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Mohabbatein(2000)#081

2010.10.07
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Mohabbatein

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Mohabbatein(幾つもの愛)/2000 01.09.21 ★★★
モハバッテン

製作:ヤシュ・チョープラー/製作・原作・脚本・台詞・監督:アーディティヤー・チョープラー/撮影:マンモーハン・スィン/音楽:ジャティン-ラリット/詞:アナン(アーナンド)・バクシー/振付:ファラー・カーン/美術:シャルミスター・ローイ/録音:アヌージュ・マトゥール

出演:アミターブ・バッチャン、シャー・ルク・カーン、アイシュワリヤー・ラーイ、ウダイ・チョープラー、ジュガル・ハンスラージ、ジミー・シェルギル、シャミター・シェッティー、キム・シャルマー、プリティー・ジャンギアーニー、アヌパム・ケール、アルチャナー・プーラン・スィン、ヘレン、ソォーラブ・シュクラー

特別出演:アムリーシュ・プリー

公開日:2000年10月27日 (年間トップ2ヒット!/日本未公開)

Filmfare Awards:助演男優賞(アミターブ・バッチャン)、録音賞、批評家選主演男優賞(シャー・ルク・カーン)、ソニー・ベストシーン賞(ヤシュ・チョープラー)

STORY
全寮制の男子大学グルクルーへ入学したマッチョなヴィッキー(ウダイ)、氣弱なサミール(ジュガル)、一目惚れのカラン(ジミー)は、それぞれ男勝りのイーシュカー(シャミター)、彼氏付きのサンジュー(キム)、うるさ型の伯父がいるキラン(プリティー)に恋心を抱く。しかし、学長のナラヤン・シャンカル(アミターブ)は厳格でグルクルの校風を頑なに守り続けている。ある日、バイオリンを抱えたラージ・アールヤン(シャー・ルク)が現れ、音楽教師として雇われることになる。愛を謳い上げるラージはダンス・パーティーを催し、ナラヤンと対立。その時、ラージは、自分の本名はラージ・マルホートラ、かつてナラヤンの娘メガー(アイシュ)と恋に落ちた学生だったことを告げる。ナラヤンは娘の恋愛を知るや、顔も見ずにラージを退学させた。その結果、メガは自殺したのだった・・・。


Revie-U
*結末に触れています。
可憐なアイシュワリヤー・ラーイを背後からそっと抱くシャー・ルク・カーン。白いセーターに、黒のメタルフレーム・グラス、腕にはヴァイオリンを・・・(パブリシティ・デサインのグレード感には思わず溜め息!)。ふたりはJosh(熱情)(2000)で初共演済みだが、期待に反して双子という設定だった。今回、ようやくラヴ・ロマンスが観られるわけだが、これにインド映画界の伝説的存在、アミターブ・バッチャンが加わるという夢の三大共演。しかも、製作はヤシュ・チョープラー、監督がアディティ・チョープラというDDLJ組! これで、盛り上がらないはずはない!

ところが、である。期待が大き過ぎたのか、いまひとつというか、いまふたつぐらい物足らなく感じてしまうのは、偏に若手6人を売り出そうという日本の芸能界みたいな魂胆が映画のエモーションを分断してしまうためだ。

キャストを見れば、そう思うはず。ボリウッドの頂点であるアミターブ、次世代のキング・シャー・ルクアイシュ、新人の3カップル、つまり1×2×3? 世代が下がるにつれ、数で勝負しないとダメということか・・・??

まず、若手たちだが、ウダイ・チョープラー(27)は、その名の通り、ヤシュの息子にして、監督アディティの弟。早くもヤシュの次回製作「Mujhse Dosti Karoge(友達になろうよ)(2002)に出演が決まっている。ジュガル・ハンスラージ(28)は子役出身、ジミー(ジャスジート)・シェルギル(30)はすでに「Maachis(マッチ)(1996)でデビュー済み。

シャミター・シェッティー(21)は、ご存知シルパー・シェッティーの妹。姉に比べて大柄で、踊りもまだまだ。キム・シャルマー(20)はモデル出身、プリティー・ジャンギアーニーも(20)は、マラヤーラム映画「Mazhavillu」(1999)に出演済み。ヒンディー映画はこれがデビュー。いずれも印象薄。

要するに、ウダイを華々しくデビューさせたかったわけだ(男子3人のうち、まず共同プロデューサーでもあるウダイがピックアップされる)。もっとも、武骨なオヤヂ顔のウダイはとてもロマンス向きではないし、筋肉も付け過ぎの上、サルマーン・カーンを氣取ってなにかと脱いでるのも鼻につく。キャラクター的には「DDLJ」のラージを踏襲してるのだが、本人のキャラがそれに追いついていない。

男子勢が20代後半(学生役の俳優は世界的にも割合年齢が高い)、女子は20前後とさすがに若いが、伸びそうなのはプリティーがそこそこ、ヴァンプ女優として鼻息荒いシャミターが生き残るかな、と思われる程度。キムなどは今どきの日本の女の子に通じるあっさりとした薄顔のため、目元ぱっちりインパクトがインド女優の代名詞だった頃が偲ばれる。もっとも、それは外国人の身勝手な思惑に過ぎず、現代インドの若者はこうした薄顔の方がソフィスティケートに思えるのかもしれないが・・・。

とは言うものの、これは初見の印象で、単にシャー・ルク&アイシュのパートが思いのほか少なかった不満であった。2回、3回と重ねて見れば、味のある構成や映画のグレートに目がゆく。

まあ、そのくらい若手が足を引っ張った印象だったということか。

考えてみれば、「DDLJ」のシャー・ルク&カージョルはすでにスターとして花開いていたし、カリシュマー・カプールもデビューしたての頃を振り返って見るとかなり垢抜けなかった・・・。

監督のアディティは、父ヤシュの「Lamhe」(1991)で助監督に就き、「DDLJ」で監督デビュー。本作が第2作だがアイディアは10年以上前に得ていたものの、デビュー作にするには荷が重いと判断し、「DDLJ」を先に手がけたと言う。もっとも「DDLJ」の時は、彼の出したアイディアにヤシュがピンと来なかったので、「じゃあ、監督をやらせて」と言うことだったらしいが。

アディティの演出は技巧でぐいぐい見せるタイプではないが、愛の使者シャー・ルクの宣戦布告、迎え撃つ愛の不在者アミット・ジーの対峙は目を見張る。シャー・ルクはグルクルーの風化した伝統を崩すべく、ダンスパーティーや学生のアルバイトを推進させるものの、3人の男子は除籍を言い渡されてしまう。結局はアミターブ演じるナラヤン・シャンカルは、愛を受け入れ、それまでシャー・ルクにしか見えなかった愛の象徴アイシュが見えるようになるの(ただしKKHHラーニー・ムカルジー同様、リアリズムではない)。

台詞も大いに心を打つ。

それだけに、若手のシーンは痛い。

例えば、キムの彼氏が催すプールサイド・パーティーにジュガルがボーイとして潜り込んだエピソード。彼氏はふざけてキムをプールに投げ入れるが、彼女が泣いてしまう(ネンネに見えないキムだけに無理がある)。皆の見ている前で、タキシードを着たジュガルが服のままプールに入り、ジャケットを彼女にかけ、抱き寄せてその場を去る。彼氏が怒って大立ち回り、ということもない。そのまま収まってしまう。サルマーンあたりに当てられたエピソードなら、大立ち回りするもしないも、ぐっと来る場面となったであろう。

あと、随所に「DDLJ」DTPH(1997)、「KKHH」Taal(リズム)(1999)のパロディーがあるのもナンなのだが・・・。

さて、シャー・ルクはと言うと、役どころは風化したグルクルーに愛を吹き込むカーマとしての存在。

今までのチョープラー作品を継承している面もあるが、教師という立場上、得意の口八丁手八丁全開のお調子者というわけにはいかず、シャー・ルク・ファンはちょっとお預けを食ってるように感じる。
そろそろシャー・ルクも若い世代に引導を渡される頃合いなのか?? と勘ぐると、上質なセーターを肩掛し、メタルフレーム・グラスで知的な印象を強め、前髪がちょい垂れたその役作りが「美術館の隣の動物園」(1998=韓)で若手のインディペンデント・フィルムに呼ばれて(演出の悪さもあって)一昔前の芝居にしか見えなかったアン・ソンギを思い出してしまう。

アイシュも、愛の象徴ながらすでに他界している幻想のキャラクターと、彼女の美しさを見せるだけに留まっているのが残念だ。

一方、グルクルーに君臨するアミターブ・バッチャンは、白い髭を蓄え(メイク)、ダンディズムを感じさせつつまさに厳格の権化。礼拝シーンでアミターブの頭部にグルクルーのシンボルである太陽がちょうど後光のように重なり、ボリウッドの威信そのものに見える。声もシブく、彼の唱えるマントラに思わず聞き入ってしまう。

それにしても、Big Bと呼ばれるだけあってアミターブはデカイ!(息子のアビシェーク・バッチャンと同じ190cm!!) アイシュとは顔ひとつ分違うし、シャー・ルクなど今回はシークレット・ブーツを履いてるほど!!

特別出演でアムリーシュ・プリーが例によっての、頑固オヤヂ役。娘の交際に激怒するものの、嫁に意見され、渋々考え直すのは時代の流れか。

女子カレッジの寮長に、Khamoshi(沈黙のミュージカル)(1996)のヘレン。ダンス女優で鳴らしただけに、今回もシャー・ルクとひと踊りあるのが嬉しい。

アヌパム・ケールはファンキーな父親役をソォーラブ・シュクラーに譲って、今回はバーザールに出没するサルダール役。筋骨隆々のスィクらしく見えるのは、さすが名優。「KKHH」のミス・ブリガンザー、アルチャナ・プーラン・スィンと掛け合いを見せる。

グルクルーの外景は、これがインド?と思えるほど美しい森に囲まれた古城のようなたたずまい(実は英国ロケ)。音楽の授業が行われる野外のテラスや祠はロケセットで、学堂の大規模なセットはボリウッドのステージに組まれたもの。

目を見張るのはバーサールのオープン・セット(?)で、ディズニーワールドの土産物売り場みたい広い。ここがエキストラやダンサーで埋め尽くされて、ホーリーを祝うミュージカル・ナンバル「soni soni」などが撮影されている。

プロダクション・モティーフの落ち葉を使ったCGIワイプもよい。

ジャティン-ラリットの音楽は「DTPH」「DDLJ」を踏襲した印象。シャー・ルクをウディット・ナラヤン、アイシュをラター・マンゲーシュカル、若手6人にもそれぞれ別のプレイバック・シンガーが当てられているが、なぜか若手のシンガーも大して上手くないので余計にダンスが割り引いて見えてしまう。

とにかく、若手6人が大いにナンであった。

*追記 2005.10.21
ヘレンの役名がモニカであるのは、アーシャー・ボースレーFilmfare Awards 女性プレイバックシンガー賞を受賞した「Caravan(キャラバン)(1971)における鳥籠ナンバル「piya tu ab to aaja」における彼女の役名から。本作パーティー・シーンでシャー・ルクが「KKHH」をセルフ・パロディ後、「Caravan」から「piya〜」で太っちょ男ダンサーが吐く科白を引用している。

*追記 2007.09.14
イーシャー・デーオールのデビュー作「Koi Mera Dil Se Poochhe(誰か私の心に聞いて)(2002)におけるキャンパス・シーンで、どこかで聴いたメロディー・ラインと共に落ち葉が舞い、白いセーターを肩にかけた眼鏡姿のラージパール・ヤーダウがバイオリンを弾いて登場! ジャスパル・バッティ扮するスィクの高圧的な学長と対立する(苦笑)。

*追記 2010.10.07
6人の若手勢の中で、10年経って生き残っていると言えるのは、ウダイ・チョープラージミー・シェルギルのみ。
ウダイはチョープラー家の次男として半ば強引にキャリアを伸ばしていたが、Neal ‘N’ Nikki(2005)で共演したタニーシャーとブレイク・アップした後、しばし音沙汰がなかったが、ここに来て「Pyaar Impossible」(2010)で復活。「Dhoom」シリーズで自覚した三枚目路線で好感度をキープ。

ジミー・シェルギルもパンジャーブ映画やマイナー作品で主演を張り、時に好演しているものの、メジャー作品ではマイ・ネーム・イズ・ハーン」My Name is Khan(2010)でシャー・ルク・カーンの弟役など助演留まり、<スター>とは言い難い立ち位置。どうしてもMunna Bhai MBBS(医学博士ムンナー兄貴)」(2003)の胃がん青年などブルーなイメージが付いてまわる。

色白な美顔青年のジュガル・ハンスラージは、子役時代「Masoom(無垢)」(1983)そのままの薄幸な印象が強いせいか、役者としては全く芽が出ず。それでもヤシュ・ラージというか、幼馴染みウダイとのつながりは強靱で、ウォルト・ディズニーとの提携を取り付けたヤシュ・ラージ初のフル3DCGアニメ「Roadside Romeo」(2008)で監督デビュー。続いてウダイ製作・主演「Pyaar Impossible」で劇映画の演出に進出。

女優陣もほぼ撃沈で、意外にも唯一キャリアが続いているのがキム・シャルマー(苦笑)。もっとも演技力据え置きで、「Heyy Babyy」(2007)のエンディングですべてをぶち壊す役回りや、その<痛さ加減>がギャグとして重用されてるとしか思えない「Daddy Cool」(2009)など独特なポジションを確立?!

さて、監督のアーディティヤー・チョープラーは、本作で監督としての限界を感じたのか、その後は製作・脚本にとどまり、本作のウィークポイントを分析しないまま愚弟ウダイとジミー主演で強行した「Mere Yaar Ki Shaadi Hai(友達の結婚)」(2002)のフロップから徹底的に改革し、ヤシュ・ラージ・フィルムズを短期間でボリウッドのトップ・コングロマリットに急成長させた。
その手腕は演出面でも磨きを見せ、8年ぶりの監督作Rab Ne Bana Di Jodi(神は夫婦を創り賜う)」(2008)では本作とは比べものにならない感動を紡ぎ出している。

Mohabbatein

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