Gupt(1997)#106
Gupt(秘密) 01.12.28 ★★★★
製作:アジャイ・シャー/製作・監督:ラジーヴ・ラーイ/撮影:アショーク・メーヘター/詞:アナン(アーナンド)・バクシー/音楽:ヴィジュー・シャー/美術:シャッビール・ボックスワーラー、ビジョン・ダース・グプタ/編集:スニール・コーティアン
出演/ボビー・デーオール、マニーシャー・コイララ、カジョール、プレーム・チョープラー、ラーザ・ムラード、パレーシュ・ラーワル、サダーシヴ・アムラープルカル、シャラート・サクセーナー、ダリープ・ターヒル、クルブーシャン・カールバンダー、オーム・プーリー、ハリーシュ・パテール、アショーク・サラーフ、アンジュン・スリワスターワ、ヴィシュワジート・プラダーン、ディネーシュ・ヒングー、プリヤー・テンドゥールカル
特別出演:ラージ・バッバル、ムケーシュ・リシ
公開日:1997年1月4日(年間トップ4ヒット!/日本未公開)
Filmfare Awards 最優秀敵役賞:カジョール
STORY
大臣ジャイシン(ラージ・バッバル)の息子サーヒル(ボビー)は、キャンパスで出会ったイーシャー(カジョール)と恋に落ちる。だが、ひと足先にジャイシンがシータル(マニーシャー)との婚約をアレンジしてしまう。激しい諍いの後、ジャイシンは殺害され、サヒールが殺人犯として逮捕される・・・。
Revie-U *結末に触れています。
デビュー2年目のボビー・デーオール、本作が主演3作目にあたる。まだ彼は長髪で、ちょっと頼りなさそうにも見えるところが、遊びまくりの大学生サーヒル(サーヒール。ボビー自身は「サーヘィル」と発音)らしい。
彼に恋するダブル・ヒロインが、イーシャー役のカジョールとシータル役のマニーシャー・コイララ。ふたりともほぼ同時にサーヒルに惹かれてしまう。
最初にアタックするのはシータルなのだが、彼女は無言電話を掛けてサーヒルの声だけ聞いて喜ぶだけで、後から電話を掛けたイーシャーが結局サーヒルとデキてしまう。このあたりにキャラクターの違いが表されていて、ミュージカル・シーンでもイーシャーが雪山、シータルが砂漠と対比されている。
事件は、早々に起きる。パーティーの席でサーヒルの父親がいきなり婚約を発表。シータルには福音であるが、サーヒルとイーシャーにとっては寝耳に水だ。そして、何者かによりジャイシンが殺害される。
しかも第一発見者がサーヒルとあって、殺人犯として逮捕されてしまうのだ。彼はパーティーの客たちの前で父親と口論し、ナイフの刃を向けたところを皆に見られてさえいる。親に反抗する青年像はボリウッド映画では珍しいが、それにしても父親にナイフを向けさえするサーヒルはかなりのアンチ・ヒーローと映る。
サーヒルの父親ジャイシンにラージ・バッバル、シータルの父親チョウドリーにダリープ・ターヒル、イーシャーの父親デワーンにパレーシュ・ラーワルと、トゲのあるキャスティングなのもニクイ。
無実の罪で刑務所へ送られたサーヒルは、やがて脱獄を図る。が、なんと逃亡ルートは監獄の便器を掘り外して下水道から! インドの映画館では、さぞかしおぞましく思われたことだろう。
真犯人を捕まえるためサーヒルが次々と怪しい人物を襲ってゆくのだが、これがまたクセのあるメンツなのだ。即ち、彼を有罪に陥れた弁護士ターナーワーラーのラーザ・ムラード、父親と確執のあった閣僚のプレーム・チョープラー、シャラート・サクセーナーなどひと筋縄でいかない連中だ。さらに賞金稼ぎのハンター(ヴィシュワジート・プラダーン)、雇われ殺し屋(ムケーシュ・リシ)などが絡む。
この他、ファミリー・ドクタル役にクルブーシャン・カールバンダー、警察署長のアンジャン・スリワスターワ、笑う男にハリーシュ・パテールと錚々たる顔が並んでいるが、事件の捜査を担当するインスペクター役がオーム・プーリーと言うのもシブイ。
ここでちょいと思い出されるのが、ボビーの兄サニー・デーオール主演の怒り爆発映画「Ghayal(傷ついた者)」(1990)である。冤罪を晴らす脱獄物と言い、殺された身内がラージ・バッバルであることと言い、捜査に乗り出すオーム・プーリーと言い、かなり踏襲している。言うなれば、本作はボビー版「Ghayal」である。
ただ、サーヒルに痛めつけられた連中は窓ガラス越しに突き落とされたり、釜茹で(!)にされたりしながらも、順々に病院のベッドへ並んでゆくのが可笑しい。
しかし、それも第2幕まで。第3幕は、いよいよ真犯人の正体が明かされる。
インスペクターの捜査によりジャイシン殺害に使われた凶器がデワーン宅にあった物と判明。事件は、一件落着したかに見えた。部下の巡査たち(サダーシヴ・アムラープルカル&アショーク・サラーフ)とお疲れの祝杯を上げた後、インスペクターが何者かに襲われる!(この巡査たちはバイクの飲酒運転で帰宅しようとする・・・)。
同じ頃、サーヒルが「隠された真実」を発見する。それは、父親の殺害現場に残されていたロケットの中に彼とイーシャーの写真をみつけるのだ。つまり、真犯人は結婚を反対されたイーシャーであった。
もっとも、このロケットはサーヒルが殺人現場で手に入れ、法廷でも証拠として提出せずにシータルへ預けていたもので、最初からロケットを抉じ開けていればすぐに判ったのだが・・・。
オープニング・エピソードの会議シーンで閣僚らのアヤシイ面々を並べてジャイシンとの確執を臭わせたり、サーヒルが真実を暴く過程で怪我人は作れど殺人は犯さなかったのもストーリー上「真実を隠す」ためであった。
カジョールは本作でFilmfare Awards 最優秀敵役賞を受賞しているのだが、どちらかと言うと彼女の不敵顔からしてまったく意外ではないため、マニーシャーが敵役にまわった方がインパクトが強かったかもと思う。
ウルミラー・マートンドカルが女ストーカーに扮した「Pyaar Tune Kya Kiya..」(2001)もそうであったが、ヒロインが刃物を振り回すのは、やはりショッキングである(本作ではオーム・プーリーにグサリ!)。
監督は「Mohra(先兵)」(1994)でトップ2ヒットを放ったラジーヴ・ラーイ。演出もテンポよく、クライマックスでシータルがイーシャーに襲われ、サーヒルが大型トラックに襲われるシーン(ボビー本人が押し潰される車に乗っている!)がカットバックするなど脚本もよく練り込まれている。
「チューブラベルズ」風メインタイトルに007シリーズを思わせるオープニング・タイトルバックもクール。
音楽はヴィジュー・シャー、振付はレカー-チンニー・プラカーシュのコンビ。カタカリ公演のステージにボビーたちが混じってのミュージカル・シーンでは、古典舞踊のダンサーたちはフィルミーダンスと動きが違うせいかやりづらそうに見える。
興業成績はシャー・ルク・カーン主演「Pardes(他国)」(1997)をわずかに上回り、年間トップ4をキープ。ボビー主演作ではベスト1ヒットとなっている。
*追記 2010.11.11
90年代全開の無鉄砲な演出と縦横無尽のアレンジを誇るフィルミーソングが今となっては懐かしい。
愛らしいマニーシャー、荒削りな魅力を放つカジョール、ニヤけたボビー、怒濤の脇役たちなど忘れがたい一作である。