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Maya(1993)#198

2011.02.12
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Maya「Maya(マーヤー)」★★★☆

脚本・監督:ケータン・メーヘター/原作:ギュスターヴ・フローベール「ボヴァリー夫人」/脚本:シタンシュー・ヤシャスチャンドラ/台詞:ヒルディ・ラニー/マヤのモノローグ:グラン・クリプラニー/撮影:アヌープ・ジョートワニー/作詞:グルザール/音楽:ハリダイナート・マンゲーシュカル/美術:ミーラー・ラーキア、アーシーシュ・ラーキア/衣装デザイン:モニカ・ダッタ/編集:レーヌー・サルージャー

出演:ディーパー・サヒー、ファルーク・シャイク、ラージ・バッバル、シャー・ルク・カーン、Dr.シュリー・ラーム・ラグー、スダー・シヴプリー、パレーシュ・ラーワル、ラグヴィール・ヤーダウ、サトヤデーヴ・ドゥベイ、スリヤース・ヴヤス、アルヴィンド・ヴァイドヤー、マニーシュ・ナーグパル、ラージェーシュ・ヴィヴェーク、イドリス・マリック、アルパナー・ウパドゥヤーイ、ベビー・ファラー
友情出演;オーム・プリー、アニル・グプタ

公開日:1993年7月2日(日本未公開)

STORY
妖艶な指揮下を持つマーヤー(ディーパー)は従順な医師チャールー(ファルーク)と結婚するが、退屈な家庭生活には飽きたらず、富豪のルドラ(ラージ)や青年ラリット(シャー・ルク)らと次々に恋に落ち…。

Revie-U
監督ケータン・メーヘターは、ナスィールディン・シャー主演「Mirch Masala」(1985)でモスクワ国際映画祭ハワイ国際映画祭作品賞を獲るなどアート肌の監督として知られる。
しかし、フィルミー・サーラー(映画狂)のリキシャワーラー(オートリキシャーの運転手)を主人公にした「Hero Hiralal」(1988)など前半は快作ながら後半は思いも寄らぬ観念的な展開に陥り、米「ウォリアーズ」をボンベイの一夜に置き換えたようなカルト・ミュージカル「Oh Darling Yeh Hai India(オー・ダーリン、これぞインディア)」(1995)など、どこか日本映画の監督を思わせる観客置いてけぼりの作家性と言えなくもない。

それらと比べると本作は、マーヤー夫人の堕ち行く様を刑事が関係者に聞き込みしてゆくフラッシュバックのミステリー仕立てとなっているばかりか、証言が食い違うなど「羅生門」(「藪の中」)的で、そこそこ楽しめる。

タイトルロール、マーヤー夫人を演じるディーパー・サヒーは、ケータン・メーヘター夫人。「Hero Hiralal」のセカンド・ヒロインを務め、「Oh Darling Yeh Hai India」では脚本も担当し、アーミル・カーンを起用したケータンの監督作「Mangal Pandey」(2005)では製作を務め、「Tere Mere Phere」(2010)で監督に進出。
スレンダーな色白美人でマーヤー役には、相応しい。

しかしながら、このマーヤー。夫の愛を確かめるために「愛してる?」を連発、挙げ句の果てに部屋の中を散乱させ殺人事件の芝居をしては慌てふためく夫が自分の妄想とは違っていたからと「私のこと愛してないのね!」と言い放っては勝手に傷つくなど、感受性豊かで<イノセント>なキャラクター、というよりは、ボーダーライン(境界性人格障害)に近い。
オープニング早々、彼女を呼び止めた父親が階段を踏み外し転落。祖霊を祀る祈祷中、グンダー(愚連隊)が逃げる男を追って雪崩込んではその男の首をはねる!という不運を呼び込む女となっている。

氣怠い演出と、洋館が建ち並ぶシムラー周辺の実景ロケなどそこそこ心地よい仕上がりだが、今となっては若きシャー・ルク・カーンの出演作、それも肌も露わなディーパーとのベッド・シーンを演じているということで目を引く作品。

シャー・ルクの役どころは、原作で夫人と再会して関係を深めるレオンに相当する青年ラリット(その再会場所は1888年に建てられた風格ある石造りの映画館ガイエティー・テアトル。シムラーに滞在していた、かのキプリングも好んだと言われる。ちなみに映画館内部に貼られているポスターはラージ・カプール監督/主演作Shree 420「Awara」)。
デビュー間もない時期とあって、窓辺にたたずむマーヤーに見とれて鉄柱に頭をぶつけるなど初々しさが残り、マーヤーの妄想では通りで彼女の名を歌い上げ、群衆の前で灯油をかぶって恋が報われないならと焼身自殺を図ろうとするところはデビュー作Deewana(恋狂い)」(1992)の<狂える若者>に通ずる。

さて、そのベッド・シーンだが、ディーパーはニップルの露出も厭わず果敢に挑んではいるものの、インド映画のセンサー(検閲)もあって実につたなく、前衛的な処理止まり。
シャー・ルクはと言うと、恥ずかしがりの彼だけに、これまた照れ隠しな表情がSRKファンならいじらしいはず。

サポーティングは、愚鈍な夫チャールー・ダースに「Umrao Jaan」(1981)でナワーブ(太守)を演じていたファルーク・シャイク。役者としては下降をたどり、最新作「Accident on Hill Road」(2010)ではヒロインの車に轢かれた上に事故を隠滅されそうになる苦難の中年男役。
その冴えぬ様が本作ではマッチしているとも言える。

マーヤーとひと時の情事に至る富豪ルドラ役が、やはり「Umrao Jaan」に出演のラージ・バッバルChhupa Rustam(大勇者)」(2001)のインチキ臭さは微塵もなく、Salma(サルマー)」(1985)のようにムードある役作りが佳い。

マーヤーの父親にKitaab(本)」(1977)で盲目の歌唄いに扮していたシュリー・ラーム・ラグー。老いても尚、その渋い声が味わい深い。

マーヤーを陰で脅す商人ラーラー役に名優パレーシュ・ラーワル
路上の秘薬売りにラガーン」Lagaan(2001)で変人グランを、What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)で占星術師兼私立探偵を演じたラージェーシュ・ヴィヴェーク
全編通して本作に哀れみをもたらすファキール(イスラーム神秘主義の托鉢行者)にサラーム・ボンベイ!」Salaam Bombay!(1987)、Peepli Live(2010)のラグヴィール・ヤーダウなどが出演。

DVDなどは「Maya Memsaab(マーヤー夫人)」として流通しているが、本編中のタイトルは「Maya」、冒頭に映し出される上映認定証には「Maya Alias Maya Memsaab(マーヤー、別名マーヤー・メンサーブ)」とある。
原作「ボヴァリー夫人(Madame Bovary)」の名はエマで嫁いだ夫の名字がボヴァリー。とすると、マーヤーは嫁いだ夫の名字ダースにマダムが付いて「ダース夫人」にならなければならないが、インド(映画)では名字ではなく名前に敬称をつけ「Mr.アニル」などのように用いるし、マダムと言っても既婚女性だけでなく未婚の女性への呼びかけにも使う。
そして、またヒロインの名を「Maya(幻影。転じて恋の意も)」としているところから「ファンタジック」な味付けが生きてくる。

また、マーヤーの妄想中、通りにある安全帯で焼身自殺を図るラリットを止めに走ったマーヤーと彼が抱き合い、円形に炎の輪が燃えさかる。この時、安全帯の▽形が密教的にヨーニ(女陰)の意にとれるのが興味深い。

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