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Dhoondte Reh Jaoge(2009)#065

2010.09.29
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Dhoondte Reh Jaoge

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「Dhoondte Reh Jaoge」 ★★★
ドゥーンドゥテー・レヘ・ジャォゲー

 

製作:ロニー・スクリューワーラー/原案・脚本・台詞・監督:ウメーシュ・シュクラー/原案・台詞:ラジーヴ・ジャヴェリ/撮影:マノージ・シャウ/美術:マッチスティック/作詞:ジャリース・シェルワーニー、シャッビール・アフメード/音楽:サジード-ワジード/振付:メーフル-リチー、レモ・デスーザ、フィローズ・カーン、ラジーヴ・スルティ/アクション:パルヴェーズ・シャイク、フェーローズ・カーン/編集:アシュファーク・マクラーニー

出演:パレーシュ・ラーワル、クナール・ケームー、ソーヌー・スード、ソーハー・アリー・カーン、ジョニー・リーヴァル、ディリープ・ジョーシー、アスラーニー、マレイ・チャクラワルティ、ラザック・カーン

助演:プラヴィン・ナーヤク、ジャイデープ・シャー、マノージ・シャー、アミット・タークル、バーラト・タークル、タパン・バット、アヴタール・ギル、シェイク・ヌール・アスラム、ディニーシュ・ヒングー、ヴィジュー・コーテー、マーダヴ・モーグヘー、マノージ・ラトード、ニシ・スィン

ゲスト出演:ディーパル・シャウ
特別出演:リシター・バット

公開日:2009年3月6日(年間33位/日本未公開)

STORY
万年フロップ・プロデューサーのラージ・チョープラー(パレーシュ)アナン(クナール)は21人のファイナンシャーから105カロール・ルピーの資金を集め、その実、5カロールだけでフロップ映画を製作し、100カロールを50/50で持ち去る計画を立てるが…。

Revie-U
シャー・ルク・カーン製作・主演Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)以降、映画ネタの作品が乱作されるようになったが、本作もそのひとつ。

冒頭、ファイナンシャーから逃れるためクビ吊り自殺を試みる元ヒットメーカーの映画プロデューサーがラージ・チョープラー(苦笑)。彼の作る映画はブロックバスターならぬ<フロップバスター>、10本連続コケまくりという疫病神のような男(最新作「Raj Chopra Ki Aag」は、もちろん「Sholay」炎のリメイクでフロップとなった「Ram Gopal Varma Ki Aag」が元ネタ)
もっとも、これを演ずるのが名優パレーシュ・ラーワルとあって、転んでもタダ起きない実にしたたかなキャラクター。

もうひとりの主人公が、正直過ぎるが故に会社を5回クビになったドジなアナン(=アーナンド)・パワール。扮するはRaja Hindustani(ラージャー・ヒンドゥースターニー)」(1996)などの子役だったクナール・ケームー「Kalyug(末世)」(2005)で成人デビューし、苦み走ったワイルドな風貌の割に声がか細く、本作のような情けない役柄にはぴったり。

Dhoondte Reh Jaoge

(c)UTV Spot Boy, 2009.

はじめ、ひとクセもふたクセもあるラージにしてやられるアナンだが、昨日の敵は今日の友。フロップ映画をわざと製作し、その出資金を持ち逃げしようと計画する。
とは言え、フロップ続きのラージに出資する者などいないため、ここで日本企業ミツマシのスポンサードをひと芝居打つのだった。
このスケッチ、インド映画で日本と中国がごっちゃに描かれるのを逆手にとって?、製作発表にネパール人を並べて日本人のフリをさせるというもの。実際には、ここに並んでるのはおそらく中国系の人々で、中にはチャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」CC2C(2009)で注目を集めた機内エキストラの中国人青年の姿も。

さて、彼らが設立したチャールスビシ(四菱)・フィルムズで制作するフロップ映画が「Solay se L’gaan Tak(炎からラガーンまで)」
ちょっとキ印の脚本家にジョニー・リーヴァルが扮しているだけあって、ストーリーもぶっ飛んでいる。
タークル・バルデーヴ・スィンに雇われたヴィールが村にやって来て馬車乗りのバサンティに恋をするが…バサンティは見合い結婚のためパンジャーブに戻され、ヴィールが後を追って芥子菜畑で再会するも…盗賊ラッバル・スィンに誘拐されパキスタンに連れ去られる…ヴィールが彼女を救うために国境を越えると、バサンティを巡って村人チームとパキスタン・チームでクリケット対決をすることに…。
つまり、Sholay」炎(1975)から始まってDDLJ(1995)、Gadar(暴動)」(2001)、そしてラガーン」Lagaan(2001)という歴代メガヒット作をミックスした展開。

Dhoondte Reh Jaog

(c)UTV Spot Boy, 2009.

その主役に据えられるのが、筋肉スターのアルヤーン・カプール。若きアミターブ・バッチャンに瓜二つのソーヌー・スードが配役されているだけあって、黒シャツ+ブルー・ダンガリー姿はまさに「Sholay」のジャイそのもの(劇中の役名がヴィールになっているのは、ご愛敬)。
このアルヤーン、入れ込んでいた女優リヤー(リシター・バット)の結婚式に酔って乱入し逮捕される、というゴシップ・ネタも網羅。
撮影の方は、アクションはバリバリだけど○○で台詞がダメなドゥプリケート(Main Hoon Naの天井を破ってシャー・ルクが登場するシーン)、台詞まわしは抜群だけど○○なドゥプリケート(アミターブの出世作「Deewaar」)、ダンスは得意だけど○○なドゥプリケート(Hello Brotherの人間ピラミッド・シーン)を使って完成させてしまう!

Dhoondte Reh Jaog

(c)UTV Spot Boy, 2009.

ヒロインはというと、アナンの恋人ネーハーを大抜擢。コルカタ出身、ボリウッド女優を夢見る下町の劇団員という素性で、あがってしまうと、ヒンディー語台詞にある「デーヴァナン(デーヴ・アーナンド)」をついついバンゴーリー(ベンガル語)風に「デーヴ・アノンド」としゃべってしまう大根女優。映画がフロップになれば、がっくり来て女優への夢を諦めて結婚するだろう、というのが、アナン達の目論みなのだ。
演ずるソーハー・アリー・カーンは、サイーフ・アリー・カーンの妹。母親は、かの文豪タゴールにも連なるシャルミラー・タゴールで、ベンガリー映画「Antarmahal(後宮)」(2005)にも出演していることから、ソーヌー同様、脚本が当て書き、または配役が決定してから改稿されていることが解る。

こうしてろくでもない映画(ちょうど日本人がイメージするインド映画?)を制作し、まんまと製作資金をせしめようとする矢先、日本企業のスポンサーを得たことを聞き込んだドバイのドンも絡んで来て、フロップともなれば彼らに追われることになる。
このドンとは、Shootout at Lokhandwala(2007)にも登場し、サンジャイ・ダットに武器弾薬を調達したDカンパニーデーウード・イブラヒムをパロディにしたもの。国外逃亡したドバイからムンバイの地下世界を遠隔操作していて、時に超然と蜜入国することから、劇中、ブルカー(イスラーム教徒の女性が着用する黒いベール。映画でしばしば素性を隠す女装に使われる)を被って堂々とプレミア会場に乗り込んでくる。
マリッカー・シェラワト主演のコメディ「Maan Gaye Mughal-E-Azam」(2008)に続いてパロディに。

金の亡者となったアナンと違って、ラージはその根底は映画を愛したプロデューサーだけあって中盤、<もっとマシな映画>を作ることに目覚める、と米「ミストレス」みたいな展開であってもよかったかと思うが、そこは単なるコメディとして企画されているため、いつものような先の見える展開に終わっている。
もしかすると、しょせんインド映画のC級/D級映画プロデューサーは100回生まれ変わってもこんなもの、という認識だったりして(苦笑)。

劇中、ヤシュ・チョープラーカラン・ジョハールと並んで大物製作者と(セルフ・パロディで)ナレーションされるロニー・スクリューワーラーは、Rang De Basanti(浅黄色に染めよ)」(2006)、「その名にちなんで」The Namesake(2006)、「Jodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)」(2008)、Delhi-6」デリー6(2009)など多数のメジャー作品を手がけるUTVの映画プロデューサー。
アーミル・カーン製作の社会派Peepli Live(2010)でも共同プロデューサーを務めている。

原案・脚本・監督のウメーシュ・シュクラーは脚本家出身で、これが長編第1作となる。エンディング・タイトル・バック中、よくある映画ファンの熱烈TVコメントが金で雇われたヤラセであるのをすっぱ抜いたり?、かなり際どい演出を試みている。

ラージ役のパレーシュ・ラーワルは、ボリウッド・トップ・クラスの名優だけあって、出演依頼を乞うアルヤーンに「ピル・カビ(また今度)」と冷たくあしらわれるや、逆ギレから涙を誘う激白スケッチで見せる芝居が舌を巻くほど。
アルヤーン役ソーヌー・スードは、アミターブ瓜二つながらスターのオーラに欠けるものの、「Singh is Kinng」(2008)のキング役など認知度上昇中。「ピル・カビ」スケッチで見せるもらい泣きの受け芝居も良好だ。

アナン役クナール・ケームーは、マレーシア・ロケの妄想ナンバルpal yeh aane wala palで見せるダンスもまずまず。デップ系のチーマー的タレントが好きな日本女性あたりにはウケそうなのだが。

また、ゴロツキ役のラザック・カーン、「Sholay」タークル役サンジーヴ・クマールの物まねを持ち芸とするマーダヴ・モーグヘー、「Sholay」カーリア役ヴィジュー・コーテー、「Sholay」刑務所長のアスラーニーなど、味のある脇役揃いなのが嬉しい。

Dhoondte Reh Jaog

(c)UTV Spot Boy, 2009.

60年代にも映画ネタがあったボリウッドだけに、「Om Shanti Om」以降、撮影所や映画人絡みの作品がやたらと作られるようになった。これほどまでに映画ネタが登場するのは、他国では考えられない。さすが映画(ネタ)大国のインドだけある。
しかしながら、逆にボリウッド日本上陸を阻んでいるのが、この映画ネタ満載という点。劇場公開/ソフト化の日本語字幕は一般観客向けに作られるため、映画ネタはまずフタをされてしまう。これではいくら日本語字幕作が増えても、肝心の映画ネタが解ってもらえなければ、ボリウッド映画を満喫したことにはならない。言ってみれば、ゆで卵の白身だけ、最中の皮だけ食べているようなもの。

ボリウッド映画はそういう面でハードルが高いものの、1作より2作、10作より20作と見続けてゆくと映画ネタもインド映画独特の文法も解ってくるため、面白さが倍増となる。見れば見るほど雪だるま式に面白くなり、氣がつけばもう虜。ボリウッドなしでは生きられない、というのが魅力(その分、ハマればハマるほど話し相手が減る、という面も…)。

本作は、脚本の趣旨に則って年間33位の「フロップ」となったが、ある程度、ボリウッドに馴染んだ人であればたっぷり楽しめる中間試験としてオススメ。
スターの有無、ヒット/フロップの評判に惑わされず、どんどんお氣に入りの作品をみつけてフィルミー・サーラー(映画狂)への道を進んで頂きたい。

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