Home » DVDレビュー

Durga(2002)#187

2011.02.01
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

DurgaDurga(ドゥルガー) 02.09.06 ★★

製作・ストーリー・脚本・台詞・監督:チャクラワルティー/撮影:アルン/詞:スダーカル・シャルマー、マルース・アテマージ/音楽:ヴィドヤー・サーガル/アクション:ホールセメーン・バブー/振付:ラージ・シェーカル

出演:チャクラワルティー、プリヤンカー、サヤージ・シンディー、アンジャン・スリワスターワ、スネーハル

公開日:2002年3月29日

STORY
カレッジの人気者ドゥルガー(チャクラワルティー)は、級友となったガヤートリー(プリヤンカー)と恋に落ちる。しかし、ガヤートリーの父シヴァジー(アンジャン・スリワースタ)が反対。それを聞きつけた地元のならず者たちがドゥルガーを締め上げたことから、2つの勢力がぶつかる抗争へと発展してしまう!

Revie-U
1999年、東京国際映画祭シネマプリズム部門で上映されたサティヤSatya(1998)に主演していたチャクラワルティーの製作・脚本・監督・主演作。

暗い夜道を一台の車がひた走るオープニング。車内には人相の悪い男たちが3人。時より、不思議な物音がする。男たちは車を止め外に出てみると、その物音がトランクから聞こえてくる。一人の男が鍵を渡して、トランクを開けさせる。中では、血まみれの男がもがき苦しんでいた! 兄貴格の男がトドメを刺す。

「殺し」の証拠を捨てに行く真夜中のドライヴだったのだ。

おお! ラーム・ゴーパル・ヴァルマーばりのニューウェーブ実録バイオレンス映画かと思いきや、タイトル・クレディット開けに登場するチャクラワルティーは、なんと明るい学園ヒーロー!! しかも勢いよく踊り出してしまうではないか!!! これが、「サティヤ」の陰鬱なチャクラワルティーの、テルグ映画界での真の姿だったのか?!?

そのダンスといえば、上手いとか下手とかいうものとは別次元。やたらとシャー・ルク・カーンのポスターが出てきているところを見ると、ライバル意識を燃やしているらしい。

この学園シーンは潤沢な予算を使ったKuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)のポップな絵図とは大違いだが、ハゲ校長が女教授に甘く囁かれたり、ロン毛(ただしヅラ)の学生にいちゃもんをつけるなど、明らかに「KKHH」のパロディー。

脚本・台詞もチャクラワルティー本人であるからして、他愛もないカレッジの日常シーンが続く第一幕は、インド国内のマーケットを意識した構成であろう。「サティヤ」の向こうを張って、海外の映画祭狙い野心作というわけではなさそうだ。

しかしながら、本作は一応ムンバイーが舞台となっていて、ヒンディーで撮影されている。ハイダラーバードを中心としたテルグ映画圏ではトップスターのチャクラワルティーが何故ヒンディー映画を撮りたがるのか? 南インドのスーパースター、カマル・ハッサンにしてもそうであるが、やはりヒンディー映画圏が全国区という認識があるのだろう。

ところが、キャストの顔の濃さを見ると、どうもメインの撮影はハイダラーバードで行った模様(ミュージカル・シーンのみ、少スタッフによるマレーシア・ロケあり)。まあ、予算的にはマーケットの小さいテルグ映画の枠内での製作あろうから、ボリウッド・メジャーと比べるのは酷であるが、その分、ローテクで頑張ってはいる。

ストーリーはと言うと、はじめはガヤートリーを無視していたドゥルガーが一転して彼女を追いかけ始めると、今度はガヤートリーが彼を毛嫌いし始める。「テルグ映画はリアリズム重視」というふれこみも手伝って、チャクラワルティーは例の「サティヤ」の暗いイメージが強かったが、なかなかノリがよく、これでは「テルグ語映画界のシャー・ルク・カーン」ではないか。

ところで、このガヤートリーに扮する小奇麗だが華のない若手女優。どこかで見た顔だと思ったら、なんとMujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って!)(2000)に出ていたセカンド・ヒロイン、プリヤンカー・トリヴェディであった!

さて、この学園ドラマがいつの間にか、町を仕切るならず者たちの話になってくる。 こちらは、指をへし折ったり、手にペンを突き刺すなどボリウッド・メジャー作品ではあまりお目にかからないエグイ暴力描写でキャンパスの恋愛劇に水と油。これは、ガヤートリーの父親シヴァジーがマネージャーを務める映画館にたむろする連中の描写で、一応伏線として機能する。

学園ドラマの方は、例によって娘のガヤートリーが男と付き合っていることを知ったシヴァジーが無理矢理縁談を進めてしまう。それを知ったドゥルガーが彼女との結婚を宣言! 父親は猛反対し、このトラブルを知ったターパー・ファミリーのならず者たちがお節介にもドゥルガーを締め上げようとする。ここで、逆にドゥルガーがならず者を殴り倒してゆくのだが、そのひとりに刺されて重態となる。

ここから、ストーリーは意外な展開にシフトする。実は、シヴァジーに肩入れするならず者とは別のマフィアがあり、ドゥルガーはそのボスの息子だったのだ。一氣にマフィア同志の抗争に発展し、血で血を洗う殺戮が起きる。

まったくの災難は、娘をドゥルガーに惚れられたシヴァジー家だ。警察はターパー・ファミリーに肩入れするし、マフィア同志の争いに翻弄されてしまう。父親シヴァジーを演じるアンジャン・スリワスターワは嫌みなオヤヂ役が多いが、小心者というキャラクターが売りで、ターパー兄貴に扮するサヤージ・シンディーに恫喝されっ放し。

今回のサヤージは、Shool(槍)」(1999)、Daman(制裁)(2000)で見せた鬼氣迫るキレ具合と例の甲高い声は抑え、パンチパーマの不敵なボスに徹していてかえって不氣味だ。

その他サポーティングの面々はヒンディー映画では見慣れぬ顔ばかりだが、カレッジ仲間の太っちょグルーダット役スニーハルはR・G・VプロデュースのLove Ke Liye Kuch Bhi Karega(愛のために何もかも)(2001)にジョニー・リーヴァルをカモる詐欺師アージ・カプール役で出演。

撮影時期はMohabbatein(愛)(2000)、Kaho Na…Pyaar Hai(言って…愛してるって)(2000)のポスターが貼られていることからも2000年秋以降に行われたようだ。

ということは、本作と同じ「ロミオとジュリエット」物のJosh(激情)(2000)はリリース済みということで、またもやチャクラワルティーが抱くシャー・ルクへの過剰な意識を感じてしまうのであった。

なお、北インドでの興行はかなりの低迷に終わったが、それでもナーナー・パーテーカル「Vadh」(2002)、新人映画「Yeh Mohabbatein Hai(これが愛だ!)(2002)、ゴーヴィンダのハズレ作Pyaar Diwana Hota Hai(恋に狂って)(2002)よりは収益を上げている(大差なしだが…)。

*追記 2011,02,01
>チャクラワルティー
チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」CC2C(2009)のミトゥン・チャクラワルティーとは別人。本作では単にチャクラワルティー(Chekravarty)とクレジットされているが、ミトゥン・ダー(兄貴)と混乱するのを避けるためかJ・D・チャクラワルティーとも表記される。

ラーム・ゴーパル・ヴァルマーの監督デビュー作「Shiva」(1989)で俳優デビューしただけあって「Satya」サティヤ(1998)の他、R・G・V製作のホラー・オムニバス「Darna Zaroori Hai(恐怖の保証)」(2006)やダウナー系ブラック・コメディーDarwaza Baandh Rakho(ドアを閉めとけ)」(2006)で監督を務める他、ゼロ年代中のブーイングNo.1「Ram Gopal Varma Ki Aag(ラーム・ゴーパル・ヴァルマーの火)」(2007)に出演。シャー・ルクへの対抗意識を今も持っている訳ではないだろうが、「Josh」(2009=テルグ)という出演作も。
本作での演技はともかく、RGV製作のホラー「Vaastu Shastra」(2004)ではスシュミター・セーンの夫役では控えめな芝居が好印象であった。

それにしても顎じゅうの髭面で学園ヒーローとは!(「太陽にほえろ!」のロッキー刑事?)
しかもサブタイトルが「It’s Not Just a Love Story」…。

日本では「インド映画」というと単一の物のように思われ、十把一絡げでどれもチープな一発芸みたいにとらえられてしまい、ボリウッド(全国区及び世界市場のグローバル・ヒンディー映画)と特色豊かなリージョナル(地方)映画の違いがなかなか理解されず残念。
アーリア系の北インド文化とドラヴィダ系の南インド文化は水と油で、映画も作品の製作費やテイスト、観客嗜好は大きく異なり、南インド映画のヒット作を南インドの映画人がボリウッド(ヒンディー映画)でリメイクする場合でも、ボリウッド水準のスリムな女優以外は入れ替える例もある。特にエグイ暴力描写は自粛の傾向にあり、特に濃厚な南インド色を持つ男優はこれまでどんなトップスターも進出を画策するも広大な市場から成るヒンディー映画において継続的な立ち位置を確立することはなかった。その壁は厚く、女優にしてもタミル映画のスター女優であったアシンアーミル・カーン主演で大作リメイクされた「Ghajni」(2008)で引き続きヒロインとして出演するもボリウッドの映画賞では「新人」扱いとなった。

本作のチャクラワルティーも、ヒンディー映画市場を意識してボリウッド・ネタを台詞に鏤(ちりばめ)めているが、結局、ヒンディー映画市場では芽が出ず、テルグやタミルの南インド映画界へ戻ったようだ。

その他、サポーティングはドゥルガーの学友役スネーハルWelcome(2007)に、ガヤトリーの父親役アンジャン・スリワースタWhat’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)などに出演している。

That's Bollywood 2000's

ゼロ年代のボリウッドを1冊に凝縮したムック第3弾!

関連する記事

タグ: , , , , ,