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Kartoos(1999)#174

2011.01.19
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

KartoosKartoos(弾頭) 01.12.03 ★★
カルトース

製作:フィローズ・A・ナディアドワーラー/監督:マヘーシュ・バット/原案・脚本:ロビン・バット、アカーシュ・クラーナー/台詞:アナン(=アーナンド)・ヴァルダン/撮影:ボーシャン・パテール/音楽:ウスタッド・ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン、アヌー・マリック、バリー・サグー/詞:マジローン・スルターンプーリー/振付:ファラー・カーン、ガネーシュ、ガネーシュ・ヘーグデー

出演:サンジャイ・ダット、ジャッキー・シュロフ、マニーシャー・コイララ、グルシャン・グローヴァル、アスラーニー、ティナ、ラザック・カーン

公開日:1999年5月7日(年間26位/日本未公開)

STORY
海外から無差別テロを行うアンダーグラウンドのボス、ジャガト(グルシャン)を制裁するため、ボンベイの熱血警官ジャイ(ジャッキー)は、凶暴な囚人ジート(サンジャイ)を超法規ヒットマンに仕立て上げ、海外へ送り出す。だが、ジートは空港で出会ったミニー(マニーシャー)と恋に落ちてしまい・・・。

Revie-U
警官のジャッキー・シュロフが囚人サンジャイ・ダットを堀の外へ連れ出す、と言えば、Jung(闘い)(2000)を思い出す。

オープニングのテロ・シーン。爆弾が仕掛けられた公園で遊ぶ子供たちのモンタージュは米「T2」そのまま、子供たちが歌う童謡は名作「戦争のはらわた」を思わせる。エクステンションによるロン毛メイクの囚人サンジャイが手足を鎖で繋がれ独房から護送されるのは「ザ・ロック」、そして先の「Jung」にも引き継がれている。

だが、本作は基本的に仏「ニキータ」の翻案である。ボリウッドのリュック・ベッソン物は、「レオン」がBichhoo(サソリ)(2000)としてフルコピーされているので2本揃っていることになる。

しかしながら、「ニキータ」は潜在的な暴力を秘めた少女が殺し屋となることでより可憐な少女性を炙り出そうとするのがベッソンの狙いであった。いくら愛を知ったとは言え、これをサンジャイに置き換えたところで面白味に欠けるのは当然だ。企画の段階で失敗と言える。脚本にロビン・バットの名が連ねられているが、やはり今回は不調であった。全体に凡庸な印象なのは、Duplicate(瓜二つ)(1998)同様、冴えているとは言い難いマヘーシュ・バットの演出にある。

無差別テロに巻き込まれた被害者の少女や遺族の訴えに胸を痛め、海外からテロを指示するアンダーワールドの大物を超法規的処理しようとする熱血警官ジャイ・スーリヤヴァンシーのキャラクターも、ジート以上の冷血で、第3幕は彼の存在が脅威となって実質の敵役となる。演じるジャッキーは例の如く虎目を光らせているが、役そのものが単調であるのが残念だ。

サンジャイ扮するジート・バルラージは、警察署に乗り込んでの銃撃戦、裁判所よりの脱走を厭わない極悪の野獣ながら意外とナイーヴな青年。そのために「ニキータ」そのままの殺しの司令に悩むのだが・・・。

「最高の映画俳優は、誰が見てもまるで演技を感じさせない程にまで、その役をもってゆく」とは、マイケル・ケインの弁であるが、サンジャイが「最高の映画俳優」であるかは別として、彼が見せる力みのないリアクションは毎回感心させられる。

縁談のためにロンドンの伯父を訪ねるミニー役が、マニーシャー・コイララの役どころ。英語も苦手、海外渡航も初めてというのをひた隠して、飛行機に乗り込むのが可笑しい。

設定上はロンドン・シーンもあるものの、サンシティ、ケープタウン、ヨハネスブルグなど南アフリカでアウトドア・ロケーションが行われた。わずかにアンダー氣味の乾いたルックに、ウスタッド・ヌスラット・ファテ・アリー・ハーンの深遠なヴォーカルがよくマッチしている。

またデジタライズされたヴァーチャル・バックグラウンドでのミュージカル・ナンバー「teri yaad ayi」は、プロモーション・クリップのディレクター、ケン・ゴーシュの手によるもの。シュールめいた心象的なコンテはHey Ram!(神よ!)(2000)でも見られ、Dil Hi Dil Mein(心は心に)(2000)などヴァーチャル・ミュージカル・シーンはこの時期のモードでもあった。

サポーティングは、特別出演程度の出番ながらアンダーグラウンドのドン、ジャガト・ジョギア役にグルシャン・グローヴァルが白髪白髭で登場。ジャッキーの部下に第1幕のみ、ラザック・カーンが。

そして、超法規ミッションの部下サークシー役に、C級ローカル映画Aaag Hi Aag(火には火を)でお色気殺し屋マダムを演じ、ジャッキーとも共演済み、Baaghi(反逆者)(2000)でセカンド・ヒロインに昇格したティナが配されている。

氣になるクリーナー役であるが、残念ながら登場せず。ジャッキー、サンジャイに一目置くようなキャスティングとなると、アミターブ・バッチャン?? ビッグスターは無理として、味のあるバイブレイヤーを選ぶとすると、シャクティ・カプールアヌパム・ケールあたりか。どうせなら、「Bichhoo」ばりにフルコピーして頂きたかった。

*追記 2011,01,20
>ウスタッド・ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン
カワリー(=カッワーリー/カウワーリー)の帝王的存在、故ヌスラット・ファテ・アリー・ハーンのこと。「ウスタッド」は「楽匠」の意味で敬称として用いる。
フィルミーの王道的女性プレイバック・シンガー、アルカー・ヤーグニクとのデュエットが心地よい。

監督のマヘーシュ・バットは自身の女性関係を赤裸々に描いたアート系「Saaransh(命ふたたび)」(1984)でモスクワ国際映画祭で特別賞を受賞するも、その後は米「狼男アメリカン」のイタダキなど商業路線へシフト。ドラッグ問題を起こしたサンジャイをさっそく起用し、Naam(名前)」(1986)を制作。前作Duplicate(瓜二つ)」(1998)など98〜99作の間で6本も監督作を手がけるが、本作の後は監督業からは離れ、脚本・製作、TVホストなどを務めている。いずれも演出は大味。

ただし、ミニーと婚約者を見送った普通のシーンから一転、立ち尽くすサンジャイの脳内映像となり、デジタル合成による砂漠と複数のミニーが現れる幻覚シーンはカマル・ハッサン製作・主演Hey Ram!(神よ!)」(2000)にも影響を与えたようにも思える。そして、サンジャイが彼女の名を叫ぶやヌスラットをフィーチャルした幻影ナンバル「teri yaad(君の思い出)」に雪崩込み、砂漠に鉄骨から組み上がるマスジド(モスク)の3次元CGIが視覚化。砂漠の民、未来の戦士、ゾンビ(「スリラー」風)などのバックダンサーを従えてのミュージカルなど、破れかぶれな演出は問答無用に引き込ませるものがある。

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