Raja Hindustani(1996)#132
Raja Hindstani 01.12.26 ★★★★
ラージャー・ヒンドゥースターニー
製作:カリーム・モーラニー、バンティー・スールマー、アリー・モーラニー/原案・台詞・脚本・監督:ダルメーシュ・ダルシャン/脚本:ロビン・バット/台詞:ジャーヴェード・シッディーク/撮影:W・B・ラーオ/詞:サミール/音楽:カルパナー・アイヤール、ナディーム-シュラワーン/背景音楽:スレンドラ・ソディー/美術:R・ヴェルマン/振付:ラージュー・カーン/アクション:ティヌー・ヴェルマー/編集:バーラト
出演:アーミル・カーン、カリシュマー・カプール、スレーシュ・オベローイ、ジョニー・リーヴァル、ナヴニート・ニシャン、ヴィール・クリシュナン、マスタル・クナール・ケムー、プラムード・モウトー、モーニシュ・ベーヘル、ティクー・タルサニア、ファリーダー・ジャラール、アルチャナー・プーラン・スィン、ラザック・カーン
公開日:1996年11月15日(年間トップ1ヒット! 1990年代トップ3ヒット!!/日本未公開)
1996年度 Filmfare Awards 作品賞、主演男優賞、主演女優賞、音楽監督賞
STORY
誕生日のお祝いとしてパーランキーへ旅する富豪の娘アールティー(カリシュマー)。空港に下り立った彼女は、ガイドも兼ねるタクシードライバーのラージャー(アーミル)と恋に落ちてしまう。しかし、彼女の父セーガル(スレーシュ)は結婚を認めず、さらにママ母ミセス・セーガル(アルチャナー)が悪知恵を働かせ、ふたりの仲を引き裂こうと画策する・・・。
Revie-U
1997年度Filmfare Awards作品賞、主演男優賞、主演女優賞、音楽監督賞(ナディーム-シュラワーン)を受賞し、監督賞、助演女優賞、ベスト・コメディアン賞(ジョニー・リーヴァル&ナヴニート・ニシャン)、作詞賞(サミール)、プレイバックシンガー女性部門(アルカー・ヤーグニク)がノミネートされた年間トップ1ヒット作。
前半は田舎の純情青年ラージャー・ヒンドゥースターニー(我が国で言えば、日本太郎)と都会の悩殺娘アールティーのロマンス、後半が結婚に絡んで親子の亀裂に及ぶエモーショナルな展開となる。
富豪の娘とタクシー・ドライバーの恋は、単に貧富の差に留まらずカーストの違いをも意味している。しかも、このインター・マリッジは「逆毛」と言われ最も嫌われるケースである。これら逆境を乗り越えてのロマンスが人々の心をとらえたのだろう。前年のトップ1ヒット「DDLJ」(1995)も言ってみれば駆け落ち映画であった。
タイトルロールを演じるアーミル・カーンは、粗っぽい田舎のタクシー・ドライバー、アールティーに一目惚れしたからは純朴な青年、そして、ボンベイの社交界に招かれては屈辱の末に酒乱となり、我が子を必死で奪おうとする夫を見事に演じ分けている。
ヒロインは、めっきり艶っぽくなったカリシュマー・カプール。「Raja Babu(ラージャー坊ちゃん)」(1994)に比べ、演技面でも大きく成長しており、本作ではアーミルと熱烈なキス・シーンに挑戦!!
ラージャーがお供2人に唆されて道化を演じるシーンがあるが、これはチャップリンと言うよりラージ・カプールへオマージュを捧げたものであるのは孫である彼女がキャスティングされていることからも推測できる。
さて、アールティーのお供として同行する女(?)2人組、オカマちっくな女装者ヴィール・クリシュナンと男勝りのナヴニート・ニシャンにも注目したい。ヴィールは、ディスコを仕切る姐御を怪演していた「Aashiq(愛人)」(2000)が記憶に新しい。
ナヴニートの方はいつもの強烈マダム役ではないが、腕力をふるう豪傑。スィーク教徒のジョニー・リーヴァルと腕相撲、レスリングを交わし、彼の伴侶となってからはメルヘンちっくなメイクに一変となるのが可笑しい。ヴィールとナヴニートは、ダルメーシュの「Mela(祭!)」(2000)でもキャスティングされている。
さらに、ラージャーの相棒役の少年クナール・ケムーも忘れ難い。役名は、なんとラジニーカーント!
一方、ひとり娘のアールティーをこよなく愛しながらも身分違いの結婚に反対する父親役に「Hum Ho Gaya Aap Ke」(2001)のスレーシュ・オベローイ。
真の敵役ママ母に扮するは、「Mohabbatein(いくつもの愛)」(2000)のアルチャナー・プーラン・スィン。「KKHH」(1998)でも見せていた、彼女の鼻にかかった英語が嫌みったらしく、無学なラージャーとの対比を印象付けている。
その他、アルチャナーの甥にモーニシュ・ベーヘル、ボンベイのタクシー・ドライバー役にブレイク前(?!)のラザック・カーンが出演。
スーパーヒットしたテーマソング「pardesi」は、カルパナー・アイヤールによるもの。「異国の人よ、行かないで」と唄う歌詞がなんとも耳に残る。「Gadar(暴動)」(2001)でも同様に異国の人への想いを綴った歌詞が、やがて印パというふたつの国に引き裂かれる愛を代弁していたが、本作ではこれが身分の違いにあてられている。
監督は「Dhadkan(鼓動)」(2000)のダルメーシュ・ダルシャン、脚本は「Ajnabee(見知らぬ隣人)」(2001)のロビン・バット。カーストの違いを全面に出してはいないが、町をガイドするラージャーが買い物のコミッションをアールティーに返した後、お嬢様のアールティーがよく尽くすラージャーについバクシーシをあげてしまうところなど描き込んでいる。
興業成績は、年間トップ2ヒット「Jeet(勝利)」(1996)の2.5倍という6億1000万ルピーをあげ、1990年代トップ3ヒットとなった。
*追記 2010,12,09
>クナール・ケムー
田舎まるだしの名前ラージャー・ヒンドゥースターニーとセットでダサいイメージを増幅する相棒少年役のクナールは子役から転じて、退廃映画「Kalyug(末世)」(2005)で本格デビュー。その苦み走ったワイルドな表情は、続く路上生活映画「Traffic Signal」(2007)でも存分に発揮されている。
ただ、本作で失笑キャラを演じたせいか?全体に押しが弱く、「Superstar」(2008)のスーパースターぶりも今ひとつ。そんな頼りなげなところがかえって「Dhoondte Reh Jaoge」(2009)などで活かされたりする。「Golmaal 3」(2010)に期待!
>ついバクシーシをあげてしまうところなど描き込んでいる。
実は本作、カシミールを舞台にしたシャシ・カプール(カリシュマーの大伯父)主演「Jab Jab Phool Khile(花が咲く時)」(1965)の復刻作品と言えるほどアウトラインは同じ。
妹とボートハウスを営むラージャー(シャシ)のところへ都会から金持ち令嬢リター(ナンダー)がやって来てしばらく過ごすうちにふたりは恋に落ちる。なんとか結婚するもボンベイの上流階級にラージャーは馴染めず…といったストーリー。
令嬢がバクシーシを渡してしまう場面もしっかり継承。