Mujhe Kucch Kehna Hai(2001)#184
Mujhe Kucch Kehna Hai(私に何か言わせて) 01.08.22 ★★★
製作:ヴァシュー・バグナーニー/監督:サティーシュ・コゥーシク/原案:ルミー・ジャーファリー/脚本・台詞:ボールー・カーン、アマン・ジャーファリー/音楽:アヌー・マリック/詞:サミール/撮影:ジョニー・ラール/振付:アーメド・カーン/美術:サミール・チャンダ/編集:サンジャイ・ヴェルマー
出演:トゥシャール・カプール、カリーナー・カプール、リンキー・カンナー、アムリーシュ・プリー、アロークナート、デリープ・ターヒル、ヒマーニー・シヴプリー、パンカジ・べーリー、ヘーマント・パーンディー、ヴラジェーシュ・ヒルジー
海外ロケ:ニュージーランド
公開日:2001年5月 25日(年間10位/日本未公開)
STORY
カレッジに通うカラン(トゥシャール)は、町で見かけた美女プージャー(カリーナー)にひと目惚れ。学業そっちのけで彼女を想い抱き続ける。ドライブ中、家族連れのスクーターから落ちそうになった子供を助けるカランを目撃し、プージャーも彼に恋心を抱く。妹プリヤー(リンキー)をカルカーまで送ったカランはヒッチハイク中、プージャーのクルマに出くわす。彼女の運転で走り出したものの、話に夢中になったプージャーは運転を誤り、クルマは断崖から落ちてしまう・・・。
Revie-U
デビューを飾ったトゥシャール・カプール。オープニングのモテモテ夢とインターミッション寸前の事故シークェンスはリティク・ローシャン主演「Kaho Naa…Pyaar Hai(言って…愛してるって)」(2000)を意識した作り。カレッジのコミカルなパロディ・シーンでは「KNPH」の曲がアレンジされて流れ出すし、またシャー・ルク・カーン主演「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)も定番化して組み込まれている。
トゥシャールは甘いマスクというより、ちょっと小粒な優男。ダンスも踊れる。リティクのような絶対的スーパースターのオーラが感じられないので、この先どうなるか、映画の役柄して心配してしまうが、往年のトップスター、ジーテンドラの息子だけに今後も主演作には事欠かないだろう。
デビュー作ということで、トゥシャールをリティクに次ぐスーパースターに押し出したいようだが、ストーリーが弱いためにキャラクターとしてもパッとしないのが残念。なにしろ、全編ほとんどトゥシャール扮するカランはプージャーのことを想い描いてボーッとしてるだけ。
口説きに出たり、親が決めた許婚(いいなづけ)に対して断固愛を貫こうともせず、バンドを組みながらライヴ・シーンもなく強烈な個性が感じられないのだ。ここでシャー・ルクなら口八丁手八丁で取り入ろうと画策するだろうし、サルマーン・カーンなら強引に服を脱いで自慢の筋肉を見せびらかせるだろうし、リティクなら事故った段階で後半は別人物で登場するだろうから。
活劇シーンもあるが、妹プリヤーをからかった不良たちを叩きのめす程度でストーリーの枝葉でしかない。
プージャーのアメリカ留学が決まると、カランは「彼女の夢を邪魔しないように」愛を諦めてしまう。それも、親の決めたかなり年上の銀行員と結婚してしまうプリヤーとの「秘密」としてセンチメンタルに描かれるだけなのだ。
古風と今風が同居するマサーラー・ムービーだが、反面、自家用車(お抱え運転手も持ちながらも)を運転する現代的なヒロイン像や、オープニングの夢のシーンでクラブに乗り込んだ女の子たちが男漁り(?!)するなど「インド(映画)も変わったな」と思わされる。
アムリーシュ・プリーは堅物オヤジ役をデリープ・ターヒルに譲り、珍しく「話のワカル祖父」役。
妹プリヤーに扮するリンキー・カンナーは、1999年度Zee Cine Awardsの女性新人賞(姉はトゥインクル・カンナー)。本作でも可愛らしい妹役が印象的。
ほとんど前半、イメージ・シーンのみ登場のカリーナー・カプールは、夕陽の中で踊る姿が艶やか。砂漠を舞台にしたデビュー作「Refugee(難民)」(2000)に続く第2作となるが、都会的な役柄も絵になることを証明した。
フィルターワークを多用したジョニー・ラールのダイナミックな撮影も素晴らしい。興行的にもまずまずのヒットであった。
*追記 2006,05,01
本作のタイトルは、今も絶大な人氣を誇るロマンス定番「Bobby」ボビー(1973)の花園ナンバル「mujhe kuch kehna hai」(作詞:アナン(=アーナンド)・バクシー/作曲:ラクシュミーカーント-ピャーレーラール)からのイタダキ。プレイバックは、ラター・マンゲーシュカルとシャイレンドラ・スィンが、ダブル・デビューしたディンプル・カパーディヤー(トゥインクルの母)とリシ・カプールにプレイバックしている。

(c)Puja Entertainment, 2001.
*追記 2011,01,29
>トゥシャール・カプール
撮影監督ジョニー・ラールのフィルターワークも手伝って、ニュージーランドの雄大な風景をバックに力んで歌う主題歌「Mujhe Kucch Kehna Hai」(プレイバックはKK=ケイケイ)がなかなかにそそらせたものの、ヒーロー路線はアミターブ・バッチャン、アクシャイ・クマール共演「Khakee(制服)」(2004)まで。
その後はボンクラ・コメディへシフト、「Golmaal(ごまかし)」シリーズが好調。実録映画「Shootout at Lokhandwala」(2007)でのグンダー(愚連隊)役がまずまず。
>カリーナー・カプール
デビュー当初とあって実に初々しい。セクシー・ステージ・ナンバル「dupatta」ではステップもシャープに決まり、スター女優としての風格が見て取れる。
>リティクに次ぐスーパースターに
前年にデビューしたリティク・ローシャンの熱狂ぶりは、その翌年に公開された映画の数々で見て取れる。
本作ではカランのボンクラ仲間に「リティック」という名前がいて、女子大生から痛烈な手紙を受けるも「あなたの名前はリティックなのよね。ああ、リティック。アイ・ラヴ・ユー!」と書かれたスケッチが用意されている。
>古風と今風が同居する
最近でこそディピカー・パドゥコーン主演「Lafangey Parindey(無頼の鳥)」(2010)で季節の移り変わりがヒンドゥーの祭りで綴られていたが、海外志向が強くなったゼロ年代は祭事シーンが激減して物寂しい思いがしたほど。
本作では冒頭がシヴァラトリ(シヴァの夜祭り)、ラクシュミー・プジャー、女性だけの祭りテージなどが取り上げられ、目を楽しませてくれる。
「maine koyi jadoo」のサビにある「piya piya」の「piya」は、もちろん「pyaar(愛)」に通ずる。
前年、ラーニー・ムカルジーとプリティー・ズィンターが愛らしく共演したサルマーン・カーン主演「Har Dil Jo Pyar Karega(すべての心が恋をする)」(2000)の「piya piya o piya」を受けてのフレーズ。
それにしてもインド人のラブ・ストーリーは実に前向き。
たまたま見かけたプージャーに想いを寄せる兄カランに妹プリヤーが問いかける。
「彼女の名前は?」
「わからない」
「…グッド。どこにいるの?」
「わからない」
「…ベリー・グッド」
こうして翌日、今度はプージャーがカランに注目する出来事が起きる。彼女が運転中、手前を走っていたスクーターに乗せられた子供が居眠りして落ちそうになる。プージャーが何度もクラクションを鳴らすもスクーターを運転する父親は氣づかない。するとバイクでやって来たカランが落ちかけた子供を掬(すく)い上げるのだ。
プージャーは町で見かけた好青年(好い行いをする青年)を見かけると持ち歩いているサイン帳にオートグラフ(サイン)を求める趣味があって、今度は彼女がカランを探そうとするのだ。
もっとも、これまたインド人らしい点も。
念願通りプージャーと知り合えたものの、まだ友情の段階。想いを告げるため、彼女の誕生日にプレゼントに凝ろうとする。ここで祖父が入れ知恵。
そのプレゼントとは、自分の血で書いたグリーティング・メッセージ! と、ここでプージャーが激怒。祖父が参考にしろと言ったのは、シャー・ルク・カーンの「Darr(恐怖)」(苦笑)。
改めて見直してみると、ゼロ年代中盤以降のクオリティは上がったものの海外志向が極端に強まった作品と異なり、何氣なく描き込まれたインド文化が和ませてくれる。