Dostana(2008)#181
ドースタナ 初回レビュー:2011.1.26
製作:カラン・ジョハール、ヒールー・ヤシュ・ジョハール/原案・脚本・監督:タルン・マンスカーニー/台詞・作詞:アンビター・ダッタ・グプタン/撮影:アヤナンカ・ボース/作詞:ヴィシャール・ダドラーニー、クマール/音楽:ヴィシャール&シェーカル/振付:ヴァイバヴィー・メルチャント、ファラー・カーン/背景音楽:サリーム-スレイマン/総合意匠:アムリター・マハール・ナカイ/衣装監督:アキ・ナルーラー/衣装デザイン:マニーシュ・マルホートラ/ヘア・スタイリスト:ナターシャー・ナエガムワーラー(Nalini of Nalini & Yasmin)/視覚効果:レッド・チリースVFX、プライム・フォーカス/編集:マナン・サーガル
出演:アビシェーク・バッチャン、ジョン・エイブラハム、プリヤンカー・チョープラー、キロン・ケール、スシュミター・バンデーラー・ムカルジー、シュリー・バワ、ボーマン・イラーニー
特別出演:ボビー・デーオール、シルパー・シェッティー
公開日:2008年11月14日(年間8位/日本未公開)
STORY
女好きのフォトグラファー、クナール(ジョン)と、これまた女好きの看護師サム(アビシェーク)は共に<宿無し>の身。ルームシェア募集のフラットを下見に行くが、女ひとり住まいのため断られる。そこで思いついたのが、ゲイのカップルを装う作戦。しかし、大家というのが若くて美人のネーハー(プリヤンカー)で・・・。
Revie-U *真相に触れています。
カラン・ジョハールが父である故ヤシュ・ジョハール製作「Dostana」(1980)を、アビシェーク・バッチャン、ジョン・エイブラハム、プリヤンカー・チョープラーでリメイク。
アナウンス当初はアミターブ・バッチャンとシャトルガン・スィナー(「Dabangg」ソナークシー・スィナーの父)がヒロイン、ズィーナト・アマンと取り合うストーリーを現代に置き換えて…と思われたが、蓋を開けてみたらアビーとジョンがゲイのカップルという「現代」的なオリジナル作品に変身。
パブリシティー・デザインにあるミントグリーンの帯は、シャー・ルク・カーン主演「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)の赤から継承。
そしてもうひとつ継承しているのが、ゲイ・ネタ。実は「KHNH」がゼロ年代のボリウッド・メジャー作品に影響を与えた隠れた功績が下ネタの解禁(苦笑)。劇中、シャー・ルクとサイーフ・アリー・カーンのゲイ・ネタで大いに笑いをとっていた。

(c)Dharma Productions, 2008.
ファッション・デザインを手がけるカランには当時からゲイ疑惑があって、逆手にとったギャグとも思えるが、旧宗主国である英国へのコンプレックスをあからさまに見せていた「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)や「家族の四季」Kabhi Khushi Kabhie Gham…(2001)とは一転、星条旗がスクリーンいっぱいに映し出された「KHNH」、本作、「マイ・ネーム・イズ・ハーン」My Name is Khan(2010)とアメリカの持ち上げぶりからして理由がありそうなもの。
(本作でマイアミをロケ地に選んだのは、ゲイ喜劇「バードケージ」のイメージからだろう)

(c)Dharma Productions, 2008.
主演は「Dhoom(騒乱)」(2004)以来となるアビシェーク・バッチャン N ジョン・エイブラハム。
大作として制作された続編「Dhoom 2」(2006)では主人公のはずが敵役リティク・ローシャンの前ですっかり霞んでしまったアビーだが、存在感もだいぶ向上。ゲイの嘘が母親に伝わり困惑する様など育ちのよい<ぼんち>な彼ならでは。
オープニング・タイトルバックからして「Paap(罪)」(2004)の数段鍛え上げた肉体でブリーフぎりぎりのセミヌードを披露するジョンは実際、その方面にもウケそう。

(C)Dharma Productions, 2008.
ヒロインのプリヤンカー・チョープラーは、リティク・ローシャン共演「Krrish」(2006)、シャー・ルク共演「DON」Don(2006)とメガヒット2本に出演。急上昇し2008年は6作品に出演。この年、スーパーモデルの成り上がりストーリー「Fashion」(2008)で演技も認められて大きな飛躍となった。
本作ではセクシーなビーチ場面はじめ、ソー・キュート。
ファッション雑誌「VERVE」に務めるネーハーは、もう少しで昇進…というところで、新任のアビマンユーに出し抜かれる。はじめは敵対心を持つものの、男やもめの彼へ次第に惹かれてゆく。
ルームシェアしながら微妙なバランスの上に<停戦>していたサムとクナールだが、新ライヴァル出現とあって、互いに出し抜き、ネーハーをデートに誘う。しかし、彼女にとっては、氣の置けないゲイ友との楽しいひとときでしかない。効果が上がらないことから、ふたりはアビマンユーと息子ヴィールに<工作>をかけて引き裂きにかかるが、それが露呈しネーハーの怒りに触れてしまうのだった。
そのアビマンユー役が、サプライズのボビー・デーオール! カジョール+マニーシャー・コイララ共演「Gupt(秘密)」(1997)、「Soldier」(1998)とヒットを飛ばしマネーメイキング・スターにあったものの、ゼロ年代はそれなりのポジションに押しやられて久しかったが、前年のヤシュ・ラージ作品「Jhoom Barabar Jhoom(酔ってまわって)」(2007)でアビーとトップ・メジャーに復帰。
しかも本作では、しっかり場をさらって見せる。
サポーティングは、ネーハーの伯母役に「Golmaal(ごまかし)」(2006)のスシュミター・ムカルジー。
サムの母に定番キロン・ケール。息子がゲイと知って卒倒、偽装と知らずに息子を受け入れ、クナールに嫁の儀式を施すのが可笑しい。ゲイを笑いにしたライト・コメディに思えて、インド映画らしい家族の情愛をもたらすのがさすが。
そして、ネーハーの上司Mに、ボーマン・イラーニー。衣装コーディネイトといい仕草といいゲイそのもの。彼のフィルモグラフィの中でも出色の役作りであろう。

(c)Dharma Productions, 2008.
それにしても舞台がマイアミ、サムとクナールの出会い(嘘)スケッチのためだけにヴェニス・ロケを敢行、サムの愛車がピンク・キャディラックと実にバブリー。
特にネーハーの広大なフラットは海に面し、夜景にしろ未明にしろテラスからの眺めが絶景。驚くべきは、これだけゴージャスなフラットを借り切ってロケされたのではなく、この背景がすべてブルーバック・デジタル合成のセット撮影だということ。空氣感を生み出す照明術など、そのクオリティには感嘆する他ない。
脚本・監督のタルン・マンスカーニーは「KKHH」からシャー・ルクの主立った作品の助監督を務め、本作で監督デビュー。次回作はカラン製作「KKHH」のアニメ版「Koochie Koochie Hota Hai」を制作中。
また、本作の続編「Dostana 2」もアナウンス済み。アビー N ジョンに新ヒロインがカトリーナー・ケイフ、「Housefull(満員御礼)」(2010)のリティーシュ・デーシュムークが共演予定。
オープニング・タイトルバックに、シルパー・シェッティーが特別出演。もっとも踊れるはずの彼女に対して振付が今ひとつなため、妹のシャミター・シェッティーかと思ったほど。
その他のボリ・ネタでは、お家芸とも言える「K3G」、「KKHH」ネタが存分に用意されていて逆に氣恥ずかしいくらい。
「Sholay」炎(1975)に加え、クナールに仕組まれたサムが男性ストリップのステージに上げられ熟女の群れにキス責めを受けるスケッチで流れるのは、アミターブ主演「Hum」タイガー 炎の三兄弟(1991)の酒場ナンバル「jumma chumma de de(キス責めして)」(スデーシュ・ボースレー&カヴィター・クリシュナムールティー)。
また、サムとクナールがアビマンユーの息子ヴィールを言いくるめる場面でアーミル・カーン製作の名作「Taare Zameen Par(地上の星たち)」(2007)が映し出される。
クライマックスはインド映画史上初の…(笑)。
そして、これは男の友情物語でなく、男女の友情がテーマなのであった。
*追記2012.02.02
元ネタは、トム・ハンクスが無名時代に出演したTVシリアル「Bosom Buddies」(1980〜1982)と推測。アパートメントから追い出された独身男2名が女装して女性専用の部屋を借りるという設定。番組は2シーズンで早々に打ち切られたが、2007年に米国内でDVD化されているため、タイミング的にあり得そうなイタダキ。
www.facebook.com/namastebollywoodjapan