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Kurbaan(2009)#124

2010.11.30
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Kurbaan

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Kurbaan(犠牲) ★★★☆
クルバーン

原案・製作:カラン・ジョハール/製作:ヒールー・ヤシュ・ジョハール/脚本・監督:レンシル・デ・シルヴァ/台詞:アヌラーグ・カシャップ/台詞・作詞:ニランジャン・アイイェンガル/撮影:ヘーマント・チャトゥルヴェディ/作詞:イルファン・シディーキィー(ali maula)/音楽+背景音楽:サリーム-スレイマン/プロダクション・デザイン:インドラニ・ピッライ/振付:ヴァイバヴィ・メルチャント/アクション:パルヴィーズ・フェローゼ/スタント監督:フィル・タン、スピロー・ラザトス/VFX:レッドチリース.VFX/特殊メイク:ピア・コーネリアス/編集:アーシフ・アリー・シャイク

出演:サイーフ・アリー・カーン、カリーナー・カプール、ヴィヴェーク・オベローイ、キロン・ケール、オーム・プリー
特別出演:ディヤー・ミルザー、ナゥヒード・スィルシー、クルブーシャン・カールバンダー

公開日:2009年11月20日(日本未公開)

STORY
デリーの大学で心理学を教えるアヴァンティカー(カリーナー)は、新任の教授エヘサーン(サイーフ)と恋に落ち、渡米するが、隣人一家がテロリストと解って・・・。

Revie-U *真相に触れています。
マイ・ネーム・イズ・ハーン」My Name is Khan(2010)の監督カラン・ジョハールが、同時期に製作し先行公開となったテロ映画。結婚した相手がイスラーム原理主義テロリストで、友人(知人)が組織に潜入(そのために殺人を課せられる)。ラストは壮絶な死…と、ストーリーラインがヤシュ・ラージ・フィルムズ「New York」(2009)と重なるせいか、これまでカランの作品をソフト販売してきたYRFでなくUTVからとなっている。

ファースト・シーンは、デリー。タイヤがパンクしたタクシーを捨て、カリーナーは別のタクシーを拾おうとする。そこへ、サイーフがフレーム・インし、同じくタクシーを止めようとする。
ここでカリーナーはサイーフが止めたタクシーにさっさと乗り込むが、サイーフが咳き込み、心配した彼女がタクシーを譲る。するとサイーフは芝居をやめてタクシーに乗り込む。
次の場面で、サイーフはカリーナーが教鞭を執る大学へ赴任して来た教授と解る。
リアリティ重視の作品かと見せて、出会いの場面は、よくあるボリウッド映画。しかし、この<欺く>芝居通り、サイーフ扮するエヘサーン(=イーサーン)は、アヴァンティカーを欺くのだった。

Kurbaan

(c) dharma production,2009

サイーフ・アリー・カーンは、顎髭を蓄えたテロリスト役のせいか、いつもより目つきが数段鋭い印象。冷酷なテロリストぶりが板に付いている。
一方、カリーナー・カプールはと言うと、オフ・スクリーンでのゾッコンぶりが見て取れるほどサイーフにデレデレ…。
Raavan」ラーヴァン(2010)のアイシュワリヤー・ラーイ・バッチャンアビシェーク・バッチャンもそうであったが、実生活でもカップルとなっている場合、見ているこちらが氣恥ずかしくなる(特に本作のような濃厚なベッド・シーンなどは)。

アヴァンティカーの米国大学転任を機会にエヘサーンが求婚。インターマリッジ(異宗教での結婚)ながらアヴァンティカーの父に許され、ふたりはニューヨークへ渡る。やがて郊外へ引っ越し、パキスタン系住民の隣人と親しくなる。ところが、そこの嫁サルマー(ナゥヒード・スィルシー)がアヴァンティカーに助けを求めから、彼らがテロリストであるばかりか、エヘサーンも巧妙に彼女に近づいた一味であったことが露呈する・・・。

監督のレンシル・デ・シルヴァは、Rang De Basanti(浅黄色に染めよ)」(2006)や「Luck」(2009)の脚本を経て、これが監督デビューとなる。
その演出は、シリアスかつスリリングなタッチで貫かれ、冷たいルック(画調)に米国人俳優多数出演と相まって、まったくの<洋画>。特に抹殺されたサルマーの焼死体などSFXメイクであざとく見せるあたりは、もう「インド映画」とは思えない(被弾したサイーフの摘出シーンの皮膚感は、まだまだだが)。

サポーティングは、TVレポーター役がすっかり定番となったディヤー・ミルザー。今回はテロの被害となる短い出演なのが惜しまれる。
その彼氏で、後半、組織に潜入してアヴァンティカーに協力するリヤーズ役に「Mission Istanbul」(2008)で悪霊そのものと思えたヴィヴェーク・オベローイが熱演。骨太な存在感が持ち味となっているが、サイーフなどの繊細なトーンからするとやや演技過剰にも思える。

パキスタン系テロリスト一家の家長として威圧的に君臨するのが、Dabangg(大胆不敵)」(2010)のタヌキオヤジ、名優オーム・プリー。未公開ソフト化されている「テロ・ポイント」Shoot on Sight(2007)でも原理主義テロリストの親玉を演じていて、こちらも注目。
そして、その妻として夫のテロを支えるナズリーン役がスタローンinハリウッド・トラブル」Kambakkht Ishq(2009)の疫病伯母キロン・ケール。肝の据わった様は、オーム・プーリー以上。ただ、原理主義へ走る息子に苦悩した仏・独・パキスタン合作の秀作「Khamosh Pani(物言わぬ水)」(2003)での役柄と真っ向から対比する役とあって、心中複雑。
また、アヴァンティカーの父親役でわずかに出演しているのが、Koi…Mil Gaya(誰か…みつけた)」(2003)の校長役にして、Kites(2010)の脚本に参加しているアーカーシュ・クラーナー。リヤーズの父親役がラガーン」Lagaan(2001)のマハラジャ、クルブーシャン・カールバンダーとなっている。

kurbaan

(c) dharma production,2009

半年弱前にリリース(劇場封切り)され年間10位に入った「New York」に対し20位と大きく引き離された本作。ストーリー的に重なるだけでなく、よりシリアスなタッチで家族ぐるみの復讐テロリストという面も影響したように思える。
もっとも米国では3スクリーンのスタートから4週目に70スクリーンまで膨れる好調ぶりを示し、33スクリーンから60スクリーン止まりとなった「New York」を大きく引き離す興行成績となった。
本作の撮影中、例のムンバイ同時多発テロが発生。その後、インド国内では反テロ映画であろうと市民から拒否反応を受ける嫌テロ・ムードとなったが、この両作が当初の想定よりスクリーン数を拡大したことから、米国ではむしろイスラーム・テロを題材とした映画が好まれるかのようだ。

さて、本作を原案・製作したカラン・ジョハールだが、先行企画の監督作「MNIK」だけでは飽きたらず、同時期に米国でテロを題材とした作品を手がけたことになる。それも「MNIK」が9.11に翻弄され反テロを叫ぶ主人公であるのに対し、本作ではテロを行う側にフォーカスしている。
ムスリムでもない彼がここまで入れ込むのは何故だろうか? 米国市場に食い込む悲願のため、単にマーケティングの見地からテロ映画を選んでいる訳でもあるまい。フィルモグラフィの変化から考えると、受け入れざる者への理解をライフワークにしているようにも思える。

Kurbaan-CD

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