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Maine Pyar Kiya(1989)#129

2010.12.06
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Maine Pyar Kiya

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Maine Pyar Kiya(私は愛を知った) 02.01.02 ★★★★
マイネー(メェネー)・ピャール・キヤー

製作:ターラーチャンド・バルジャーツヤー/脚本・台詞・監督:スーラージ・R・バルジャーツヤー/原案:S・M・アハーレー/撮影:アラヴィンド・ラード/詞:アサード・ボーパリー、デーヴ・コーフリー/音楽:ラームラクシュマン/背景音楽:ウッタム・スィン/振付:ジャイ・ボーラーデー/美術:ビジョン・ダース・グプタ/編集:ムクタール・アフムド

出演:サルマーン・カーン、バギャーシュリー、アローク・ナート、ラジーヴ・ヴェルマー、リーマ・ラグー、アジート・ヴァチャーニー、ハリーシュ・パテール、ハンサム、ラクシュミーカーント・ベールデー

特別出演:モーニシュ・ベーヘル

公開日:1989年12月29日(年間トップ1ヒット!!/日本未公開)

Filmfare Awards 作品賞/最もセンセーショナルな新人賞:スーラージ・R・バルジャーツヤー/作詞賞(アサード・ボーパリー)&男性プレイバック・シンガー賞(S・P・バラスブラフマンヤム)「dil deewana」

STORY
村の修理屋カラン(アローク)は、都会で成功した幼なじみのキシャーン(ラジーヴ)の屋敷に娘のスマン(バギャーシュリー)を預ける。間もなくスマンとキシャーンの息子プレーム(サルマーン)は恋に落ちる。しかし、キシャーンとカランが決裂してしまい・・・。

Revie-U
インド映画史上最大のヒット作「Hum Aapke Hain Koun..!(私はあなたの何?)」HAHK(1994)の監督スーラージ・R・バルジャーツヤーのデビュー作品。年間トップヒットとなった他、スーラージ自身がFilmfare Awards 新人賞を受賞、スペインでも吹き替えバージョンで公開されたという。

スーラージ作品の特徴は、「HAHK」Hum Saath-Saath Hain(みんな一緒に)」HSSH(1999)と結婚式をメインに扱い、暴力シーンを廃した心温まるファミリー映画なのであるが、本作は1980年代後半の潮流を繁栄してか、マサーラー映画の基本であるロマンスとアクションが展開する。

もっとも、中盤に「Jewel Thief」(1967)の「ohonthon pe aesi baat main」などが流れる懐メロ・メドレー宴会シーンがあり、スーラージのお家芸となる基盤がすでに見られるのが興味深い。

主演のサルマーン・カーンは、デビュー2年目。本作でブレイクし、世代交替しつつあったボリウッドの新世代スターとなった。まだ筋肉はさほど付いていないが、上半身裸でトレーニングをするシーンなどがあって、この頃から脱ぎたがりだったことが伺われる。

サルマーン演じるプレームはスーラージ作品での定番キャラクターとなるが、彼の部屋にはランボーマイケル・ジャクソンのポスター、衣装が「トップガン」(1986=米)まがいのワッペン貼り革ジャンパーだったりするところに、1980年代のインド人嗜好が表れている。

本作で注目を集めたのはサルマーンだけではない。むしろメガヒットしたのも、ヒロインのバギャーシュリーあってこそ、と言えるかもしれない。

本作でデビューした彼女は、マハーラージャーの家系だけに高貴な愛らしさを感じさせる。含羞みながらの初々しい芝居もまたよく、隠れて煙草を吸うプレームとモノハールをお香を焚いてかばうシーンがいじらしい。

しかし、彼女は撮影中に結婚(宴会メドレーの撮影3日後だったとか)してしまい、その後も何作か出演したが、どれもヒットに恵まれずボリウッドから引退同然の身となってしまったが、未だに彼女の銀幕復帰を望む声も多い。

その他、後のスーラージ作品で欠かせない面々が見られるのも嬉しい。

スマンの父親カラン役は、もちろんアローク・ナート。娘が教師を勤める青空学級で読み書きを勉強するディーゼル・エンジンの修理屋が役どころ。オープニングは、授業に遅刻したカランが他の子供にキャンディーを配って誤魔化そうとするが、スマンにみつかって手のひらを棒で叩かれるというもの。

彼は幼なじみのキシャーンを心から愛しているのだが、そのキシャーン(ラジーヴ・ヴェルマー)はビジネスで大成功してすっかり人が変わってしまっている。息子の結婚相手には修理屋の娘では話にならない、娘の滞在費に2000ルピー払え、とまで言い捨てる。

一方、カランとキシャーンの仲違い直前に、プレームとスマンの想いを知って大いに喜ぶプレームの母親がリーマー・ラグー。どっしりとした温かみのあるキャラクターがいかにもインドの母親らしい。

プレームの親友役モノハール役に扮するラクシュミーカーント・ベールデーも忘れてならない。彼も、これがヒンディー映画デビュー作となる。シティボーイ(?)というキャラクターだが、その後、愛嬌あふれる使用人役がほとんどとなる。それは本作でラジャスターン出身のお手伝いとデキてしまったからだろうか??

キシャーンのビジネス・パートナーであり、娘を嫁入りさせようと虎視眈々とする敵役ランジート役が、アジート・ヴァチャーニー。そのキャラクターは「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)にも踏襲されている。

このランジートの甥ジーヴァン役で、モーニシュ・ベーフルが嫌みな役どころを見せる。「Teri Baahon Mein」(1984)でデビューしたものの鳴かず飛ばずだった彼だが、本作が出世作となった。パーティーの席で白い鳩を拳銃で撃ち狙おうとしてスマンに邪魔され、その上、彼女を手篭めにしようとする敵役である。

愛のシンボルとなるこの鳩はハンサムという名でしっかりクレディットされていて、ラストではパーティーでの恨みからジーヴァンを崖の底へ落としてしまう! カルマが成立しているところが、さすがインド映画である。

スマンの伯父役は、ハリーシュ・パテール。一ヶ月で2000ルピー稼がなくてはならないプレームを面倒見る砕石場の親方役として登場。

音楽は「HAHK」「HSSH」でも提供しているラームラクシュマンS・P・バラスブラフマンヤムの太いバスと、スローなメロディーが時代を感じさせる。

オープニング・タイトルバックに流れるメインテーマは、スティービー・ワンダー「I just called to say I love you」と同じコード進行を持っていて、さすがに耳に残る。ナディーム-シュラワーンが音楽を担当したマイナー映画「Jaan Ki Kasam(命に誓って)」(1991)でもサビの部分だけアレンジし直してイタダイていた同名の曲があった。

ミュージカル・ナンバー「mare rang mein rang ne」では、プレームが肌も露なゴールドのドレスをスマンに贈り、テラスで彼女が着替えて現れるのを待ち望むというシーンがある。これがバージョン・アップした「ラジュー出世する」Raju Bhan Gaya Gentleman(1992)の日本公開時には、ゴールドのドレスに着替えたジュヒー・チャーウラーの登場間際、待ちわびるシャー・ルク・カーンに金粉が舞って、インド映画に不慣れな観客から爆笑を買ってしまったが、これはすなわち「ゴールドに値する裸体」という設定である。

本作では、スマンが純白のウェディング・ドレスから始まって、いよいよという場面で彼女はゴールドのシーツを纏って現れる。プレームにその布をはだけても彼女がどんなドレスを着ているかは観客には隠されたままであり、「あとは想像にお任せします」という演出となっていることからも「ゴールド=お宝」ということが判る。

*追記 2008,06,09
「友達なら詫びも礼も要らない」という台詞は、ファラー・カーンのお氣に入りで、彼女の監督作Om Shanti Om(2007)に引用され、本作の監督スーラージ・R・バルジャーツヤーと彼の父ターラー・チャンド・バルジャーツヤーとおぼしき人物が登場する。

*追記 2010,12,06
>バギャーシュリー
90年代初頭に引退後、しばらくしてTVで復帰。ゼロ年代に入ってマイナー映画を経て、アクシャイ・クマール主演「Humko Deewana Kar Gaye」(2006)の義姉役でボリウッド・メジャーに復帰。「Janani」(2006)では同じく90年代初頭のヒロイン女優アイーシャー・ジュルカーと共に主演。多くのヒロイン女優が年齢と共にかつての面影を失う中で、デビュー当時とさほど変わらぬ容姿を保っているのはさすが。

>「友達なら詫びも礼も要らない」
ファラーがお氣に入りであると同時に、彼女の夫シリーシュ・クンデールも初監督作Jaan-E-Mann(愛しき人よ)」(2006)でアッキーの台詞として引用。

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