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What’s Your Raashee?(2009)vol.08/ #084

2010.10.18
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

What's Your Raashee?

「What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」★★★★★
ワッツ・ユア・ラーシー?

製作:ロニー・スクリューワーラー、スニター・A・ゴーワリカル/脚本・監督:アーシュトーシュ・ゴーワリカル/製作代表:ローレンス・デスーザ/原作:グジャラーティー小説「Kimball Revenswood」~マドウー・ルイェー/台詞・脚本:ナゥシル・メーヘター/台詞:アミット・ミストリー、タパン・A・バット/撮影監督:ピユーシュ・シャー/美術:ニティン・チャンドラカーント・デーサーイー/作詞:ジャーヴェード・アクタル/音楽・背景音楽:ソハイル・セーン/衣装:ニーター・ルラー/振付:チンニー・プラカーシュ、レーカー・プラカーシュ、ラージュー・カーン、ロリポップ、テレンス・レウィズ、ラジーヴ・シュルティ/編集:バルー・サルージャー

出演:ハルマーン・バウェージャー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー

助演:マンジュー・スィン、アンジャン・スリワスターワ、ダルシャン・ジャリワーラー、ディリープ・ジョーシー、ヴィシュワー・バドラー、ラージェーシュ・ヴィヴェーク、ダーヤーシャンカル・パーンディー、ユーリ、アジター・クルカルニー、ギーター・トヤギ、バイラーヴィー・ヴィドヤー、マルシャル・デスーザ、プラティク・ディクシト、ビーム・ヴァカニー

公開日:2009年9月25日(日本未公開)

STORY
シカゴでMBA所得を目指していたヨーゲーシュ(ハルマーン)は、「父危篤」の知らせを受け急遽インドへ帰国。しかし、空港で出迎えたのは平然とした父親と家族だった。しかもその上、兄の借金を帳消しにするため、今月20日の予定で見合い結婚が完璧にアレンジされていた。ただひとつ、結婚相手以外は。そこでヨーゲーシュは、12星座からそれぞれひとりづつ見合いして恋に落ちた相手と結婚することに同意するが、なんと見合い相手は誰もがプリヤンカー顔で迷いに迷い…。

Revie-U
ゼロ年代のボリウッド映画をグレード・アップさせた、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネートラガーン」Lagaan(2001)、インド映画で初めてNASA内でロケを敢行しインドの農村を対比させたシャー・ルク・カーン主演「Swades(祖国)」(2004)、偉大なるムガル帝国を壮大なスケールで再現したリティク・ローシャン×アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン主演の歴史ロマン「Jodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)」(2008)の監督と知られるアーシュトーシュ・ゴーワリカルが初めて手がけた小粒ラヴ・ロマンスが本作。
これまで国際水準の大作を放って来たアーシュトーシュだけあって、市井の見合い結婚というありきたりな題材を選びながらも、ユーモアや社会的なテーマを盛り込み、細部まで計算し尽くした演出は、まさしく「映画監督の仕事」!
名実共にリード女優となったプリヤンカー・チョープラーの12変化を12夜連続でレビューします。

#08

次なる見合い相手は、「ヴィリシュチック(蠍座)」(ヴは、ほとんど消音。インド人も言い難そうに言っている)。
シカゴでルームシェアをしている友人コーディー(プラティク・ディクシト)からの紹介で、彼の親戚で実に「セクシー」だとか。いや「セクシー過ぎて問題」というほどらしい。
それを聞いた伯父のデーヴーことデーヴェンドラ(ダルシャン・ジャリワーラー)もホテルのロビーで待ちながら氣が氣ではないようで、レセプションに向かう家族を見て「あれは違うな」とこぼす。連れている娘が「セクシー」ではないからだ。
だが、ヨーゲーシュ(ハルマーン・バウェージャー)には彼女が見合い相手であることが判る。なぜなら、プリヤンカー顔だから。

一家の装いは、5つ星ホテルにはやや不似合いな、ミドル・クラス。彼女の父はそれなりに長身ではあるがお腹がぽっこり出ていて、がに股で歩く姿がコミカルなのは、「獅子座」のエピソードが少しシリアスだったので、今度は少し肩の力を抜いてもらおうという配慮のようだ。
その父は「私は古い人間でして、娘にも古風な育て方をしましたですよ。映画館にも大学にも行かせやしません。でも彼女は家で1日、コンピューターに向かってますですよ」と自慢する。当の本人は、まんざらでもなさそうにひとりニヤニヤ笑っている。実は、ヨーゲーシュとふたりだけで話す機会を狙っているのだった。

What's Your Raashee?

Vrishchik-Nandini Jassani

Vrishchik(Scorpio)

さて、ヨーゲーシュの部屋にふたりは移る。
友人コーディーが期待をもたせたせいか、地味なエンジ色のパンジャビードレスに大きなバッグを肩に提げた彼女に、さすがのヨーゲーシュも失望の色を隠せないでいる。
「あなた、私に会ってがっかりしたのでしょう?」と言い当て、彼女はそそくさとバス・ルームへと消える。
「君のホビーは?」と形式的に尋ねるヨーゲーシュ。
「私にホビーはないわ。あるのは、パッションだけ」
と、バス・ルームから出て来たナンディニー・ジャサニー(プリヤンカー・チョープラーは、カールのロング・ヘアーにカラー・コンタクト、そしてマイクロ・ミニ姿へ変身! 愛くるしさ400%は増強している。
「私のパッションは、モデルになること」「モデル? ファッション・モデルのこと?」とのやりとりは、前年にプリヤンカーが主演女優賞を獲得した「Fashion」(2008)の台詞にちなんで、「モデル? ファッション・モデル?」「違うわ、スーパーモデル」として頂きたかったが。

言ってみれば、ナンディニー(プリヤンカー)も「魚座」のチャンドリカー(プリヤンカー)のように古風な両親に対して抑制して本来の自己を隠し、そこから救い出してくれるであろう見合い相手のヨーゲーシュには、「セクシー」なナンディニーが本当の自分と言い切る。
このような二重キャラを「双子座」に当てなかったのか不思議でもあるが(その代わり、カージャルは似たような背格好の女友達といつも一緒にいる)、やはり「蠍座」の持つ「セクシー」なイメージに引っ張られてしまったのだろう。

彼女もまた家で1日、シカゴに移り住んだ友人と1日中チャットをしてシカゴの隅から隅まで知り抜き、シカゴに暮らすヨーゲーシュにシカゴにある物を片っ端から挙げて彼女の方からあっけらかんとプロポーズする長台詞に「コイン・ランドリー」があるのが可笑しい。
こうしてナンディニーはヨーゲーシュを引き連れ、妄想プロモーズ・ナンバル「aa le chal」(アスレーシャー・ゴーワリカル&ハルマーン・バウェージャー)で強引にシカゴ・ロケへ(どうも、ホテルの部屋でふたりだけで会うとペルソナの下に隠された本性が剥き出しになるようだ)。

だが、強くアプローチされるほど、ヨーゲーシュには彼女が望んでいるのが<結婚>ではなく、自分のらしく生きること、だと思われ、彼女に勇氣を持って両親にそのことを告げることを勧める。
怯えた表情を見せるナンディニーのアップに続いて、ロビーに向かってモデル歩きをする彼女のシルエットを追うショットが実に<映画的>でよい。
ひと悶着あるかのように見えて、すんなり両親はこれを認めてしまう。むしろ、娘の本心を知ることが出来た喜びの方が大きかったかのように、勇んで帰るのだった。

こうして、アーシュトーシュの狙いが、単なる見合い結婚のコメディではなく、現代インドの様々な局面に置かれたインド人女性にスポットを当て、問題提議してゆくことにあったように思う。
ヨーゲーシュは彼女たちにとって<閉ざされた現実からすくい上げてくれる救世主>である反面、結婚相手に選ばなかった場合にせよ、見合い自体が一種のカウンセリングとなって、彼女のたちに自己解決の道筋を示して歩いたように思える。

そして、その事から浮かび上がってくることが、主人公に付けられた「ヨーゲーシュ」という名前だ。兄ジートゥ(ディリープ・ジョーシー)が借金をこしらえた町金融ムールラージ(ユーリ)の兄貴を訪ねた席で、その名前の意味を(インド人なら心得ているであろうことを)今一度、問い直す台詞がわざわざ用意されている。

ヨーゲーシュとは「ヨーガの王」(英語字幕では「可能性と不可能の王)。ヨーガとは「結びつける」の意味であり、古典ヨーガやいくつかの流派があるが、平たく言うと「純粋原理」が働かない「俗的な」状況の中で「本来在るべき性質を取り戻し」「原初の統一された」世界への回帰を目的とするものとなる。
とすれば、彼との見合いを通して、女性たちが本来の自分に目覚めてゆく構成は非常に頷ける。

#09 乙女座へ続く

#07 獅子座・マリッカーに戻る。
#06 魚座・チャンドリカーに戻る。
#05 天秤座・ラジニーに戻る。
#04 蟹座・ハンサーに戻る。
#03 双子座・カージャルに戻る。
#02 水瓶座・サンジュナーに戻る。
#01 牡羊座・アンジェリーに戻る。

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