Soldier(1998)#180
Soldier 01.05.18UP/02.08.22 Re ★★★★★
製作:クマール・S・ラウラーニー、ラーメーシュ・S・ラウラーニー/監督:アッバース-マスターン/ストーリー・脚本:シャーム・ゴーエル/脚本:サーチン・ボーミック/台詞:ジャーヴェード・シッディーク/撮影:トーマス・A・ザビエル/音楽:アヌー・マリック/詞:サミール/振付:サロージ・カーン、ガネーシュ・アチャルヤー/背景音楽:スレンデール・ソーディー/美術:シャロミスター・ローイ/アクション:故アクバル・バクシー/編集:ハッサン・A・ブルマワーラー
出演:ボビー・デーオール、プリティー・ズィンター、ラーキー・グルザール、ファリーダー・ジャラール、 ジョニー・リーヴァル、スレーシュ・オベローイ、ダリープ・タヒル、シャラート・サクセーナ、アーシーシュ・ヴィダヤールティー、サリーム・ゴース、シータル・スヴァルナース、ジートゥ・ヴェルマー
特別出演:クルブーシャン・カールバンダー、パンカジ・ディール、プリヤンカー、アムルト・パテール
公開日:1998年11月20日 (年間トップ2ヒット!)
Filmfare Awards:アクション監督賞/新人賞(プリティー・ズィンター)
STORY
武器弾薬強奪を計画したヴィレンドラ(ダリープ)、プラタープ(スレーシュ)らDK一味に軍人の父を殺された過去を持つ「ソルジャー」ことヴィッキーことラージ(ボビー)。ボンベイ警察のACPカプール(アーシーシュ)より極秘の任務を帯びた彼は、武器密売組織に潜入するため、シドニー在住の令嬢プリティー(プリティー)に近づく。しかし、ひとつだけ誤算が生じた。それは、彼女が「ソルジャー」に恋をしたことだった。果たして復讐は・・・。
Revie-U
兄弟二人組のディレクター・デュオ、アッバース-マスターンだけあって、B級テイスト満載! 思わせぶりの演出と二重三十重に入り組んだ構成、ワイルドなアクションとラヴコメから予想を覆す展開は、カルト・ムービーと言えよう。
長髪にサングラスのボビー・デーオール演ずる「ソールジャ」は、まるで「ドーベルマン」(1997=仏)のヴァンサン・カッセルか、「最も危険な遊戯」(1978=東映セントラル・フィルム)の鳴海昌平(松田優作)そのもの。
鼻の下がだんだん伸びるボビーのカッコよさは、破綻ギリギリ。そこがまたよい。
ヒロインのプリティー・ズィンターは、「ディル・セ」Dil Se…(1998)に続くデビュー2作目。登場ナンバル「mera khwabon mein jo aaye(私の夢に現れて)」では、「七年目の浮気」(1955=米)におけるマリリン・モンローの伝説的なスカート吹き上げシーンを再現!! ややぽっちゃりした彼女がふりまく「健康的なお色気」は、ソルジャーならずともメロメロになってしまうこと請け合い!
序幕早々からスレーシュ・オベローイ、ダリープ・タヒル、アーシーシュ・ヴィダヤールティー、シャラート・サクセーナ等々、ボリウッドの名敵役・個性派役者の面々が集結しているのもうれしい(特にダリープがダンディ!)。
母親女優、ファリーダー・ジャラールとラーキーが競演(ヴィレンドラに妻子がある第1幕の設定もポイント)。出番はファリーダーがやや多いが、ラーキーは「カランとアルジュン」Karan Arjun(1995)の復讐の母を更にショッキングにしたシーンが用意されている。
なお、ボンベイ警察署長にクルブーシャン・カールバンダー、序幕で殺されるラージの父特ヴィジャイに「Baadshah(帝王)」(1999)の悪徳刑事役パンカジ・ディールが特別出演。
コメディー・リリーフ、ジョニー・リーヴァルが場面ごとに登場する瞼の兄弟一人五役という荒技は、「Johny Mera Naam(俺の名はジョニー)」(1970)におけるI・S・ジョハールの一人三役をスープアップしたもの。
本作のストーリー・ラインは、「Baazigar(賭ける男)」(1993)と大して変わらない復讐劇だが、「ワルを装った主人公が殺された父親の友人である警察官から秘かに任務を受けて国際的な犯罪組織と闘う」という点では(国外ロケも含めて)共通項があり、脚本作りに先の「Johny Mera Naam」も念頭に置いていることだろう。
アヌー・マリックの音楽は粒ぞろいで、クマール・サーヌーの甘い低音、アルカー・ヤーグニクの雅な美声、ファンキーなジャスピンデール・ナールラーと、どれも楽しめる。
ミュージカル・シーンでは、サロージ・カーン、ガネーシュのシンプルな振付にオーストラリア&ニュージーランドの借景ロケが効果的(タイトル・ナンバル「soldier soldier」では、オペラハウスを見下ろすシドニー・ベイブリッジの天辺に立ったボビー本人がドラムを叩き、驚かされる!!! トム・クルーズなど裸足で逃げ出しそうだ)。
また、スレンデール・ソーディーの手によるスコアも印象的。
故アクバル・バクシーの素っ恍けたアクション・センスも冴え渡り、ヴィッキーが情報を頼りにインディアン・レストランに乗り込むくだりは、ボリウッドのコメディ・アクション史上に残る名スケッチといえよう。
とにかく、B級アクション・ファンにはオススメの逸品。もっとも、本作は「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)に続くトップ2とヒットはA級!! 意外にもボビーはマネー・メイキング・スターなのだった。
*追記 205,10,05
なんとプリティーがFilmfare Awards:新人賞、Screen Awards新人賞を、故アクバル・バクシーがアクション監督賞をそれぞれダブル受賞! また、玄人筋のScreen Awardsだけにハッサン・A・ブルマワーラーの編集賞も頷ける。
*追記 2011,01,25
>ボビー・デーオール
ゼロ年代以降も独特のポジションを築き、リスペクト作品「Nanhe Jaisalmer」(2007)が作られるまでに。
現在、父ダルメンドラ、兄サニー・デーオールとの親子共演コメディ「Yamla Pagla Deewana(阿呆に馬鹿に恋狂い)」(2011)がヒット中。
>プリティー・ズィンター
「ディル・セ 心から」Dil Se..(1998)とデビュー分ける本作、とにかく愛らしくボビーでなくとも鼻の下が伸びそう。
ライバル的立ち位置にあったラーニー・ムカルジーと共に人氣のピークから一転、オファーが来なくなってしまったのが残念(ラーニーは久々に出演した実話ベースの社会派「No One Killed Jessica」(2011)が好評)。
>ラーキー
作詞・脚本・映画監督グルザールの妻。70年代はアミターブ・バッチャンの相手役を務め、80年代は母親役。復讐の母は「Ram Lakhan(ラームとラカン)」(1989)、「Karan Arjun」カランとアルジュン(1995)、そして本作と段々バージョン・アップ。
>スレーシュ・オベローイ
東京裁判を扱った東映「プライド 運命の瞬間」(1998)にパール判事役で来日出演。
息子のヴィヴェーク・オベローイが「Company」(2001)でデビュー。父親が為し得なかった<ヒーロー>としてスターに。
>アッバース-マスターン
B級テイストを心情にする兄弟監督。90年代のヒットメーカーがゼロ年代の波に乗れず低迷を余儀なくされた中で、「Race」(2008)で作品クオリティもA級に昇格。続編「Race 2」や米「ミニミニ大作戦」のリメイクがアナウンスされている(「ミニミニ〜」は、恐らくタタ・ナノでカー・チェイスと予想)。
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