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What’s Your Raashee?(2009)vol.01 / #084

2010.10.11
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

 

What's Your Raashee?

「What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」★★★★★
ワッツ・ユア・ラーシー?

製作:ロニー・スクリューワーラー、スニター・A・ゴーワリカル/脚本・監督:アーシュトーシュ・ゴーワリカル/製作代表:ローレンス・デスーザ/原作:グジャラーティー小説「Kimball Revenswood」〜マドウー・ルイェー/台詞・脚本:ナゥシル・メーヘター/台詞:アミット・ミストリー、タパン・A・バット/撮影監督:ピユーシュ・シャー/美術:ニティン・チャンドラカーント・デーサーイー/作詞:ジャーヴェード・アクタル/音楽・背景音楽:ソハイル・セーン/衣装:ニーター・ルラー/振付:チンニー・プラカーシュ、レーカー・プラカーシュ、ラージュー・カーン、ロリポップ、テレンス・レウィズ、ラジーヴ・シュルティ/編集:バルー・サルージャー

出演:ハルマーン・バウェージャー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー、プリヤンカー・チョープラー

助演:マンジュー・スィン、アンジャン・スリワスターワ、ダルシャン・ジャリワーラー、ディリープ・ジョーシー、ヴィシュワー・バドラー、ラージェーシュ・ヴィヴェーク、ダーヤーシャンカル・パーンディー、ユーリ、アジター・クルカルニー、ギーター・トヤギ、バイラーヴィー・ヴィドヤー、マルシャル・デスーザ、プラティク・ディクシト、ビーム・ヴァカニー

公開日:2009年9月25日(日本未公開)

STORY
シカゴでMBA所得を目指していたヨーゲーシュ(ハルマーン)は、「父危篤」の知らせを受け急遽インドへ帰国。しかし、空港で出迎えたのは平然とした父親と家族だった。しかもその上、兄の借金を帳消しにするため、今月20日の予定で見合い結婚が完璧にアレンジされていた。ただひとつ、結婚相手以外は。そこでヨーゲーシュは、12星座からそれぞれひとりづつ見合いして恋に落ちた相手と結婚することに同意するが、なんと見合い相手は誰もがプリヤンカー顔で迷いに迷い…。

Revie-U
ゼロ年代のボリウッド映画をグレード・アップさせた、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネートラガーン」Lagaan(2001)、インド映画で初めてNASA内でロケを敢行しインドの農村を対比させたシャー・ルク・カーン主演「Swades(祖国)」(2004)、偉大なるムガル帝国を壮大なスケールで再現したリティク・ローシャン×アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン主演の歴史ロマン「Jodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)」(2008)の監督と知られるアーシュトーシュ・ゴーワリカルが初めて手がけた小粒ラヴ・ロマンスが本作。
これまで国際水準の大作を放って来たアーシュトーシュだけあって、市井の見合い結婚というありきたりな題材を選びながらも、ユーモアや社会的なテーマを盛り込み、細部まで計算し尽くした演出は、まさしく「映画監督の仕事」!
名実共にリード女優となったプリヤンカー・チョープラーの12変化を12夜連続でレビューします。

#01

原作がグジャラーティー小説だけあって、グジャラート州バルドーリーから物語は始まる(けれど、ロケ地はプネー)。
大地主の祖父(ヴィシュワー・バドラー)は自分の誕生日に届く誕生祝いの手紙を待っていた。しかし、総勢80名近くなる大家族ながら、届いたグリーティング・カードは、シカゴに留学中のヨーゲーシュ(ハルマーン)からの一通のみ。
祖父はこれを嘆き、遺産はすべてヨーゲーシュに相続させることにする。問題は、ひとつ。彼がまだ独身であること。

場面は替わってムンバイーの高層住宅地。
パテール家にお抱えの占星術師(ラージェーシュ・ヴィヴェーク)が招かれ、最近、シェア・マーケットで2.5カロール(2500万ルピー=約5000万円。物価換算で2億5000万円以上)の大穴を開けた長男ジートゥことジーテンドラ(ディリープ・ジョーシー)の運勢を鑑定中である。果たして、支払い不能で刑務所行きになるかどうか。
この時、鑑定結果を伺うモンタージュで家族間の関係が示される。即ち、脂肪過多の父親バーラトバーイ(アンジャン・スリワスターワ)と氣立ての良い母親シャクンタラー(マンジュー・スィン)、そして鑑定されるジートゥと奥ゆかしいその嫁ジョーツナー(アジーター・クルカルニー)
結果は「そのようなことはない」と出て、さっそくシャクンタラーが嫁に「マンデル(寺院=家の中の祭壇)にお礼を」と促し、留学中の次男ヨーゲーシュも占ってもらう(1984年11月13日火曜日ムンバイー生まれ)。
すると、「今月20日に結婚する」とのリーディングが出る。しかも、幸運の女神ラクシュミーの祝福により大金が手に入るという。
実はこの少し前、電話が掛かって来ていて、祭壇にお礼の祈りを捧げた御利益か、シャクンタラーの父=冒頭の祖父がすべての遺産をヨーゲーシュに相続させると告げたのだった。ただし、条件は「結婚すること」。

ここは、雪の残るシカゴ。
ヨーゲーシュはMBAの早朝クラスを受け、昼は企業面接、夜はクラブでDJと充実した生活を送っていた。
(オープニング・タイトルバックが、ジャズィーなナンバルとなっているのは、シカゴにちなんでのこと)
そこへ「父危篤」のメールが入る。

慌ててムンバイーに戻ると、空港には家族と元氣な父親の姿が。しかも、彼の結婚がすべて整っていると聞かされる。結婚相手以外は。
パテール家は高層マンション住まいの小金持ちとは言え(賃貸であれば、日本の物価にして月80〜100万円?)、借金が返せなければ破産となってしまう。すべてはヨーゲーシュの肩に掛かっているわけだ。
さらに、ジートゥの借金は1.5カロール(1500万ルピー=約3000万円。物価換算で1億5000万円以上)、しかもコワモテ兄貴の町金融から借りていることが判明する。
ここで登場するのが、兄貴の弟分チャンドゥ(ダーヤーシャンカル・パーンディー)スーラージの凸凹コンビ。ちょっと抜けた奴らで、ジートゥのことを「シェア・バザール」と呼ぶのが可笑しい。

翌朝、返答を待ち望む家族に起こされたヨーゲーシュは、バービー(兄嫁)の涙にほだされる形で結婚を承諾する。
なにしろ、彼は「父危篤」という嘘のメールで呼び返されながらも、「Dil Bole Hadippa!(心が叫ぶハリッパ!)」(2009)のシャーヒド・カプールとは違って、父に心臓発作がなかったと聞けば、すぐに「thanks God」と口に出る氣心の優しい青年である。
家族のためを思えば、と承諾したところで、これまた兄が伯父から40ラーク(40万ルピー=約80万円。物価換算で400万円以上)借りていたことが判明。合計4040万ルピー(=8080万円。物価換算で4億400万円以上)になる。

さて、ここでジートゥがコワモテ兄貴に呼び出されるスケッチ。
出迎えるは、例のチャンドゥ(月)とスーラージ(太陽)の二人組。ジートゥのポケットにあった櫛をナイフと間違えるなど、ボンクラぶりを発揮するが、事務所で待っていたのは、スキンヘッドの見るからに凄みのあるムールラージ(ユーリ)。「すべてお見通しの王」とは、町金融の兄貴に相応しい名前である(その返済に失敗した者は指を詰められる)。
おまけにジートゥが妙な質問をしたことから、結婚式のある20日に借金が満額返済できなかった場合、ジートゥ本人だけでなく、ヨーゲーシュまでもが指詰めと言い渡される始末。

次に登場するのは、シャクンタラーの兄デーヴーことデーヴェンドラ(ダルシャン・ジャリワーラー)
アパレル会社を営む彼なら、見合い相手に詳しいというわけだ。ただし、この会社、妻カンターの名が付けられているように、実際の資産はカンターが握っている。
この<家族会議>で、ヨーゲーシュが条件を2つ出す。1つはダウリー(持参金)は受け取らないこと。海外暮らしなだけに進歩的で、前近代的なダウリーは好ましくないと考える。無論、ここで様々な問題をはらみ、すでに法律的には違法行為となっているダウリーを許容する主人公であれば、やはり今のご時世、バッシングを受けること必至である。
そして、もうひとつが見合い相手は12人。各星座から1人づつ会って恋心を抱いた相手と結婚するということ(ちなみに彼自身はヴィリシュチク=蠍座)。
これは前夜、シカゴとの時差もあって眠れぬヨーゲーシュは、書棚にあった「What’s Your Raashee?」という本を手に取り読んでいたから(ちなみにこの劇中本の装幀が本作のDVD内ジャケットと同じデザインなっているのが嬉しい)。

ここでデーヴーが「もし12星座それぞれあって、好きになる相手がいなかったら?」が意地の悪い質問をする傍ら、チラリとオフィスにでかでかと飾ってある妻カンターと写ったパネルに目をやり、デーヴーが好きでもない相手と結婚したことが暗に示される。

What's Your Raashee?

mesh-Anjari Patel

Mesh (Aries)

最初の見合い相手は、メーシュ(牡羊座)アンジェリー・パテール(プリヤンカー・チョープラー
結い上げた髪に簪(かんざし)、刺繍が施されたベストに紅のエスニック・シャツと、どことなくオシャレなように見えて、中途半端な丈のデニム・スカートがアンバランスな上、猫背にガニ股でよたよた歩く見るからにキモ女。ヨーゲーシュならずとも引いてしまう、おいし過ぎるキャラクターだ。

両親たちは氣を効かせて、ふたりをホテル内のレストランに送り出す。
ジェントルなヨーゲーシュが「after you」と席を勧めれば、アンジェリーが「OK, me phirst, you shecond」と言ってフガフガ笑う(あのミス・ワールド2000のプリヤンカーが!)。それでもヨーゲーシュが「you’re welcome」と返すと、「no memson」と答える。
このアンジェリー、片言英語で話せば話すほど痛さ倍増。好きな映画スターはトム・クルーズでなく…トム&ジェリー。ドリンクにはストロー2本差し、また「drink cigarette」とも言う(ヒンディーでは日本語で「タバコを飲む」と同じくシガレット・ピーナーとなるため)。

こうして、彼女が父親と相談してNRI(Non Resident Indian=在外インド人)が好むように、タバコを吸い、ワインを飲むノン・ヴェジ(非菜食=肉食)アングレージ(英語をしゃべる)・キャラクターを演じたことが露見する。父親にしても珍妙なアングレージを操り、ヨーゲーシュが「Y・B・パテール」と自己紹介すれば「Why be patel?」と勘違いする始末。
(ヨーゲーシュは、その後「ヒンディーが上手だよ」と褒めるが、彼女の母語が本当はグジャラーティーのため)

これも単に笑いを誘うための人物設定でなく、本作が現代インドの在外志向を暗に見つめ直し、結婚にかける(日本風に言えば「婚活」)ミドル・クラス女性が抱える切実な苦悩を描こうとしていることを、この最初の見合い相手で示しているのである。
そして、立ち去り際、うっすらと涙ぐみながら「ヨーゲーカゴは雪ね」とつぶやくアンジェリーが哀しい。

no menson。

#02 水瓶座・サンジュナーに飛ぶ。
#03 双子座・カージャルに飛ぶ。

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