Heyy Babyy(2007)#151
「Heyy Babyy 」★★★☆
製作:サジード・ナディアドワーラー/原案・脚本・監督:サジード・カーン/脚本・台詞:ミラープ・ミラン・ザヴェリー/脚本:レーヌーカー・クンズル/撮影:ヒマン・ダミジャ/作詞:サミール/音楽:シャンカル-エヘサーン-ローイ/振付:ファラー・カーン、ヴァイバヴィー・メルチャント、ギーター・カプール/背景音楽:サリーム、スレイマン/衣装:マニーシュ・マルホートラ、シャビナー・カーン、シャーヒド・アミール、ファルグニー/プロダクション・デザイン:アクロポリス/アクション:マヘンドラ・ヴェルマー/編集:ラメーシュワル・バガット
出演:アクシャイ・クマール、リティーシュ・デーシュムーク、ファルディーン・カーン、ヴィッディヤー・バーラン、ボーマン・イラーニー、リッキー・サンドゥー、ムスカーン、ジュアンナ(新人)
特別出演:マライカー・アローラー・カーン、セリーナー・ジャイトリー、ミニーシャー・ランバー、アムリター・ラーオ、ターラー・シャルマー、ネーハー・ドゥピア、ディヤー・ミルザー、アミーシャー・パテール、ソフィー・チョードリー、マースミー・マキージャー、コエーナー・ミトラー、パーヤル・ロハトギ、リヤー・セーン、アムリター・アローラー、シャミター・シェッティー、リシター・バット、アールティー・チャブリア、キム・シャルマー、アヌパム・ケール、シャー・ルク・カーン
公開日:2007年8月24日(年間8位。日本未公開)
STORY
シドニーで遊び仲間と暮らすアールーシュ(アクシャイ)、タンマイ(リティーシュ)、アル(ファルディーン)の前にある朝、赤ん坊が届けられる。心当たりがないままエンジェル(ジュアンナ)と名付け3人で育てるうちに愛情が芽生えた矢先、母親イーシャー(ヴィッディヤー)が現れ・・・。

(c) Nadiadwala Grandson Entertainment , 2007
Revie-U
*結末に触れています。
「原案(ストーリー)・脚本・監督:サジード・カーン」とあるものの、米「スリーメン&ベビー」(1987)の焼き直し。大本は仏「赤ちゃんに乾杯!」(1985)となる。
サジード・ナディアドワーラー製作の前作「Jaan-E-Mann(我が命~愛する人)」(2006)でも赤ん坊のインサート映像が見事だったが、本作はそれ以上。リアクションが絶妙のモンタージュで愛らしいことこの上ない。
監督は、トップ振付監督ファラー・カーンの弟で、本作が監督デビューとなるボリウッド・タレントのサジード・カーン。その演出は、サイレント映画好きだけあってドタバタ・スケッチではしゃぎまくる。
さんざん遊びまくって来た3人が子育てを通して、心の優しさに目覚めてゆくのがよい。
赤ん坊の扱いに難儀し遂に教会の前に置き去りにするが、雨が降り始め慌てて戻っては病院に担ぎ込む。
回復を祈った後、病室で3人が揃って赤ん坊の足に触るのは、プラナーム。年長者や夫への敬愛を赤ん坊にしてみせる時、インド文化が解っていると胸がキュンとなる仕掛け。
辛い思いをさせた元恋人たちへ詫びを入れに歩くスケッチは、ランビール・カプール主演「Bachna Ae Haseeno(可愛い娘チャン、ご用心)」(2008)の発想元になったと思える。
3人の中で真の主役は、アッキーことアクシャイ・クマール。破竹の勢いで上昇氣流に乗った旬のアッキーは、この年「Namastey London」、「Bhool Bhulaiyaa(迷宮)」、本作、「Welcome」と主演作4作がトップ10入り。シャー・ルク・カーンを抜いて、トップ・マネー・メイキング・スターに躍り出ただけあって、遊びまくりのプレイボーイと出会ったばかりのイーシャーの氣を引くため伝統的な振る舞いを見せる芝居の対比が絶妙!
タンマイ役リティーシュ・デーシュムークは、アベレージ。単独主演作のない時期だけに、人の良さが感じられるも、もうひとつインパクトが欲しいところ。
着ぐるみ仕事で子供たち相手に闘い、「ジャイ・マハーラーシュトラ!(マハーラーシュトラ州に勝利あれ!)」と叫んでるのは、彼の父がマハーラーシュトラ州知事だから(笑)。
アル役は、サジードの悪ガキ時代からの遊び仲間ファルディーン・カーン。赤ん坊のため神に祈りを捧げる姿が見られるとは!(ギャグか?)
とは言え、サジードの監督第2作「Housefull(満員御礼)」(2010)で外されているのは、ひとえに客が呼べないからだろう。

(c) Nadiadwala Grandson Entertainment , 2007
ヒロインは、ヴィッディヤー・バーラン。 デビュー3年目の、この年オファーが集中し、出演作5本を数える売れっ子ぶり。ただ、マルチスター(オールスター)・キャストが3本を占め、純然たるヒロインは本作と同じくアクシャイ共演作「Bhool Bhulaiyaa(迷宮)」(2007)の2本となる。
本作の登場は中盤からとなり、アールーシュとの出会いが語られる回想場面で見せる姿は実に優美。
もっとも、身勝手なアールーシュに腹を立てっ放しの後半は、かなりヒス女。アールーシュに弄(もてあそ)ばれ傷ついたのも実は勘違いであり、「男は種を仕込んだままで無責任!」とばかりエンジェルを取り上げて高飛車に出るも、そもそも母親が必要な授乳時期の赤ん坊を男所帯の玄関前に置き去りしており、このへんが脚本のウイークポイントでもあるのだが。
サポーティングは、イーシャーの父役に怪優ボーマン・イラーニー。孫の顔見たさに児童福祉局を名乗って訪れるクールな前半と、おちゃらけた後半のギャップが見物。
この時期、サジードの姉ファラー・カーンも初監督作「Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)に取りかかっていたが、ひと足先にゲスト出まくりのオープニング・ソングを用意(振付はファラー)。
マライカー・アローラー・カーン、セリーナー・ジャイトリー、ミニーシャー・ランバー、アムリター・ラーオ、ターラー・シャルマー、ネーハー・ドゥピア、ディヤー・ミルザー、アミーシャー・パテール、コエーナー・ミトラー、マースミー・マキージャー、パーヤル・ロハトギ、リヤー・セーン、アムリター・アローラー、シャミター・シェッティーら14名(登場順)の女優が1曲にセクシー・カメオ競演。撮影は3日かかったとか。
そして、特別中の特別出演がパーティー・ナンバル「must kalandar」にてシャー・ルク・カーンが登場! しかもアヌパム・ケールを交えて「DDLJ」(1995)ネタ(いささか照れる)。
さらにトドメは「Mohabbatein(幾つもの愛)」(2001)のキム・シャルマーが爆弾投下。もちろん芝居下手なキムの起用は、確信犯的配役だろう(苦笑)。
音楽は、シャンカル-エヘサーン-ローイ。
例によってポップでメローな安定感のある楽曲作りで粒ぞろい。
「僕の世界は君が居てこそ/僕の歓びは君が居てこそ」と歌う「meri duniya tu hi re(僕の世界は君が居てこそ)」(ソーヌー・ニガム、シャーン、シャンカル・マハーデヴァン)は、本作のテーマに沿って男性コーラスを重視。シンプルな振り付けも相まって心を揉み解してくれる。
エンディング・ソング「heyy babyy」(DJアクバル・サミーのリミックス・バージョン)に登場し、ヴォーカルをとる白人4人娘はオーストラリアのリアリティーTVから飛び出したガール・バンド。
エンディング・タイトルバックはまるまるプロモが貼り付けられてあり、アッキーらが男性ストリッパーに扮して豪州中の女性が大騒ぎ!という展開は英「フル・モンティ」+「Mujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って)」(2001)のエンディング・スケッチからインスパイア。

(c) Nadiadwala Grandson Entertainment , 2007
前半は男3人の子育てスケッチの数々で牽引するも、後半、母イーシャーの再婚とエンジェル奪回を賭けるオリジナルストーリーは麻薬絡みのドタバタが陳腐な原版から離れた点では懸命であるが、散らかり氣味。サジードの脚本力もクライマックス前に力尽き、ありきたりなエンディングな印象に留まる。
とは言っても、子供を連れて出国するヒロインがファーストクラスどころかプライヴェート・ジェットというのがさすがボリウッド! 日本のテレビ映画では逆立ちしてもこの発想は湧かないだろう。