3/4〜 イムラーン・ハシュミー主演『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』Tigers(2014)日本公開!

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!(予告編を見る)
『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』Tigers(2014)
インド=フランス=イギリス合作/94分/配給:ビターズ・エンド
監督・脚本:ダニス・タノヴィッチ/脚本:アンディ・パターソン/撮影:エロル・ズブツェヴィッチ/衣装:ニハーリカ・カーン/美術:ラチュナー・ラストギ、K・K・ムラリダラン/編集:プレールナー・サイガル/音楽:プリータム
出演:イムラーン・ハシュミー、ギーターンジャーリ・ターパー、アディル・フサイン、サトヤデープ・ミシュラー、スプリヤー・パータク、カリード・アブダッラー、サティヤディープ・ミシュラー、ヴィノード・ナグパル、ダニー・ヒューストン、マリアム・ダボ、ハノイ・フェルヒ、サム・リード他
誰もが豊かな暮らしを求める。成功のステップを一段一段登って行く中、新しく有望な職を得たはずの、その仕事が、生まれて間もない多くの生命を犠牲にしていると知った時、家族を養う身で、人はどんな行動を取るだろうかーー。
『ノー・マンズ・ランド』(2001)で世界的に注目を集めたボスニア・ヘルツェゴビナのダニス・タノヴィッチ監督が、80年代にパキスタンで起きた粉ミルク事件を映画化した『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』Tigers(2014)が3月4日に日本にて世界初公開される。
インド/フランス/イギリス合作の制作にあたったのは、インドを代表する映画産業ボリウッド(ヒンディー映画)の中で先進的な作品を手がけるアヌラーグ・カシャップ監督/プロデューサーら。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!
パキスタン国内産ジェネリック薬のしがないセールスマンからグローバル企業に転職する主人公アヤンに扮するイムラーン・ハシュミーは、これが海外合作の初主演となる。マヘーシュ・バットら映画一族のコネを頼りに虞犯青年役でデビューした彼は、いかにも胡散臭そうな風貌を売りに『Murder』(2004)、『Aashiq Banaya Aapne』(2005)など、インドのバブリーな経済成長を背景にそれまでの伝統的な南アジア規範を逸脱しウェスターン・スタイルの不道徳なキャラクターを装い、毎作、新進女優とのホットなキス・シーンを売りに<シリアル・キッサー(連続キス魔)>と呼ばれた、ボリウッドの徒花。
だが、結婚を機に役柄を微妙にシフトして行き、ラージャスターンのチンピラが奴隷を解放したムハンマドの故事に則って人身売買で売られたヒロインを救うため生命を投げ出し、魂を昇華させる『Awarapan(放浪者)』(2007)で新境地を開拓。『The Dirty Picture』(2011)の映画監督役や続く『Shanghai』シャンハイ(2012)で個性を発揮するなど、役者として磨きをかけて来た。
本作では、妻子を抱えながら、貧困家庭の赤ん坊が汚染された水で溶かれた自社製品の粉ミルクによって障害を抱えている実態を内部告発する実在の人物を演じ、またボリウッド圏以外の海外合作初主演となる。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!
シリアスな社会派作品ながら、アヌラーグ・カシャップ製作『めぐり逢わせのお弁当』Dabba/The Lunchbox(2013)に引き続き、ボリウッド・ネタが仕込まれているのもご愛嬌。
第一幕。製作者、監督、弁護士がネット通話で海外にいるアヤンと映画化可能かヒアリングを行う場面で語り出される物語の導入部。結婚式を終え、花嫁を自室に迎え入れた彼が「ヒンディー映画は好きかい?」と、通りを挟んだ向かいの友人に窓辺に向けてもらったテレビを見せてもらうスケッチがさっそく用意されていて、映画の中で告発される外資系企業の名前が便宜上、仮名に置き換えられるのと同じく、パキスタンを舞台としながらボリウッド映画人が制作している免罪符とも取れるのが微笑ましい。
もっとも、このスケッチは伏線となっていて、デビュー作における愛らしいマニーシャー・コイララが森で出会った青年(すなわちヒーロー)の肩に鳥のフンが落ちる場面が、妻に背を押されて外資系企業の面接に向かうバスの中で網棚に載せられた鳥籠から借りた背広に鶏のフンが落ちる展開になっている。
しかも映画のタイトルが『Saudagar(商人)』(1991)である事が、この後、アヤンのセールスマンとしての魂を問われる事となる。
原題の「Tigers」は、外資系企業の面接会場で外国人幹部が営業職を求める若者たちに「おまえたちは虎になれ」と吠えさせる場面に因んでいるが、良心に従った行動を取る事となるアヤンは、まさに彼らにとって牙を向く虎となる。もっとも、そこにはあるトラップが仕掛けられていて、後半、ツイストとなって思わぬ映画的展開が仕組まれている。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!
ヒロイン・ザイナブ役に、シッキム出身のモデルで、デビュー作「I.D.」(2012)が海外でも高い評価を得て、「Liar’s Dice」(2014)ではナショナル・アワード主演女優賞を受賞したギーターンジャーリ・ターパーを起用。ボリウッド女優とは一線を画するエキゾチックな美貌を持ち、「企業の圧力は恐ろしいが、正しい行動を取らない夫は尊敬できない」とアヤンの背を押す氣高さが印象的。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!
サポーティングは、外資系企業の上司役アディル・フサインも同じくアッサム出身。『ライフ・オブ・パイ』(2012)、『マダム・イン・ニューヨーク』English Vinglish(2012)、『エージェント・ヴィノッド』Agent Vinod(2012)など意外に日本公開作が続く。
アヤンを諭す友人の医師ファイズ役、「No One Killed Jessica」(2011)、「Bombay Velvet」(2015)のサトヤデープ・ミシュラーにも注目したい。
また、アヤンの母親役にはシャーヒド・カプールの継母スプリヤー・パータクを起用。「Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela」(2013)で見せたゴッドマザーの威圧感とは対比する等身大の母親役がいかにも下町に生きる庶民の母を想わせる。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!
ボリウッド映画に倣い、使用される挿入歌はプリータムによる書きおろしとなっていて、映画の演出に深みを与えている。試写会では陸軍病院で拘束される場面のみ歌の字幕が入っていなかったが、「フダー(神よ)」と試練を与える神への嘆きが胸を打つ。
パキスタンの言語ウルドゥー語と通じ合い、時より英語台詞も混じるボリウッド・ヒンディーで撮影されており、ボリウッド・ファンにとって耳障りも好く、情緒ある下町の生活描写を含めて、味わい深く楽しめるのが嬉しい。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショー!
また劇中、映し出される病院内で苦しむ赤ん坊の映像は、スタッフが製作時にパキスタンの病院で撮影したもので、70年代以降、<ネスレ・ボイコット>として発展途上国各地で糾弾された利益至上主義のグローバル企業による粉ミルク事件が現在進行形の物語である事を告げている。
本作に続き、ダニス・タノヴィッチ監督の最新作『サラエヴォの銃声』(2016)も劇場公開される。こちらも併せて、ぜひご覧頂き、本作で得たボリウッドの残り香を感じ取って欲しい。
2017 年 3 月、新宿シネマカリテにて2作品連続ロードショー!
3/ 4(土)~『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』
3/25(土)~『サラエヴォの銃声』
『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』
監督:ダニス・タノヴィッチ 脚本:ダニス・タノヴィッチ、アンディ・パターソン
出演:イムラン・ハシュミ、ギータンジャリ、ダニー・ヒューストン、カーリド・アブダッラー、アディル・フセイン
2014 年/インド=フランス=イギリス/94 分/シネマスコープ 配給:ビターズ・エンド
『サラエヴォの銃声』
監督・脚本:ダニス・タノヴィッチ 原案:ベルナール=アンリ・レヴィ(戯曲「ホテル・ヨーロッパ」)
出演:ジャック・ウェバー、スネジャナ・ヴィドヴィッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ヴェドラナ・セクサン、ムハメド・ハジョヴィッチ、ファケタ・サリフベゴヴィッチ-アヴダギッチ
2016 年/フランス=ボスニア・ヘルツェゴビナ/85 分/シネマスコープ 配給:ビターズ・エンド
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