Kambakkht Ishq(2009)#123
カンバックト・イシュク(トンデモない恋)
製作:サジード・ナディアドワーラー/脚本・監督:サビール・カーン/脚本:キラン・コートリアル、イシター・モーリトラ/脚本・台詞・作詞:アンヴィター・ダット・グプタン/撮影:ヴィカース・シヴラマン/音楽:アヌー・マリック/振付:ヴァイバヴィ・メルチャント/アクション:スピロ・ラザトス、フランコ・ソルマン、マヘンドラ・ヴェルマー/背景音楽:サリーム-スレイマン/編集:ニティン・ローカデー
出演:アクシャイ・クマール、カリーナー・カプール、キロン・ケール、ヴィンドゥー・ダーラー・スィン、カイカシャン・パテール、ラージェーシュ・ケーラー、アシュウィン・ムシュラン
ゲスト出演:アーフターブ・シヴダサーニー、アムリター・アローラー、ジャーヴェード・ジャフリー
友情出演:ボーマン・イラーニー
特別なゲスト出演:シルベスター・スタローン、デニース・リチャーズ、ブラヌーン・ロース、ホリー・ヴァランス
公開日:2009年7月3日(年間6位/2010年8月 日本未公開ソフト化)
STORY
ハリウッド・スター以上にモテまくりのスタントマン、ヴィラージ(アクシャイ)。弟ラッキー(アーフターブ)とカーミニー(アムリター・アローラー)が結婚することになるが、彼女の姉で男嫌いのスーパーモデル兼女医シムリター(カリーナー)とヴィラージが対立して・・・。
Revie-U
インド映画史上最大と言われた製作費を投入し、飛ぶ鳥を落とす勢いのアクシャイ・クマール ‘N’ カリーナー・カプールをキャスティング。しかもハリウッドに乗り込んで、スタローンやシュワルツェネッガーがゲスト出演! 2009年ぶっちぎりのメガヒットに…なると思いきや、これがまたトンデモない出来で「芳しく」ない。
アクシャイの役どころは、ハリウッドのスタントマン。「キング・オブ・アクション」の異名を持つアッキーにふさわしい。ここ数年、出演する作品がどれもオープニングNo.1とあったが、演技面が光ったサイコ・スリラー「8X10 Tasveer(写真)」(2009)の直後だけに期待をかなり下回るのが残念。
一方、カリーナーは美貌と悪女な設定からまずまず(妹が呼びかける「ベブー」はカリーナー自身の愛称)。
疫病神が一番縁のある恋の相手、という定番のラヴ・コメディだが、行き当たりばったりな脚本には不満が残る。
愛すべきヒロインに、感情移入出来ないような卑劣な行為を平然とさせてしまうのも不出来なボリウッド映画でしばしば見られるが、ぜひともこれは改善して欲しいところである。
監督は、「Mujhse Shaadi Katoge(結婚しようよ)」(2004)などの助監督から1本立ちしたサビール・カーン。師匠であるデヴィッド・ダワンの<脳味噌置いてけコメディ>路線を狙ったつもりが、やはり技量不足。エンディング・クレジットも「Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)そのままで興醒めしてしまう。
それでもユニバーサル・スタジオ見たさのインド人にはウケがよく、年間6位をキープ。
臆面もなくハリウッドを私物化してしまうのは、さすがインド人。バブル期の日本もハリウッドの製作会社を買い占めた際、単にビデオデッキを売るためのソフト供給元と思わず、これくらいのことをしていれば、世界の中で日本人のイメージもリアルなものに変わっていたはず(リアル過ぎるところはTOKYO SHOCK BOYS=電撃ネットワークが変えてくれたが)。
感心するのは<ハリウッドに乗り込んで>というコンセプトながら、それだけでは飽きたらずヴェネチア・ロケも行ってしまうスケールは、さすがボリウッド!
もっとも、ハリウッドでのスタント・シーンは、ユニバーサル・スタジオ・テーマ・パークの常設アトラクションを使ったもので、それが解っていると白けてしまうが、アッキーがジェットスキーに乗って活躍する「ウォーターワールド」他、「そう言えば、こんなアトラクションもあったなあ」と懐かしみながら観るのもよい。
(スタントマン役のアッキーがスタントマンを使っているのは、ハリウッドのユニオンによるため)
例によって元ネタがあり、カマル・ハッサン主演「Pammal K.Sambandam」(2002=タミル)のイタダキとのこと。
同じく音楽監督アヌー・マリックもヴェネチア・ナンバル「lakh lakh」がプリータムの「Kismat Konnection(運命のコネクション)」(2008)より「soniye ve」を<参照>しているのが彼らしい。
アッキーの体内から聞こえる「om mangalam」は、ヒンドゥーの結婚式で唱えられるマントラ。聞こえる理由を「God Tussi Great Ho(神様はグレート)」(2008)のようなファンタジーに持って行った方が面白かったのではないかと思う。
スタローンはじめ数々のハリウッド・スターが<ボリウッド・スター>を持ち上げる小さな役でもこぞってゲスト出演しているのは、70年代に日本市場開拓を見越してチャールズ・ブロンソンが格安でマンダムのCMに出演したのと同じく、巨大な映画市場としてのインドをおもねってのこと。
冒頭で、出演が噂されていたカリフォルニア州知事であるアーノルド・シュワルツェネッガーに続き、ボリウッドで花開かずに終わったマイナー女優プージャー・バトラーに「ハリウッド・スターの根回し」として謝辞が捧げられているのは、彼女が米・印・パキスタン合作「Taj Mahal」(2005)のヒロインを務めたため口利きをしてくれたのだろう(階級社会のインドは日本以上のヨイショ社会でもある)。
さて、そのハリウッド・スターのカメオであるが、どれも安っぽく見えてしまうのはボリウッド贔屓のせいではないだろう。このへんからもハリウッド映画の先行き不安が感じられる。
サポーティングは、不運を呼び込むバツ2の伯母ドリー役にキロン・ケール。シムリターにプレゼントしたドゥパッターが風に飛んで玉突き衝突の原因となるのが可笑しい。
弟ラッキー役に、マイナー・ヒーローとして単独主演作をなんとかキープしているアーフターブ・シヴダサーニー。
そして、その妻カーミニー役に、サルマーン・カーンの義妹アムリター・アローラー。「Golmaal Returns」(2008)に続くカリーナーとの姉妹役。
起訴社会米国を反映した詐欺師役にジャーヴェード・ジャフリー、イカれた精神科医役が<友情出演>のボーマン・イラーニーとなっている。
どういうわけか、本年8月に日本盤DVDが未公開ソフトとして「スタローンinハリウッド・トラブル」の題で発売。ジャケットにはゲストのハリウッド・スターの名前のみながら、彼らはカメオのため宣伝に写真が使えないため、カリーナーとうつむく?アッキーの写真が使われている。
発売元のアルバトロスは別にボリウッドを手がけるつもりは毛頭なく、たまたま米国のB級映画とまとめて買わされたと思われる。このタイトル捏造トンデモ作戦は、レンタル業界での強烈なインド映画アレルギーを交わすためで現状では致し方あるまい。間違って借りた秘宝系映画ファンは意外にも喜んでいたりもするようだが、この程度のレベルで「インド映画って面白い」と思ってもらっても困るのだけれども。
まあ、レンタルで暇つぶしとして観る分にはオススメと言えよう。
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