Dhadkan(2000)#113
Dhadkan(鼓動) 01.04.02UP/01.12.26 Re ★★★★
ダルカン
製作:ラーターン・ジャイン/台詞・監督:ダルメーシュ・ダルシャン/脚本:アニーズ・バズミー、カラン・ラズダン、ラージ・セナー/台詞・脚本:ナシーム・ムクリー/撮影:W・B・ラーオ/詞:サミール/音楽:ナディーム-シュラワーン/背景音楽:サンディープ・チョウター、スレンドラ・ソディ/振付:ラージュー・カーン、サロージ・カーン、レカー・チンニー・プラカーシュ/美術:ビジョン・ダース・グプタ/編集:バーラト
出演:スニール・シェッティー、シルパー・シェッティー、アクシャイ・クマール、マヒマー・チョウドリー、キラン・クマール、ニーラージ・ヴォーラ、スシュマー・セート、パルミート・セート
特別出演:シャルミラー・タゴール、アヌパム・ケール、カーダル・カーン、ナヴニート・ニシャン
Filmfare Awards :最優秀敵役賞(スニール・シェッティー )、女性プレイバックシンガー賞(dil ne yeh kaha hai〜アルカー・ヤーグニク)
STORY
アンジェリ(シルパー)に恋したデーヴ(スニール)、しかし、彼女の両親は事業家ラーム(アクシャイ)と結婚させてしまう。アンジェリを忘れられぬデーヴは、彼女の思い出のすべてを手に入れるため、ビジネスパートナーのシーター(マヒマー)と手を組んでラームを破産に追い込む・・・。
Revie-U *結末に触れています。
後半のヨーロッパロケ・ミュージカルシーンでは、滑走路で離陸するセスナと走ったり、教会で祈るなど「DDLJ」(1995)を思わせる。ストーリーからして、シャー・ルク・カーンがブレイクしたストーカー映画「Darr(恐怖)」(1993)の系譜である。
本作でFilmfare Awards最優秀敵役賞を受賞したスニール・シェッティーはストーカー的なキャラクターとはいえ、誠実さを感じさせる彼の芝居からデーヴに哀れさが吹き込まれ、観ていて共感を呼ぶ。その点、執拗にストーキングを重ねる「Darr」とは異なる。
前半はジーンズにチャッパル(サンダル)というチープな出で立ち。後半、ビジネスパートナーを得たデーヴはスーツでキメて登場するのがニクイ。しかも、ラームに巣喰う腹黒家族の間に巧みに入って、彼を破産に追いやるなどストーカー映画と言うよりピカレスク・ロマンに近いものが感じられる。
ローワーミドル・クラスのデーヴを追い出し、夜中に抜け出そうとするアンジェリに拳銃を握らせ「奴に逢いに行くなら、俺を殺してから行け!」と怒号する強烈な父親役は、「Kyo Kii…Main Jhuth Nahin Bolta(なぜなら・・・私はウソは申しません!)」(2001)のキラン・クマール。
デーヴが追い返されたことを知りショック死してしまう彼の母親役に、「Mann(想い)」(1999)のシャルミラー・タゴール。ラジオへ耳を押し付け一心にフィルミーソングを聴くという母親のサイコな氣質が、デーヴのストーカー氣質へ伝染したのだ、と納得できるキャラクターになっている。
対するラームは、ママ母(スシュマー・セート)、義弟ボブ(パルミート・セート)、義妹(マンジート・クラール)とすべて腹黒い一家にあって唯一の人格者として描かれている。
ラーム役のアクシャイ・クマールは、「Ajnabee(見知らぬ隣人)」(2001)など根っからの性悪者も喜々と演じるが、渋々結婚したアンジェリの心を少しずつ氷解させてゆく温かみのあるキャラクターもすんなりこなしてしまうから舌を巻く。
アンジェリに扮するシルパー・シェッティーは本作で堂々とファースト・ヒロインを演じ切った。騙され捨てられる儚い女を演じるとぐっと来ていたシルパーもようやく花が開いたと言えよう。
セカンド・ヒロインのマヒマー・チョウドリーは、デーヴのビジネス・パートナーという設定。クールな女に見えてデーヴへ想い寄せるところが愛らしい。
サポーティングには、ラームを敬愛する運転手役にニーラージ・ヴォーラ。その他、シーターの父親役としてわずかに姿を見せるアヌパム・ケール、ラームとアンジェリの結婚式で意味あり気に見守る彼の義姉にナヴニート・ニシャン、同じく結婚式で歌うガザル歌手にカーダル・カーンが特別出演している。
監督は、「Raja Hindustani(ラージャー・ヒンドゥースターニー)」(1996)で好評を博したダルメーシュ・ダルシャン。本作でも身分違いの恋を手掛けている。そう言えば、ママ母の家系は2作品共に腹黒い。
特筆すべきは、デーヴが妄想するミュージカル・シーンだろう。ラームを破産させ、彼らの豪邸を手に入れたデーヴが、アンジェリとツーショットで写るラームの服を着込む。彼女の思い出すべてを手に入れたかに見えたデーヴだが、彼の目の前でアンジェリとラームの戯れあう幻覚ミュージカルに悩まされるのだ!
意外なのは、スニール、アクシェイというアクション派のふたりが共演しているものの暴力シーンが一切ないこと。
ラストはデーヴのトラウマが癒され、シーターと海外へ旅立つハッピーエンドなのが救われる思いである。
*追記 2010.11.18
ナディーム-シュラワーンによる牧歌的なフィルミーソングがなかなかに心地よく、ヌスラット・ファテー・アリー・ハーンをフィーチャルしたフィルミー・カワリー「dulke ka sehra」が耳に残る。
スニール・シェッティーは本作でFilmfare Awards敵役賞を受賞するも、アッキー(アクシャイ・クマール)がブレイクしたのとは対照的に単独主演から助演へシフト。しかしながら、コメディはじめ多彩に活動しキャリアをキープ。