Dil Aashna Hai(1992)#073
Dil Aashna Hai(心は愛している) 07.02.01 ★★☆
ディル・アーシュナー・ヘイ
製作・原案・コンセプト・監督:ヘーマー・マーリニー/原案・脚本:イムティアズ・フセイン/台詞:イクバル・ドゥルラーニー、スーラージ・サニム/作詞:マジルーヌ・スルタンプリー/音楽:アナン(アーナンド)-ミリン(ミリンド)/撮影:ペーター・ぺリイラ/美術:ビジョン・ダースグプタ/アクション:A・マンスーン/編集:V・N・マイェカル
出演:ジーテンドラ、ディンプル・カパーディヤー、アムリター・スィン、ソーヌー・ワーリアー、カビール・ベディ、ディヴィヤー・バーラティー、シャー・ルク・カーン、ナーズィル・アブドゥラー(新人)、ファリーダー・ジャラール、ビーナー・ベナルジー、スシュマー・セート、スラバー・デーシュパンデー、セーヌー・ダリワール、Dr.モーハン・アガシー、ラーム・モーハン、サティヤン・カップー、シヴァ・リンダニー、ボブ・クリスト、ブーシャン・ティワリ
特別出演:ミトゥン・チャクラワルティー
友情出演:パンカジ・ウダース、ラーザ・ムラード、アマルジート・ムカルジー
公開日:1992年12月25日(日本未公開)
STORY
富豪のパーティーで踊っていたキャバレーダンサーのレイラー(ディヴィヤー)に今際のきわの母から電話が掛かり、実は捨て子であったことを告げられる。ステージを見るなりひと目惚れしたカラン(シャー・ルク)が、彼女の過去を知るに至り、3歳の時に誘拐された孤児院を探し出し、金持ち娘の三人のうち、誰かの落とし子とわかるが・・・。
Revie-U *結末には触れていません。
ヒロインは、今は亡きディヴィヤー・バーラティー。16歳で南インド映画界からデビュー、1991年にボリウッドへ転身。立て続けに出演作が舞い込み、92年にはなんと11本が公開! この年、「Mujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ!)」(2004)、「Jaan-E-Mann(我が命〜愛しき人よ)」(2006)などのプロデューサー、サジード・ナディアドワーラーと結婚。が、幸福の絶頂にあった93年4月、住んでいたマンションから転落。酔った上での事故死とも彼女の人氣を嫉んだ怨恨殺人とも伝えられる。
今もって彼女を偲ぶインド人ファンは多く、彼女の名はシュリーデヴィーと並び讚えられるほど。夫のサジードは、現在でも製作する映画の冒頭にて、彼女への追悼を捧げ続けている(もっとも、再婚済みなのだが)。
レイラーの過去に登場する仲良し三人娘を演じるのは、ディヴィヤーと同じ歳の娘トゥインクル・カンナーを持つ「Being
Crrus」(2006)の ディンプル・カパーリヤー、本作と同じ年の「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)でセカンドヒロインを演じシャー・ルク・カーンに猛アタックを仕掛けた「Betaab(燃える恋)」(1983)のアムリター・スィン(前年にサイーフ・アリー・カーンと挙式済み)、そしてミス・インディア1985のソーヌー・ワーリアー。
彼女たちにはそれぞれ恋の相手がおり、ディンプルが「Chingaari(閃光)」(2006)のミトゥン・チャクラワルティー(ハングライダーで登場!)、アムリターがマハーラージャーの御曹司役ジーテンドラ(「Mujhe Kuch Kehna Hai」のトゥシャール・カプールの父親。60〜80年のアイドル・スターだけあってトップ・ビリング)、ソーヌーはこれがデビューとなるナーズィル・アブドゥラー。
ナーズィルは、シャー・ルク製作・主演「Main Hoon Na(私がいるから)」(2004)のTVホスト役や「Page 3」(2005)のチャイルド・アビューズ富豪など、演技力据置のまま、ボリウッドに居座っているところをみると強力なコネがあると見える。
セカンド・ビリングのミトゥン・ダーが特別出演となっているのは、かのアミターブ・バッチャンを喰う強い印象を放った「Agneepath(火の道)」(1990)でFilmfare Awards助演男優賞を得、この年公開の「Tahader Katha」がNational Awards 銀蓮賞主演男優賞を受賞する勢いにあったためだろう。
本作ではハングライダル・ナンバル「ho parda nasheen…」では、「Josh(激情)」(2000)のシャー・ルクのラップ・ソング「apun bola(オレが言うには)」に先駆けて?、ラップ口上を自らプレイバック!
長い回想の終盤、三人の娘たちが貸別荘に泊まり込み、秘かに出産。しかし、ここでは母親が誰か明かされず、ディヴィヤーの母親探しとなる後半へと続く(構成からすると「KKHH」と共通)。
先に見た配役はナーズィルを除いて、誰もが80年代のスター。若作りでの登場はややつらいところであったが、これは後半が18年後という設定のため。
本作が撮影された90年代初頭は、現在のボリウッドと似通っていて、トップスターの交替時期前夜。ひとつ前の時代を飾ったスターたちが依然主役を演じ続ける一方で、新進スターがぽつぽつと顔を見せ始めるものの、まだ決定打に至っていない状況である。
ここで留意したいのは、撮影時の1991年にインドは経済的に行き詰まり、それまでの社会主義路線から新経済政策へ一氣に切り替え、自由経済へと突入した点。三人の娘たちが大胆に?恋愛を謳歌し、すぐに身を捧げてしまうのも、そんな時代的な変化を受けての設定であろう。
製作・監督は、近年「Baghban(庭師)」(2003)、「Veer Zaala(ヴィールーとザーラー)」(2004)、「Baabul(父)」(2006)にてアミターブの相手役としてスクリーンに復帰している往年の大女優ヘーマー・マーリニー。
当時は、すでにヒロインを演じられる年齢ではなく(娘のイーシャー・デーオールは10歳)、この頃のヘーマーは製作者側に活路を見出そうとしたのか、本作の他、TVシリーズなども手がけている。
しかし、その演出力は今一つ。女性監督ながら、終盤にアクション場面を用意しているところが、マサーラー映画を知り尽くしたヘーマーらしい。
さて、シャー・ルクはというと、ストーリーがヒロインに重きをなしているため、可もなく不可もなく、と言ったところ。
ディヴィヤーは踊り子役だけにパーマや洋装が目立ち、派手なメイクも手伝って垢抜けない印象も受けるが、サーリー姿となるとはっとするほどの美しさを見せる! もっとも、ダンスとなると珠に瑕で、このへんはバラタナティアムの踊り手であるヘーマーはどういう思いでディヴィヤーを起用したのだろうか。
アナン(アーナンド)-ミリン(ミリンド)の音楽もさほど耳に残らず終い。ただ、マハーラージャーに招かれたガザル歌手パンカジ・ウダースが自ら歌うナンバル「kisine bhi to na dekna」は、彼の甘く包み込むような歌声もあって心を潤してくれる(この場面はセットだが、インドア・シーンではジャイプールに実在するマハーラージャー宮殿内でロケが為され、そのゴージャスさは溜め息が出るほど)。
その他、娘たちが通う私学の学長役が「Deewana(恋狂い)」(1992)でもシャー・ルク&ディヴィヤーと共演しているスシュマー・セート。
「Don」(1978)のサティヤン・カップーが、アムリターの父親役。
「Main Hoon Na」の将軍カビール・ベディがシャー・ルクの父親役、「K3G」(2001)などのファリーダー・ジャラールが娘たちの寮母役で出演。
「Ek Nazar」(1972)で殺人の罪に問われたジャヤー・バードゥリー(現バッチャン)を、実母のスキャンダルを暴きながらも無罪に導く若き弁護士役として期待を受けてデビューしながら、すっかり胡散臭い役回り専門となり、Z級「Taazan
Ki Beti(ターザンの娘)」(2002)など醜作にも出演しているラーザ・ムラードが、カビールの邪なビジネスパートナー役として姿を見せている。
シャー・ルクとディヴィヤー共演作では「Deewana」と比べて、いささか平凡であることは否めない。
*追記 2010.10.04
年間5位に食い込んだ「Deewana」(1992)と大きくかけ離れた47位と完全フロップ。どちらも新旧スターが交差する構成だが、本作の方が過去シーンに時間を割いてあることもあり、ヘーマーの演出技量だけでなく、変革の時流に対して古めかしさが色濃く残ったというプロデューサーとしての資質もその要因と言えよう。
なお、名ガザル歌手パンカジ・ウダースはこの時期、「Saajan」サージャン/愛しい人(1991)、「Naam(名前)」(1986)にて劇中演奏シーンが見られる。また近年もマリッカー・シェラワト主演のコメディ「Maan Gaye Mugjall-E-Azam」(2008)やジャッキー・シュロフがシルディのサイババに扮した「Mailk Ek」(2010)でもプレイバック・シンガーに起用されている。
サジード・ナディアドワーラーが製作した映画の冒頭にデヴィヤーへの追悼を掲げていたのは、ちょうど再婚する「Mujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ)」(2004)まで。「Jaan-E-Mann(我が命〜愛しき人)」(2006)以降は新妻の手前か、外されている。