「バルフィ! 人生に唄えば」Barfi!(2012)#319

DVD on UTV.
「バルフィ! 人生に唄えば」Barfi!(2012)★★★★★
製作:ローニー・スクリューワーラー(UTV)、シッダールト・ローイ・カプール/製作・原案・脚本・監督・台詞:アヌラーグ・バス/原案:タニー・バス/音楽監督:プリータム/撮影監督:ラヴィ・ヴァルマー
出演:ランビール・カプール、プリヤンカー・チョープラー、イレアナー・デクーズ、アーシーシュ・ヴィダヤールティー、ソォーラブ・シュクラー、アーカーシュ・クラーナー、ルーパー・ガングリー
本国・世界公開:2012年9月14日
日本公開:2014年8月22日
8月22日(土)より、TOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開!
<公式HPにて予告編あり>
STORY
ある日、陽氣な聾唖の青年バルフィ(ランビール)は、ダージリンへ移って来たシュルティー(イリアナー)を見掛けて、ひと目惚れ。しかし、父が倒れ、手術費用のために、幼馴染みである富豪の娘ジルミル(プリヤンカー)と誘拐しようと企むが…。果たして、運命の神はバルフィに何を見せるのか?
Revie-U
またひとつ、愛おしい映画が公開される。主演は、ボリウッド若手No.1の実力を持つランビール・カプール。名優である父リシ・カプールの巧みな口跡を受け継ぎながら、本作ではそれを封印し、聾唖(ろうあ)の青年バルフィを好演。
彼が熱愛するヒロイン、シュルティー役は、これがボリウッド・デビューとなる南インド・トリウッド(テルグ語映画)女優のイリアナー・デクルーズ。見目美しく可憐な彼女がバルフィに深い想いを抱くのが、実に愛らしい。
そして、もうひとり、バルフィの幼馴染みで数奇な運命となるジルミル役がボリウッド・トップ女優のプリヤンカー・チョープラー(ディズニー・アニメ「プレーンズ」Planesでイシャーニーの声を担当!)。「What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)で12星座裏キャラ2役の14役をこなし、演技力をぐっと向上させた彼女が本作では見事に自閉症の淡い想いを演じきっている。
監督はアクションと悲愁を得意とし、リティク・ローシャン主演「Kites」カイト(2010)でUSリミックス版が全米オープニングTop10にインド映画として初のランクインとなったアヌラーグ・バス(楽師達が画面に登場してBGMを演奏しているのは、音楽監督プリータムやジェームズから成るバンド・メトロが雨の路上でもストリート・ロッカーとして伴奏していた「Life in a… Metro(大都会)」(2007)に続くお遊び)。
「Kites」ではインド系観客だけでなく米国でシェアを拡げるヒスパニック系観客を取り込むべく、メキシコ人女優バルバラ・モリをヒロインとし、スペイン語の台詞を取り入れるなど戦略的な作りを試みたが、本作では映画の原点であるサイレント映画に立ち帰り(インド映画誕生100周年の前年2012年に作られた事も大きい)、主人公バルフィを聾唖青年に設定している。
映画はトーキーの出現よりサウンドを得た事で大きく花開いたが、インド映画では台詞を音声で伝える事で言語ごとに市場が分断されてしまった。しかしながら、世界有数の多言語国家であるインドにおいては言語別の映画界を擁立してもままならず、非母語観客を取り込むべく、過剰な演出(出逢いや驚きの場面で3カット繰り返す等)やミュージカルの発達を促した。
聾唖というと日本ではハンディキャップとして捉えられがちであるが、本作におけるバルフィの快活なキャラクターを見ると、巨匠アルフレッド・ヒッチコックの言葉「サイレント映画はただ音がないというだけで映画を見せるテクニックとして完成していた」を思い出さずにはいられない。サイレントは、むしろ言語の壁を超え、人々の普遍的な心へとストレートに訴え、「共感」を生むのだ。
無論、サイレント洋画だけでなくボリウッド映画へのオマージュも多数ちりばめられ、バルフィがシュルティーの乗ったダージリンのトイ・トレインと併走する出逢いのスケッチは、インド初のスーパースター、ラージェーシュ・カンナー(アクシャイ・クマールの義父)とシャルミラー・タゴール(サイーフ・アリー・カーンの母)による名作「Aradhana (信奉)」(1969)を思い出さずにはいられない。そして、バルフィ=シュルティー=ジルミルの三角関係は、ベンガル文学の名作「Devdas」におけるデーヴダースを愛したふたりの女性パールヴァティー、チャンドラムキーに通じ、すなわちクリシュナ神と恋人ラーダー、クリシュナを信奉してやまない女性詩人ミーラー・バーイーに置き換えられる。ラスト・シーンを見れば、ベンガル出自の家系であるアヌラーグが至高の愛として「Devdas」を自作で試みようとした事が感じられる。
サポーティングは、バルフィの父に「Duplicate」(1998)など脚本も手がけ、「Koi… Mil Gaya(誰か…みつけた)」(2003)&「Krrish」(2006)の校長役アーカーシュ・クラーナー。「Naam(名前)」(1986)や「Beta(息子)」(1992)等の温かみのある役柄が思い出され、微笑ましい。
そして、バルフィの宿敵となる太った警官役にソォーラブ・シュクラー。「スラムドッグ$ミリオネア」(2009)に続く警官役で、ミステリー仕立て?の狂言役が見物。
また、ジルミルの父親役としてアーシーシュ・ヴィダヤールティーを起用。近年は南インド映画への営業出演が続くが、味わい深い芝居を見せてくれる。
音楽監督プリータムはアヌラーグ・バスの盟友で(彼もまたベンガル系)、
ぜひ多くの人々にーー特に障がいと共に生きる人々にもー観て頂き、10年代の名作となるべき本作をいつまでも心に置き留めて頂きたい。(ナマステ・ボリウッド/すぎたカズト)
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