Karan Arjun(1995)#185
「Karan Arjun」カランとアルジュン ★★★★★ 01.01.01 UP/01.04.14 Re
監督:ラーケーシュ・ローシャン/脚本:サチン・ボゥミック、ラヴィ・カプール/台詞:アンワル・カーン/撮影:カーカー・タークル/作詞:インディヴァル/音楽:ラージェーシュ・ローシャン/美術:R・ヴェルマン/アクション:ビクー・ヴェルマー/振付:チンニー・プラカーシュ、レーカー・プラカーシュ/編集:サンジャイ・ヴェルマー
出演:シャー・ルク・カーン、サルマーン・カーン、カジョール、マムター・クルカルニー、アムリーシュ・プリー、ラーキー・グルザール、ジョニー・リーヴァル、ランジート、アルジュン、アーシフ・シェイク、アローク・サラーフ、スレーシュ・チャトワル、ディニーシュ・ヒングー、サリーム・カーン、ケヴィン・パッカード
公開日:1995年1月13日 (年間トップ2、1990年代トップ5ヒット!)
日本上映:1998年、1999年(大インド映画祭)
STORY
一族の遺産相続人となるカラン(サルマーン)とアルジュン(シャー・ルク)をドルジャン・スィン(アムリーシュ)に殺された母ドゥルガー(ラーキー)が復讐を血の女神カーリーに祈り、ふたりはアジャイ(サルマーン)とヴィジャイ(シャー・ルク)として輪廻転生する・・・。
Revie-U
1998年と99年のインド映画祭で上映された「カランとアルジュン」。旬のシャー・ルク・カーンとサルマーン・カーンはじめ、カジョール、アムリーシュ・プリー、ジョニー・リーヴァルなどマルチスター・キャストによる豪華復讐大活劇(なんとタイトルバックまで25分! 転生の幼年時代を語るタイトルバックが終わるまで含めると28分)。
監督は、2000年に息子リティク・ローシャンを大ブレイクさせたヒットメーカー、ラーケーシュ・ローシャン(リティクは、この作品にスタッフとして参加しているという)。音楽担当のラージェーシュは弟にあたる(ふたりの父親は有名な作曲家であった)。
サルマーンのマッチョなファイトシーンに流れる「ターミネーター」をパクった背景音楽の臆面のなさもナイス。ラーキーは以後、復讐の母として定着したのか、「Soldier」(2000)でも額にタトゥーイングされる呪われた母親を演じていた。
ダイナミックな展開はインド映画初心者でも魅了されるだろうが、ヒンドゥー神話を知っておくと面白さが倍増される。主人公たち(悪役のアムリーシュたちさえ)が祈るカーリーはシヴァの妻パールヴァーティーの化身。血を好む女神として知られるが、母親の名であるドゥルガーはカーリーをさらにパワーアップさせた血の女神で抜群の呪術力を持つ。
因みにプロローグの前世シーンでシャー・ルクとサルマーンが戯れているのは、カランとアルジュンがまだ子供(少年)という設定だから。
*追記 2011,01,30
なによりシャー・ルク・カーンとサルマーン・カーンが仲良く?共演しているのがよい。
>シャー・ルク・カーン
シャー・ルクは、涙目こそ見せないものの、90年代とあって血まみれ・震え声。それでも陽氣なキャラクターが同年のトップ1ヒット「DDLJ」(1995)を彷彿。
>サルマーン・カーン
過去生がフラッシュバックするのは、サルマーン主演作「Tumko Na Bhool Paayenge(君を絶対忘れない)」(2002)でセルフ・パロディされている(それを口上するのが本作にも出演のジョニー・リーヴァル)。
サルマーン扮する転生したアジャイは怒りに満ちて闘わずにはいられない男。アル中の父親が危篤となって手術代を稼ぐためにストリート・ファイトで八百長を企むが魂に刻まれた怒りが爆発、意に反して相手をぶちのめしてしまう(この対戦相手がスター・トレーナーのケヴィン・パッカード。白人顔で「Lafangey Parindey(無頼の鳥)」のニール・ニティン・ムケーシュを思い出させる)。
>カジョール
これまた野性的な魅力全開のカジョール。
スカートの下に黒のスパッツを穿いているのは、90年代のセンサー(検閲)対策。スパッツを穿いているので、いくらスカートがまくれあがっても問題なし、という言い訳から。
その父親ランジートは、70年代からアミターブ・バッチャンなどの映画で定番敵役。近年、「Welcome」(2007)など顔見せ出演で復帰。
>マムター・クルカルニー
アジャイに想いを寄せる幼馴染みのビンディヤー役が「Chhpa Rustam(大勇者)」(2001)のマムター・クルカルニー。ビンディヤー(額の飾り)の名に反して幼年期から男勝りの性格。そのくせアジャイにまとわりつくものだから「おまえが女だって? 鏡を見てみろ」と言われ、ひとり部屋に帰り、シャツを脱いで鏡を見る。そして野球帽を脱ぎ捨てるや、長い黒髪があふれ、色白の肌に相まって実に艶めかしく、肌も露わなチョーリーとガーグラーのナンバル「ek munda」(ラター・マンゲーシュカル)に突入。無関心を装って歩くヒーローに踊りながらまとわり付くスタイルは群舞が盛んになる前の70年代からの定番。
>復讐の母
演ずるは、グルザール夫人のラーキー。復讐の母はジャッキー・シュロフとアニル・カプールが兄弟を演じた「Ram Lakhan(ラームとラカン)」(1989)に続く。さらに本作を意識したボビー・デーオール主演「Soldier」(1998)でもバージョン・アップ。
これらのキャリアを活かして、アイシュワリヤー・ラーイ共演の「Dil ka Rishta(心の関係)」(2003)では、何も言わない立ち姿だけで恐れおののかすというキャラクターに。
>アムリーシュ・プリー
極悪な大地主は、この時期の定番。それでいて最愛の息子を亡くすや狂氣に至る父親としての哀しさもしっかり演じ切っている。
シャー・ルク、カジョールとはこの年「DDLJ」でも共演。厳格だが娘を愛していた「DDLJ」とは異なり、敵役全開でカジョールを締め上げる。
そのカーリー寺院で祈りを捧げる様は「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」を彷彿。
ちなみに、アムリーシュ分するドゥルジャン・スィンが住む(つまりは、カランとアルジュンが相続するはずであった)ハーヴェリー(宮殿)は、ラージャスターン州にあるホテル・サスリカ・パレス。
シャー・ルク扮するヴィジャイの愛馬モギャンボは、アムリーシュのコミカルな悪役で知られる「Mr.India」Mr.インディア(1987)の役名からの引用。
そのヴィジャイがカジョール扮するソニアにべったりまとわりついてパチンコを教えるのは国民映画「Sholay」炎(1975)におけるヴィール(ダルメンドラ)とバサンティ(ヘーマー・マーリニー)への敬愛。
同様に、砂漠の中で野営し銃の密売取引を行うドゥルジャンたちにトライブ(先住民)・ダンサーの宴で氣を惹き銃器を奪うのは、「Sholay」のジプシー・ナンバル「mehbooba mehbooba(愛される人よ)」をなぞってのこと。
美術が垢抜けないのは、この頃の特徴。50~80年代初頭まで栄華を誇ったヒンディー映画美術も80年代半ばにビデオによる海賊上映に大打撃を受け一氣に映画界が衰退したのと世代交代が重なってのこと。これは90年代末まで続くが、ボリウッド・メジャーに関して言えば、わずか数年で国際水準のクオリティに達し舌を巻くほど。
一方、サチン・ボゥミックとラヴィ・カプールによる脚本は、往年のヒットメーカー、サリーム-ジャーヴェードの仕事を見るよう。
母へ捧げるチュリー(ガラス製の腕輪)に始まり母からヒロインたちへ贈られるチュリーで終わる、
転生したアジャイとヴィジャイが互いに知り合う前から電話の取り次ぎで話をし、知り合う運命であることが示される。
アル中の父親から取り上げた酒瓶をアジャイが投げるや馬上からパチンコで標的の瓶をパチンコで狙い撃ちする展開など脚本における構成であり、膨大なフィルムをまわして編集の段階でなんとかまとめるアメリカ映画とは大違い。
しかも、敵側にボディガードとして雇われたアジャイとヴィジャイが肉弾戦に(ここで母ドゥルガーがカーリーに祈り、ふたりの間にカミナリが落ち、前世の記憶が蘇る)。
ドゥルジャン・スィンに拉致されたソニア(カジョール)の様子を探りに、ヴィジャイの友人ジョニー・リーヴァルが道化芝居でドゥルジャン・スィンのハーヴェリーに潜入するのは、「Raavan」ラーヴァン(2010)で下敷きにされたインド神話「ラーマヤナ」におけるハヌマーン神がランカー島へと先に潜入し、シーター妃に援軍の到来を告げるエピソードに通ずる。
ラーケーシュ・ローシャンの演出は荒削りながらダイナミック。観る者の心を揺さぶり、紛れもなく彼の代表作と言えよう。
製作費4カロール(4000万ルピー。当時のレート1ルピー約3円で1億2000万円。物価換算で12億円)に対し興収は13.5倍の54カロール(5億4000万ルピー:16億2000万円。物価換算で162億円)とも32カロール(3億2000万ルピー:9億6000万円。物価換算で96億円)とも言われるメガヒットとなった。
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