Hum To Mohabbat Karega(2000)#199
Hum To Mohbbat Karega(僕らは恋をするだろう) 01.04.06 UP/02.02.22 Re ★★★☆
ハム・トー・モハバット・カレーガー
製作:K・P・スィン/監督・脚本・台詞:クンダン・シャー/脚本・台詞:ランジート・カプール/撮影:トーマス・A・ザヴィエル/音楽:アヌー・マリック/詞:マジローウ・スルターンプリー/振付:チンニー・プラカーシュ、ファラー・カーン/背景音楽:スレンドル・ソーディー/美術:R・ヴェルマン/編集:アシーム・シンハー
出演:ボビー・デーオール、カリシュマー・カプール、ローヒト・ローイ、シャクティ・カプール、ダリープ・ターヒル、サダーシヴ・アムラープールカル、ヴィジャイ・カシャップ、ジョニー・リーヴァル
特別出演:ラージ・ズトシー、カシュミラー・シャー、ラザック・カーン、プラムード・モートゥー
公開日:2000年5月26日(日本未公開)
STORY
ホテルのレストランで働くラージュー(ボビー)は、チャンネル2001の人氣レポーター、ギーター・カプール(カリシュマー)に夢中。ふとしたことから50億ルピーが絡んだ金融汚職殺人事件の目撃者となり、ギーターからインタビューを申し込まれて逆上せ上がり、デカ鼻の殺し屋マンガル(シャクティ)とアンダーグラウンドのボス、スーラージ(ダリープ)に狙われることになる。しかも、ギーターの兄は婚約者であるプロデューサーに殺されていたのであった・・・。
Revie-U
本作のカリシュマー・カプールは、「Phir Bhi Dil Hai Hindustani(それでも心はインド人)」(2000)のジュヒー・チャーウラーを思わせるカリスマ・レポーター。もっともこちらは、社会性や愛国心など何処吹く風の王道マサーラー映画に仕上がっている。
意外なのが、ボビー・デーオールの役どころ。ウエイターなのである。インドにおいては下に見られがちな職業であったが、外資系ファーストフード・レストランで高校生がバイトするのがオシャレという時勢を反映しての設定だろうか(日本でも東京ディズニーランドがオープンした時にある種の観念を変えたように)。
さて、本作のボビーは、とにかくカリシュマー扮するギーターにメロメロ。プードル顔の鼻の下が伸びっぱなし!という有り様。TV局の裏門に薔薇の花一輪持ちながら立ち尽くす妄想ナンバル「sonu sonu kaho kaho(ねえねえ、言って言って)」は、「ベルリン・天使の詩」(1987=西独・仏)よろしく自分の姿が相手に見えないという演出で片想いを表現しているばかりか、果ては断崖の遺跡で神々が踊りまくるシュールな前世の予知夢まで飛躍する。
そんなラージューがシャワー後のバスタオル姿のまま、インタビューのためTV局に連れ込まれては逃げまくるのが可笑しい。TV出演を拒むラージューにギーターが熱いキス攻撃で恋は盲目にしてしまうギャグは、ジャーナリストからブーイングが出ていたが…。
サポーティングには、ラージューの親友クッティー役にジョニー・リーヴァル。警察でラージューがでたらめの人相を伝えたために、彼の顔がモンタージュ合成されてしまう。そのためデート中のクッティーがレストランで一騒動起こすスケッチも大いに笑える。
やたらと拳銃をぶっ放すドジなインスペクターと巡査のコンビに「Ishq(恋)」(1997)のサダーシヴ・アムラープールカルとヴィジャイ・カシャップ。黒ずくめの衣装に長髪&タトゥーと、どこか「デスペラード」(1995=米)のダニー・トレホを思わせる殺し屋マンガル役にシャクティ・カプール、その兄でアンダーワールド(マフィア)のドン、スーラージ役にお馴染みのダリープ・ターヒル。ギーターの兄ヴィクラム役にラージ・ズトシーを起用。
トップ・コレオグラファーのファラー・カーンが1曲だけ振付した寺院ナンバル「leh liya lehi liya」に、カシュミラー・シャーとラザック・カーンが踊り子と楽師役でゲスト出演。快活に踊るラザックは圧巻!
監督のクンダン・シャーは、6年ぶりの新作を2本同時期にリリース。プリティー・ズィンターが未婚の母となる19日公開の「Kya Kehna!(なんと言っても!)」(2000)と比べると、本作は難易度が高い。
アンダーワールドに追われていたラージューとギーターだが、いつしか彼の妄想がデジャヴュとなり、ギーターまでがそれを共感してしまったかと思えば、いつの間にかラージューがアンダーワールドと手を組んで交流していたり、果てはギーターの兄が殺された事件の真相が暴れ・・・とかなりハイブローな混乱ぶり(??)のため、ボリウッド初心者は理解不能に映ることだろう。
それでいて、本作に惹かれるのは、音楽のアヌー・マリックに負うところが大きい。M・ジャクソン「スリラー」そのままのビートを流用したディスコチックなタイトルソング「hum to mohabbat karega」、郷愁どころか遠く前世を思い出しそうなリリカルなメロディーが耳に残る「sonu sonu」及び「yeh khushi ki mehfil」などいずれも秀逸。例によってコミカル・ナンバル「dada manja bap manja」をアヌー自身もレコーディングしているが、やはりクマール・サーヌーやソーヌー・ニガムの美声には敵わない。
*追記 2011,02,13
>クンダン・シャー
典型的なマサーラー監督に思えて、最新作はニュー・ストリームの旗手アヌラーグ・カシャップ監督(「Dev.D」)を筆頭に、「Maine Gahdhi Ko Nahin Mara」私はガンディーを殺していない(2005)のジャフヌー・バルヤー、「Raincoat」(2004)のリトゥポルノ・ゴーシュ、「Calcutta Mail」(2003)のスディル・ミシュラー、「Phir Milenge(また会おう)」(2004)のレーヴァティーら11名の監督によるオムニバス映画に参加した「Mumbai Cutting」(2010)。
>ボビー・デーオール
父ダルメンドラ、兄サニー・デーオールとの共演作のコメディ「Yamla Pagla Deewana」(2011)がオープニング~第2週1位、第3週2位、第4週3位をキープと好評ヒット中!
タイトルはダルメンドラとヘーマー・マーリニー(ボビー&サニーの義母にして妹イーシャーの母)の睦まじき「Pratigya(誓い)」(1975)のメモラブル・ナンバル「main jat yamala pagla deewana」(モハムド・ラフィ)より引用。リティク・ローシャンの共演作「Na Tum Jaano Na Hum(君も僕も知らずして)」(2002)の中で男装したイーシャーが踊るスケッチがこの曲。
>カリシュマー・カプール
90年代を駆け抜けたオチャメなヒロインも妹カリーナー・カプールと入れ替わるように寿フェードアウト。2002年秋、アビシェーク・バッチャンと婚約するも翌2003年1月解消。同年秋に実業家サンジャイ・カプールと結婚(「Chhupa Rustam」のサンジャイ・カプールとは別人)。
ちなみに父親は「Housefull(満員御礼)」(2010)に出演しているランディール・カプール。
>ローヒト・ローイ
カリシュマー扮するギーターに恋慕するTV局の上司役。鳴かず飛ばずが続くが、サンジャイ・ダット主演「Shootout at Lokhandwala」(2007)でグンダー(愚連隊)の一味役で注目され、「Dus Kahaniyaan(十話物語)」(2007)でオムニバス短編の演出も手がける。
兄は昨年、台風の目となったニュー・ストリーム「Udaan(飛翔)」(2010)のローニト・ローイ。