Mann(1999)#168
Mann(想い) 01.04.11 ★★★★★
マン
製作・監督:インドラ・クマール/製作:アショーク・タケーリア/脚本・台詞:アーティーシュ・カパーディア/撮影:バシャー・ラール/作詞:サミール/音楽:サンジーヴ-ダルシャン/振付:ガネーシュ・アチャルヤー/背景音楽:ナレーシュ・シャルマー/美術:シャルミスター・ローイ/編集:フセイン・A・ブルマワーラー
出演:アーミル・カーン、マニーシャー・コイララ、シャルミラー・タゴール、シャーマー・ゲサワト、ムスターク・カーン、ニーラージ・ヴォーラ
特別出演:ディープティー・バートナガル、ダリープ・タヒル
助演:サティヤン・カップー、アナント・マハーデヴァン、スルバー・デーシュパンデー、パレーシュ・ガナトーラ、サンジャイ・ゴーラディア、シーラー・シャルマー、ケータキ・デーヴェー
特別出演:アニル・カプール、ラーニー・ムカルジー
公開日:1999年7月9日(年間トップ8ヒット!/日本未公開)
STORY
シンガポールよりムンバイーへ向かう豪華客船の中で、富豪のプレイボーイ、デーヴ(アーミル)は国際音楽大会で優勝したプリヤー(マニーシャー)と恋に落ちる。しかし、ふたりはフィアンセが待つ身であった。互いの愛を信じるため、デーヴは画家として身を立て、1年後に旧ボンベイ港のインド門で再会を約束するが・・・。
Revie-U
ボリウッド屈指の伊達男アーミル・カーンと「ディル・セ 心から」Dil Se..(1998) のマニーシャー・コイララをフィーチャルし、ハリウッド映画「めぐり逢い」(1957)を下敷きにしたリメイク。航路の途中、島に住む祖母(シャルミラー・タゴール)を訪ねるシークエンスも原版より尺が長いインド映画だけにエピソードを膨らませ、ふたりが再会出来ぬ理由もよりショッキングに演出、エンディングへのエモーショナルをかき立てている。オリジナルを凌駕する出来に酔い痴れること請け合い。
オープニング早々ゲスト出演するラーニー・ムカルジーとのダンスシーンをはじめ、前半のプレイボーイぶりから一転、後半は看板描きに身を落としてまで愛を貫くアーミルの男ぶりが見物。ライバルのフィアンセ役には、アニル・カプールが特別出演! 片想いに苦しむプリヤーの恋心を妄想入り混じるフィルミーソング「mela mann(私の想い)」が爽快!
*追記 2011,01,13
下敷きとなっているラヴロマンスの名作、1957年版「めぐり逢い」はレオ・マッケリー監督自身の1939年版「邂逅(めぐりあい)」のリメイク(版権切れDVDが500円で発売中)。再会の場所は当時、世界一の高さを誇ったエンパイア・ステート・ビルの展望室からインド門へと移され、都会的なケイリー・グラントと、珍しくスマートな美男子役となるアーミルが重なる。
ちなみに3度目のリメイクとなる1994年版「めぐり逢い」は出会いの場面が飛行機の中、と実に忙(せわ)しない。
本作ではシンガポール、タイの海外ロケに加え、豪華客船を借り切りリモートクレーン・キャメラ(日本映画では低予算のためほとんど使用されない)を持ち込むなど、ボリウッド・バブリーの先駆けとなった作品。
インド的に置き換えての翻案が生きてくるのは、航海の途中、犬猿の仲から恋仲になり始めたふたりがデーヴの祖母を訪ねるシークエンス故。年長者を敬愛するインド文化に符合し、特にプリヤーが祖母を労(いたわ)って足を揉むスケッチは、プラナーム(足に触れる敬愛の儀礼)に通じ、これに感動したデーヴが後半、絵に起こす。
原版でも要となっている祖母宅での祈祷(ヒロインの祈る姿に魅せられる)は聖母マリアから恋の神クリシュナへ変更されているばかりか、祖母の形見として渡されるショールが銀のパーヤル(鈴付きアンクレット)となっていて劇的効果を高めている。
この祖母に扮しているのが、60〜70年代の名女優シャルミラー・タゴールはサイーフ・アリー・カーンの母。
ちなみにモノクロ版「邂逅」の祖母役マリア・オースペンスカヤは、インドを舞台にした「飴ぞ降る」(1939)でマハーラニー(女王)役を演じている。
客船がボンベイに到着するインタルミッション(休憩)直前に、デーヴの婚約者として登場するのがアニル・カプール。その絶妙なタイミングがインド映画のひとつの見せ場となっている。
婚約者役のアニルがこれみよがしで振る舞った後、デーヴを持ち上げるのは、「Dil To Pagal Hai(心狂おしく)」(1997)のアクシャイ・クマール、「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)のサルマーン・カーン同様、主役に華を持たせる特別出演のお約束。
また、プリヤーが子供たちに合唱させているのは、「マイ・ネーム・イズ・ハーン」My Name is Khan(2010)でもシャー・ルク・カーンが歌っていた米国の愛国ソング「勝利を我らに」のインド版「hum honge kaamyab(我らは成功する)」。
監督インドラ・クマールはダイナミックな演出で知られるヒットメーカー。感情を煽る一方、端から見ると破綻としか思えない過剰なギャグ・スケッチに走る癖があるが、本作ではかなり抑えて(?)ロマンス映画の枠を踏み外さないように努めている。
そのプリヤーは「親愛」「愛しい」「恋人」「妻」などを意味するプリヤが由来。