Pyaar Ishq Aur Mohabbat(2001)#196
Pyaar Ishq Aur Mohabbat
(恋、ロマンス、そして愛)★★ 01.10.15
ピャール・イシュク・アォール・モハバット
製作:グルシャン・ラーイ/原案・脚本・監督・編集:ラジーヴ・ラーイ/脚本:シャビール・ボックスワーラー/台詞:ナイーム・シャー/撮影:P・S/ヴィノード/作詞:アナン(=アーナンド)・バクシー/音楽:ヴィジュー・シャー/プロダクション・デザイン:ソーナム・ラーイ/美術:スミター・グプタ
出演:スニール・シェッティー、アーフターブ・シヴダサーニー、アルジュン・ラームパール(新人)、キルティ・レッディー、モニカ・ベディ、イーシャー・コーピッカル、ラーザ・ムラード、ハリーシュ・パテール、ダリープ・ターヒル、スミター・ジャイカル、アンジャン・シュリワスターワ
公開:2001年8月3日(日本未公開)
8th Screen Awards:新人賞(アルジュン・ラームパール)
STORY
富豪のヤシュ(スニール)はスカラシップ授賞式で会ったイーシャー(キルティ)にひと目惚れ。ところが、彼が結婚を望んだため、彼女に嫌われてしまう。そんな失意のヤシュが目に留めたのが、結婚妨害屋のゴーラーヴ(アルジュン)。彼を大金で雇って、スコットランドへ留学したイーシャーを翻弄させ、心が傷ついたところを口説こうという作戦。果たして、そんな恋愛工作が巧く行くのか?!
Revie-U *結末にふれています。
人氣絶頂を誇ったモデル、アルジュン・ラームパールのデビュー作。
最近のインドも濃い顔は不人氣なのか、アルジュンはどちらかと言うと岩城滉一や阿部寛を思わせる精悍な二枚目。デビュー前からアルジュン獲得の争奪戦が繰り広げられ、新人としては破格の1250万ルピー(3500万円)のギャラを手にした。
だが、登場シーンはなんとステッキを手に持ち、白ずくめのソフト&ジャケット姿で背中を向けてステップを踏むというチャップリンまがい。婚約パーティーに乱入し、花嫁に愛を囁き花婿を怒らせて結婚をぶち壊すという、花嫁の恋人に雇われたモデル兼アクターなのだが、まわりの連中はというとただただ突っ立ったまま! つたない演出もあって、見ている方が恥ずかしくなるほど。同じシュチュエーションならば、「Mujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って!)」(2001)におけるアルシャード・ワールシーの普段着ダンスの方が数段上等。せっかくのデビュー・シーンがこれでは汚点となるだろう(やはりリティク・ローシャンは別格のデビューだったと再認識してしまう)。ただ、アルジュンは台詞まわしも悪くないだけに今後に期待したい。
さて、ヒロインのキルティ・レッディーはと言うと、タミル映画「Devataii」(1999)でデビュー。容姿端麗、スタイル抜群ながら無愛想でまったく踊れず。スニールとのミュージカル・シーンでは夢に見た憧れの女性という設定からマネキンのように固まったまま(それでもまばたきが目障り)、その他、どこで踊ってるか判らないほどの引きの画など、苦労のあとが伺われる。踊れない男優にヒロインが踊りながらまとわりつく振付ならしばしばあるが、その逆というのは初めて。とても医学生には見えないのもマイナスだ。
スニール・シェッティーは「Dhadkan(鼓動)」(2000)に引き続き未練たらしい男を演じるが、小娘のために1億ルピー(本作の製作費と同等?!)も出すなど大袈裟過ぎで、今回は少しも感情移入が出来ない。
若手では先輩格のアーフターブ・シヴダサーニも、スコットランドへ留学したイーシャーを世話するタージ役で、完全にアルジュンを立てる三枚目に甘んじている。
タージの父親は、毎度お馴染みのダリープ・ターヒル。このインデール・バードワージというキャラクターも「インドに生まれ、インドに死す、それが本望!」と豪語する一方、まったくの英国貴族的ライフ・スタイル。なにしろ、留学に来たイーシャーをバグパイプの楽隊で出迎えるのだ。
イーシャーが教わる大学教授の娘ルービー(イーシャー・コーピッカル)は、「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)のカジョールそのままの芝居と、これはパロディなのか、コメディなのか、正統派ロマンスなのか、なんとも判然せず、大いに戸惑ってしまう。
脚本も、イーシャーはゴーラーヴにすぐメロメロになるし、ゴーラーヴは彼女の心をつかむため捨て身の接触事故を起こすものの活かされないエピソードに終わるなどいただけない。「Mohra(先兵)」(1994)、「Gupt(秘密)」(1997)とヒット作・秀作があるものの、今回の監督ラジーウ・ラーイはまったく冴えるとことなく、台詞のないキャストは眺めてるか、突っ立てるだけというお粗末さ。
ラストは結局ゴーラーヴがイーシャーを忘れられなくなってしまい、彼女と結ばれるというお決まりパターンながら、ヤシュにはルービーが、タージにはゴーラーヴの捨てられた彼女マーヤーがくっついてめでたしめでたし、というエンディングには呆れる他ない。
アルジュンのデビュー作ということで、リリース前は期待されたものの、蓋を開ければムンバイーで第1週が61%、地方ではまるっきり弱く、4週目が16%という大コケぶり。アルジュンの破格のギャラ、スコットランドとスイス・ロケの費用は回収できず。
*追記 2002,08,19
イーシャー・コーピッカルは、「Company」(2002)にゲストダンサーとして出演。
*追記 2011,02,10
オープニング・タイトルバックは、スニール・シェッティー扮するヤシュの妄想。この時期定番のスイス・ロケでアルプスの山並みが絶景。
>キルティー・レッディ
南インド映画出身でヒンディー映画は本作で3作目。アビシェーク・バッチャンとも「Tera Jadoo Chal Gaya(君の魔法が効いた)」(2000)でも共演。
なかなかの美形であったがボリウッドでは当たらず、結局、南インド映画界に戻り「Arjun」(2004=テルグ)でFilmfare Awards South 助演女優賞を獲得。同時にテルグ俳優のスマントと結婚するが2年で離婚。その後もフィルモグラフィはなし。
>ダリープ・ターヒル
英国在住NRIに相応しいのは、彼自身、この時期、「Cat’s」で知られるアンドルー・ロイド・ウェバー卿に招かれ、音楽A・R・ラフマーン、振付ファラー・カーンを起用したロンドン・ミュージカル「Bombay Dreams」や「エビータ」のために渡英していたため。
その間、ボリウッドでの脇役ぶりが見られず寂しい思いであったが、帰国後、「Raat Gayi,Baat Gayi?」(2009)など小粒映画でのびのびとした芝居を披露。
>アルジュン・ラームパール
若かりしアルジュンはソー・ナイス。ただ、演出が陳腐なのが残念。本作が役者としての運命を定めたのか、ヒーロー路線はセルフ・プロデュース「I See You」(2006)のフロップで見切りをつけ、シャー・ルク・カーン主演「DON」(2006)あたりからサブリードにシフト。
「Raajneeti(政祭)」(2010)でZee Cine Awards 助演男優賞を勝ち取るも、カジョール、カリーナー・カプール久々の共演「We Are Family」(2010)がフロップ。最新作はシャー・ルクがスーパーヒーローを演じる「Ra.One」(2010)でタイトルロールとなる敵役ラーワン(=Raavan)。