Welcome(2007)#172
「Welcome」★★★★★
製作:フィローズ(=フェーローズ)・A・ナディアドワーラー/原案・脚本・台詞・監督:アニース・バーズミー/原案・脚本・台詞:ラジーヴ・コォール、プラフル・パレーク/撮影:サンジャイ・F・グプタ/作詞:サミール、シャビール・アーメド(=アフメド)、イクバル・アシーク、アンジャーン・サーグリ/作詞・音楽:アナン(=アーナンド)・ラージ・アナン)/音楽:ヒメーシュ・リシャームミヤー/音楽・背景音楽;サジード-ワジード/美術:プリテーン・パティル/総合意匠:ラフィ・カーズィー/アクション:アッバース・アリー・ムガル/振付:アーメド(=アフメド)・カーン、ボスコー・カエサル/編集:アシファーク・マクラーニー
出演:アクシャイ・クマール、カトリーナー・ケイフ、ナーナー・パーテーカル、アニル・カプール、フェーローズ・カーン、パレーシュ・ラーワル、マリッカー・シェラワト、ヴィジャイ・ラーズ、アスラーニー、サンジャイ・ミシュラー
助演:ヴィジャイ・ラージ、ランジート、スプリヤー・カルニク、ムスターク・カーン、アディ・イラーニー、スネーハル、シェルヴィール・ヴァクリー、H・ジョーシュ、スワンタントラー・バーラト、シャルマン・カプール、ラーケーシュ・シュリワースタ
ナレーター:オーム・プーリー
特別出演:マライカー・アローラー・カーン、スニール・シェッティー
公開日:2007年12月21日(年間トップ1ヒット/日本未公開)
STORY
善良なラージーヴ(アクシャイ)は平凡な人生を歩んで来た、美人のサンジャナー(カトリーナー)と恋に落ちるまでは。ところが、サンジャナーの兄ウデイ(ナーナー)とマジュヌー(アニル)がドバイを牛耳るアンダーワールドのドンと解る。しかも、大ドンのRDX(フェーローズ)までやって来て・・・。
Revie-U
誰もがシャー・ルク・カーン主演「Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)のトップ1メガヒットを信じて疑わなかったこの年、番狂わせで年間1位を獲得、年末ギリギリ公開がその年を征するジンクスを作ったのが本作。
インド映画にありがちな縁談話で、たまたま出会ってひと目惚れした相手がまわりまわって見合い相手。しかも情報が入り乱れて大混乱…というよくあるコメディ。
ところが、パーティーで子供の遊んでいる打ち上げ花火に火をつけると、それが向かいのショッピングモールへ飛んで行って火事になり、行きがかり上、助けに飛び込まされたラージーヴが出会ったサンジャナーの美しさに見とれて氣絶。彼女に担がれて助け出される…あるいは、見合い相手がドンの娘と知ったラージーヴが不運を嘆くや、運転していたクルマのハンドルが外れて暴走。交差点のトレーラーに突っ込み、ルーフがもぎ取れたかと思うと同乗していた伯父がそのルーフの上に乗ったまま引き摺られて犬に追いかけられるワ、同乗していた伯母がボンネットに乗ったまま運河に飛び込むワ…といった派手なスケッチをインド国内ではなく、全編ドバイと南アフリカ(サンシティ)の海外ロケでやってしまうという、まさにボリウッド・バブリーなところが凄い!

(c) UTV Motion Pictures, 2007.
主演は、「Housefull(満員御礼)」(2010)のアクシャイ・クマール。「Jaan-E-Mann(愛しき人よ)」(2006)に続く氣弱な不運男も板について、マルチスター・キャストの中で抑えの効かせつつ、しっかり主役として印象づける。
ヒロインは、「Maine Pyaar Kyun Kiya(私はなぜか愛を知った)」(2005)のカトリーナー・ケイフ。「Namastey London」(2007)に続くアッキーとは3度目の共演とあって、なかなかにスクリーン・ケミストリーもよい。
この手の群像喜劇では添え物ヒロインに成り下がりやすいところを愛らしさでカバー。
ボリウッドスターを願望したもののギャングスターになったウデイ(=ウダイ)・バーイ(兄貴)が、「サラーム・ボンベイ!」Salaam Bombay!(1988)、「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)のナーナー・パーテーカル。
「Taxi No.9211」(2006)で見せた氣迫を残しつつ、妹の縁談に腐心し、やらせの映画出演に相好を崩す様が実にチャーミー。

(c) UTV Motion Pictures, 2007.
そして、絵画(通行するクルマを止めさせ銃で脅して写生!)をたしなむマジュヌー・バーイが、アニル・カプール。「Musafir(旅人)」(2004)などの低迷期を抜け出して運氣上昇なのか、往年の切れを取り戻しナーナーとの掛け合いも軽快そのもの。役名のマジュヌーは、「ロミオとジュリエット」よりも古いアラビア文学の恋愛悲劇「ライラーとマジュヌー」に由来。
アニルはこの年、本作とは180度異なるアート系「Gandhi My Father」ガンジー、わが父(2007)を製作。東京国際映画祭で上映となり、直前になって来日を望むが結局スケジュールが合わず(実はヴィザが…)。
そして、後半、ストーリーを締める大ドンが、往年のスター、フェーローズ・カーン。
ド迫力なキャラクターは、RDX(プラスチック爆弾)の名に相応しい。「Heyy Babyy」(2008)の愚息ファルディーンとは天と地、そのためかRDXの息子がとんだバカ息子の設定(苦笑)。

(c) UTV Motion Pictures, 2007.
さらに、RDXを迎えての大事な席ですべてをぶち壊す勢いで登場するのが、ジャッキー・チェン主演「THE MYTH/神話」のマリッカー・シェラワト。
ドバイのはずなのに、ラージャスターンのトライブ(先住民)姿で村の女どもを引き連れて、というのが爆笑。
ウデイとマジュヌーのふたりを手玉にとるセカンド・ヒロインに打ってつけ。
新作の米印合作「Hisss」(2010)では艶めかしい蛇女に挑戦。監督がデビッド・リンチの娘ジェニファー・チェンバース・リンチだけに未公開ソフト化に期待。
サポーティングは、世話好きでトラブルを呼び込む叔父に名バイプレイヤー、パレーシュ・ラーワル。
その刈り上げ妻に「Mujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ)」(2004)のスプリヤー・カルニク(彼女自身が暴走車のボンネットに!)。
縁談から葬式まで勘違いばかりするパンディット(ヒンドゥー僧侶)に、「ボリウッドの拓ぼん」ことサンジャイ・ミシュラー。
偽映画監督に「モンスーン・ウェディング」(2001)のウェディング・プランナー、「Hari Om」ハリ・オーム(2004)、スイス映画「Tandoori Love」タンドリーラブ〜コックの恋〜(2008)のヴィジャイ・ラーズ。
偽映画製作者に「Sholay」炎(1975)の名脇役アスラーニーなどなど。
これだけの名優怪優を集めて、断崖の上で傾いた家でのスラップスティックというほとんどドリフまがいのクライマックスが実に贅沢!
監督は、「Mujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って)」(2001)、「Mujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ)」(2004)などの脚本から監督に進出したアニース・バーズミー。
ハリウッド志向が進んだゼロ年代ボリウッド一見逆行するかのように思えるチープな笑いを持ち込んだ「No Entry」(2005)でブレイク。トップスターを集めたマルチスター・キャストとゴージャスな海外ロケとのギャップが笑いを増強した訳で、これもボリウッド・バブルに負うところが大きい。
本作以後、同じくアクシャイ ‘N’ カトリーナー主演「Singh is Kinng」(2008)がメガヒット、アニルが製作に乗った「No Problem」(2010)はハズしたものの、アクシャイ ‘N’ソーナム・カプール「Thank You」、サルマーン・カーン ‘N’ アシン「Ready」など新作/企画が目白押しと、今や最も売れている監督のひとりに成長。
ムジュラー・ナンバル「hoth rasiley」(作曲:アナン・ラージ・アナン)にアイテムガールとしてサルマーンの義妹マライカー・アローラー・カーン。その露わなくびれは、とても一児の母とは思えない。
また、やらせ撮影現場にスニール・シェッティーが彼自身が特別出演している。