なシャム双生児も珍しい(何しろダンディヤー・コンテストでスティックダンスをしたりする)。

肝心の映画ネタであるが「OSO」と比べるとかなり控えめで寂しくもあるが、TMKが護送される航空会社が「コン・エアー」だったりと洋画も含めて、その分、よりマニアックに。
もちろん、「OSO」ネタも用意されており、劇中何度も大げさに叫ばれる「ナヒ〜ン!」も同様。エンディング・タイトル中の看板にも注目。

撮影に村人たちが陶酔する場面で流れるのが、マノージ・クマール主演「Upkar(危害)」(1967)よりmere desh ki dharti sona ugle(オリジナルでは、畑を耕す農民の姿と都会の生活を対比)。
「OSO」でパロディーにして本人からクレームが来たため、本作では冒頭で謝辞が捧げられている。

Tees Maar Khan

(c)Hari Om Productions, Tree’s Company, UTV Motion Picture, 2010.

劇中映画「Bharat Ka Khazana(インドの秘宝)」プレミア会場で鎖につながれたTMKにマイクを向けるレポーターが、アルターフ」Mission Kashmir(2000)の監督で3 Idiots」3バカに乾杯!(2009)の製作者であるヴィドゥー・ヴィノード・チョープラーの妻で、映画評論家であり映画情報番組のホストも務め、シャー・ルクの伝記本を執筆したアヌパマー・チョープラー女史似をわざわざ起用。
この鎖でつながれたスター監督が警官に付き添われてプレミア会場に(本来、刑期の最中ながら)やって来るのは、サンジャイ・ダットなど犯罪に関わったボリウッド・スターを彷彿(苦笑。プレミア会場自体、フィルムシティにある裁判所のオープン・セット。劇場内部はシネコン・チェーンPVRの館内)。
その「Bharat Ka Khazana」、オープニング・クレジットで「☆ing(Starring)」となっているのは、ミトゥン・チャクラワルティー主演Aaag Hi Aag(火には火を)」(1999)などBグレード・ローカル映画への敬愛。
プロデュースがドゥリヤー村となっているのは、村人が撮影続行のため金を出し合ったから。
そして、衝撃のエンディングが、朝、用足しをしていたところ迫り来るキャメラに驚いて走り去る村人の姿…となっているのはアーミル・カーン製作Peepli Live(2010)のパロディーだろう(解り難いが)。
このどうしようもない作品を「ピース・オブ・アート!」と呼ぶ批評家は、初期のMTV製作現場を題材にした「テープヘッズ」(1988=米)における駄作を「ポストモダン」と持ち上げるスケッチを思い出させる(フィルミー・サーラーのシリーシュならしっかり観ていそう)。
この批評家役がボリウッド・スターを招くチャット・ショーのTVホストで、本作のオープニングでご丁寧に「introducing」と紹介されているのコーマル・ナーへター

Tees Maar Khan

(c)Hari Om Productions, Tree’s Company, UTV Motion Picture, 2010.

エンディング・ロールは例によって、スタッフ N キャストのオン・パレード。レッド・カーペットは本編中に登場してしまっているため、オスカー受賞という設定(苦笑)。
最後の最後にトロフィーをもらうファラーだけ、Filmfare Awardsゴールデン・レディーでちょっとがっかりするというオチ。それ故、Filmfare Awards は黙殺…ということはなくて、振付賞女性プレイバック・シンガー賞を授与。監督賞・主演男優賞・主演女優賞がマイ・ネーム・イズ・ハーン」My Name is Khan(2010)に集中していることからすると、ファラーは本業の振付だけしっかりやっていろ、という意味?

そういう意味では、エンディング・ロールで何度も姿を見せて喜んでいないでシリーシュ自身も自分のプロジェクトを推し進めて欲しいところ(アッキー主演「Joker」やサルマーン主演「Kick」などがアナウンス済み)。
なにしろ、本作ではファラーらしさより、シリーシュの趣味に走り過ぎた感があり、テイストもマサーラーというよりお子様ランチ。

ここで思い至るのが、シリーシュとファラーが設立したスリーズ(Tree’s)・カンパニーという名前。これはもちろん、ファラーが生んだ3つ子(エンディング・ロールに登場)に由来。
そして、プロローグでTMKの母親がまだ妊娠中、家で泥棒が主人公の映画を観まくっていて、これが胎教となる設定。なにしろオープニング・タイトルバックが羊水の中で美女と戯れるTMKがCGIで描かれるのだ。ストーリーも芝居も3歳児にもウケそうな解りやすさ…と、実は自分たちの3つ子に見せるために作ったようにも思える。だとすると、究極の<ホーム・ムービー>と言えそう。

Tees Maar Khan

UTV正規盤はDVD2枚組セット。

<付記>シリーシュの脚本には不満が残るものの、偽装撮影現場場面でストーリー・ラインを行き当たりばったりに思いつきで演出してゆく監督のTMKに対して、三流スーパースターのアーティーシュが「何をやればいい? 教えろ!」と食い下がり、TMKはアーティーシュのまぶたを閉じさせ、統治する英国人たちへの闘志をかき立てるスケッチで妙に納得。
と言うのも、日本の某俳優が新作のインタビューで、役作りについて監督に尋ねたところ「あなたならどうするか?」と言うだけで一度もこうしろと指示しなかったと答えていたからだ。今どきの日本では職場や教育の場で何事も柔らかく進め、当人の自主性を伸ばすことが「良し」とされる風潮にあるが、果たして映画の撮影でもこれが当てはまるのかどうか。
監督が指示すべきは、脚本に描き込まれたキャラクターがどうのように振る舞うか、であって、役者当人の思惑ではないはずだ。これではキャラクターが俳優のドゥプリケート(吹き替え)でしかなくなるし、先に全体を見通して書かれた脚本プランが俳優によるその場のリアクションで崩れてくる可能性もある(黒澤明と共同脚本を執筆した故橋本忍あたりが聞けば憤慨するだろう)。
映画の作り方は千差万別と言ってしまえばそれまでだが、多様な人物造形が為されるボリウッド映画の視点からすると、近年の日本映画が(TVドラマと大差ないとしても)ひどく単調に思えてしまうのは、このような演出方法にもよるのだろう。

Tees Maar Khan CD

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