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Musafir (2004)#167

2011.01.12
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
MUsafir

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「Musafir(旅人)」★★★
ムサーフィル

製作・監督:サンジャイ・グプタ/脚本:サミール・マルホートラ、ヴェニター・コーエロー/
台詞:ミラープ・ザヴェリ/撮影:P・S・ヴィノード/作詞:デーヴ・コーへリー/音楽:ヴィシャール&シェーカル/背景音楽:サンディープ・チョウター/プロダクション・デザイン:アクロポリス/振付:ボスコー-カエサル/アクション:ティヌー・ヴェルマー/編集:バンティー・ナギ

出演:アニル・カプール、サミーラー・レッディ、アディティヤ・パンチョリー、マヘーシュ・マンジュレーカル、シャクティ・カプール、サンジャイ・ダット、コエナー・ミトラー(新人)
助演:マノージ・パウワー、サンジャイ・スワラージ、パンカジ・カルラー、ナーワーブ、スディール・ニーマ、ハリー・スィン、アクシャー・パルダサーニー、アローク・クマール、ムケーシュ・バールティー、アジャイ・チャーウリー、トニー・ミルチャンダーニー

公開日:2004年12月9日(年間14位/日本未公開)

STORY
詐欺師のラッキー(アニル)は偽の取引で大金をせしめるが、ギャングのボス、ビッラー(サンジャイ)を敵にまわしたことを知る。しかも、せしめたはずの金は謎の女ラーラー(コエナー)に持ち逃げされる始末。ビッラーに囚われたラッキーはゴアへ鞄を運び別の鞄を受け取る指令を受ける。ゴアにたどり着いたラッキーは、謎めいた女サム(サミーラー)と出会い夫(マヘーシュ)殺しを依頼され・・・。

Revie-U
製作は、サンジャイ・ダットが監督サンジャイ・グプタと設立したホワイト・フェザー・フィルムズ
そのサンジャイ・グプタ。映像センスはまずまずなものの、全体的なクオリティはどこか隙が残されているようなB級マサーラー・ノワールを得意とする。男臭い俳優と監督のコンビということで例えれば、松田優作&村川透と言えようか(ブルーを基調とした撮影も仙元誠三を思わせる)。
もっとも、ハリウッドのパクリ専門だったりするのが珠に瑕で、Jung(闘い)」(2000)が「絶対×絶命」、東京国際映画祭でも上映された「Khaante」トゲ(2001)が「レザボアドッグズ」、そして「Zinda(生存)」(2006)が韓国映画「オールド・ボーイ」のフルコピー。もちろん、本作も例に漏れず、米「Uターン」+「コンフィデンス」が原板となっている。

冒頭、傷を負ったアニル・カプールに、やはり血まみれのサンジャイが拳銃を向ける。この時の台詞が振るっている。
「母親が言ったものさ。ベタ(坊や)、もう寝なさい。そーじゃないと、ガッバル(・スィン)がやってくるわよ」
シャー・ルク・カーン主演ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)の冒頭でも引用されていた国民映画Sholay」炎(1975)ネタからさらに続く。
「ヒンディー映画は、いつも敵役を嘲りしてきた。Dr.ダン「Karma」アヌパム・ケールが演じた歌う悪役)、モガンボ「Mr.India」アムリーシュ・プーリーが演じたインド征服を狙う悪の首領)……。だがな、ヒーロー、これは現実だぜ。弾丸一発でおまえのドタマなんぞふっ飛ぶんだ。2センチの穴が頭の裏から前に抜けるんだ。ええ? Mr.India!

Khal Nayak(悪役)」(1994)でテロリストを演じ、実際にマシンガン不法所持で獄中を経験したサンジャイが言うのだから面白くないはずがない! もちろん、「Mr.India」Mr,インディア(1987)とはアニルの代名詞。
この他、「Ram Lakhan(ラームとラカン)」(1999)などアニル絡みの与太台詞や、裏切り者を殺したサンジャイがその子供に「20年後に俺を殺しに来い」とナイフを渡しては仲間に「”Zanjeer” 観たか?」と問うたりする。もっとも、この台詞自体、洋画からの借用なのだが(題名調査中)。
ここで言われている「Zanjeer」は、もちろんアディティヤ・パンチョリー出演の98年版でなく 、アミターブ・バッチャン主演の「Zanjeer(鎖の男)」(1973)だろう。幼い主人公が目撃する父親殺しの男が馬のトップ付きシルバー・ブレスレットをしており、本作では悪徳刑事役アディティヤ・パンチョリーがクロス・トップ付きのブレスレットをしている。ちなみにアニルがしているブレスレットは、サルマーン・カーン愛用のと同型のターコイズ・トップ付きの物。

アニルは、チランジーヴィ主演のテルグ映画「バブーをさがせ!」Choodalani Undi!(1998)を正式リメイクした「Calcutta Mail」(2003)に続くハードな役柄。
もっとも、本作あたりからイメージ・チェンジを計ったアニルの低迷期に突入。「My Wife’s Murder」(2005)ではシンボルの口髭を落としていたが、本作でも一旦口髭を落とした上で汚らしい無精髭姿で登場し、見た目がChhupa Rustam(大勇者)」(2000)の愚弟サンジャイ・カプールと大差なく精彩に欠ける印象。 ブレイク当時(80年代半ば)の、ブラピ以上にセクシーかつワイルドだったアニルからすると…。

反面、異彩を放つのがWanted(2009)のマヘーシュ・マンジュレーカル。役者としても監督としても、脂がのってきた時期にあり、そのホラーめいた存在感はインパクト大。

その他、ニヤリとさせられる配役が、万年安物俳優アディティヤ・パンチョリーのごろつきインスペクター。特別出演のChalte Chalte(ゆきゆきて)」(2003)で見せていたスキンヘッドは、本作の役作りであったようだ。まるで別人の「Striker」(2010)とは芝居も雲泥の差(もちろん、本作が泥)。
また、シャクティ・カプールが手元の怪しいタトゥー・アーティストとして起用されている。

ヒロインのサミーラー・レッディは、後藤久美子を思わせる顔立ちでなかなかにキュート。肩にタトゥーを彫るシーンなど、かなり艶めかしい。もっとも、その凄みのある低音がネック。
サルマーンの末弟にしてHello Brother(1999)の監督ソハイル・カーンと「Maine Dil Tujhko Diya」(2002)でWデビューするも、ヒロインらしい出演作は本作止まりで、その後はテルグなどのリージョナル(地方)映画に流れ、ボリウッドでは添え物女優としてそれなりにポジションを固め、新作「Don 2」(2011)も同様の模様。

タイトル前のプロローグのみ登場するのが、一応本作がデビューとなるセクシー女優のコエナー・ミトラHeyy Babyy(2007)やOm Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)などにゲスト出演しているが、女優としては…。

問題のサンジャイだが、プロデュースしているだけあってアニルに花を持たせ、外連味たっぷりでおいしいシーンのみ登場。剃り込んだ顎髭+サングラスのルックスはほとんどプロレスラーの蝶野正洋。ダイヤを埋め込んだ金歯に黒革のロングコートといういでたちでバタフライ・ナイフを操る! アウトローとしてのサンジャイが好きなファンにはたまらないはず。氣怠過ぎる地声ラップ「tez dhar」は、本編よりサントラ収録のサッド・バージョンが出来がいい。

特筆すべきは、音楽監督デュオのヴィシャール-シェーカルだろう。
それまでJankaar Beats(2003)などマイナーな立ち位置にあったが、本作でブレイク。しかも重低音リミックス系サウンドは、ゼロ年代のボリウッド・フィルミーソングに変革をもたらし、クラブ系フィルミーへ火をつけることとなった。旧世代にあたるトップ男性プレイバックシンガーのクマール・サーヌーを起用したものの、本編では外されているのが象徴的と言える。
楽曲は粒揃いで、スクヴィンダール・スィンラーハト・ファテー・アリー・ハーンなどのシャウトが絶品。
一方、ミュージカル・シーンはMTVそのもの、ボスコー-カエサルの振付はエアロビクスを見ているようで飽きてしまうのが残念。

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