Hum Saath-Saath Hai(1999)#116
「Hum Saath-Saath Hain(みんな一緒に)」 ★★★★ 01.05.31 UP/01.10.03 Re
ハム・サーテ・サーテ・ヘーン
監督:スーラージ・R・バルジャーツヤー/撮影:ラージャン・キナーギー/振付:ジャイ・ボーラーデー/音楽:ラームラクシュマン/詞:ラヴィンデール・ラーワル、デーヴ・コーフリー、ミタリー・シャーシャーンク、R・キラン
出演:サルマーン・カーン、カリシュマー・カプール、タッブー、サイーフ・アリー・カーン、ソーナーリー・ベンドレー、モーニシュ・ベーヘル、ニーラム、アロークナート、サティーシュ・シャー、サダーシヴ・アムラープールカル、リーマー・ラグー、シャクティ・カプール、ヒマーニー・シヴプーリー、マヘーシュ・タークル、アジート・ヴァチャンニー
公開日:1999年11月5日 (年間トップ2ヒット/日本未公開)
STORY
ラジャスターンの裕福なジョイント・ファミリー、ラームキシュン(アローク)とマンター(リーマー)の銀婚式が盛大に祝われる。そして、長男ヴィヴェーク(モーニシュ)はサーダナ(タッブー)と結婚、次男プレーム(サルマーン)はプリティー(ソーナーリー)と婚約、三男ヴィノード(サイーフ)はサプナー(カリシュマー)に夢中。ラームキシュンの信条は、「一緒に祈り、一緒に食べ、一緒に暮す」というもの。すべてはうまく行っているかに見えたある日、婿をもらった妹サンギーター(ニーラム)が一家から離れて新居を持ちたいと言い出して・・・。
Revie-U
白いホリゾントが広がる伽藍堂のスタジオで、青、黄、ピンクで色分けされた衣装を着た主演の6人がレトロチックなタイトルナンバーで踊るオープニング・タイトルバックは、「東京流れ者」(1996=日活)を彷彿とさせるが、古き良きジョイント・ファミリーを描いた心温まる家族映画である。
一応、妹夫婦が一家から離れて独立したいと言い出すが、事件らしい事件は後半遅くなってから。それまでは、ひたすら愛あり歌あり踊りありの富豪絵巻なのだ。
公開当時、ボリウッド・レビューでは概ね批判的であったが、これはインド映画史上最大のお化けヒットなったスーラージ・R・バルジャーツヤー監督の前作「Hum Aapke Hain Kaun…!(私はあなたの何?)」HAHK(1994)から来るプレッシャーとバッシングで、本作でマードゥリー・ディクシトとラター・マンゲーシュカルが外されてるのが主な要因。
スーラージの狙い、というか彼の祖父が起こしたラージシュリー・プロダクションのコンセプトは、血まみれアクションやどぎついお色気を排し、家族「みんなで」楽しめる映画。もっとも、撮影中、サルマーンはじめ、ほとんどのキャストがハンティングで捕らえた保護動物を食べてしまい(!)、「みんな一緒に」逮捕されてしまったが・・・。
冒頭、銀婚式の朝からして次々と登場人物が現れ、とにかく笑顔、笑顔、笑顔。微笑ましいリアクション・ショットも豊富で、思わずぐっと来る。それにしても、「Taal(リズム)」(1999)のアローク・ナート、「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)のリーマー・ラグー、脇を固めるヒマーニー・シヴプーリー、サティーシュ・シャー、マヘーシュ・タークルといい、皆いい笑顔だ。
いつもは悪役で嫌みなところを見せるサダーシヴ・アムラープールカル、シャクティ・カプール、「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)でシャー・ルク・カーンを貶める悪徳専務役だったアジート・ヴァチャンニーも人の良いファミリー役で登場。大いに歌って、睦まじき大家族を演ずるのが佳い。
長男ヴィヴェーク役のモーニシュ・ベーヘルは、バルジャーツヤー監督の常連。腕が不自由ながら皆に愛される長男役で、冒頭の銀婚式でムード歌謡「yeh to sach hai」を披露。タイトルナンバー「hum saath-saath hain」でもそうだが、ハリハランの甘い歌声と顔がよくマッチしていて地声のように見える。
サルマーン・カーンは、無口で心優しい青年プレームが今回の役どころ。目立つところは、お調子者の三男ヴィノード役のサイーフ・アリー・カーンに全部振っている。クレディット・ビリングからすればサルマーンが筆頭で、半端なスターなら「俺が、俺が」のエゴを丸出しにしそうに思えるが、役柄を弁えて出しゃばることなく、両親の前に立つ三兄弟の次男にぴったりおさまった芝居には小さな感動を覚える。日本の某スター・プロダクションに言わせると「スターは芝居をしてはいけない」そうだが、今のインド映画界では芝居ができなければスターでいられない。
ヒロインたちも華やかだ。妹サンギータ役のニーラムは、久々の大役。カリシュマー・カプールはいつもの通り活発で愛らしく、ソーナーリー・ベンドレーも含羞み屋を好演。ふたりに比べると肉付きのよいタッブーが意外にも最も魅惑的だ。これはスーラージの演出によるもので、台詞は極端に少ないものの、モーニシュとの結婚式で、目を伏せたまま腕の不自由な彼を氣遣って両手を添えるシーンには目頭が熱くなる(このふたりは末長く幸福に暮すであろう)。
見どころは、なんと言っても歌と踊り。花嫁を迎えての披露宴では、なんと隠し芸大会10曲メドレー。アジートとヒマーニが「次なる出し物は・・・(?)」と歌う「suno ji」も微笑ましい。しかし、家の中が劇場になってしまうのも凄い。家族演劇の次は家族映画で、家の中で観るのにプリントは35ミリ・フィルム! モノクロ画面がちゃんとスタンダードなのも心得ている。この時の子供時代に歌っていたアルファベット覚え歌「ABC」が、家族みんなで出かけたハネムーン、家族バスでジャイプールまでのロング・ドライヴに歌われる。
「HAHK」を越える記録的なヒットとはならなかったが、だからと言って本作「HSSH」の魅力が損なわれるわけではない。これからも「HSSH」は愛され続けるだろう。
*追記 2010.11.21
>スーラージ・R・バルジャーツヤー
本作の後、リティク・ローシャン、アビシェーク・バッチャン、カリーナー・カプールによる「Main Prem Ki Diwani Hoon(私は恋に夢中)」(2003)ではカラン・ジョハール的お遊びが裏目に出てフロップとなったが、シャーヒド・カプール N アムリター・ラーオ主演「Vivaah(結婚)」(2006)で初心に返り、見合いから結婚までをいじらしいほど淡々と描き、これが8ヶ月に及ぶ近年珍しいロングラン・ヒットに!
*追記 2010,12,25
>スーラージ・R・バルジャーツヤー
シャー・ルク・カーン製作・主演「Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)でパロられているのが彼。
90年代は家族映画路線でカラン・ジョハール以上の良識派とされたが、ヤシュ・ラージ路線で若者狙いに走ったリティク・ローシャン ‘N’ カリーナー・カプール「Main Prem Ki Diwani Hoon(私は恋に夢中)」(2003)がフロップ。
ちょうど昨日、久々の共同製作「Isi Life Mein(この人生に)」(2010)が公開。新人監督に新人コンビ、ヒロインのサンディーパー・ダールは今風のモデル系、ヒーローのアクシャイ・オベローイは名前だけでなくリティクをなよっとさせ、かつひたすら濃くした顔つき。マイナー映画の規模でゼロ年代風のハデさを狙った作風から「Main Prem Ki Diwani Hoon」の二の舞になりそう。