Chamatkar(1992)#078
Chamatkar(奇跡) 07.03.18UP ★★★
チャマトカール
製作:パルヴェーシュ・C・メーへラー/監督・脚本:ラジーヴ・メーへラー/原案・脚本:ショウカット・ベイグ/台詞:リリプット/撮影:キャルトン・デ・メロー/作詞:アナン(アーナンド)・バクシー/音楽:アヌー・マリック/振付:サロージ・カーン/アクション:モーハン・バガッド/背景音楽:ヴァンラージ・バーティア/編集:M・S・シンディー
出演:ナスィールッディン・シャー、シャー・ルク・カーン、ウルミラー、マルヴィカー・ティワリ、シャンミー・カプール、デーヴェン・ヴェルマー、ティヌー・アナン(アーナンド)、アーシュトーシュ・ゴーワリカル、ジョニー・リーヴァル、グッディー・マールティー
公開日:1992年7月8日(日本未公開)
STORY
田舎で小学校の教師をしていたスンデール(シャー・ルク)が一旗揚げようとドバイへ向かう途中、ボンベイへ着くなり、有り金すべてを巻き上げられてしまう。仕方なく墓場で一夜明かそうとする彼の目の前にゴーストのマルコ(ナスィールッディン)が現れて・・・。
Revie-U *結末には触れていません。
シャー・ルク・カーンはデビューした1992年になんと出演作が4本! トップ2ヒットの「Deewana(恋狂い)」が6月25日、本作が7月8日、「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman11月13日、「Dil Aashna Hai(心は愛してる)」12月25日と92年の後半を連続して賑わせた。
もっとも、「Deewana」以外はさほどランクインしておらず、この時点ではリシ・カプールのネームヴァリューが大きかったようだ。
さて、本作はというと、リシに続き、名優ナスィールッディン・シャーとの共演とは、これまた幸先がいいシャー・ルク。
ストーリーラインは、「ラジュー〜」と似通っている。田舎で小学校の教師をしているシャー・ルクの前に、ドバイで一旗揚げたという友人に誘われて、彼も金貸しから借金してまでドバイへ出ようとする。ところが、生き馬の目を抜く大都会ボンベイへ着くなり、人を信じてカモにされ荷物は持ち逃げ、揚げ句の果ては乞食に有り金全部すられてしまう。無論、友人も彼のデポジットを持ってドロン。
シャー・ルクの役名はスンデール・シュリワスターワとなっていて、その名の通り心美しくも純朴過ぎる青年なのであった。
無一文となったスンデールは仕方なく墓地で夜を明かすことに。ここで登場するのが、なんとゴーストのナスィールッディン! 幽霊とは言っても、仕立てのよいコートにソフト帽、首にはスカーフとなかなかダンディーな出で立ちである。
その役名はマルコながら、本当はアマルという。やっぱり幽霊は十字架の墓場がお似合いということなのだろう。生前の彼は地上げ屋のグンダーで、際どい手口でホテルを為しめ、豪勢な暮らしをしていた。
ところが、手下にまかせた地上げ物件が、かつて愛した恋人サヴィトリーの父が学長(シャンミー・カプール!)を務める大学なのであった。さっそくマルコはサヴィトリーを訪ねるが、彼女は彼から捨てられた後、白いサーリーで喪を通し続けていた。これを見てマルコは地上げ稼業から足を洗い、警察に出頭する決心をする。だが、その前に手下のクンターらに殺されてしまったのだった!
そんなこんなでスンデールはマルコに手を貸すこととなり、やって来た大学で出くわすのが、子役から本格デビュー間もないウルミラー。
実はこのふたり、ボンベイ行きの列車の中でかち合っていて、不用意に女学生専用客車に入り込んでしまったシャー・ルクが彼女たちにいびられるなど、定番通り犬猿の仲という設定。
ウルミラーは撮影当時18歳あたりのはずだが、子役から映画界に染まりオシャマに育ったのか、とても二十歳前には見えない色香を漂わしている。やがて、ウルミラー演じるマーラーが、マルコの残し種と解る寸法だ。
で、このマルコ。スンデールには姿も声を認識できるが、まわりの人間にはまったく感知できず、さながらMr.India(透明人間)となってクンター退治に活躍するという仕掛け。
今となっての見どころは、クンターの手下として「ラガーン」Lagaan(2001)の監督アーシュトーシュ・ゴーワリカルが出演していることだろう。監督へ転身する前は端役の役者で、シャー・ルクとは「ラジュー〜」の監督アズィーズ・ミルザーが演出していたTV「Circus」(1989)でも共演していた仲。
しかもクライマックスには、大学での<クリケット>が用意されていて、アーシュトーシュらのボークでスンデールのチームから怪我人が続出! 冒頭、スンデールが教鞭を取る田舎の小学校などは、監督として名を成したアーシュトーシュが旧友シャー・ルクと組んだ「Swades(祖国)」(2004)が思い起こされ、ついついニヤリとしてしまう。
また、大学を初めて訪ねるシーンでは、シャー・ルクが学長を探していたりする(「Main Hoon Na」)のもあって、マサーラー・デジャヴューが楽しめるのが嬉しい。
サポーティングは、ヴィクトリア駅に徘徊する詐欺師に「Mujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ)」のババ役、ムスターク・カーン。
すぐにフィルミーが口に出るインスペクターPKに「Deewana」の伯父役、いかにも人のよいデーヴェン・ヴェルマー(金田龍之介を思い出す)。
警官役は、「Main Aisa Hi Hoon(私だって普通です)」(2005)で知的障害者の主人公を暖かく見守っていたアンジャン・スリワスターワ。
マルコを裏切る手下のクンター役は、「Yun Hota To Kya Hota(もし起きたら、何が起きるか)」(2006)でパレーシュ・ラーワルの助手役、ボリウッドのネズミ男ティヌー・アナン(アーナンド)。回想シーンでの成田三樹夫風ヘアがよい。
モンティーの右腕役は、スター・インストラクターのケヴィン・パッカード。「Hadh Kar Di Aapne」(2000)ではツアー・コンダクター役で欧州ロケを満喫している。
また、ウルミラーの友人と、モンティー一味の二役をこなす超弩級コメディエンヌがグッディー・マールティー(ヘヴィメタ風?衣装も手伝って、オジー・オズボーンに見える!)。
マルコが想いを寄せる美熟女は、マニーシャー・コイララのデビュー作「Saudagar(商人)」(1991)にも出演していたマルヴィカー・ティワリ。キャリアを伸ばせずに終わった様子。
そして、大学の小間使い役に、言わずと知れたジョニー・リーヴァル。クリケットの実況中継からスタンダップ・コメディアン時代が偲ばれる。
90年代初頭という時代的なこともあり、いささか<古さ>を感じるところもあるが、ビデオゲーム風へたうまアニメのオープニング・タイトルバックなど、なかなかに愉快な作品。
幽霊がシャー・ルクしか見えないところは「Mohabbatein(幾つもの愛)」(2001)と共通ではあるが、ナスィールッディンの幽霊ぶりが他愛ないところもあって「もーれつア太郎」と言うべきキャ?
*「ミラクル幽霊」という訳題は松岡環さんがスペース・アジアにて紹介された時のものです。
*追記 2010.10.06
原版は例によって米「黒ひげ大旋風」(1967)だそうで、主人公が陸上の名コーチ、幽霊がギャングでなく海賊という設定。
ウルミラー登場ナンバル「yeh bichhoo mujhe」も某定番ポップ・ソングのリサイクル。アーシャー・ボースレーのヴァンピッシュな歌声がたまらない。
>シャンミー・カプール
60年代に一世を風靡し「インドのプレスリー」と呼ばれたトップ・スター。かのラージ・カプールの次弟にあたり、つまりはカリーナーの大伯父、ランビールの大叔父。80年代後半にはスモウ・レスラー並みの体型となり、かつてヒーローとして活躍した面影がなくなったものの、ミトゥン・チャクラワルティー版西部劇「Wanted」(1984)でエンターティナーぶりを発揮!