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What’s Your Raashee?(2009)vol.12 / #084

2010.10.22
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

What's Your Raashee?

「What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」★★★★★
ワッツ・ユア・ラーシー?

製作:ロニー・スクリューワーラー、スニター・A・ゴーワリカル/脚本・監督:アーシュトーシュ・ゴーワリカル/製作代表:ローレンス・デスーザ/原作:グジャラーティー小説「Kimball Revenswood」~マドウー・ルイェー/台詞・脚本:ナゥシル・メーヘター/台詞:アミット・ミストリー、タパン・A・バット/撮影監督:ピユーシュ・シャー/美術:ニティン・チャンドラカーント・デーサーイー/作詞:ジャーヴェード・アクタル/音楽・背景音楽:ソハイル・セーン/衣装:ニーター・ルラー/振付:チンニー・プラカーシュ、レーカー・プラカーシュ、ラージュー・カーン、ロリポップ、テレンス・レウィズ、ラジーヴ・シュルティ/編集:バルー・サルージャー

出演:ハルマーン・バウェージャー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー

助演:マンジュー・スィン、アンジャン・スリワスターワ、ダルシャン・ジャリワーラー、ディリープ・ジョーシー、ヴィシュワー・バドラー、ラージェーシュ・ヴィヴェーク、ダーヤーシャンカル・パーンディー、ユーリ、アジター・クルカルニー、ギーター・トヤギ、バイラーヴィー・ヴィドヤー、マルシャル・デスーザ、プラティク・ディクシト、ビーム・ヴァカニー

公開日:2009年9月25日(日本未公開)

STORY
シカゴでMBA所得を目指していたヨーゲーシュ(ハルマーン)は、「父危篤」の知らせを受け急遽インドへ帰国。しかし、空港で出迎えたのは平然とした父親と家族だった。しかもその上、兄の借金を帳消しにするため、今月20日の予定で見合い結婚が完璧にアレンジされていた。ただひとつ、結婚相手以外は。そこでヨーゲーシュは、12星座からそれぞれひとりづつ見合いして恋に落ちた相手と結婚することに同意するが、なんと見合い相手は誰もがプリヤンカー顔で迷いに迷い…。

Revie-U
ゼロ年代のボリウッド映画をグレード・アップさせた、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネートラガーン」Lagaan(2001)、インド映画で初めてNASA内でロケを敢行しインドの農村を対比させたシャー・ルク・カーン主演「Swades(祖国)」(2004)、偉大なるムガル帝国を壮大なスケールで再現したリティク・ローシャン×アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン主演の歴史ロマンJodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)」(2008)の監督と知られるアーシュトーシュ・ゴーワリカルが初めて手がけた小粒ラヴ・ロマンスが本作。
これまで国際水準の大作を放って来たアーシュトーシュだけあって、市井の見合い結婚というありきたりな題材を選びながらも、ユーモアや社会的なテーマを盛り込み、細部まで計算し尽くした演出は、まさしく「映画監督の仕事」!
名実共にリード女優となったプリヤンカー・チョープラーの12変化を12夜連続でレビューします。

#12

見合い話はひとまず置いて、クライマックス前にいくつかのスケッチが続く。
その1つが、父バーラトバーイ(アンジャン・スリワスターワ)の誕生日。皆でケーキを食べようとしていると、ヨーゲーシュ(ハルマーン・バウェージャー)ママ・ジー(母方の祖父)から電話が入る。無論、祖父の誕生日にはカードひとつ送らなかったバーラトのこと、単なる祝福の電話であろうはずがない。
実は借金帳消しに氣持ちが先走る兄ジュートゥことジーテンドラ(ディリープ・ジョーシー)が、祖父の土地を勝手に測量させ、激怒させてしまったのだった。
ジートゥは祖父からの電話に対してプラナーム(年長者への敬礼。通常はその人の足先に触れるして見せるが、本当は相当にしたたかな男。

この親子配役にもアーシュトーシュのこだわりが見て取れ、ずんぐりむっくりのジートゥは父親役アンジャン・スリワスターワとそっくり。
一方、母シャクンタラーに扮するマンジュー・スィンと祖父役ヴィシュワー・S・バドーラーは瓜実顔。性格も誠実なヨーゲーシュは祖父系の血を引き継いでいると言える。

さらに続くスケッチが、水瓶座サンジュナー(プリヤンカー)に関わる騒動だ。
祖父からの電話に続き、彼女からメールが入る。チェックアウト前のホテル(外観とロビーは、チェトラパティ・シヴァジー国際空港に程近いペニンシュラー・グランド・ザ・フィネスト)で落ち合うと、見合いをした男に求婚されてしまい困っているから「reject」を撤回して欲しい…という相談であった。

これも誠実に相談に乗ったところで、サンジュナーは友情からヨーゲーシュにハグするも、これまたチェックアウトに来た伯父デーヴーことデーヴェンドラ(ダルシャン・ジャリワーラー)に見られてしまう。なにしろホテルの部屋でのハグである。
サンジュナーが慌てて説明しに後を追う。

荷物をまとめてヨーゲーシュがロビーへ下りると、サンジュナーとデーヴーの姿はなし。代わりに私立探偵のバーテーシュ・ジョーシー(ラージェーシュ・ヴィヴェーク)がいて、ふたりが<カンダーラ>に向かったことを告げる。証拠として、親密そうに話していた写メがあるという。

さらにデーヴーと来ていた不倫相手のアニラーがそれを知り、カンダーラへとクルマを走らせ、デーヴーは後から追って来た実の妻カンターからも責められる、というスケッチ。
しかも、アーシュトーシュはTVソープ・オペラ(昼メロ。単にシリアル=連続ドラマとも言うばりの判りやすい演出を施しているのが微笑ましい。

翌朝。クリシュナ神からラクシュミー女神ドゥルガー女神まで祀ったマンディル(寺院。ここでは、家庭内の神棚)で母と祈るヨーゲーシュ。母は祖父を怒らせてしまったことからジートゥの借金返済への不安が募っており、心優しき青年ヨーゲーシュは「今日、どんな見合い相手でも結婚するから心配しないように」と言い残して、家を出たのだった。

What's Your Raashee?

Makar-Jhankhana

Makar(Capricorn)

いよいよ最後の見合い相手となるのは「山羊座」
その住居は牡牛座」ヴィシャーカー(プリヤンカー)の大宮殿インドラロークとは大きく異なり、ローワー・ミドルの庶民らしく使い込まれた風合いを見せる。
これまで見た通り、見合い相手各々の家は美術監督がキャラクターに合わせて飾り込んだものであるが、様々な<普通の人々>が住む生活感あふれる佇まいが本作の魅力にもなっている。

さて、オレンジ色のサーリーをグジャラーティー・スタイルでまとったジャンカーナー(プリヤンカー・チョープラーは、お盆で運んできたチャイを出す順番も解らぬ娘。年老いた祖父に言われて初めて客人に差し出す。
プリヤンカー最後の12変化となるジャンカナーは、色黒・無愛想・猫背・カジョール以上に眉毛つながりとあって、あの牡羊座」アンジェリー(プリヤンカー)も裸足で逃げそうなくらい作り込まれたキャラクターだ。

今回の家は年老いた祖父と祖母も同居し、伝統的な価値観に生きていることが伺われる。
ヨーゲーシュの問い「カレッジでは何を勉強してますか?」に思い詰め、大粒の涙を流すジャンカーナー。家族は「この娘は恥ずかしがり屋で…」と言いつくろうも、ヨーゲーシュは、物陰から彼女を見守る妹たちと、机の上に飾られた額ぶり写真の中に彼女が制服姿で収まっているのを認める。

ジャンカーナーはサーリーを着てはいるものの、泣きじゃくると三つ編みが肩越しに垂れる。成人女性がまったくしない訳ではないが、Koyla」コイラ(1997)のマードゥリー・ディクシトにしてもChingaari(閃光)」(2006)のスシュミター・セーンにしてもボリウッド映画では三つ編みは少女の設定となる。
果たして、ジャンカーナーは15歳であった。

年齢をごまかした背景には父親自身がかなり高齢であること、Yaadein(思い出の数々)」(2001)にあるように娘を嫁がせねばならない義務を負うヒンドゥーにとって、この年齢でこれから三人の娘を嫁がせられるかどうか不安になり、ついつい偽って見合いをアレンジしたのだった。
ジャンカーナーが流した涙は少女時代にあって、突然言い渡された見合い、勉学も続けたかったことであろう。実際にはこのようなケースはインドでは、南アジア、中東、いやその他の国々でも多いはず。アーシュトーシュがインパクトの強さから見合いの最後として選んだ意図が見て取れる。15歳という設定はプリヤンカーが演じられる限界からであり、実際にはもっと幼女がこのような結婚を強いられていることだろう。
(本作では担当していないが、ボリウッドのトップ・コレオグラファー、サロージ・カーンは13歳の時、41歳の師匠と結婚させられた)

「どんな見合い相手でも結婚する」と言って家を出て来たヨーゲーシュだが、無論、これでは成立しない。
ヨーゲーシュが乗ったメルセデスにジャンカーナーが走り寄り礼を言う(ここだけアテレコ)。
振り返るヨーゲーシュをよそに、少女の日々を取り返したジャンカーナーは妹たちと石蹴りをして遊ぶのだった。その猫背でぴょんぴょん跳ねる姿は、まだまだ子供であり、プリヤンカーの変身力にも驚かされる。

その夜。見合いを承諾するきっかけとなった涙を見せた身重の義姉ジョーツナー(アジーター・クルカルニー)がやって来て、結婚相手をじっくり考えるようヨーゲーシュに促す。
ソファで眠りながら見るヨーゲーシュの夢は12人の見合い相手、即ち牡羊座」アンジェリー(プリヤンカー)、水瓶座」サンジュナー(プリヤンカー)、双子座」カージャル(プリヤンカー)、蟹座」ハンサー(プリヤンカー)、天秤座」ラジニー(プリヤンカー)、魚座」チャンドリカー(プリヤンカー)、獅子座」マリッカー(プリヤンカー)、「蠍座」ナンディニー(プリヤンカー)、乙女座」プージャー(プリヤンカー)、牡牛座」ヴィシャーカー(プリヤンカー)、「射手座」バーウナー(プリヤンカー)、「山羊座」ジャンカーナー(プリヤンカー)が一曲に会するタイトル・ナンバル「what’s your raashee?」(ソハイル・セーン)

それもアンジェリーが氣怠げに踊っては、しっとりとしたサンジュナーとヨーゲーシュの前に快活なカージャルが割り込んで、アンジェリーがまた落胆し、感傷的なハンサーと見つめ合ったヨーゲーシュをクールなラジニーがコントロールする。そこへチャンドリカーが現れ彼を独り占めしようとし、アンジェリーが靴をつっかけて歩いて来てはサンジュナーやカージャルに惹かれるヨーゲーシュに不満の表情を漏らす。
セクシーなナンディニーの後は、女医プージャーがまたも彼の腕にピンを刺して検診。天然ヴィシャーカーに艶めかしく誘惑するバーウナー、力強く踊るマリッカー、そして石蹴りをする少女ジャンカーナーはまわりの振付を盗み見、アンジェリーがこれまたリズムに乗り遅れ…と、それぞれのキャラクターを演じ分けた上での合成ダンスには舌を巻くほど!
アレンジもそれぞれのパートがメドレーとなっており、並みの作曲家/編曲家では請負かねる発注となろう(映画音楽は編集されたシーンが優先の曲作りとなるため、自分の中での発露から作曲すればよいポップ・ミュージックとは作業スタイルが大きく異なる)。

このモーション・コントロール・キャメラ「ミロ」による多重デジタル合成を請け負ったのは、シャー・ルク・カーンが所有するレッド・チリース・エンターテイメントのVFX部門。シャー・ルク製作・主演「Paheli(謎めいた人)」(2005)では、砂漠に持ち込んでの撮影であった。

さて、クライマックスの結婚式は12回では収まり切らず、次回へ。

#13 結婚式へ続く。

#11 射手座・バーウナーへ戻る。
#10 牡牛座・ヴィシャーカーへ戻る

#09 乙女座・プージャーへ戻る。
#08 蠍座・ナンディニーへ戻る。
#07 獅子座・マリッカーに戻る。
#06 魚座・チャンドリカーに戻る。
#05 天秤座・ラジニーに戻る。
#04 蟹座・ハンサーに戻る。
#03 双子座・カージャルに戻る。
#02 水瓶座・サンジュナーに戻る。
#01 牡羊座・アンジェリーに戻る。

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