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Shootout at Lokhandwala(2007)#138

2010.12.16
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Shootout at Lokhandwala

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Shootout at Lokhandwala 08.01.15 ★★★★
シュートアウト・アット・ローカンドワーラー

提供:サンジャイ・グプタ/製作協力:ラーメーシュ・シッピー/製作・原案・脚本:サンジャイ・グプタ/製作:ショーバー・カプール、エクター・カプール/原案・脚本・監督:アプールヴァ・ラーキア/原案・脚本:スーレーシュ・ナーヤル/撮影:グルラージ・R・J/台詞:ラージ・ヴァサント/作詞:デーヴ・コーフリー、ミッカ、ビッドゥー、Dr.パレーシュ・セーン、サンジャイ・グプタ、ヴィラーグ・ミシュラ、アンワル・マクスード、デークシャント/音楽:アナン・ラージ・アナン、ストリングス、ユーポリア、ビッドゥー、ミッカ/振付:ガネーシュ・アチャルヤー、ラージーヴ・ゴースワーミー、レモ/背景音楽:アマル・モーフレー/アクション:ジャーヴェード・シャジク、アエージャズ・シャジク/プロダクション・デザイン:スニール・ニグヴェーカル/デジタルVFX:プライム・フォーカス/編集:バンティー・ナギ/サウンド・デザイナー:バイロン・フォンセーカ

出演:アミターブ・バッチャン、サンジャイ・ダット、スニール・シェッティー、アルバーズ・カーン、アビシェーク・バッチャン、ヴィヴェーク・オベローイ、トゥシャール・カプール、ローヒト・ローイ、シャビール・アフルワリア、ディア・ミルザー、アムリター・スィン、ネーハー・ドゥピア、アディティヤ・ラーキア、ラヴィ・ゴーサイン、アールティー・チャブリア、アーフターブ・アフムド・カーン、アーキレンドラ・ミシュラ、ダーヤーシャンカル・パーンディー、シュリヴァラーブ・ヴヤス

公開日:2007年5月25日(初登場1位、5週連続トップ5入り/日本未公開)

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

STORY
ボンベイの下町で急激に勢力を伸ばすアンダーワールドの愚連隊、マヤ(ヴィヴェーク)ブワー(トゥシャール)一味。彼らに畏れるものなく、ドバイのボスにも反旗を翻し、警察の対テロ部隊ATSを率いるACPシャムシェール(サンジャイ)らまで白昼堂々と脅しをかける始末。手を焼いたドバイ側が彼らの潜入先ローカンドワーラーを密告。ATSは4時間に渡り激しい銃撃戦を展開、集合住宅地が修羅場と化す……。

Revie-U*結末に触れています。
インドの清々しい朝、掃除人の履き音が静けさに深みを与える。

だが、本作のオープニング・ショットで示されるのは、ただの塵芥ではない。4時間に渡った激しい銃撃戦が残した3000発の空薬莢。そう、ここは壮絶な事件が起きたローカンドワーラーであった。

熊手で飛び散った空薬莢をかき集めるという映画の核心を告げる印象的なショットは、黒澤明「用心棒」(1961=東宝)の冒頭で親分同士が対立する宿場町の状況を切られた手首をくわえた野良犬で端的に表した名ショットに匹敵するだろう。リメイク版の「ラストマン・スタンディング」(1996=米)では西部劇では珍しくもなかろうバッファローの屍に置換られていて、ウォルター・ヒルの低迷ぶりが露呈していたが。

もっとも、本作にしても1960年代の学生運動を描いたシャイニー・アフージャーのデビュー作「Hazaaron Khwaishein Aisi」(2003)の同じくオープニング・タイトルバックで流血に洗われたアスファルトを紅く染めながら竹箒で履くショットがすでに見られるのだけれども。

さて、本作は1991年にボンベイを震撼させたローカンドワーラー銃撃事件の映画化である。 <今を時めく>サンジャイ・ダットが、Jung(闘い)(1999)やZinda(生存)(2005)などの盟友監督サンジャイ・グプタと設立したホワイトヘザー・フィルムズが、インド映画の金字塔Sholay(1975)の監督で知られ、近年はbluffmaster!(2005)、Taxi No.9211(2006)などをプロデュースしているラーメーシュ・シッピーと製作協力。

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

ストーリーは、事件にあたったボンベイ警察の特殊部隊ATSを指揮したACPシャムシェール・カーン(サンジャイ・ダット)、腹心の部下カヴィラージ・パテール(スニール・シェッティー)ジャーヴェード・シャイク(アルバーズ・カーン)が、警察の行き過ぎを審議する裁判を前に、元判事のディングラー(アミターブ・バッチャンへ事件の全貌を告げているというもの。
事件の流れがインド映画特有の長い回想シーンとなって、ディングラーとの面談がこれにカットバックする。この時の アミターブの間の手が実に小氣味よく、作品に奥行きを与えており、なるほど冒頭で愚息アビシェークと共に献辞を捧げられているわけである。

当初語られるのは、ATS発足までの経緯。インディラ・ガンディー政権の終止符につながった、武装スィク・テロリストに対するオペレーション・ブルースターから逃れた過激派がボンベイに潜入し、これをバイクで警邏中のアビシェーク・バッチャン(役名もアビシェーク! アビー本人が「アビシェーク」と言うのがなんとも……)が発見。署に通報するも、彼らに狙われ殉死してしまうという特別出演だ。

カーキーに身を包んだ制服姿がアビーの長身を引き立て、お粗末だった「Dhoom:2(騒乱2)」(2006)とは一転、なかなかに凛々しい(制帽とサングラスのお陰?)。父アミターブとは違って、母ジャヤー・バッチャンの血を色濃く受け継いだのか、運動が苦手らしくこれまでアクションがおぼつかないところがあったが、それ故、実録的な演出に馴染んだ身の動きとなっている。

面談中、ディングラーが射殺を厭わないATSについて「アサシン・トレーニング・スクールか?」と揶揄するや、シャムシェールがすかさず「アンティ・テロリスト・スクワッド」と答える。これは米ロス市警が編成したSWAT(スペシャル・ウェポンズ・アンド・タクティクス)を参考に組織した、ということだが、SWAT自体は捜査には当たらない。

ところで、レビューのっけから本作の<核心>に触れることとなるが、このATS、1993年にはかの「ボンベイ連続爆発事件」を手懸けているのだ。そう、ATSの指揮官を演じるサンジュー自身が、このボンベイ連続爆破事件の容疑者として本作が公開される直前、その審議で賑わせていたのが記憶に新しい。

しかも、このATSにテロリストへの殺害許可を与えたコミッショナー・クリシュナムールティー役として終盤、チラリと登場するのが、シャムシェールのモデルであり、実際のローカンドワーラー事件でATSを指揮したアーフターブ・アフムド・カーンその人!
逆に言えば、ボンベイ連続テロ事件にあたった張本人が、その事件の犯人として裁判が審議中の容疑者が製作・主演する映画に出演している、ということになる。

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

これに公開直前、<世界の美>アイシュワリヤー・ラーイ嫁入りで話題の渦中にあるボリウッドの大君ビッグBリトルB父子が出演(最近、ボリウッド映画の冒頭は献辞流行りであるが、製作にあたってお世話になった人々ではなく、その映画に出演する役者に献辞が捧げられるのはアミターブ・バッチャンぐらいのものだろう。しかもアビーはベスト・オフィサーという設定。よほど頼み込んで出演を得た?)。

これらの<お墨付き>に加え、劇中、横暴を極めるグンダー(愚連隊)にも親の情や恋人への想い、悪事へと走った止むに止まれぬ事情が描かれ、観客はグンダーにも感情移入する一方、<テロリスト>に対して果敢に闘いを挑み、裁判でも勝利を勝ち取ってヒロイズムに描かれるサンジューの姿から、「サンジュー・ババは、テロに関わったかもしれないが、アップン(俺)たちのヒーローには変わりない!」と思い込ませるための映画であるかのようだ。

(公開後、入獄したサンジューが保釈されるや、警官のひとりが感激のあまり彼に抱きついて祝福し、直ちに免職になったという映画のようなエピソードさえ起きている。もちろん、映画に取り入れるならMunna Bhai MBBSの第3弾でアルシャド・ワールシーにその役をやってもらいたいところ!)。

実は、このような<免罪符映画>がボリウッドで作られたのは、これが初めてではない。
本作で、サンジューを無罪へと導く元判事役アミターブの主演映画「Shahenshah」(1988)がそれ。

<賄賂を拒み>自殺へと追いやられた正義の警官を父に持つ主人公が長じて警察官となる。父を慕う氣持ちから不正を憎む熱血警官となるかに思えて、Don(1978)のヴィジャイよろしくパーンを噛むお調子者でグンダーからの<賄賂>をホイホイもらってしまい、観客の注意を引きつつ、実はその<賄賂>は懐に納めることなく寄付へまわし、パーン好き賄賂警官である仮の姿から、夜は一転して80年代に流行した黒革ジャン+革パン姿というマッド・マックス・スタイルに髭メイクで素性を隠し、悪漢どもをバッタバッタと倒してゆく<ヒーロー>映画となっている。

これを製作したのが、初プロデュース作となる、アミターブの妻ジャヤー・バッチャン! 1988年公開の数年前、アミターブはかのラジーヴ・ガーンディーに乞われて政界進出するも、ラジーヴの汚職事件に巻き込まれ、彼自身が糾弾され、政界から早々に退散した経緯がある。この汚名を晴らす<免罪符>としての映画製作。でなければ、何故この時期にジャヤーが製作にまで乗り出す必要があったのか、考えられない。

本作も、通常の映画完成披露プレミア以上のイベントを仕組み、駆けつけたスターの面々を見ても、これと同じようにサンジューを正当化するためのプロモーション(プロパガンダ?)とも思えてならない(ちなみに、出演者及び製作関係者が一同にステージに集まる場面で、なぜかリティク・ローシャンの父ラーケーシュ・ローシャンの姿が見られ、スキンヘッドの彼が最も凄みがあったりする。ボーナス・ディスクのメイキングに収録されているので、ご覧あれ)。

「Shahenshah」のパロディーをIshq(恋)(1995)の路上ナンバルMr.lova lovaジョニー・リーヴァルが演じている。これからも「Shahenshah」におけるアミット・ジーのヒーロー像がインパクトあったと解る。この勢いを買って、アミット・ジーは「Tofan(嵐)(1989)でもマント着用のヒーローを演じている。

なにやら「県警対組織暴力」(1975=東映/深作欣二監督)を思わす作りだが、男臭い男優がこぞって出演しており、これが見応えとなっている。

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

ATSに真っ向から対峙するマヤを演ずるのは、Dum(強靱)(2003)のヴィヴェーク・オベローイ
前年の「Omkara」(2006)もそうであったが、やはりヴィヴェークは骨太なキャラクターに限る。クリスチャンらしい死に様が鮮烈な印象を放つ一方で、時より見せる屈託のない青年像が眩しいほど。野獣ぶりも勇ましく、サンジャイ・ダットの次世代に相応しい?

その彼が扮するマヤ・ドーラスは、ローカンドワーラーで射殺された実在の人物だ。9歳にして母にDVを振るう父親を殺害し、やはり実在のアンダーワールド<D-Company>のドンで、「D」(2005)のモデルであるダーウード・イブラヒムの配下に入る。本作では明確にされていないが、ドバイで優雅な暮らしをするバーイ(兄貴)がそれ。

もうひとり、実名で登場するギャングワーラー、ディリープ・ブワーを演ずるのが、Mujhe Kucch Kehna Hai(私に何か言わせて)(2001)のトゥシャール・カプール
60年代からのスター、ジーテンドラの息子ではあるが、父の名声はアビシェークほど通用せず(アビーにしてもデビュー後、数年は雌伏期間であった、「Khakee(制服)(2004)の熱血警官もどこか頼りなげであった。「Insan(人として)(2005)で見せたリアクションからオファーされた?「Golmaal(ごまかし)(2006)の唖役がコミックロール賞にノミネートされるまでにようやく成長。デビュー作中のフィルミー・ナンバルでも濃厚な顔面がフィルム栄えしていて、その後の低迷が惜しくもあった(声がか細いところが難点)。本作でのグンダー役も、彼の青臭い一面がかえって市井の愚連隊が制御不能になった様を炙り出すのに貢献している。

エグゼクティヴ・プロデューサーを務めるエクター・カプールはトゥシャールの姉にあたり、TV界では主婦向けのシリアル・ドラマが大当たりし「昼メロの女王」と呼ばれている注目の人。トゥシャールの起用を餌に担ぎ出されたのだろうか。

マヤたちの暴威は留まるところを知らず、密告したインフォーマーの返礼としてその弟を群衆の目前で惨殺。マヤは目撃者を捕まえて「ポリ公が来たら、マヤ・バーイがやったと言え!」と威圧し、さらにはブワー達が訳もなく周囲の人間に銃弾を撃ち込む非道ぶり(別シークエンスでは、墜落死させて屋根が凹んだマルチ・ヴァンに皆で乗り込んでヨタヨタ走って帰ろうとするのがアナーキー)。

ATS側に目を転じてみると、インスペクター・カヴィラージ役のスニール・シェッティーが単独スター時代を思わせる魅力を放ち、目を引く。
警察にあって、とある結婚式に現れたブワーの情婦にグンダーさながらに下品な因縁をつけて嫌がらせをし、それでいて己のやり方に忸怩たる思いを抱く面をよく表している。当初、オファーのあったアルジュン・ラームパールではこうはいかなかったであろう。

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

その相棒となるジャーヴェード役のアルバーズ・カーンも、いつになく佳い。
Hello Brother(1999)では兄サルマーン・カーンの足を引っ張り、本来監督であった末弟ソーハイルに俳優デビューを決意させたほどであったが(苦笑)、ようやく役者として成長したのが見て取れる。
本作では口髭を蓄え、どこか精悍。特にゴロツキたちの脅迫訪問を受ける際の、ムサルマーン(ムスリム)らしくレース帽を被って祈りを終えた姿が清々しい。妻役のマイナー女優もかなり美形を配置しているのは、実妻マライカー・アローラへの配慮か?

さて、女優陣はというと、TVレポーター役にTumko Na Bhool Paayenge(君を絶対忘れない)」(2002)のディヤー・ミルザー(ローマナイズではDia)が健闘。
ミス・アジア・パシフィック2000の美形だけあって、リアリズム作品では浮いてしまいそうに思えるところ、アクの強い男達の中で彼女のあっさりとした愛らしさが一服の清涼剤となる。銃撃を目撃し、目を背けるシーンが、事件の壮絶さに色を添える。
ヴィヴェークとは「Dum」、サプライズの「Kyun!  Ho Gaya Na…」(2004)と共演。ただスター女優としては今ひとつ押しが足りず、単独ヒロイン作品からは遠ざかってしまった感がある。「Tehzeeb(テヘジーブ)」(2004)の障害少女役が忘れ難い。

収穫は、ブワーの情婦のアールティー・チャブリアーか。
細面のスレンダー美人で、こちらはマルチ・リンガルのミス・インディア・ワールドワイド。彼女をからかった男達をブワーがやり込めるシーンで勝ち誇ったように歩み寄る様が堂に入っている。ダンスは大したことがないが、場末の踊り子なので違和感はない。
昨年は「Anamika」(2007)でタイトルロールを獲得、Heyy Babyy(2007)のゲスト出演、端役ながらラーラー・ダッタの部下役「Partner」(2007)など、Lajja(恥)(2001)のデビューから浮上するまで時間がかかったが、ようやく実を結びはじめた様子。

ACPシャムシェールの妻役ネーハー・ドゥピア(ミス・ユニヴァース出場)も、サンジューの妻としてはMission:Kashmir」アルターフ(2000)のソーナーリー・クルカルニーよりお似合い。仕事の激務に家庭を疎かにされ、暴力の威圧もあって離婚を迫る強い女は、彼女に相応しい。
デビュー作Qayamat(破滅)(2003)はアテレコだったこともあり破滅的な印象であったが、「Chup Chup Ke(こっそりと)」(2006)あたりから芝居も上達。ファースト・ヒロインはおろか、セカンド・ヒロインとは一線を画する立ち位置を確立?

これら女優陣の中でひと際鮮烈であるのが、マヤの母親役アムリター・スィンだろう。 9歳でDV夫を刺殺した息子を誇りに思い、荒くれ男たちが食卓で寛ぐ最中、拳銃を取り上げてはふざけて見せる様は、まさに「ビッグ・バッド・ママ」(1974=米)。市場でオバサン呼ばわりした魚屋を叩きのめす氣迫も凄まじく、デビュー作Betaab(燃える恋)(1983)でボリウッド映画史上最凶のヒロインを演じただけはある。ぜひとも彼女主演のスピン・オフ物を作って欲しい。タイトルは「バリー・ブリー・マー」だろうか。

当初は踊り子にイーシャー・デーオール、妻役にウルミラー・マートンドカルが予定されていたが、出来上がった作品を見ると、変更されたキャストの方が映画が損なわれなかったように思える。

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

当のサンジューはと言うと、口髭を蓄えた役作りが「Mission:Kashmir」を彷彿。7年の年月が流れているだけあり、サンジューの貫録も増し、薄くなり始めたオールバックが風格をもたらしている。銃撃戦の最中も部下が手渡した防弾チョッキを投げ返す様がヒロイズムをくすぐる。

人間味厚い俳優として大成しただけに、ボンベイ連続爆破事件の服役が惜しまれる(今後は保釈を繰り返すか、刑務所内で撮影?!)。

サポーティングでは、マヤに脅されるドバイの代理人に3 Deewarein(3つの壁)(2003)のシュリー・ヴァイラーブ・ヴヤス。今回は、あくどい役まわりでなく、グンダーの狭間で難儀する役。

Gangaajal(ガンガーの聖水)(2003)のアーキレンドラ・ミシュラーがマヤに通ずる警官に扮する。

シャムシェールのインフォーマー役に「Swades(祖国)(2004)でも村人を好演していたダーヤー・シャンカル・パーンディーを配置。

マヤ一味のひとりが、ラガーンLagaan(2001)で掃除人のダリットを演じていたアディティヤ・ラーキアアーミル・カーンとは、若かりし頃の「勇者アレキサンダー」Jo Jeeta Woh Sikandar(1992)でもボンクラ仲間として共演。本作の監督アプールヴァ・ラーキアの兄弟で、アープルヴァの監督作「Mumbai Se Aaya Mera Dost(ムンバイーから友人がやって来た)(2003)、「Ek Ajnabee(ある異邦人)(2005)にも出演。同じプロダクションなのか、アーキレンドラ、ダーヤー、これにKisna(2005)のヤシュパル・シャルマーが加わっての共演が多い。

監督アプールヴァは、「Ek Ajinabee」はともかく、デビュー作「Mumbai Se Aaya Mera Dost」でも確かな手腕を見せていた(本人も左の二の腕いっぱいにタトゥーあり)。本作では、2時間枠にきっちりまとめ込み、まったく隙がない作りには関心してしまう。

アンダーワールドというとラーム・ゴーパル・ヴァルマー一連の実録物が思いだされるが、不安を呷る陰鬱なRGV作品と異なり、爽快なヒロイズム映画に仕上がっているのがなにより嬉しい。

撮影監督R・J・グルラージは、全体には青緑がかったルックを用い、緊迫した映像を提供。アンダーに見えて、一瞬、モノクロで表情を見せるバンティー・ネギの編集も秀逸。本年度の編集賞を期待したい。

音楽は、既存の音楽監督アナン・ラージ・アナンに加え、ユーポリアビッドゥーミカ・スィンなどポップ・アーティスト、ラッパーを収集。

振付は<大物>コレオグラファーのガネーシュ・アチャルヤー。近年はその極太キャラクターからChingaari(閃光)(2006)など自ら登場するなど期待がもたれている。

エンディングは、ホワイトフェザー・フィルムズ製作Zinda(生存)」(2006)にもフィーチャルされていたパーキスターン・ロック・シーンの大物ストリングス(プレミア会場でもふたりが客席になだれこんで歌っていた)によるメロー・ナンバルaakhri alvida「Alvida」というフレーズは、「Life in a…Metro」など、やはり「さよならは言わないで」Kabhi Alvida Naa Kehna以降、増えたように思える)。

ところで、映画の冒頭、プロダクション・バナー中に流れるのは、ホワイトフェザーの旗揚げ作品「Kaante」トゲ(2002)からのメロディー。映画も「レザボアドッグス」(1991=米)のイタダキなら、メロディーもDeewana(恋狂い)(1992)同様、ミトゥン・チャクラワルティー主演「Disco Dancer」(1983)のメモラブル・ナンバルI’m disco dancerが原曲。プロダクションのテーマ曲に臆面もなくパクリ・ナンバルを持ってくるところが、さすがサンジャイ・グプタだ。

Shootout at Lokhandwala

(c)White Feather Films, 2007.

また、アマル・モーフレーの背景音楽も出来がよく、テーマ・ナンバルとも言えるロック・チューンは、ヴィヴェークらのギャングスター達が練り歩くシーンだけでなく、裁判で勝利を勝ち取ったサンジュー達トップスターの行進にも使われ、ヒロイズムを呷る仕掛けとなっている。

終盤、修羅場となるローカンドワーラーの集合住宅(日本の公団住宅のような4階建て)3棟は、本作のために広大なフィルムシティの山裾に建てられたオープン・セット!(現場へ向かう警察車輌の通る道は、Kuch Kuch Hota HaiKaho Naa…Pyaar Haiに登場する例のヒンドゥー寺院へと連なる道)。

大掛かりなセット制作を少しでもカバーするためか、ラーキー・スワント扮するお色氣女優がインタビューを受けるシーンで背景に写っている建設現場がそれ。壁に撃ち込まれる無数の弾着故にもセット造営が必要だったのだろう。これだけでも作品に入れ込む姿勢が伺われる。

興行的には年間9位という堂々のヒット!

なお、劇中、盛んに使われる「エンカウンター」という単語は、インドの警察で武装犯に対する「射殺」に相当する語彙。

*追記 2008.03.02
マヤとブワーの愚連隊仲間ファトゥー役ローヒト・ローイは、同じくサンジャイ・ダット提供、サンジャイ・グプタ製作のオムニバス作品「DusKahaniyaan(十話物語)(2007)の八話「Rice Plate」(脚本サンジャイ・グプタ)を監督。十話中、出色の出来。

ローヒト自身が出演するナーナー・パーテーカル×アニター・ハッサンダーニーの九話「Gubbare」(脚本グルザール)も心温まるエピソード。

*追記 2010,12,16
>ボンベイ連続爆破事件の容疑者
正確には「テロ幇助罪」。これは当時、ヒンドゥー/ムスリム対立激化の煽りを受け、ヒンドゥー過激派から父スニール・ダットが脅迫を受けたことから<家族を守るために>武器弾薬を入手した、というサンジャイ側の主張が通り、テロ幇助罪については不問となった。
この時、サンジャイが武器調達を頼んだのが、本作にてそれとなく示されているドバイにいるダーウード・イブラヒムであった。おそらく彼との交流は、ドバイ・ロケのあったNaam(名前)」(1986)あたりから?

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