Josh(2000)#089
Josh(激情)/ 01.05.02UP/01.09.27 Re ★★★
ジョーシュ
原作・脚本・監督:マンスール・カーン/音楽:アヌー・マリック/詞:サミール/美術:ニティン・デーサーイー
出演:シャー・ルク・カーン、アイシュワリヤー・ラーイ、チャンドラチュール・スィン、シャラード・カプール、プリヤー・ギル、シャラート・サクセーナ、ヴィヴェーク・ヴァルワーニー
公開日:2000年6月9日(年間トップ4ヒット!/日本未公開)
Screen Awards:美術監督賞
STORY
クリスチャンのバイカーズ・ギャング、イーグル団を率いるマックス(シャー・ルク)とヒンドゥー・ギャング、サソリ団のリーダー、プラァカーシュ(シャラード)は対立していた。ところが、マックスの双子の妹シャリー(アイシュワリヤー)とプラァカーシュの弟ラホール(チャンドラチュール)が恋に落ちてしまう・・・。
Revie-U *結末に軽く触れています。
2000年春から初夏にMTV、ボックス・オフィスを賑わせたシャー・ルク・カーンのバイカーズ・ムーヴィー。アヌー・マリックのスパニッシュめいたフィルミー・ソングとエキゾチックなゴア・ロケは、まるでラテン・ムーヴィーを見るかのようだ。
ストーリーから一目瞭然のようにゴア版「ウエストサイド物語」(1961=米)なのだが、クライマックスであるべき「ロミオとジュリエット」の悲劇は廃され、喧嘩の最中にナイフを向けたプラカーシュを反射的に射殺してしまったマックスの裁判で、シャーリーを愛するラホール(ラーフル)が実は兄の仲間が仕向けた防衛的事故だったと証言、マックスは改心して恋仲のふたりを認めるというインド的なオチになっている。
30代半ばながら凛々しい不良ぶりを見せるシャー・ルクのお相手は、女神アイシュワリヤー・ラーイならず、ちょい地味なプリヤー・ギル。前半、彼女がデートしてるヴァイオリン教師は、「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)のカー・セールスマン、ヴィヴェーク・ヴァルワーニー!
アイシュのお相手は、新進スターで今は伸び悩んでるチャンドラーチュール・スィン。シャー・ルクと対峙するシャラード・カプールも骨太の存在感を見せる。
インド帰属前1958年のオープニングから1980年現在の状況シーンへ飛んで、イーグル団とサソリ団が対立するつかみの乱闘シーン・・・シャー・ルクとシャラードが睨み合ってるところへ、警部役のシャラート・サクセーナが現れ、とぼけてのダンス・ナンバル「sailaru sairare」となるのが微笑ましい。リリース当時、TVスポットでバンバン流れていたシーンで、大いにボリウッドのグレード・アップを感じさせた。
ラホールがテイクアウトのケーキ屋を始めると、シャーリーが客を装ってネズミを仕込んだカゴを置いてゆき、一晩のうちに店内のケーキをめちゃめちゃに食い荒らさせてしまう。この一件で、イーグル団とサソリ団の対立が激化。ついにマックスとプラカーシュの果たし合いとなり、止めに入ったラホールがマックスに絞め殺されそうになるや、シャーリーが卒倒。ケーキ屋の一件もあり、彼女もいつしかラホールを意識し始める・・・。
アヌー・マリックの楽曲はどれも魅力的。サンバを模したミュージカル・ナンバル「zinda hai hum to」は荘厳で、旧統治国ポルトガルを色濃く残すゴアならではのロケーションが素晴らしい。
2006.01.20追記
監督のマンスール・カーンは映画監督ナースィル・フセインの息子、アーミル・カーンの従兄弟にあたり、彼の再デビュー作「Qayamat
Se Qayamat Tak(破滅から破滅へ)」(1988)を監督している。俳優として、「Ram Jaane(神のみぞ知る)」(1995)などにも出演。
2010.10.26追記
>シャラード・カプール
見事シャー・ルクの敵対役としてTVスポットにもバンバン登場していたシャラードだがヒーローに昇格もなく、マイナー映画や地方映画で徘徊。
>チャンドラチュール・スィン
90年代半ばにアミターブ・バッチャンが行ったタレント・スカウト・キャラバンにアルシャード・ワールスィーやプリヤー・ギルなどと受かり、「Tere Mere Sapne(君と僕の夢)」(1996)でデビューし、本作や「Kya Kehna!」(2000)などのセカンド・ヒーローとしてそこそこ脚光を浴びていたチャンドラチュールだが、ゼロ年代前半から消息不明に。
しばらくお蔵入りになっていたサンジャイ・ダット主演「Sarhad Paar」(2006)が公開された後も病氣療養説が流れていたが、児童向けファンタジー映画「Maarti」(2009)でスクリーンに復活。
プリヤー・ギルも「レッド・マウンテン」LOC Kargil(2003)を最後に消えてしまった。
>マンスール・カーン
本作の監督マンスールも本作も最後にキャリア・ストップ。こうして見ると、わりと不運をまき散らした作品?
>ヴィヴェーク・ヴァルワーニー
「不運をまき散らす」と言えば、この人。シャー・ルクの出世作とも言える「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)の共同プロデューサーでもあった彼、新作「Dulha Mil Gaya(花嫁をみつけた)」(2010)を製作中、主演のファルディーン・カーンがあまりにも酷いため、せいぜい1曲ゲスト出演のはずだったシャー・ルクの出演パートがどんどん増えて…結局、映画はフロップ。シャー・ルク出演作でも1、2を争う醜作となった。
ポルトガル人領主のお手つきとなる、マックスとシャーリーの母親役ナディラーは、日本初公開のインド娯楽映画「アーン」Aan(1952)の女王役や、「ラジュー出世する」の原版「Shree 420(詐欺師)」(1955)の悪女などで知られるハーフの女優。これまた本作が最後の出演作となった。
もっともシャー・ルクにとっては、セルフ・プレイバックも果たしただけあって印象に残った作品らしく、ステージ・ツアーなどで好んで「apun bola(オレが言うに)」を使って観客と掛け合いパフォーマンスを行っていた。特にペットボトルの水を吹き出す場面を実際に舞台に上げられた観客がシャー・ルクの顔に水を吹きかけ、会場を沸かせた(不浄の観念から、よりインパクトがある)。
ちなみに本作のシャー・ルクを、ラージパル・ヤーダウが「Mujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ)」(2004)の中でパロディーにしている。