Home » DVDレビュー

Rangeela(1995)#133

2010.12.10
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Rangeela

ティラキタのDVD商品を見る

Rangeela(ギンギラ) 01.11.14 ★★★
ランギーラー

製作・脚本・監督:ラーム・ゴーパル・ヴァルマー/台詞:ニーラージ・ヴォーラ、サンジャイ・チェル/撮影:W・B・ラーオ/美術:R・ヴェルマン/編集:ニヴァス/音楽:A・R・ラフマーン/詞:メヘブーブ/振付:アフムド・カーン、サロージ・カーン

出演:ジャッキー・シュロフ、アーミル・カーン、ウルミラー・マートンドカル、アヴタール・ギル、リーマー・ラグー、ニーラージ・ヴォーラ、アチュート・ポトーダル

特別出演:グルシャン・グローヴァル

公開日:9月8日(年間トップ5ヒット!)

STORY
映画のバックグラウンド・ダンサーを務めるミリー(ウルミラー)は、2階長屋の下に住むダフ屋ムンナー(アーミル)と仲がいい。だが、八九三なムンナーが彼女との結婚を意識した時、撮影中のヒーロー、カマル(ジャッキー)の目に留まったミリーがヒロインに大抜擢される。ムンナーも大喜びしたものの、だんだんとミリーは映画界へ関わりを強め、スターのカマルと親しくなってゆく・・・。

Revie-U*結末に触れています。
プラーン、ミーナークマーリー、ラージ・カプール、ヌータン、ギーター・バリー、ヴィジャヤンティマーラー、ディリープ・クマール、ヘーマー・マリーニー、デーヴ・アナン(=アーナンド)、レーカー、アミターブ・バッチャン、シュリーデヴィーなど往年の映画スターがモノクロ・スチルで次々とロール・アップ。なぜかバックグラウンドは、車の排氣音や町の雑踏の音というアバンギャルドなオープニング(と、これはスライド覗き箱を見ている設定)。テルグ語映画界からボリウッドに殴り込みをかけた、ラーム・ゴーパル・ヴァルマー(RGV)の「今までのヒンディー語映画とはちょっと違うゼ」という意氣込みが感じられる。

これらのスターは、RGVのお氣に入りなのだろう。クセのある敵役を演じ続けたプラーンや美人女優というより演技派として人々を唸らせたミーナークマーリーが筆頭というのが筋金入りの映画ファンであるラーム・ゴーパルらしい。

冒頭からして、ミニスカートのウルミラー・マートンドカルが踊りまくる。ウルミラーは、まだ子役時代と言っていい頃からRGVに重用されて来たが、本作でヒロイン、ミリー同様に人気女優となった。まだRGVがボリウッドに移って日が浅かったせいか、さほど予算が得られなかった分、深紅のドレスを着たウルミラー、ミニスカのウルミラー、ホットパンツのウルミラー、スクール水着のウルミラー・・・と、ウルミラーの美脚に頼るところが大きい。

インドの映画館は全席指定前売りのため、ブラック(ダフ屋)が横行する。このダフ屋ムンナーが、アーミル・カーンの役どころ。粗野でコ汚い下町育ちを意氣揚々と演じており、完全主義者のアーミルらしい入れ込みが感じられる。

ムンナーのダフ屋という職業は、カマルという映画スターの対極にある。劇中、カマルがムンナーに仕事を尋ね、ダフ屋と聞いて鼻も引っかけない。映画産業には直接貢献しない有象無象でしかないからだ。だが、観客にとっては人気の映画を見る際に最初に接する映画関連業者でもある。そんなダフ屋を主人公に選ぶあたりが、またまたRGVの映画好きを感じさせてくれる。

このムンナー、ミリーがヒロインに抜擢されたと聞くと大喜びし、仕立て屋に新しく服を新調させて彼女を祝いの食事へ誘う。ミリーは着飾って現れるが、新作の完成パーティーへ誘われていてカマルのスポーツカーに乗って出かけてしまう。

翌日、氣を取り直したムンナーは新調した服を着て、彼女をホテルのランチへと誘う。どんな服を新調したかと言うと、シャツもズボンも真ッ黄色。おまけにチャーターしたタクシーの屋根の色とお揃いだったりするのが笑える。

インドのホテルで食事するのはおそろしく高いつき、しかもウエイターは英語でしか話しかけて来ないので、生粋の下町っ子であるムンナーが浮くことこの上ない。それでも彼は、知人の結婚話を持ち出し、それにかこつけてミリーにプロポーズしようと思っている。ところが、ホテルのロビーにカマルが現れ、またもミリーは彼について行ってしまうのだ。ひとり残されたムンナーの前に、意氣込んで注文した料理が次々と運ばれて来てインタルミッションとなる。

ジャッキー・シュロフが、またいい。「Mr.BOND」というアクション物もこなすスター、カマル役である。

スターが映画の中でスターを演じる場合、やたら豪勢で鼻持ちならない存在となりがちだが、RGVはむしろカマルをシャイで憂いのあるキャラクターとして作り上げている(当然、ジャッキーを当て込んで書かれたのだろう)。

彼は華やかな映画スターであるのだが、過去に婚約者を自動車事故で失って以来、愛を遠ざけて来ていた。撮影中にヒロイン役の若手女優が運転手と結婚(!)してしまったため撮影が中断しかける。そんな時、カマルは浜辺でひとりダンスに興じるミリーを認め、代役ヒロインへ推薦する。

と言っても、ダンサー上がりのミリーが芝居を出来るはずもなく、初日は11テイクも失敗する。ムンナー相手に台詞の練習をしたミリーは翌日、演技の上達に褒められる。次第にカマルは屈託ないミリーへ惹かれてゆき、ついに結婚を決意する。

このダフ屋とスターの格差がよく表れていて、それぞれのキャラクターの哀れさを誘う。

ミリーの誕生日にロケ地を訪ねたムンナーは、無理して買ったルビーの指輪をプレゼントしようと彼女の部屋へ行く。すると、着飾ったミリーがまたもカマルからプレゼントされた豪華なアクセサリーを身に付けようとしている。

カマルはカマルで、ダイヤモンドがたっぷり載った婚約指輪を用意するのだが・・・。

いよいよ映画が完成(劇中、撮影していた映画のタイトルが「Rangeela」)。プレミア試写となる。その会場にムンナーの姿はなく、ミリーはお粧しして現れた家族から彼の手紙を渡される。カマルの隣に座って手紙を読み始めようとすると、場内が暗くなり映画が始まる。このタイトルバックとエンド・タイトルの垣間に、荷物をまとめ出てゆくムンナーが描写される。

試写が終って、会場は沸き上がる。ムンナーの想いが綴られた手紙を読んだミリーは、大喝采の中、ステージとは反対側へ走り出す。後を追って訳を聞いたカマルは彼女を家に送り届けるが、すでにムンナーの姿はなかった。

数ヶ月後。スター街道驀進中のミリーは家族と共に高層フラットへ移り住み、リムジンで撮影所まで送り迎えされるまでになっている。ムンナーはと言うと、相変わらずしがないダフ屋。今日も映画館前に屯する人々の中をうろつき、チケットを売って日銭を稼ぐ。その姿を、新進女優ミリーが大きく描かれた「Rangeela」の看板が見下ろしている・・・

と、このようなオチになるものだと想っていた。

ダフ屋とバックグラウンド・ダンサーの恋の物語。それもヒロインが主役に抜擢されて、スターとなって羽ばたいてゆく、と聞けば、少し前のハリウッド映画やフランス映画あたりなら、こういうセンチメンタルなラストで括ったことだろう。

ところが、意外や意外。カマルとミリーは、ムンナーを探し出してしまう! ここで、カマルはボリウッドのひとつのルール、ライヴァル役の法則に則って、ムンナーに花を持たせる。ミリーとカマルは互いに突っかかり合うが、そのコンビネーションは明らかに愛情に満ちていて、カマルでさえ笑って頷いてしまうのだ。

こういうハッピーエンドだからこそ、年間トップ5のヒットを勝ち得た訳だ。

本作を映画作りの内幕物と見ると、少々物足らなく思える。撮影のシーンもそれほど多くない。RGVは映画の舞台裏をあざとく見せる代わりに、ほどよく手の内を隠しておいたのかもしれない。銀幕は、ある程度憧れをまとった距離を持っている方がよいからだ。

ストーリーはむしろ、ローワー・ミドル・クラスであるミリーの生活レベルで描かれている。これは、大仕掛けなスター誕生物であるスバーシュ・ガイーTaal(リズム)(1999)とは大違いだ。数年間とは言え映画界の流れの違いもあるだろうし、当時のRGVの立ち位置もあるだろう。本作の製作状況を考えると、RGVが貧相を感じさせないギリギリの線で決して潤沢ではない予算を乗り切ったことが判る。

また、主人公がダフ屋だったり、バックグラウンド・ダンサーだったりするのは、RGVがテルグ映画圏出身ということも大きい。テルグ映画はヒンディー映画と違い、労働者が主役を演じるのが普通だからだ。

そのためか、他のヒンディー語映画と比べて、ストーリー展開は驚くほど地味である。劇的な場面はさほどないし、本筋とは関係ないギャグでつなぐようなキャラクターもいない。その分、観客と同じ視線でのハッピーエンドが、より温もりのあるものに感じられる。

インドのスピルバーグを目指す若手監督スティーヴン・カプール役は、グルシャン・グローヴァル。他の映画では大仰な敵役を演じることが多いが、今回は特別出演扱いで、さほど諄くない芝居を見せ好感が持てる。

大物(?)プロデューサー、P・C・チョープラー役には、RGVのJungle(2000)にも出ているアヴタール・ギル。カツラを投げつけたり、我儘ステージ・ママに遜ったりというお決まりのギャグを見せる。

ミリーの父親役にアチュート・ポトーダル、母親にリーマー・ラグーが扮し、映画好きな父親と家族の一般的な様相が見て取れて面白い。

また、完成パーティーのシーンでP・Cの名を語る偽業界人役として、台詞で参加してるニーラージ・ヴォーラがカメオ出演(?)している。

1995年のトップ5ヒットとなった本作は、今も人々に愛されている。

その様は、Kuch Kuch Hota Hai(何かが起きてる)(1998)の歌当てゼスチャー・クイズで、カジョールがセクシーポーズを取る第1問の答えが本作のタイトルソング「rangeela」であったし、音楽を担当したA・R・ラフマーンのドバイ・コンサートでもオープニングにこの曲のインスト版が演奏されていたりと、人氣の高さが伺われる。

*追記 2010,12,10
>撮影中にヒロイン役の若手女優が運転手と結婚
ヒロイン役を演じるのは、Gandhi, My Father」ガンジー、わが父(2007)で東京国際映画祭・最優秀女優賞を獲得したシェファリー・シェッティー(現シャー)。劇中は運転手と結婚して降板する役だが、現実での結婚相手は「Aankhen(目)」(2002)の監督で「Singh is Kinng」(2008)の製作者ヴィープル・アムルトラール・シャー

>ウルミラー・マートンドカル
本作のミリーは、本作で劇中ナンバル「tanha tanha」を振付しているサロージ・カーンのグループ・ダンサーという設定。一方、ウルミラーがスター役でファン役のアーフターブ・シヴダサーニーから惚れられるのが「Mast(陶酔)」(1999)。

>ラーム・ゴーパル・ヴァルマー
初期のRGVは映画ファン全開のスタンスで監督していたが、「Mast」でのスター像も、本作のカマルと同様、孤独な人生を送っている設定。Company(2002)で実録タッチ路線に傾倒してからはホラー含めて暗い作品ばかり制作するようになる。

オープニング・ナンバル「rangeela re」のラップ小僧は、プレイバック・シンガー、ウディット・ナラヤンの息子アディティヤ・ナラヤン。稼業の歌手となって親子歌謡ショーを巡業していたが、めでたく?ヴィクラム・バット監督作「Shaapit」(2010)でヒーロー・デビュー。もちろん、シャーンばりの美声でセルフ・プレイバックを披露。

もうひとり、本作のカメオ?出演から出世したのが、本作のアソシエート・ディレクターで彼自身というか助監督役でちらりと掛け合いを見せているのがマドゥール・バンダルカルChandni Bar(2001)でリアリティー路線を開拓、セレブ・ゴシップ映画「Page 3」(2005)、路上生活映画「Traffic Signal」(2007)とNational Awardsを3回受賞する出世ぶり。現在製作中のアジャイ・デーヴガン主演「Dil Toh Bachcha Hai Ji」(2011)はラブコメになる模様で新境地に挑戦?

Rangeela-CD

ティラキタでCDを試聴する

関連する記事

タグ: , , , , , , , , ,