Jungle(2000)#153
Jungle 01.03.28 UP/01.12.17 Re ★★★★
製作・監督:ラーム・ゴーパル・ヴァルマー/原作・脚本・台詞:ジャイディープ・サーフニー/撮影:ヴィジャイ・アローラー/詞:サミール/音楽・背景音楽:サンディープ・チョウター
出演:スニール・シェッティー、ファルディーン・カーン、ウルミラー・マートンドーカル、マカランド・デーシュパーンデー、ラジュー・ケール、スシャント、カシュミラー・シャー、ラージパル・ヤーダウ、アヴタール・ギル
Filmfare Awards:背景音楽賞
ScreenAwards:最優秀敵賞(ラージパル・ヤーダウ)
公開日:2000年7月14日(日本未公開)
STORY
御令嬢アヌー(ウルミラー)と恋にしたセドゥー(ファルディーン)は、彼女の家族とジャングル・ロッヂへ行くが、一家は盗賊ドゥルガー・ナラヤンの人質に! やがて、捕らえられた盗賊の一員と人質交換が行われる。しかし、アヌーを見初めたドゥルガー(スシャント)が彼女だけを解放せず・・・。
Revie-U
「Roja」ロージャー(1992)のヒット以降、定着した人質奪回映画に、ボリウッド・ニューウェーヴの旗手ラーム・ゴーパル・ヴァルマー(RGV)が真っ向から挑戦。全編リアリズム・タッチで描かれ、「ジャンガル」銃撃戦の迫力はこれ見よがしなハリウッド物を軽く凌駕するほど。
ジャンガルの不氣味さを出すためリモートヘッド・クレーンやスティディカムを駆使し、サウンド・デザイナーも真っ先にクレディットするなどその意氣込みが伝わる(視界の浅いジャンガルに一歩踏み込んでみれば判るように、鳥達の囀りが意外に奥行きを感じさせるため、サウンドの臨場感は重要である)。
またローマ・チネチッタからアニマル・コーディネーターをも招き、象や虎、黒豹、コブラなどが劇中に色を添える。
冒頭、ジャンガルをパトロール中のコマンドー部隊トラックがキャノン・バースティング・テクニックで地上10m以上吹っ飛ぶシーンから、主人公たちの恋の経緯まで鮮やかに引き込む演出はさすがRGVである。
セドゥー(=シドゥー)の住む下町で「Jung(闘い)」(2000)のヒットナンバル「aaiya re」がS.E.として使われたり、フィアンセの一家とジャンガルのロッヂで過ごすことになったアヌーの前に現れたセドゥーがプレーム・チョープラーと名乗るなど、RGVらしい遊びも見られる。
脚本は、ジャイディープ・サーフニー。見合いの問題が生じたカップル→ジャンガルの中でコマンドー部隊と盗賊の戦い→ジャンガル・ツアーの客が人質に取られるシークエンスなど、畳み掛ける構成に思わず引き込まれる。「天国と地獄」(1963=東宝)を引き合いに出すのは早計かも知れないが、本作が第一級のエンターテイメントであることは確かだ。
主役を得た新進スター、ファルディーン・カーンは往年のスター、フェローズ・カーンの息子。デビュー作「Prem Aggan」(1998)はパッとしなかったものの、ここに来て盛り返している。顔立ちもイタリー系を思わせるいい男なのだが、「Love Ke Liye Kuch Bhi Karega(愛のために何かも)」(2001)では早くも太り始めしまい、本作が旬でもあった。
さて、ファルディーン扮するセドゥー、アクションの見せ場は対ゲリラ部隊長スワラージ役のスニール・シェッティーに任せ、市井の青年として彼女の救出へ向かい愛を貫く様が新鮮で好感が持てる。大抵、この手の主人公はランボーになってしまうものだ。
ヒロインのウルミラー・マートーンドカルもスタントなしで激流に流されるなど熱演。ふたりを助けるため、殉死するスニールは一層男を上げて印象を残す。
盗賊ドゥルガー・ナラヤン一味の面々も本物のダコイトと見間違う薄汚さに加え、個性的なメンツが集まりインド映画界の底力を痛感させる(しかも勝利に酔った盗賊たちが歌う! 踊る! 哮る!)。
野性味あふれるカシュミラー・シャーの女盗賊バリーはじめ、スシャントも野蛮とインテリ風情が同居する盗賊のリーダー、ドゥルガー・ナラヤン・チョウドリー役を不気味に好演。しかし、最もインパクトあるのは、まさに小鬼そのもののラージパル・ヤーダウである。彼はプロ好みの敵役としてScreen Awards 最優秀敵役賞を受賞している。
また、ロッヂのマネージャー、ドライスワーミー役に「Sarfarosh(命賭け)」(1999)のマカランド・デーシュパーンディーが。視察に現れる州首相役に「Rangeela(ギンギラ)」(1995)でカツラ着用のプロデューサー役だったアヴタール・ギルが。端正な顔立ちながら印象の薄い見合い相手役に「Tum Bin..(君なしでは…)」(2001)のヒマンシューがサポーティングしている。
サンディープ・チョウターの重圧なオリジナル・スコアが出色の出来で、Filmfare Awards バックグラウンド・スコア賞を受賞。
RGVが、ジャングル戦の佳作「プレデター」(1987=米)を愛してることは、キャスト付きエンディング・クレディットにも表れている。
*追記 2010,12,30
>ファルディーン・カーン
「Heyy Babyy」(2007)他、近年とは比べものにならないくらい精悍なのに驚き。それに引き替え、「Dulha Mil Gaya(花婿をみつけた)」(2010)は単独主演作となるはずが、プロデューサーが落胆のあまりゲストのシャー・ルク・カーン出演場面を大幅にアップ。それでもメガフロップという惨憺たる有り様。新作「Basra」がアナウンスされていたが、ばっさり切られて配役交代の憂き目に。
>サンディープ・チョウター
「Housefull」(2010)でも背景音楽を担当し、監督のサジード・カーンが絶賛していたサンディープ。本作もアップテンポの「pehli baar」(スニディー・チョハーン、ソーヌー・ニガム)が耳に残る。
>ラーム・ゴーパル・ヴァルマー
シネフリークらしい堅実な演出が頼もしいRGV。もっともこの後、急速にダークサイドへ向かってホラー&バイオレンスの世界へ移行してしまうのだが。