Chhupa Rustam(2001)#171
Chhupa Rustam(大勇者) 01.09.01 ★★★
チュパー・ルスタム
製作:マダン・モーフラー/監督:アズィーズ・サージャーワル/原案・脚本:ラジーヴ・コォール、プラフル・パレーク/台詞:アデーシュ・K・アルジュン/音楽:アナン(=アーナンド)-ミリン(=ミリンド)/詞:アナン・バクシー/背景音楽:スリンデール・ソディー/振付:チンニー・プラカーシュ、レーカー・チンニー・プラカーシュ/アクション:ビクー・ヴェルマー/撮影:カムラーカル・ラーオ/美術:故スデーンドゥ・ローイ、シャルミスター・ローイ/編集:ワマン・ボースレー
出演:サンジャイ・カプール、マニーシャー・コイラーラー、マムター・クルカルニー、ナヴニート・ニシャン、ダリープ・タヒル、ティヌー・アナン、ラージ・バッバル、ラクシュミーカーント・ベールデー、ヴィシュワジート・プラダーン、アヴタール・ギル、サティヤン・カップー、ムスターク・カーン、ヴィジュー・コーテー
公開日:2001年3月21日(日本未公開)
STORY
刑務所から出所し、女優の恋人ニーシャー(マニーシャー)のところへ戻った凄腕のコソ泥、ラージャー(サンジャイ・カプール)は、謎の男を装ったSP・タパ(ラージ)から彼と瓜二つな紅茶プランテーション相続人の替え玉として潜入することを依頼される。一方、茶摘み娘サンディヤー(マムター)と恋に落ちていたニルマール(サンジャイ・カプール)は強欲な母親ソニア(ナヴニート)と情夫ディワーン(デリープ)のため、爆殺されてしまう。だが、荼毘に付されたはずのニルマールが現れて・・・。
Revie-U
ちょい古めのC級映画らしいテイストが全編に漂い、ローカル層に受けそうな作風。
主演のサンジャイ・カプールはアニル・カプールの弟だが、なぜか共演作はなし。苦み走ったいい男(?!)ながら、華がなく、いかにもC級スターという雰囲氣。アクションは無難にこなすものの、ダンスはいただけない。今回のダブル・ロール(二役)でも、ゴロツキ役の方が板についている。
格としては上のマニーシャー・コイララは、ゲスト・ヒロイン扱いで出番は5分の1ほど。ローカルC級映画というオーダーを真っ向から受けて演技もオーバー・アクティングで対応してるのはさすがプロフェッショナル。
セカンド・ヒロインのマムター・クルカルニーは生意氣で蓮っ葉な、それでいて純情な乙女心を持ち、それがズタズタにされる薄幸な踊り子役がぴったり。今回も裏切られて終わりか、と思いきや意外な展開に・・・。
中盤、ニルマールのシーンが延々続き「一体いつ入れ替わるんだ?」とすっかりラージャーの存在を忘れた頃(苦笑)、父親の死について真相を知ったニルマールがクルマごと爆殺される。ようやく現れるニルマールに扮したラージャーだが、これがゴロツキまるだし。裏で画策するSPタパが強引に彼を「本物」と認めさせるものの、ソニアたちは先祖の肖像画をズラリと並べ、誰が本物か当てさせようとする。ここでニルマールでないラージャーは間違って選ぶのだが、使用人が合図して正解となる。しかも「知ってて間違えた」と言い訳・・・。
ニルマールの正体を知ったディワーンがニーシャーを引っ張って来て、サンディヤーと嫉妬合戦させボロを出させようと画策。クライマックスは豪邸を売却した現金をめぐって骨肉の争いとなる(SP・タパも、金が狙い)。しかも、強欲なソニアとニーシャーは女の醜い争いを展開、相討ちしてしまう!
ここで掟破りのトリックがニルマールもといラージャーの口から暴露される!!! 実は、真相を知ったニルマールが爆殺される寸前、ラージャーが彼と接触。SP・タパの企みをバラしたどころか、爆発で焼け死んだのが実はラージャーだった、という二重のからくり!! さすがは、C級マサーラー!!! 天晴れ!!!!
ボリウッド・メジャーの敵役として出ずっぱりのダリープ・タヒルが、B級映画とあって豊満な熟女ナヴニート・ニシャンと濡れ場(?)を披露。その他、ティヌー・アナン、ラクシュミーカーント・ベールデー、サティヤン・カップー、ラージ・バッバルなど続々と迷脇役たちが続々登場して思わずニンマリしてしまう。
競売にかけられる豪邸オープンセットは「Ishq(恋)」(1997)で使われていたもので、美術は故スディンドゥ・ローイの仕事を「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)などのシャルミスター・ローイが引き継いで担当。
アナン-ミリンの音楽もタブラー・ベースでレトロっぽくて心地よい。背景音楽のスリンデールがまた大仰なスコア(「ブラックレイン」風)で、C級らしさを堪能できる。
昨今のハリウッドちっくなボリウッド・メジャー作品より、つたなさあふれるC級マサーラーが好き、という向きにはオススメの一品。
(なお、ビハール州ではスマッシュヒットとなっている。01.11.10 追記)
*追記 2006,02,20
警官が瓜二つの男を見つけ出し、替え玉に誘い込む設定はアミターブ・バッチャン主演、チャンドラ・バロート監督作「Don(ドン)」(1978)をアレンジしたものだろう。
*追記 2011,01,16
サブタイトルが「A Musical Thriller」(苦笑)。
茶摘み娘たちとシネマ・ホール(映画館)へ行こうとするサンディヤーがマルティ・ジプシー(スズキ・ジムニー)でやって来たニルマールに愛犬が轢かれそうになったと難癖をつけ皆でクルマに乗り込み病院へ向かわせると見せかけて映画館へ送られせるスケッチは、なんとリティク・ローシャン主演「Koi…Mil Gaya(誰か…みつけた)」(2003)に<引用>されている。案外、大本ネタがありそう。
>サンジャイ・カプール
意外にもインドラ・クマール監督に見出されたデビュー作「Raja」(1995)は、ヒロインがかのマードゥリー・ディクシト! しかも年間トップ3、90年代トップ13ヒットというから驚き。
しかし、本人の技量から急速に人氣ダウン。長兄ボニー・カプール製作「Shakti」(2003)ではヒロイン、カリシュマー・カプールの夫役ながら前半で殺されてしまう。実質メインリードのはずがポスターやジャケットから消され、後半に登場する特別出演のシャー・ルク・カーンが大々的にフィーチャルされている。
そんなサンジャイを不憫に思ったのか、「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)では後半チラリと顔を見せる端役に招かれ、実に嬉しそうな表情を見せている。
>マムター・クルカルニー
「Karan Arjun」カランとアルジュン(1995)でも可憐なヒロインを演じていたマムター。本作でもなかなか愛らしい様を見せている。
90年代後半、在日デシ・コミュニティーが招聘した日本来日時はギャラの安さに嫌々ダンス・パフォーマンスを披露していたそうだが、そのエピソードが語るように女優として大花を咲かすことなく、マイナー映画「Kabhi e Tum Kabhie Hum(時に君、時に私)」(2002)に出演した後はキャリアが途絶え、NYに移り住んだ模様。古典の舞踊シーンも愛らしい所作で舞っていただけに惜しくもある。
>ラージ・バッバル
妙な脇役もこなすようになったが、80年代は「Umrao Jaan」踊り子(1981)や「Salma(サルマー)」(1985)などスター格であった。アート系トップ女優だった前妻の故スミター・パテールとの忘れ形見プラティーク・バッバルがアーミル・カーン主演・製作「Dhobi Ghat(洗濯場)」(2011)のメインリードとして出演。
脇役俳優が勢揃いで懐かしい限り。
ニルマールの世話人役は、70〜80年代にアミターブ・バッチャン主演作を多く手がけたヒットメーカー、プラカーシュ・メーヘラー監督の助監督を務める傍ら脇役として出演していたラーム・P・セティ。スミター・パテールとシャシ・カプール(カリーナー・カプールの叔父)を招いた監督作「Ghungroo(グングルー)」(1983)もあるが、脇役俳優として続け、最新作はアビシェーク・バッチャン主演「Khelein Hum Jee Jaan Sey(俺たちはこの闘いに命を賭ける)」(2010)。